「発明塾®」へようこそ!: 3月 2016

2016年3月30日水曜日

「原理原則」を持って~扉を開ける皆さんへ

いよいよ4月1日。

新たな生活が始まる、というメンバーに改めてメッセージを。


と言っても、ほとんどのことは

「新社会人へ」贈る言葉~塾長の部屋(63)

にまとめてありますので、進路が決まり、今から新たな一歩を踏み出す、というメンバーに向けて、特に強調しておきたいことを、以下に記します。



「望むなら、(その扉の前に)連れて行こう」(T.サビーヌ)

世界一過酷、と言われる「パリ・ダカールラリー」創始者の一人、T.サビーヌの言葉が、発明塾における僕の役割を端的に表しています。

塾やら学校やら、の話になると、

「教える」

とか

「教え込む」

といった話をされる方がおられますが、少なくとも発明塾において僕が試みたことは

「扉の前に連れて行く」

ことだったと思っています。

「扉を開ける時が来た!」

んだよと声を掛け、皆さんを送り出せることに、大きな喜びを感じています。



「難しい問題に取り組むことを、恐れるな。ひょっとしたら、その問題に取り組む過程で、なにか興味深い問題が解けるかもしれない」(モンゴメリー)

これも、

「難しい問題に取り組むことを、恐れるな」~京都大学「ものつくりセミナ2014」のレポートから

からの抜粋です。これを意図的に行うのは、

「間接的アプローチ」

です。あるいは、僕がよく言う、

「知識コストがクリティカルになる時代の生き方」

です。

そして、モンゴメリーとフリーマン・ダイソンのような、

「よき仲間」

との出会いを、大切に。




「自分の能力が最も活かせるところ(What、Where、When、With Whom)で、自分の能力を120%発揮できるように日々努め、務める(How、How Much、How Long)」

別のところでは、

「25-65才の平日の昼間という、人生の最もよい時間を費やす以上、どういう仕事につくか、仕事の時間をどう過ごすかが非常に重要である」

という、もう少し抽象的な言葉で、同じことを表現していました。


「自身が定めた ”原理原則(Principle)” に従い」

「やるべきことに絞り込み(Mission)」

「日々ベストを尽くす(Do The Best)」

これに尽きます。

特に「ベストを尽くす」ということについては、以下参照。
妥協したくなったら、読み返してね。





「組織としてベストを追求するために、自分は何をすべきか、を考えて」

あなたが目指すところへは、残念ながらあなた一人では辿りつけません。そのための会社であり、チームです。

「チームとして、何がベストか」
「そのために、自分に何が出来るか、すべきか」

常にこれを念頭に置き、

「いま、誰が何をすべきか」

勇気を持って発言し、組織を率いて下さい。


つまり、

「求められるなら、おそれずに、リーダーになりなさい」

とうことです。

これは、僕の反省から来る、アドバイスです。



最後に

「発明塾で、自分なりに取り組んだことについて、大いに自信を持って」

次の扉を、開けて下さい。

「自分の ”旗” を立てる」

ことも、忘れずにね。


以下に、一般論として、上記を組み合わせたメッセージを、掲示しておきます。


===

あなたがどこに行こうとも、それがあなたの望むところであれば、必ずそこは

「よい修練の場」

になると思います。

「自分の能力が最も活かせるところ(What、Where、When、With Whom)で、自分の能力を120%発揮できるように日々努め、務める(How、How Much、How Long)」

