「発明塾®」へようこそ!: 9月 2014

2014年9月28日日曜日

「”未来を今すぐ買おう!”=アービトラージが知財の本質」~立命館大学「発明講義」第一回

今年も、立命館大学での「発明講義」(全15回:注)が、始まりました。


毎年のことですが、本講義の正式名称は「マーケティングリサーチ」です。

理工学部、情報理工学部向けのMOT入門科目の一つのため、特に

「技術のマーケティング」

をテーマに、

「発明と市場創造、市場の拡大と独占による収益向上」

の手法を学んでもらいます。


講義冒頭で、各種事例を取り挙げたように

「いいものをつくれば儲かる」

という時代は過ぎ、高収益を維持するためには

「市場をコントロールする、具体的な武器」

が必要となっています。


今回は第一回ですので、

①経済学と知財に関する基本的な考え方
②具体的な事例(クアルコム、インテル、ネスレ、キヤノン etc)

を、簡単に説明しました。


学部の早い段階で、経済学は
しっかり勉強しておいてね。
その後のすべての学問の基礎に
なりますから。



①経済学と知財に関する基本的な考え方

「知財権」を経済学的に説明する際、「裁定取引(アービトラージ)」という概念を用いることができます。


例えば古くは、皆さんが入試の時に憶えさせられた、

・東インド会社
 香料をアジアからヨーロッパへ輸入し、莫大な収益を上げた

など、「地理的な障壁を利用した」取引が、ありました。


同様に、現代の「株式取引」は、

・情報の非対称性/不均一

を用いた取引で、「時間障壁(未来を知ることはできない)」を利用した取引です。


知的財産は、

「事業を許可するか、許可しないかを決める権利」

であり、金融工学で言う「オプション」にあたります。

よく「事業権である」「事業を実施する権利である」のように説明されることがありますが、「排他権」なので、事業権ではありません。

「事業をとめる権利/やめさせる権利」

というのが、正しい定義です。

ですので、知的財産権の取得は、オプション取引同様、

・「未来を買う」(可能性を買う、と言うべきでしょうか)

取引の一つです。

不確実性、金利とリスクプレミアムの話など、経済学的な視点は、今後もう少し深めたいと思います。



②具体的な事例

これも例年ですが、

・クアルコム(携帯電話)
・インテル(PC)
・キヤノン(事務機)

が、知財権がどのように利用して、市場創造や市場参入/市場拡大/独占を進めていったか、を取り上げました。

成功事例だけでは不公平ですので、今年は失敗事例も取り上げました。

詳細は、講義資料/発明塾での紹介資料に任せます。


今年は、受講人数がちょうど良いため、各自1つの発明を仕上げてもらうことにします。

皆さんが興味が持てるテーマで、特許情報分析~発明提案書まで、15回かけて作業を進めたいと思います。

現時点では、

・カメラ
・車/オートバイ業界
・ロボット

等を分析し、発明創出したいという声がありました。あまりバラバラでもしんどいと思いますので、各自の希望が出そろった段階で、

「共通の視点」

を一つ定め、討議を開始します。


ではでは、次回もよろしく!


2014年9月27日土曜日

「いよいよ締切!発明提案書に必須の要素とは?」~発明塾京都第199回開催報告

今回も、各自の発明提案書を順番に討議し、ブラッシュアップしました。


今回のアイデアコンテストでは、

「あるユニークな材料」

を取り上げ、

「どのような、”新”用途があるか」

を、特許情報分析と発想法を駆使して、発明してもらいました。

今回も、いままでにない用途が、いくつか提案できることになりました。楽しみですね。

「アイデアをつくる」ことも重要ですが、
それ以上に・・・


発明の内容としては、もう十分固まっています。おそらく、何件か採用されるものが出てくるでしょう。

あとは「説得力のある提案書」として、どう仕上げていくかが重要になります。


発明提案書として、特に重要な項目が、

「課題」

です。

「課題の定義」

が明確でないと、市場も見えませんし、何が新しいのか、どんな価値があるのかも、よくわかりません。

先行技術を踏まえて、ここを

「トレードオフ」

で表現することが、重要になります。


各自、再度提案書のロジックを確認し、

「この発明は、どんな課題を解決しているのか」

しっかり伝わるように、してくださいね。


では、次回もよろしく!


2014年9月19日金曜日

「技術シーズの”新用途”を探す発明の楽しさ」~発明塾京都第198回開催報告

今回も、各自の発明提案書を、文字通り「叩き直す」ことに、時間を割きました。

厳しいようですが、

「大学生なので、この辺で勘弁してもらう」

みたいな発想は、発明塾には不要です。成果オリエンテッドで評価してもらう、ということは、年齢や学歴は関係ない、ということです。現に、発明提案書には、年齢や学歴を書く欄は有りません。


