「発明塾®」へようこそ!: 12月 2014

2014年12月29日月曜日

「難しい問題に取り組むことを、恐れるな」~京都大学「ものつくりセミナ2014」のレポートから

今年(昨年はコチラは特に「発明」に関する話題を多く盛り込んだことで、キャリアのことをお話しする時間が十分取れませんでしたが、大半の学生さんは、

「来るべき時に備えて、もっと勉強しよう!」


と思ってくれたようです。しかし、中には数名、


「もっと企業時代(川崎、小松)の、話が聞きたかった」


という学生さんもおられました、ごめんね。



続きは発明塾でお話しするか、3月に機械系が主催する、


「OBと学生の交流会」


でお会いする際に、しましょう。



さて、差支えの無い範囲で、レポートを振り返ってみましょう。


今回のレポート課題は、


「ウエアラブルデバイスにしか、解決できない課題」


という観点で、発明を創造しましょう、ということにしました。



講義中、3Dプリンタ(3次元プリンタ)を具体例として挙げ、


「既存の各種工作機械や組立法など、既存の製造法では出来ないもの、解決できない課題に適用してこそ、大きなチャンスが生まれる」


という話をしました。この視点を、


「ウエアラブルでも、使ってね」


というわけです。



今回のレポートも、加点方式です。加点の基準は、


①論理展開の正しさ(特に、必然性)

②切り口の斬新さ(先行技術との比較)

という、「発明塾式」としました。


「24時間身に付けていることに意味がある」

「両手が空くことに意味があるんだ」

などなど、いろいろな観点で議論を展開してくれました。


いつも通り、レポートを読むのは時間を忘れる程楽しく、一つ一つじっくりと読ませていただきましたヨ!



アイデアについては、ここに書けないのが残念ですが、代わりに、講義の感想の一部を、個人が特定できないように、抜粋記載しておきます。



・「Linked In 始めました!」

これは、Linked In って、何のツールか知ってる?という問いかけから始まった一連の説明を受けてのことのようです。今回の講義から Global に Professional として活躍する学生さんが、出てきてほしいですね。


・「紹介いただいた本を買いました/読み始めました」

1.5時間の講義で話せることは、知れています。「望むなら、(その扉の前に)連れて行こう」(T.サビーヌ)のが関の山です。本のリストを「地図」にして、是非「冒険の扉」を開き、「知の大海原」を航海して欲しい。
「もっと勉強したい」と思った、など、冬休みを前に気合が入ったなら、まずは目標は達成できたと思っています。
「扉を開けるのは、君だ!」


・「自分にも発明が出来そう」

これは、すごくうれしい。発明について、正しい(達成可能であるという)認識を持ってもらい、様々な課題を解決する機械やサービスを、毎日ドンドン考えて欲しい。

ちなみに塾生さん曰く、「楠浦さんのすごいところは、絶対この問題は解けると信じて疑わないこと」だそうです。それが、塾生さんをして「発明に取り組ませている」のだとか。


僕は、人類の知性とその進歩を信じています。


「難しい問題に取り組むことを、恐れるな。

ひょっとしたら、その問題に取り組む過程で、なにか興味深い問題が解けるかもしれない」
(モンゴメリー)

数学者モンゴメリーは、ゼータ関数のゼロ点分布について考察する過程で、物理学者フリーマン・ダイソンに出合います。二人の出会いは、リーマン予想の証明に、重要な進歩をもたらしました。

前回のブログで取り上げた「素数の音楽」からの一幕です。


 (画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。
A.ワイルズは、7年間誰にも話さず、
ひたすらこの定理の証明に、情熱を注ぎ続けた。
「解けるという確信」のなせる業でしょうか?
まさに「頭脳をかけた大博打」です。


・「25-65才の平日の昼間という、人生の最もよい時間を費やす以上、どういう仕事につくか、仕事の時間をどう過ごすかが非常に重要である、という言葉がすごく響いた」

講義中ほとんど触れなかったにもかかわらず、同じような感想を、かなりの割合の学生さんが、自分なりの言葉で書いてくれていました。これも、僕にとって、とてもうれしいことでした。