ことで初めて、あなたが望む

「社会に貢献する」

仕事ができるように思います。

自分なりの答えが出せるように、

「日々ベストを尽くし(Do The Best)」

たかどうか、毎日、毎週、毎月、毎年、必ず振り返り、日々を積み重ねてください。

ベストを尽くさないうちに、次から次へと

「目移り」

することがないように。


しかしながら、天が与えた「Timing(時期)」を逃すこともないように、常に準備を整えておくこと。

これは、あくまでも僕の経験からくる法則ですが、

「Are You Ready?」

と聞かれて

「No」

と答えると、次のTimingは、とても運が良くて 10年 20年後 になるでしょう。

物事にはそれだけ、時間がかかります。

僕が前職・現職通じて、大変お世話になったある企業の方は、

「天は公平ではありませんから、誰にでもチャンスが来るわけではありません」

と仰っておられました。僕は未だ、それが実感出来るだけの経験はしていませんが、そういうことを

「実感」

しておられる方がいるのだということを、常に念頭に置いておきましょう。

「準備をしたからといって、チャンスが来るわけではない」

ということです。

人生に三振はありませんので、時に見送ることも重要だと言われますが、やはり、

「常に準備を整えるべく、努める」

ことが、まずは第一でしょう。まだ若いのですから、そのための時間は、

「やるべきことに絞り込めば」

十分、残されています。


もちろん、

「人生は思ったより短い」

ことは、僕が言うまでもないことです。

「やるべきでないこと」

は、一切やらないことです。やるべきかどうかは、

「自身が定めた ”原理原則” に照らせば」

自ずと明らかになります。


また、お世話になった方々に、

「恩を直接返そう」

などと思わないことです。

あなたが本当の恩返しができるようになる頃には、多くの方は、

「それを必要としない」

立場におられるはずです。

お亡くなりになっておられるか、成功しておられるか、現状に満足せず挑戦を続けておられるか、少なくともいずれかでしょう。

つまり、返せないか、返す必要が無いか、返してもらうことを潔しとせず「共に誰かのために働こう」とおっしゃられるか、のいずれかだということです。

「よりそれを必要としている人に、そして、次の世代に」

いかにして、あなたの才能を届けるか、そこに集中して下さい。

それが、

「多くの方が、あなたに望んでいること」

です。


最後に、繰り返しですが、発明塾で最も重視する言葉である

「原理原則(Principle)」

を常にあきらかにし、見直し、見失わないように。

原理原則に従わない成果は、成功ではなく、脇道です。

原因と結果、努力と成果、それらは必ず「原理原則」に従うことを、忘れないように。


では、今後の活躍を大いに期待し、また、いつか「よい仕事」を通じて活躍を知ることを、とても楽しみにしています。

よい成果が出れば、かならず

「世に知れる」

ものです。

だから、報告は不要なのです。

もちろん、相談があるときは、いつでも連絡してください。


また、当面はこれが一番大事ですが、発明塾で出会った、

「よき仲間」

との連絡を絶やさないように。

もちろん、

「よき仲間であるかぎり」

において、ですが。

20年30年後に

「よき仲間であった」

といえる出会いは、人生においてほとんど存在しない、と思っておくことです。

やはり、あなたが思う以上に、時間が限られているからです。

また、

「探して得られる」

ものでも、ありません。


この話は、またあなたが Timing を得て

「いよいよ、大海へ漕ぎ出そう」

と思った時に、話すことになるでしょう。
(しかしこれも、すでにあなたの先輩には伝えていますので、僕から聞く必要はないかもしれません)


よい船を持たずして大海に漕ぎ出すことは、自殺行為です。

そして、よい船ができたなら、港にとどまっていることを良しとしてはいけません。

船は、大海に漕ぎ出すためのものだからです。


では、今回はこのへんで。


Anyday On The Road!


楠浦 拝

2016年3月21日月曜日

【身近な製品のエッジ特許:冷凍めんが「電子レンジ」で美味しい秘密】「e発明塾通信」バックナンバーより(8)

✔ メール講義「e発明塾通信」のバックナンバーを見たい
✔ 特に注目の「エッジ特許」について、過去のものを知りたい

というご要望にお応えするものです


公開分は「バックナンバー」で、ご覧いただけます。


なお、メール講義「e発明塾通信」は毎週発行で、そこで取り上げたエッジ特許をすべて掲載すると膨大な数になりますので、「バックナンバー」では、そのごく一部の紹介にとどめさせて頂きます。
(過去配信分についてのお問い合わせは、ご容赦ください。定期的に「振り返り」にて、過去分も掲載します。)

「エッジ特許」について、もっと知りたい、という方は メール講義「e発明塾通信」(毎週発行、無料)にお申し込みください。


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■■ 冷凍めんが「電子レンジ」で美味しい秘密を、冷凍めん製造法のエッジ特許から ■■

1月のe発明塾通信で、サンヨー食品との訴訟で使われた「日清食品のストレート麺特許」を紹介し、多くの反響を頂きました。

(再掲)「日清食品のストレート麺特許」
http://www.techno-producer.com/docs/sokusekimen.pdf


今回は、乾麺ではなく冷凍麺の特許を取り上げます。

飲食店での利用はもちろん、コンビニでも、よく見かけますね。

「コンビニ・スーパーで買えるプライベードブランド食品が進化&プチ贅沢化!」
2015年5月28日 日経ウーマン・オンライン
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20150526/206561/?rt=nocnt

具付きになるなど、どんどん本格的になっています。


手軽で美味しい「冷凍麺」、いったいどんな工夫が凝らされているのでしょうか。 

(登録特許)こちらも製造法の特許です
http://www.techno-producer.com/docs/ReitouMen_971.pdf

手早く、温度ムラなく解凍できることが、電子レンジ解凍用の、ひとつのポイントのようです。
たしかに、「ゆでる」場合とは違う課題が、ありますね。


調理しながらいろいろ考えてみると、新たな発見があるかもしれません。




今後も、発明塾独自の視点で”エッジ特許” 選定を継続し、配信させていただきます。

皆様の「発明」「知財活動」のご参考になれば幸いです。

2016年3月5日土曜日

「エッジを拾い、進化させろ!」~カワサキで学んだこと(第323回報告)

今回は、持ち込みのトピックから始め、

「金融」

「セキュリティー」
「Liイオン電池」

などの分野について、分析と討議を行いました。


「Fintech」


という言葉に象徴されるような、新しい技術の流れも、しっかり押さえておきたいですね。


次週もよろしく。



今週、ご縁があって、ある分野の非常に著名な方のところで、


「発明塾」


を開催し、発明創出の支援を行ってきました。


参加者の皆様には、非常に活発な議論を行っていただきました。



また、事前学習で受講いただいた


✔ e発明塾「課題解決思考(1)


