今回は、メール講義を購読されている方から多くの反響があったメール講義を取り上げ、内容を補足する形式で、紹介いたします。
取り上げるのは、Vol.91(2016年7月4日号)です。
テーマは、「食べられる電池」でした。
● 「デジタルメディスン」の動向
メール講義では、「食べられる電池」の使い道として、
「スマートメディスン("デジタルメディスン"、または、"デジタル化錠剤"とも呼ばれます)」
※ 引用する記事によって呼び方が異なります。本記事では主に「デジタルメディスン」を用います。
を紹介しました。
2015年9月14日、大塚製薬の抗精神病薬「エビリファイ錠」に、米Proteus Digital Health社のセンサーを内蔵した錠剤の新薬承認申請(NDA)を、米国FDAが2015年9月8日に受理したことが発表されました。
「Proteus Digital Health社」は、
システム大手「Oracle」社と、「データ管理システム」の開発を進めています。
上記の記事の中に、以下のような記述があります。
プロテウス・デジタル・ヘルスのグローバル開発部門責任者であるマーカス・クリステン氏は,次のように述べています。「この服用遵守オプションは,臨床試験において最も重要な情報である『被験者である患者様が適切に薬剤を摂取したかどうか』という点に対応するユニークなものです。この強力な新しいデータと,Oracle Health Sciencesのテクノロジーや分析,様々な機能を組み合わせることによって,製薬企業には新薬開発プロセスを根底から変革できるチャンスが生まれます。」
Proteus Digital Health社のHPを見てみると、「パートナー」として、
「大塚製薬」と「Novaltis」
が記載されています。
● 精神科医療とデジタルメディスン~「大塚製薬」の動向から
その「大塚製薬」ですが、2016年6月13日、「日本IBM」と、精神科医療に対するデジタルヘルスソリューション事業を手掛ける合弁会社「大塚デジタルヘルス」を設立する、と発表しました。
大塚製薬の統合失調症治療薬「エビリファイ錠」は、
同社の医薬品事業を支える「稼ぎ頭」でしたが、2015年に「特許切れ」を迎えています。
特許切れを見据え、「着々と」準備を進めていたのでしょうか。
同社の中期経営計画を見てみると、
「デジタルメディスン」
(大塚製薬は「デジタル化錠剤」と呼んでいます。)
さらには、
「付加価値」を加えた薬剤治療の提供
へ「事業を進化させる」とあります。
精神科医療では、
「症状や病歴など重要な医療情報の多くが、データベース化されていない」
「患者自身(または患者家族)による適切な服薬管理("拒薬"や"怠薬"など)」
という「課題」があり、デジタル化の流れとも特に「相性の良い領域」のようです。
これらの情報から、「 医薬 × 製剤 × ICT の複合領域」では、競争優位の源泉が、従来の「発見・探索」から「発明」へシフトしていくことがうかがえます。
今回はこのあたりで一旦打ち切りますが、
発明塾は、引き続き「医療・ヘルスケア分野」に注目し、"エッジ情報"を蓄積・情報提供していきます。
続きはまた、どこかで。
最後に配信文を掲示しておきます。
(配信申込は、こちら)
==以下、配信文(エッジ特許関連を抜粋)
「「「 「食べられる電池」エッジ特許を読む~その使い道は? 「「「
今回は、現在発明塾で情報収集中の「仮説的」なテーマ「電子部品の消耗品化」に関連して、
「食べられる電池」
についての、エッジ情報(エッジ特許)を紹介いたします。まず一つ見てみましょう。
Food Grade (食品グレード)の電極を持ち、唾液により電流発生を開始する、などと記載されています。何に用いるのでしょうか?
(詳細は、「embodiment」として、記載があります)
一つのヒントとして、以下「スマートメディスン」があります。
服薬管理ができる医薬を提供しよう、ということのようです。
関連特許の例として、以下があります。図面から、だいたいの構造がわかります。
薬を飲みこんだかどうか、胸のあたりに貼り付けたアンテナで検出する仕組みになっています。
以下で取り上げた「遠隔医療(TeleHealth)」とも関連が深い技術です。
他にも、Johnson & Johnson による、「微粒子から電流を発生させ歯磨きや化粧品などに用いる」という発明についての出願が目に留まりました。
こちらは電子部品とは呼べませんが、「電流発生」を何に使うか、という点で参考になります。
==ここまで