42になり、残された時間が少なくなる中「残りの短い人生をどう過ごすか」常に選択を迫られている僕の心境を、学生さんは、敏感に感じ取っていたのかもしれません。


「数学者のほとんどは、10台若しくは20代に大きな業績を上げる」といわれる中、A.ワイルズが40を超えて「フェルマーの最終定理」を証明したことは、やはり偉業の名にふさわしい仕事なのでしょう。


接頭辞として、


「仕事は、お金が儲かればよいと思っていた」

「嫌々でも儲かる仕事をやって、お金を稼いで、休日に趣味で楽しめばよいと思っていた」

等の感想も、ありました。


唯一の答えは有りませんが、多くの先人が人生を振り返っている言葉が、参考になるでしょう。


もちろん、これは僕の仕事観、人生観なので、他の方に押し付ける気は毛頭ありません。ひょっとすると、死ぬときには答えが出て、でも、そのままその答えを持っていくのだと、思います。


・「短すぎた」「あと2-3時間やって欲しかった」

有り難いリクエストでもあり、もっといろいろ話せるはずだったという反省もありますが、やはり、この講義での僕の仕事は、


「扉の前に連れていく」

ことだったのだろうと、思っています。


来年は、また違う話をします。興味があれば毎年出てもらうのも、一興だと思っています。

単位にはなりませんが・・・そもそも大学の講義は、単位のために聞くものではありませんので・・・よろしく。






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「原理原則を押さえよ-全ては奥深くでつながっている」~発明塾京都第211回開催報告

今回は、皆さん学業で忙しかったのと、僕が体調がよくなかったこともあり、先日の「マシュマロゲル」セミナーの振り返りとしました。


一部の塾生さんの興味は、

「発明法」

ではなく、

「発明できるチームを運営する方法(べたに言うと、ファシリテーション法)」

に移っているようです。

それはそれでよいことですが、基本が疎かになってませんかね・・・?


(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。
リーマン予想を巡る、偉大な数学者達の
取り組みを知ることは、「数論」が
多くの学問とつながった、いかに実り多き
学問であるかを、知ることでもあります
(ちなみに翻訳者の富永さんは、京大理学部のご出身です)


さて、

「誰が入るよりも、楠浦さんが入る方が、どんな内容の議論であっても、議論がスピーディで質の高いものになる」

ことに、全ての塾生さんが気づいていると思います。ファシリテーションとは何か/ファシリテーターに求められるものは何か、といわれたら、上記であると、僕は答えます。ポイントは2つです。

①「参加できる議論のジャンルを問わないこと」
②「その人の存在ゆえに、早く、質の高い結論が出ること」


少なくとも、議論が遅くなって、結論の質が落ちるなら、誰であっても入れない方がましですから、当たり前のことしか言っていません。
(発明塾では「何も言ってない」、と言われます)


