「発明塾®」へようこそ!: 1月 2015

2015年1月30日金曜日

「DMMのロボットビジネス"DMM.make ROBOTS"は成功するのか?」~発明塾京都第215開催報告

今回は、通常通り京都にて開催しました。

最近は、再び塾生さんだけの討議の場も持ち、活発に討議が行われているようですので、その振り返りから入りました。


テーマはもちろん「マシンビジョン」ですが、よりわかりやすい題材として、


「アラウンドビュー」


技術を取り上げていたようです(僕は、題材選びと議論に関与せず)。



・日産自動車HP アラウンドビューモニター


2008年1月17日付の朝日新聞には、


「日産自動車が自動車技術の特許のライセンスを異業種に売り込んでいる。

建設機械メーカーなど複数の会社・団体と交渉中で、近く契約を結ぶ見通しだ。売り込み中の技術の一つは、自動車につけた四つのカメラの画像を合成して、自車を上から見下ろしたような映像を車内に表示できる「アラウンドビューモニター」。クレーンなどの大型の建機や潜水調査船、農業機械につければ、作業中の事故を防ぎやすくなるとみている。
ゼネコンの鹿島や独立行政法人海洋研究開発機構などが採用を検討している。」

とあり、自動車だけでなく、幅広い業界に波及する技術として、日産自動車自身も期待していることが、伺えます。


実際、日立建機が、建設機械に応用し、実用化しています。



・日産のアラウンドビューモニター、日立建機に技術供与


大型建設機械では、周囲確認が大変/かつ重要ですから、いい用途ですね。ちょうどこの時期、日産自動車がライセンス活動に熱心だったのは、業界では有名な話です。


専門の情報分析/セールス?部隊も組織し、活発に活動しておられました。



ある講義の際の板書
(今回の内容とは、一切関係ありません)
発明のツールは、「背理法」「帰納法」「MECE」など
アルキメデス/ピタゴラス/アリストテレス・・・
デカルトぐらいまでの手法で、ほぼ事足ります。
「XX思考」みたいな、流行に流されないように・・・・
「分析とは比較である」(デカルト)


さて、この技術をさらに用途拡大したい場合、


「アラウンドビュー」


の本質は何か、ということをよく考える必要があります。


「他にできないこと」


ですね。



議論の詳細は割愛します(今後「発明塾講義(無料)」で配信予定)が、振り返り討議の結論として、この技術を


「ナビゲーションが、自車のカメラだけで、自己完結的に処理できること」


と表現することにしました。表現方法は無限にあるので、どの程度の概念のサイズにするかは、その後どういう議論をしたいかで変わります。



もう一問、頭の体操として、


「DMMのロボットビジネス"DMM.make ROBOTS"の本質は何か」


を、討議しました。先行するビジネスの本質が見えれば、攻め方/仕掛け方が見えてきます。


・DMMがロボット関連事業に参入--“キャリア”となり、2017年「売上100億円」めざす



記事を見ると、


「ロボット同士がインターネットを通じてつながり、データ連携することで成長するロボット」


と定義した「スマートロボット」について、「ロボットキャリア事業」を展開することになっています。


「携帯電話のキャリア事業と似たイメージで展開される」


とも。



さて、DMMの言う「スマートロボット」の本質は何でしょうか?


議論は、どのようにでも始められるのがポイントです。



つまり、


「どこからでも始めれば」


よいのです。ZIBAの濱口さんがおっしゃるように、


「初日から、情報はゼロではない」


ことが重要です。



詳細は割愛します(今後「発明塾講義(無料)」で配信予定)が、多少討議した結果として、


「ちょうどいいサイズと距離感のUIを家庭に入れるビジネス」


少し分かりやすく言い換えると


「LINE、Facebook の世界を、常時接続&リアルにするビジネス」


と、なりました。



「携帯電話・・・と似た・・・」


とDMM自身がコメントしていますが、


「携帯電話」

「ウエアラブル」

との対比や補完関係に注目すると、この新しいビジネスの秘めた可能性が、はっきり見えてきます。



DMMが失敗したり、伸び悩んだら、チャンスかもしれませんね。


キヤノンがお得意の、


「後発参入にチャンスがある」


パターンに持ち込めそうです。



「携帯電話」

「携帯キャリア」
「ウエアラブル」
「IoT」

関係の方は、当面このDMMの"DMM.make ROBOTS"から、目が離せないですね。

(特許は先に・・・出しておいた方が・・・よさそうです、アイデア勝負ですから)


その後のマシンビジョンの討議で、練習問題の成果は、しっかり生かせましたかね?

