「発明塾®」へようこそ!: 8月 2014

2014年8月30日土曜日

「パナソニック”大嶋式”発想法に学ぶ」~発明塾京都第195回開催報告

今回も、各自の「簡易発明提案書」をもとに、議論を進めました。


当初の発明を、「先行技術」を踏まえながら、繰り返し議論していくのが発明塾式です。


その結果、


「当初と全く異なる発明」


になることも、よくあります。ベテラン塾生さんは、度々体験していますよね。


現在「紙上講義(メールにて配信中)」(注1)で紹介している過去の発明メモを振り返ると、議論の度に、面白いぐらい発明が「成長」しています。



電子化すると、こういうときには
使いづらいですね。
でも、いつでも読めます


実は、この手法は「ひらめき力の育て方」で有名な、元パナソニック 大嶋氏 が提唱する、


「3階建て理論」


でも、指摘されています。該当部を引用すると、


「いまある最新の商品や技術テーマをベースにディスカッションを行なうことで、2階、つまり3年後の世界を予想します。さらに2階(3年後)の状況をイメージしつつ、さらにブレストを繰り返し、出たアイデアにリンクを張っていくことで、ついに3階の・・・」(ひらめき力の育て方 P175)


のように、「屋上屋を重ねる(注2)」?ことで、未来にたどり着くという考え方は、発明塾式とまったく同じです。多くの発明家が指摘する「発明法」は、だいたい共通しています。



ちなみに、この機会に大嶋氏に関連する資料を、まとめておきましょう。


・「ひらめき力の育て方」大嶋 著

手ぶれ補正の着想、製品化の経緯
電機業界の発明者ランキング
大嶋氏のデジカメの手振れ補正技術の特許解説

「塾長の部屋(37)~ひらめき力は育つのか」

以前はよく、様々な発明家の手法や、有名な発明の背景を解説したりしていました。また折を見てやりましょう。




※ 注1) 現在、発明塾の過去討議を振り返りながら、「発明塾式」を身に付けて頂く紙上講義を、メールにて配信しています。具体的な発明に関する情報を記載しているため、バックナンバーは非公開とさせていただきます。

 → 「紙上講義」開設の経緯はこちら

※ 注2) 無駄なモノを作る、という意味のことわざ。



2014年8月24日日曜日

塾長の部屋(70)~8月23日京機会MOTセミナー報告

昨日は、京機会関東支部(※)MOTセミナーで、知財戦略に関するお話をしてきました。普段、塾で皆さんにしている話そのままですので、特に詳しい解説はしませんが、

「ちょうど、仕事でそういう状況に遭遇している」
「新規事業を立ち上げるときに、よくある構図ですよね」

という声が出ていました。

皆さんが普段取り組んでいることは、仕事ですぐに必要になる内容である、ということでしょう。


今回は、「若手の技術者」の方が多かったせいか、知財に限らず、仕事の話や、キャリアに関する話も出ていました。

僕がいつも、塾を卒業する学生さんに勧めている本を、再掲しておきます。いずれ皆さん、上司になられるのですから、「上司の哲学」もセットで読んでおかれると、よいでしょう。


「一番困るのは、何をやっているのかわからない部下」
「能ある鷹は、爪を出すべき(本田宗一郎)」
など、社会人になるにあたり、
知っておいた方がよいことばかりです


懇親会で一番多かった質問は、

「なんで、独立しようと思われたのですか?」

でした。


僕の答えは、いつもと同じで、

「独立しようと思った憶えは、これまで一度もないのですが・・・」

でした。


皆さん「???」だったと思いますが、事実なので、仕方ありません。きっと皆さん、

「独立して、自分の夢を実現するぜ!」

みたいな、威勢のいい話を期待しておられたのでしょうから、申し訳ないことをしました。


僕は常に、

「今、自分に求められていることを、全力で行う」

ことだけに、集中してきました。これからも、それは変わらないでしょう。

「自分に課せられた責任を、果たし続ける」

ことでしか、道は拓けないと思っています。


また、

「自分に課せられた責任を、自分の中に落とし込んでいく(内在化、内面化)」

ことで、自分と周囲を一致させていくのが、上に立つ者のあるべき姿だとも、思っています。
マズローの言う「B価値」「ゲシュタルト性向」も、この考え方に大きく関係してくるでしょう。


続きは、また!