こういう風に書いていくと、

「議論のテクニック」
「議論の手続き」

に目が行きがちでしょうから、敢えて逆のことを言うと、

「サイエンスに潜む、数少ない根本的な原理原則を理解し、日々の発明/仕事/生活でそれを応用し、使いこなせるようにしておく」

ことが、議論をリードする上で、とても役に立ちます。


物理や化学、生物といったいわゆる「理科」の分野にとどまらず、経済や金融、数学や心理学で用いられている「理論」は、それぞれがつながり合って発展しています。

世の中を理解するには、実はごく少数の「原理」を理解しておけばよい、と僕は思っています。

「物事はすべて、奥深くで互いに繋がっている」

からです。


最新技術の知識をその場その場で「断片的に」仕入れるだけでなく、その根底にある「原理原則」をしっかりと理解することに、日々の時間を割きましょう。


僕が、ナノインプリント技術を開発していた時に、機械屋であるにもかかわらず

「半導体用レジスト」
「画像検査装置」
「金型の製造法」

など、一見何のつながりもない技術について、次々と新しいアイデアを創出し、事業を推進することが出来たのは、この

「原理原則を理解する」

という姿勢を貫いたからです。


この年末年始、2015年度に向けて、しっかり勉強しましょうね。



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2014年12月23日火曜日

「マシュマロゲルの用途を発明する!」~12月20日「発想法セミナー」振り返り

前回に引き続き、

「マシュマロゲル」

の用途について、

「発明塾式発想法の体験」

を兼ねて、塾生さん/OB主催の「体験型」セミナーが行われました。


一名、

「弁理士資格を取得した学生さん」

に、参加いただきました。

最近の学生さんは、なかなかすごいですね。


さて、今回も僕は途中参加で、特に、

「発明におけるファシリテーション技術」

の指導を兼ねて、要所のみ議論を主導しました。


高校で生物を選択しなかったのですが、
結局仕事では必要なので、高校の教科書に
始まり、細胞生物学の専門書まで、
一通り読む羽目に・・・
大学時代に、幅広くやっておきましょう


今回の議論は、原点に立ち返り、

「マシュマロゲルは、液体を分離することに使える」

という所から始めました。


僕的には、「いくつか」面白い用途を導出できたかなと思っています。

各自が議論している間に、同時並行で複数の用途の可能性を調べていたので、その場では発言していないものもありますが。


前回議論を公開した後、様々な方から少なからぬ反響があり、今後の活動に支障があるといけませんので、今回の討議結果はあまり詳しく記載しないことにします。

興味をお持ちの方は、個別にお問い合わせください。


次回は、どんなシーズにするのか、楽しみにしています!


2014年12月21日日曜日

「人口問題」は、まさにその「人口」が解決する~立命館大学「発明講義」第13回報告(2)

(1)で、

「マルサスが UnderEstimate していた、技術の進歩速度」


という話をした。この点について考えれば考えるほど、


「経済学の未来予想」


は、いい意味で裏切られ続けることを確信している。



一つは、「Moore's Law」であり、もう一つは「インターネット/IT技術の進歩」である。


Intel 的進化 と Facebook 的進化 と言い換えてもよいかもしれない。


講義では取り上げなかった(失礼!)が、発明塾ではよく議論することなので、ここでまとめておきたい。



ここまでの文脈については、板書も、適宜参照してください。



●ムーアの法則(Moore's Law)

「半導体の集積度は、一定期間毎に2倍になる」という、正確には「予想」である。

Intel 創業者ゴードン・ムーアの、この「予想」は、日本を代表する半導体技術の企業である、CanonやNikon、フォトレジストメーカー(JSRなど)の努力もあって、今のところ当たり続け?ている。


コンピューターの性能が、幾何級数的に増大する、ということを意味しており、これは発明塾では定番の、


「シンギュラリティ理論」


に繋がっている。最近Googleに合流した「知の巨人」レイ・カーツワイルは、その著書で、


「20xx年に、コンピュータの情報処理速度は、人間の脳のそれを超える」


と予測している。


「その時何が起きるか」


ものすごく楽しみであり、それが僕が、


「常に”技術の最前線”にいたい」


と思う、一つの大きな動機となっている。



●インターネット/IT技術の進歩、特に「繋がる」能力

何をいまさら、だと思いますので、発明塾的な視点のみ、簡潔に述べておきます。

人口増による問題が、そのまさに「増えた頭脳」によって解決されてきたことは、疑いの余地は無いでしょう。生み出される知識が、人口に比例ではなく、


「ネットワーク」


によって、


「掛け算」(幾何級)