僕は度々、海外のレビュアーや発明家に、

「え、あの発明を出したの、あなただったの?」

「こんなに若いと思わなかった」

と言われました。


多くのレビュアーには、僕の発明は、

「70歳ぐらいの、企業を引退したベテラン技術屋が書いた発明」

に見えるそうです。

「よく練られた、緻密な発明(elaborate と言ってました)」

だそうです。

褒め言葉だと、思うことにしています。


川崎重工、そして小松製作所時代に、設計者として鍛えられ身に付けた

「要求仕様を適切に定め、それを達成するために、世界中から技術を探し出し、組み合わせ、徹底的に最適化し、足りない部分を補う」

能力、思考回路が、そのまま役に立っています。



「設計者」として、今でもたまに読み返します。
「発明って設計」と思うのは、僕だけでしょうか?
技術を一つ一つ、精緻に組み合わせ、目的を達成する。
「設計こそ、発明」


一方で、発明に携わるようになってから、

「技術シーズの新しい用途を見つける/発明する」

ことの面白さを、実感しています。


既にある製品や技術の先を考えることも楽しいのですが、

「技術を始点に、飛び地を取っていく」

ような、

「ダイナミックな楽しさ」

が、シーズ型の発明には、存在します。

「飛び地が見つかった時の、ドキドキ、ワクワク」(注)

には、体験した人にしかわからない、表現し難いものが有ります。

ぜひ、多くの人に体験してほしいと、思っています。


シーズ型、ニーズ型など、発明の方向性には、いくつかのパターンがあります。配信中の「発明塾講義」で解説しているように、目的に応じて、発明の手法は大きく異なります。


「なんとなく集まって、ワイワイやる」

のも、楽しみではありますが、

「知的生産」

という点では、「楽しい!」で満足していては、なかなかレベルは上がりません。


今回のコンテストを通じて、

「技術シーズ型発明」

の方法論と「ドキドキ」「ワクワク」を、しっかりと自分のものにしてね。


ではでは、次回もよろしく!



※ 注) 前回の討議内容を参照


2014年9月12日金曜日

「”ブレスト後のブレスト!”が マジックモーメント magic moment な件」~発明塾京都第197回開催報告

今回は、各自の発明提案書を基に、「詰め」の作業を行いました。

理想的な実施例(ベスト・モード)や商品性を高めるための工夫を考え、更にその権利性のポイントを確認したり、まぁ、そんな感じでしたね。


一つ、詰まり切らないアイデアがあり、

「捨て」

にしたので、それを補充できるアイデアを、帰り道にベテラン塾生さんと、議論しました。

「ダメなアイデアを潔く捨てる」ことも、限られた時間でよいアイデアを出すためには、とても重要です。


さて、多くの塾生さんが既に体験しているように、

「ブレスト後」(注)

は、要注意です。


何が要注意かというと、

「ブレスト中より、いいアイデアが出る」

からです。発明塾で、ブレスト合宿後に懇親会をやることがありますが、たいてい、お酒抜きになるのは、その瞬間を逃したくないからです。

「創造性」に関しては、まだまだ
誤解に基づいた非科学的な通説・俗説が、
まかり通っています。
これは、ある意味チャンスですね。


今回も、

「非常に切れ味のよいアイデア」

が、まさに

「スパッ」

という音が聞こえるぐらい、見事に出ました。塾生さんと二人で、

「ヤバいヤバい」

と騒いでました(笑


後は、詰める作業ですね。


引き続きよろしく!



※ 注) ブレスト = Brain Storming は、発明塾的には「アイデア出しの討議一般」を指します。


2014年9月6日土曜日

「発明提案書の”フォーマット”が、発明の質を決める」~発明塾京都第196回開催報告

今回も、各自の簡易発明提案書を基に、討議を行いました。アイデアコンテストの締切は10月6日ですので、そろそろ本格的な「発明提案書」として具体化していく必要がありますね。

皆さんのおかげで、発明塾式の発明提案書も、少しづつ進化しつつあります。



いつも言っていることですが、発明提案書は、


「思考を深めるためのツール」


です。


つまり、自分が「より深く考える」ための、道具なのです。



すでに体験しているように、発明提案書の各項目の順番が異なるだけで、思考の深まりは、大きく変わります。人間の思考は、「書き順」のような単純なルールに、極端に左右されるようです。

合理的な順番で、自分の考えを書き出すことが重要であり、それを支援するツールが「発明提案書」だと、僕は考えています。



様々な分野のプロが書いた
「企画書」は、とても参考になる。
「発明提案書」は「企画書」です!
この部分を開発するべき、
こういう知財を取るべき、
と「提案」するのですから。



「発明提案書のフォーマット次第で、よい発明が出るか/出ないかが、決まる」

既に僕の中では、数百件の発明創出を経て、「勝てる発明を出すためのフォーマット」が明確に決まっています。また最近は、ベテラン塾生さんから、なかなかツボを押さえた発明提案書が出てくるので、読むのが非常に楽しみです。



後半戦では、試行を深めるための発明提案書の書き方に、もっとこだわっていきましょう!



今回は、発明塾定番ネタの「課題‐解決」の話もしましたが、これはまた改めて。

念のため、過去リンクをいくつか貼っておきます。内容は少し古いですが、最新の話は塾で「みっちり」やってますので、補足として活用してね。

立命館大学「発明講義」第13回から~発明の価値は「課題」で決まる

課題設定の技法(結局これに尽きる)
塾長の部屋(45)~「課題をクリエイトする」~結局は皆同じ事を言う


では、引き続きよろしく。