次回も引き続き、マシンビジョンの討議をします!




※ 注) ついでに、「なぜホリエモンは、DMMのロボットビジネスを否定したのか」についても、考察しました。裏読みですかね。



2015年1月24日土曜日

「”振り返る”とはどういうことか-PDCAのコツ」~発明塾京都第214開催報告

今回は、前回の発明討議を振り返ることに、多くの時間を割きました。


前回の討議で僕は、その時点で入手できている様々な先行技術情報を基に、

「どのような観点からでも、一定のクオリティ―の発明を生み出せる」

ことを実際に示しました。


皆さんにはいつも、

「発明討議を振り返りましょうね」

と話していますが、こういわれると多くの人は当初、

「話の筋をなぞる」

ことを、

「振り返る」

ことだと、勘違いします。

鉄の意志と緻密な思考で
「シンガポール株式会社」を設立し、
現在の姿に導いた。
同じことは、マレーシアのマハティール、
台湾の李登輝にも言える。


ここで生じているのは、

「作業の目的化」

ですね。


重要なのは、

「何のために振り返るのか」

ということです。


「何が上手くいったのか」
「何が上手くいかなかったのか」
「他にどのような解き方があったのか」
「なぜこのような議論になっているのか」

を、一つ一つの議論に対して問いかけ、示唆(もしくは理論)を抽出し、次回の討議を

「より効率よく」「より良い結果が出るもの」

にするためです。


「たまたま、いい発明が出た」

というのは、発明塾的には、

「無価値」

です。


僕は毎週、

「その週の自分の仕事のログに目を通し」
「上手くいった施策、上手くいかなかった施策を洗い出し」
「その理由を、仮説的に複数導き出し(上位概念化)」
「ある程度合理的、もしくは、試す価値があると思われる仮説に基づいて、次週の打ち手を立てる」

という作業を、かれこれ15年ほど行っています。


日記は毎日(もしくは毎年)なので、結果を云々するには短すぎ(長すぎ=忘れる)ます。

毎週、が調度よいようです。


塾生さん、

「正しい方法で、毎週の討議を振り返り、そこから導き出された、よりよい進め方の仮説に基づき、事前作業を行って、本番に臨む」

ということを徹底しないと、

「議論が盛り上がった=正しい議論だった」

とか、

「議論が盛り上ったことに満足」

という所で、止まってしまいますよ。


では、次回に向けてしっかり準備を!



2015年1月21日水曜日

「The Qualcomm Equation(クアルコム方程式)を学ぶ」~立命館大学最終講義報告

前回の告知通り、2014年度「マーケティング・リサーチ」講義の最終回は、

「クアルコムの知財戦略」

を取り上げた、解説講義としました。


立命館大学での講義自体が、今年度で最終となりますので、文字通り

「最終講義」

となりました。2010年以降、受講していただいた学生さん、および、関係者の皆様に、改めてお礼申し上げます。


さて、内容はこれまでも度々取り上げているので、敢えて解説するほどのことは無いでしょう。
いくつか、以下にあげておきます。

「クアルコムのケースで学ぶ知財戦略」~立命館大学MOT大学院「技術経営論」にて
立命館大学MOT大学院特別講義「クアルコムは如何に携帯電話市場を制覇したか」開催報告
「世界最強の企業クアルコム」についての特別講義
立命館大学MOT大学院 第5回講義を終えて~クアルコムが携帯電話業界の覇者になるまで

なお、クアルコムが、民間用無線通信で初めて実用化した技術「CDMA」については、こちらでも解説しています。

第3世代無線通信もヒトゲノム解読も、
ちょうど、2000年を挟んでの出来事でした


映像資料に対する学生さんの反応として、

「遺伝子情報が、特許になること」
「米国憲法に、特許に関する記載があること」

などは、意外だったようです。


これを機に、知的財産や発明について、さらに意欲的に学んでもらえれば、これほどうれしいことはありません。

来年卒業、という人も多いようでしたので、就職されたら、是非また連絡を下さい。


ではでは!

Anyday On the Road !