的に増大することは、未来予想を明るいものにしてくれる、と僕は考えます。


発明塾では、


「知らなくてもいい、検索して見つけ出せ」


と常に教えていますし、


「人が見つけていない情報を見つけることに、全力を尽くせ」

「隣の人間と同じ検索式を使うな、2人いる意味がなくなる」

と、常に指導しています。


「異なる個」が「繋がる」


技術。それが、現在のITの「発明塾的」な本質です。



解決策において、この「掛け算」が本質になるのですが、それはこの後。




●「解決」を、効率よく導出する

発明塾では、

「経験が必ずしも豊富ではない”大学生”が、発明に取り組む意味と”とるべき”戦略」


について、教えています。


よい発明を行うために必要な要素の一つに、


「情報(技術的知識、市場に関する知識)」


があります。経験豊富な技術者が発明に有利なのは、これを探すコスト(情報コスト)が極めて低いからです。



2008年ごろに使っていた、「化石」な資料
今見ると、いろいろ的外れで笑える
随分遠くまで来たな、と感じる瞬間


大学生が”ベテラン”に勝つには、


「情報コスト」


を下げるしかありません。つまり、


「検索技術」「情報分析技術」


の向上と徹底活用、です(注)。



その上で、


「有効な組み合わせを、効率よく生み出す」


ことです。発明は、


「課題と解決」「技術と技術」


の、組み合わせだからです。効率の良い組み合わせを生み出すために、常に意識しておいて欲しいことは、以下の二つです。


①意図的に「異分野」を結び付ける

②TRIZ/発明方程式などの、基本的な「発想ツール」を、徹底活用する


あと、もう一つ重要なのが、


③一人で発明するのか、集団で発明するのかで、方略が全く異なる


ことです。



結構長くなりましたので、一旦この辺で切りましょうか。



※ 注) KSFは決して、「自由な発想」では、ありません(笑




2014年12月20日土曜日

「大学生が技術を学ぶ意味」と「発明理論」~立命館大学「発明講義」第13回報告(1)

立命館大学での「発明講義」(正式名称は”マーケティングリサーチ”)も、今週で第13回となりました。次回、最終発表とし、最終回は例年通り「クアルコム方程式」の勉強に充てたいと思います。

お楽しみに。


さて、今回の講義で年内最後になりますので、年末年始に発表できるレベルの発明を仕上げられるように、「そもそも発明とは」ということを、少し講義しました。


発明塾では、いつも教えていることですし、「発明塾講義(無料)」でも配信していることですが、改めてまとまった講義を行いましたので、板書内容を含め、ここにUPしておきます。


板書(1)左半分
Criticalな問題を解決しないと、意味はありません

板書(2)右半分
そのためにも、パレートの法則を理解しておきましょう


●発明とは「課題‐解決」である


塾ではいつも言っていることですが、「課題と解決」がセットで、発明です。

そして、「解決策の独自性」ではなく、「課題の重要性」で、発明の価値の大半は決まります。

「どうだ、この技術すごいだろ」


ではなく、


「この問題を解決できれば、どんなにすばらしいでしょう!」


というのが「発明思考」です。つまり、「課題の重要性」に、フォーカスするわけです。


そのために、以下2つのことを、理解しておく必要があります。



1)パレートの法則/べき乗則(Power Law)

イタリアの経済学者A.パレートは「イタリアの土地の80%は、20%のお金持ちによって所有されている」ことに気づきました。いわゆる「8:2」の法則です。
多くの自然現象や社会現象が、同様の法則に支配されていることが、わかっています。

発明に置き換えると、


「重要な課題にフォーカスすることで、大きな成果につながる発明を創出することが出来る」


となります。


こういうことを知らないと、「一見面白いけど、成果の出ない的外れなこと」に注力してしまうので、全学生が、学部で初歩的な経済学を学ぶのです。



2)T/O(Trade Off)