について、


普段の研究でも、とても役に立つ、よい考え方が学べた」

今回学んだ考え方を、日々の研究で、すでに使っています」

と、ありがたい感想をいただきました。研究は発明の連続でしょうから、むしろ当然なのかもしれません。



非常にベーシックなサイエンスの研究をされているチームですが、同時に、「用途」「実用化」「知財先行」をキーワードに掲げ、積極的に活動を進めておられます。

発明塾の手法は、「開発」「研究」「用途探索」「知財の先行確保」「知財戦略の立案」「先行特許を回避した発明/製品アイデアの創出」など、

「技術の実用化」

に向けた様々な活動の段階で、幅広く利用いただけることが、改めてわかりました。


終了後、


「普段、楠浦さんは、学生さんの指導において、どのようなことに注意しておられますか?」

「いつも、あんな感じで、”自由に”議論させているのですか?」

と、ご質問がありました。



「”自由”の前提に、”型”があること」

「皆が共通の”型”を踏まえて行うため、”自由な討議”が成り立つこと」

を、説明させていただきました。


また、


「アイデアそのものではなく、そこに潜む”エッジ”を拾うこと」

「答えを言いあうのではなく、周りから正しい答えが引き出せる”問い”にこだわること」

も、お話しさせていただきました。



歴代の財務長官、FRB議長の自伝は
とても参考になります。
特に「金融危機」を経験した方々の自伝は・・・


そういえば以前、ある方に


「楠浦さんの質問には、”愛”がありますね」


とご指摘(?)いただいたことがありました。




実は、この


「エッジを拾う」


考え方の原点は、


「カワサキでのオートバイ開発経験」


にあります。



カワサキ入社時に乗っていたのは ZZ-R1100WIKI, Mr.Bike) という、当時世界最速(最高速度300km/h以上)の カワサキ製オートバイ ですが、その源流は


GPZ900R → GPZ1000RX → ZX-10


と、あるバイク雑誌曰く


「最速の系譜」


と呼ばれる、一連の


「改良機種」


にあります。一部の重要なエンジン部品にさえ互換性があるぐらい、


「(特にエンジンは)できるだけ変えずに、かつ、オートバイとしては大胆に変える」


ことで、


「最速」


を維持してきた機種達です。


すこしづつ手を入れ、10年以上にわたり「世界最速」を維持し続けてきたオートバイには、典型的な


「カワサキ流」


が現れています。

(私がカワサキにこだわったのも、「10年以上、世界一に君臨できる機種群」を作れる企業が、当時、他に見当たらなかったからです)

これらの機種に用いられているエンジンは、結果として、非常に信頼性が高く、かつ、性能も高いエンジンとして進化し続けていました。



互換性がある、と言いましたが、部品1つ1つは丁寧に見直されており、互換性はあるが、同じ部品ではない、という非常に丁寧な作りこみがなされているエンジン達です。


エンジン設計に配属された後、ことあるごとに関連する設計図を

「よくできているな」

と、眺めていました。後に、後続機種のトランスミッション設計を担当しましたが、その時も

「トランスミッションとして、互換性を持たせる」
「時代に合わせ、最新技術を取り入れ、性能を向上させる」

方針にこだわりぬいて、設計しました。アフターマーケットで、カワサキのエンジンがどのように扱われているか、よく知っていましたから、「互換性」は絶対に外せません。

「制約条件が厳しいほど、よいアイデアが出る」

ことを、実感した仕事でした。


最終型のZXT10(C,D)は、今でも部品表を持っているぐらい思い入れもあり、好きなエンジンです。

(ZXT20になり、クランクケースから新作されているのは、オートバイファン・カワサキファンはご存知の通りです)

街中で、二人乗りでUターンしても何の不安もないぐらい車体の取り回しも抜群で、非の打ちどころのない、まさに「名車」でした。




もう一つは、僕が入社後すぐ担当した「W650(WIKI, Goo Bike)」のような、


「コンセプト(見た目)はそのままに、中身を ”最新技術” で大胆に変える」


という流儀です。


クラシック系、アメリカン(クルーザー)系の開発機種に、この傾向がありました。


W650は、


「カムシャフトのべベルギヤ駆動」

(厳密には、ハイポイドギヤ駆動、です)

をはじめ随所に、最新の技術を盛り込んでいます。


「空冷ツイン」


という、一見レトロなオートバイに


「そこまでやるか」


という感じでした。



まとめましょう。


「何を変え、何を残すか」


これが肝なんだな、ということが、まさに”身にしみた”5年間でした。


そのメリハリが


「カワサキらしさ」


を生み出していました。



なので僕はいつも、ある塾生さんのアイデアを取り上げるとき、


「エッジ」


を取り上げ、それ以外を


「大胆に変え」


でも、


「その人のアイデアとして、きちんと進化する」


ように、進めます。



それが、僕がカワサキで学んだことだからです。