「ツールに溺れない-PDCAとマスタリー」~発明塾京都第213開催報告

第213回は、いつもの発明討議に戻りました。


前回、各自の「発明」について振り返りましたが、今回は、


「発明法」


を振り返ることに、時間を割きました。



繰り替しですが、発明を振り返ることには、2つの意味があります。


①その発明を、更によいものにする

②発明法を、更によいものにする

この、②のような「メタ」な部分が非常に重要です。


「時間を、メタな部分に投資して、将来の自由度を高める」


それが、


「マスタリー(熟達)」


です。



今回僕は、実際に「マシンビジョン」の新たな用途を創出する、というテーマにおいて、その場で、発明方程式を様々な観点から解いて、


「求められるどのような観点からも、問題は解きうること」


を、示しました。



「シェリル・サンドバーグは、幸運の銀のスプーンを
くわえて生まれてきたのか?それとも・・・」P.ティール


ツールを使うのは、その方が効率がいいから、のはずなので、


「より効率よく解ける手法」


を、常に追及する必要があります。


過去に教わったワンパターンな方法を、なんとなく、漫然と繰り返していても、どこにも行けません。

(そういう状態を”道具に使われている”と、僕は呼びます)


ツールは、目的とともに変化してこそ有効です。


日常生活で、「マスタリー」のために「PDCA(Plan-Do-Chech-Action)」を行う、としましょう。


「PDCAを行おう」


と掛け声をかけても、何も変化は起こりません。


「目的に応じたツール化」


が、されていないからです。僕が実際に行っている「ツール化」は、以下です。


①日記

②日報
③振り返りメモ

以下、少し詳細を見てみましょう。



①日記

以前も紹介したように、「5年日記」を使って、目標に対してどこまで来ているのか、毎年毎年の状況を日付で比較できるようにしています。

目標も変わりますが、変わりゆく目標を並べることで、本当に目指すところが見えてくる、という意味で「先読み」に向いています。


過去を振り返ることで、自分の成長はもちろんですが、


「失敗(特に、決断=意思決定の失敗)を明らかにする」


ことが、第一の目的です。


このフィードバックがあってこそ、よりよい意思決定が行えるようになります。



②日報

日々の業務、特に時間配分をチェックします。ドラッカーも同じことを書いていますが、僕は川崎重工時代に(ドラッカーの件は知らず)

「毎日、なんでこんなに忙しいんだろうか?」


と思って、全ての作業を時刻でメモをしたことがあります。当時、設計者だった僕が、最も時間を使っていた作業、それは、


「図面作製でも、設計計算でも、実験データの分析でもなく、”電話”だった」


ことがわかりました。当時、PCは2名に1台、自分の電子メールアドレスはあっても、取引先にはない(つまり社内用)、という時代でした。


「取引先に、FAXで図面を送って、その説明のために電話をかけまくる」


ことに、1日の80%以上の時間を使っていました。


畳何枚分もあるような巨大な図面を、A4に切って番号を付けて送って・・・今考えると、ローテク過ぎてゾっとします(笑

後に、自分の仕事を考え直す、きっかけになりました。


ちなみにその後、

「3次元データを、そのまま協力先に転送して、自動で金型が出来る」

みたいなPJをやりました。

「21世紀の仕事って、こうでなきゃ」

と思いましたね。


③振り返りメモ

これは、主に

「発明討議」
「各種セミナー/討議」

のログを残す/振り返り、方法論をブラッシュアップする、ために用いています。発明討議については、一部は手書きで整理しています。

「Why」

を掘り下げ、理論化することで、次の見通し(Plan)が立てやすくなります。


関連書籍からの引用なども付け加え、手法を進化/深化させるための、

「時間を確保する」

意味でも、

「どんなに時間が経っても」

必ずまとめることにしています。


皆さんも、日々の発明作業に埋没するのではなく、


「マスタリー」


のための作業を、きちんと日々の生活に組み込みましょう。



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2015年1月11日日曜日

「締切りがあるから、発明は面白い」~発明塾京都第212回開催報告

2015年第一回目は、昨年秋に締め切られた「アイデアコンテスト」の結果フィードバックでした。

実際に、発明を評価頂いた企業の方にお越しいただき、質疑応答と、発明に関する討議を行いました。


いつものことですが、

「発明には、締切がある」

わけですから、そこまでに、

「発明として完成している」

だけでなく、

「知財戦略上の重要性、もしくは、そもそもこの発明を起点とした、知財戦略の全貌が示されている」

ことや、当たり前ですが、

「わかりやすい」

ものとして、発明提案書を仕上げ、提出する必要があります。


「一回きりの真剣勝負」

なのです。


過去の「偉人」の発明を振り返ることも、
また重要
彼らの発明も、完璧ではありえない


すぐには、できないかもしれません。

では、毎回、確実にこの能力を向上させるには、どうしたらよいか、考えてみましょう。

「出してしまったら、それで終わり」

ではなく、

「提出後、自分たちでレビューを行う」

ことに尽きるでしょう。


今回は、そのためのいい機会になったと思います。


次回からは、また通常の発明活動に戻ります。

よろしく!