TRIZ/ARIZを発明塾で紹介しているのは、この「Trade Off」という概念について、アルトシューラーが触れているからです。

「Trade Off」とは、簡単に言うと、


「あちらを立てればこちらが立たず」


な状態のことです。例えば、


「強くすると重くなる、軽くすると弱くなるので、よい航空機用材料がなくて困るのよ・・・」


みたいな状態のことです。


これを「中間地点で解決する=折衷案を採択する」のは、「発明的」には、最悪の解決法です。



一般的な経済学のフレームワークでは、


「最適点がある」


という解決策の提示になり、まさに「中間地点」を探る理論なのですが、これは、経済学が「Static」な世界観に基づいているからです。


「技術の進歩=Dynamicな変化」


を前提にしていない、という意味です。ここに、


「理系の学生が経済学を学び、その限界を知り、それを超えるのが”技術”なのだと知る」


ことの意味があります。特に工学系の学生は、


「経済学を学ぶことで、技術を学ぶ意味を”明確に”知る」


ことが、出来ます。




世の中は「技術によって進歩する」のです。


「頭脳によって」と、言い換えることもできます。


18世紀のイギリスの経済学者 T.マルサス は「人口論」で、


「人口は幾何級数的に増大するが、食料は算術級数的にしか増大しないから、人類はいずれ極度の貧困状態に陥る」


と予想した。その後どうなっただろうか。


「イギリスも含めた、全世界の生活水準は飛躍的に向上し、かつ、人口が爆発的に増大した」


ことは、皆さん目の当たりにしている通りである。


理由は何だろうか。


一言で言い表せるような簡単なものではないが、マルサスが「少なくとも、低く見積もっていた(彼に敬意を表して!)」ものが何かと言われたら、


「技術の進歩速度」


だろう。20世紀に「緑の革命」をはじめとする技術の進歩によって、どれほどの「農業生産性」の向上があったか、興味がある人は調べてみるとよい。


「灌漑=土木技術」「肥料=石油化学」・・・「品種改良」「遺伝子組み換え」・・・


ネタには困らないだろう。



たとえば、講義で取り上げた「肥料」については、


「ハーバー・ボッシュ法」


により、メタンと空気中の窒素から、アンモニアが合成できるようになったことで、窒素肥料が安価に効率よく施肥できるようになった。


高校の化学で学んだ通りである。


何名かの学生さんが、憶えていてくれて、よかった。



ちょっと長くなりそうなので、まずは一旦この辺で切りたい。


大学生が、極めて短い講義時間(1.5時間しかない)中に、経済学、歴史、化学、を概観した上で発明に取り組めるように、かなりデフォルメして話している点も、ご容赦いただきたい。




この「お正月」に、技術系の学生さんには是非「経済学」を勉強してもらい、

「やっぱり技術を追求しよう!」

と、決意を新たにしてほしい。

このBlogが、その”ちょっとした”きっかけになれば、これほどうれしいことは無い。


マシンビジョンの「発展」を”特許情報分析”から予想する~発明塾京都第210回開催報告

今回も、塾生さんの下調べを基に、

「マシンビジョンが、今後どのように発展していくか」


について、特許分析と発明創出を行いました。



いわゆる「共起分析」は、データ分析の基本であり、事象間の相関関係を割り出すための、最も手軽な分析手法です。


ナノテクベンチャー時代に、この手法を使っていち早く「ナノインプリントの用途と、用途開発を行っている担当者」を割出し、僕自身が実際にコンタクトして、事業計画の立案と資金調達に結び付けたことで、この手法の有効性が、証明されました。


その経緯は、こちらに詳しく書かれていますし、セミナー(注)でも度々話しています。


分析手法は今後、「紙上講義(無料)」でも、取り上げていきます。



(ダイムラー・アクチエンゲゼルシヤフト)より
障害物の陰に隠れた歩行者が「見える」と
もっと「安全」な世の中になり、
子供が「伸び伸び」遊べそうですね。
そんな「ベンツ」が、いずれ出るのかな?