※ 注) 京都大学工学部機械系のOB会組織。僕が機械系の講義を一部担当している関係で、数名の機械系の学生さんが常に、塾に在籍してくれています。


2014年8月22日金曜日

発明塾京都第194回開催報告~「発明とは日常を科学すること」

今回も、各自の発明提案ドラフトをもとに、討議を進めました。

また、今回のテーマに関連して「表面エネルギー」について、おさらいをしました。過去にも、


「壁が汚れない塗料」「新しい手術器具」「サーバールームの冷却」


等、様々な発明に取り組む際に出てきた、とても重要な概念です。



僕が、こういった科学的な概念を、きちんと理解してもらうために心がけていることは、


「実際のモノ」 や 「他の現象、理論、概念」


と結び付けて説明をする、ことです。



今回は、フッ素コーティングの話に始まり、


「フッ素樹脂が、なぜ表面エネルギーが低いのかを、化学式で見てみる」

「接着剤が、なぜ”接着”剤か、化学式と表面エネルギーで考えてみる」
「なぜ水玉が”丸くなる”のかを、表面自由エネルギーから考えてみる」

という、高校の物理化学の延長線の話に始まり、


「破壊力学の基礎式を、表面エネルギーの視点で解説してみる」

「半導体ウエハーの常温接合と、表面エネルギー」

のように、大学で学び/研究するテーマに言及し、表面エネルギーについて学びました。


撥水性と濡れ性(Young-Dupret, Wenzel, Cassie-Baxter 等)」


の話を、忘れました(笑。



(再登場です)
発明を通じて、日常を科学し、学ぶ。
モノづくり解体新書(※)」と本書が、
僕の発明の原点。是非読んでね。


その後、余談として


「半導体~Si単結晶ウエハーの作り方(CZ法)」

「半導体~ACF(異方導電性テープ)という”秀逸”な発明」
「レオロジー~固体でも液体でも”ある”もの~高分子のお話」
「レオロジー~時間と熱が等価であること」

など、発明を行う上で欠かせない、基礎的な科学の話をしました。


「ガラス転移」「貯蔵弾性率と損失弾性率」「結晶って何?」
「光の波長、回折と半導体製造技術」「位相制御で解像度が上がる」
「メッキと濡れ性(また濡れ性!)」
「気相からの結晶成長~CVDとPVD)」

なんて話も、ホントはじっくりとしたかったのですが・・・。

工学部の物理工学系/機械系では、半導体の話も、連続体力学の話も専門科目で出てきますので、そこでさらにしっかり学んでね。

「そうやって考えると、めっちゃ面白いですね!」


とのことなので、発明を通じて学ぶことの楽しさは、伝わったのかな?



今回は時間切れで、ここまで。


次回もよろしく!



※ 注)発明塾文庫、として全巻揃えています。



2014年8月16日土曜日

発明塾京都第193回開催報告~「検索能力が、よい発明を生む」

今回は、お盆休み中ということで、完全遠隔で実施しました。参加メンバーは、お疲れさんでした。


前回の合宿で出たアイデアを、各自でまとめてもらい、それを基に議論を進めました。一部の発明は、先行技術調査も済んでおり、「これまでにない」「新しい」ことが確認できていますが、ここで重要なのは、