今回は、この「共起分析」から、塾生さんが割り出した「ある技術」とマシンビジョンのかかわりを、未来予測も兼ねて、発明してみました。


結構面白いアイデアも出ましたが、携帯電話系のメーカーさんから、それなりの先行技術も出ていましたので、もう一歩踏み込む必要がありそうです。


次回も引き続き、議論していきたいと思います。




※ 注) コピーセミナーも多く出てきて、手法自体が業界の定番化したので、2年ほど前を最後に、行わないことにしていましたが、「オリジナルの話が聞きたい」「実際に成果に結び受けたノウハウを聞きたい」という声が多いらしく、再度企画を持ち込んでいただき、実施することになりました。今回こそ、最後にしたいと思っています。同じ話を何度もするのは、個人的にはあまり好きではありません。限られた人生は、もっと、クリエイティブで有意義なことに使いたいと、常々思っています。

2014年12月12日金曜日

3Dプリンターは「新材料の可能性を拡大する」ツール~発明塾京都第209回開催報告

今回は、「マシンビジョンの発展を”技術マーケティング”の手法で分析する」と、「3次元プリンターに関する過去発明を、再発明する」を、行いました。

一つづつ、行きましょう。


1.「マシンビジョンの発展を”技術マーケティング”の手法で分析する」

まだこの手法をマスターしていないメンバーもいますので、

「特許情報分析による”技術マーケティング”手法」

を、解説しました。

詳細は、こちら(過去記事)、もしくは

「特許情報分析を用いた技術マーケティングセミナー」

を、参照ください。

今後、「紙上講義(無料)」でも、取り上げていきます。


特許分析業者/ツール業者による模倣(Copy Cat !!!)セミナーや記事も多数出ており、それはそれで勉強になるものもありますので、各自調べてみてください。


特許情報の活用法など全く知らなかった僕が、事業上の必要に迫られて開発し、その有効性を自ら実証した本手法。

それが、特許業界のスタンダードになっていることは、とても光栄なことです。僕自身の事業開発経験も含め、既に各企業で多くの実績が出ていますが、より精度が高く、実践的な手法を、今後も探索していきたいと思います。

かんたん特許は、「被引用」データも利用可能に。
当時「重要になるはず」と思った僕の発明は、
やはり「きっちり」引用されています。


2.「3次元プリンターに関する過去発明を、再発明する」

昨年の、3Dプリンターに関する議論で既にポイントは出尽くしていましたが、やはり、

「3次元プリンターの肝は、材料ビジネス」

ですね。


今回は、理系の大学生らしく、

状態図」(特に金属系で使う、多元の相図)

について学びながら、

「3次元プリンターが、新たな材料の性能をレバレッジする技術である」

ことを、理解してもらいました。仮にも理系の大学生なら、決して、

「お手軽な製造ツール」

などと言う、

「薄っぺらい理解」

で終わらせてはいけません。


これまでに活用しきれていない、様々な材料が、

「工業製品/量産製品」

に、どんどん使えるようになります。

この文脈で、


とCNCマシニング技術を組み合わせた3DPを見ると、今後の可能性が見えてきます。

「金属、樹脂、ガラス、強化材、空孔、補修・・・」

キーワードを並べ替えてみるのも、良いでしょう。


次回も、議論を続けましょう!



2014年12月5日金曜日

「急速充放電できる電池ができた! さて、どう事業化すべきか? 技術の特徴とビジネスモデルの設計」~発明塾京都第208回開催報告

今回も、マシンビジョンに関する討議と、塾生さんの過去発明を、最新の技術動向を踏まえて再発明する討議を行いました。


残念ながら、マシンビジョンの方は、塾終了後のオンライン討議で、

「ドンズバ」

な先行技術が見つかりましたので、仕切り直しです。


以下、過去発明の討議について、簡単に振り返っておきましょう。


●「急速充放電できる電池」は、どのように事業化すれば、「その技術の価値を最大化」できるのか?

例えば、「京都」発のベンチャー「CONNEXX SYSTEMS」は、

「40Cで急速充放電できる Liイオン電池 を開発」

しています。

具体的には、負極材として「シリコン」を利用することで、ブレークスルーを試みています。
素晴らしいですね。


ここで重要なことは、

「急速充放電できる電池が出来れば、何がどうなるのか」

を考え、その成果が最大になるビジネスモデルを設計し、アライアンスも含めた知財戦略に落とし込むことです。

「アライアンス/契約を見据えて、必要な知財を手配し、交渉力を高め、実用化と普及を加速する」

発明塾で、いつも教えていることです。

エジソンの発明の歴史が、まさに上記の通りになっています。

このあたりは、また「紙上講義(無料)」で議論しましょう。


では、

「急速充放電ができるようになると、何がどう」

なるか、考えてみましょう。


まず「放電」から行きましょうか。

ここで、「充放電」を一緒にしないことが、重要です。

「充電と放電」

は、

「ユーザー価値が異なる」

行為だからです。


教え子もどんどん増えてきて
「教え子に教えられ」
みたいなことが頻発し始めました。
この本も、元塾生さんが教えてくれました。
ありがとう!


急速放電(例えば40C以上)の場合、

「小さな電池でも、大きな力が出せる」

ことに、価値がありそうです。

「瞬発力」

と、名づけましょうか。

「瞬発力のある電池」

ということになると、電池自体の価値が高まります。

ですので、

「電池を高く売る」

という、王道のモデルが成り立つ気がしますね。


実際、

「系統電力の安定化」
「動力回生」

等の用途を、「CONNEXX SYSTEMS」は、模索しているようです。


では「充電」はどうでしょうか?

「急速充電できると、何がどうなる」

でしょうか。

「充電時間を短くできる」

そうですね。これは正しいです。

「ちょっとした待ち時間に充電できる」

と言い換えましょうか。

そうなると、

「時間を短縮した分だけ、高い価値を提供していることになる」

と言えますね。実際、

「そのように説明して、電池を売る」

ことも可能でしょう。


ここで少し、頭を切り替えましょう。

「この電池が普及すると、だれが一番、収益を上げそう(儲かりそう)」

でしょうか。

たぶん、

「電気を売る人」

でしょうね。

「ちょっとした時間に、急いで充電したい人」

は、

「時間をお金で買う」

癖がついていますから、結果として

「電気を高く売る」

ことが出来ます。


となると、

「電気を売る」

立場から、

「急速充電ができる電池」

を、

「再発明」

する必要があります。


このように、「発明塾式」では、

「技術の価値を、いかに最大化するか」

という観点で、発明を「戦略的」に導き出します。


この発明も、引き続き議論していきましょう!


2014年12月3日水曜日

3Dプリンタ―は今後どうなるのか?~rΘz系への展開

発明塾では、1年ほど前に「3次元プリンター(3Dプリンター)」をテーマに、発明創出活動を行っていました。

いくつか斬新な発明が出たのですが、提案時期を逸した発明の一つに、


「rΘz系の3Dプリンター」


が、あります。


当時、いろいろ調べていたのですが、回転座標系を用いたものが


「(あまり)提案されてないよねー」


ということで、かなり突っ込んで議論をしていました。



3Dプリンターは現在、プリンターではなく、AM(Additive Manufacturing)=付加加工、というカテゴリーに属する製造装置、という捉え方をされています。


反対は、


「除去加工」


ですね。例えば、切削加工が、典型的な「除去加工」です。





特開2005−7548 立旋盤の発明です 
「ターニング盤」などと、呼ばれたりしますね



ご存じのとおり、切削加工には、回転座標系の装置は、たくさんあります。というか、そちらが


「一般的」


です。機械工学系の学生さんが多いので、この辺も、塾で解説しました。


円運動は、原理的に

「精度が高めやすい」

「連続加工が容易で、高効率」

なので、機械は「円筒」のオンパレードです。



ご存じのとおり、歯車も


「回転運動」


のみで、作ることが出来ます。例えば「ホブ盤」ですね。



・・・と思っていたら、やはり出ました。


まったく新しい回転型プリントベッド採用の3Dプリンタ「Alta」


Good Timing ですね!実物が見てみたいです。



でも、この絵を見る限りでは、


「回転座標系のメリットを活かし切っていない・・・」


気がします。



「この先を発明」するチャンスですね!


発明塾でも、また議論しましょう。今後の議論は、こちらで配信していきます。



3Dプリンターには、その他にもまだまだ、


「死角」


があります。


今後どんな装置が出てくるか、とても楽しみです。