「なんで今まで、やられていないのか」

ということです。要するに、

「できなかった理由が、あるのではないか」

と、もう一歩突っ込んで考えてみることが、重要です。


討議の中で、今回取り上げた発明の一つを実現するためには、表面処理がポイントになりそうだ、ということがわかってきました。

次に重要になるのは、

「それって、どうやったら解決できるのか」

ということです。ここでは、

「論理的思考と検索能力」

が、役に立ちます。解決策の方向性を、論理的に導き出し、仮説を立て、

「必要な技術を、探しに行く」

のです。


2回目の登場かな。
「問題が解けなかったら」のところに、
「似たような問題を解いてみる」
「問題を変形する」
とある。まさに発明法そのものです。


今回も、1時間程度検索を行って、無事「必要な技術」を見つけることが出来ました。

これまでの経験から、塾生が「よい発明」を出せるようになるまでの、あるタイミングで、

「検索能力が、飛躍的に向上する」

ことがわかっています。

「よい先行技術を、見つけてくる」
「必要な技術を、すばやく見つけられるようになる」

のですが、いずれも「特許検索能力」の向上の結果です。


「よい先行技術」が見つかれば、考える時間を省略できますし、「必要な技術」がすばやく見つけられれば、筋の良い発明になります。

逆に、「よい先行技術」が見つからないと、他人が既に考えていることを、いつまでも考えることになり、効率が悪い。
「必要な技術」が見つからないと、ごてごてした、複雑怪奇な発明になります。


「スマートな発明」を、素早く仕上げるために、特許検索能力が極めて重要、というのが、数百件の発明創出の指導を行ってきた、私と発明塾の結論です。

特許分類の活用含め、常に検索の訓練を、行ってくださいね。
→検索に関する過去記事は、こちら


ではでは、次回もよろしく!


2014年8月10日日曜日

発明塾夏季合宿報告_2014年第一回~「先送りせず、徹底的に追及する」

合宿参加メンバー、お疲れさんでした!

いくら塾生、いくら夏休みといえども、

「発明ばっかりやってりゃいいわけでは、ないので」

眠いメンバーも、いたはず。ありがとね。


でも、「参加してよかった」のでは?


今回の合宿は、アイデアコンテストのテーマについて、積み残しのいくつかの議論を

「時間をかけて、掘り下げる」

ことを、目的にしました。朝、会場へ行くまでの京阪電車の中で、

「いま、議論がどうなっているのか」
「この後、どちらに進めれば、最短距離でアウトプットが出るのか」

塾生さんがいつもUpしてくれる過去ログ(注1)をにらみながら、考えた結果です。丸太町ぎりぎりぐらいで、結論が出ました(笑


その場で、

「発明方程式」
「発明塾の思考回路」

で説明した通りですが、ここを誤ると、袋小路もしくは明後日の方向・・・。
悲惨です。


さて、今回「も」1時間で、

「提案するの、勿体なくね?」
「今から自分たちで、すぐ事業にした方がよくね?」

という皆の心の声が聞こえてきそうな、素晴らしいアイデアが出ました。気付いていると思います。かなりの頻度で、合宿では、これが起きます。

これも、「時間」です。十分な時間をかける「覚悟」が、躊躇や迷いを捨て、

「アイデアの本質を深堀する」

ことを、手伝ってくれます。


過去にも、いいアイデアが出た後によく、

「何で楠浦さん、あんなところにぎりぎりまで時間を突っ込むのか、見ててヒヤヒヤする」

って、皆言ってますよね。3.5時間の通常版で、平気で2時間ぐらい、一つの発明の本質の深堀に費やす。

「今日終わらないじゃん、俺の発明提案討議」

そう思っている塾生も、多かったはず(注2)。


多くないですね「二度読む本」。
同様に、「もう一度仕事をしたい」と
思われたいですね、職業人として。
そして、「もう一度会いたいと思うか」
僕の面接の基準です。
常にそういう人を、募集しています。


以前、

アイデアが出るのは、楠浦さんが”出ると信じている”から

という議論がありました。それに近い。

「先送りしない」

その覚悟が、適度な緊張感と余裕のバランスを生み、各自の生産性を上げ、正しい答えを掘り当てる。会議でたまに、

「続きは、また」「また会った時に話すわ」

みたいな話になることがありますが、僕はだいたい、社内でこういう議論になると、

「いやいや、またって、いつなん?」
「なんで先送りにするの?そのメリットは?」

と、徹底的に突っ込みます。先送りは、癖になるからです。そして、

「暇人ほど、先送りしたがる」

のが、わかっていますから。忙しい人は、その場でどんどん決める癖がついて、結果的に先送りしなくなる。

「暇人→いくらでも時間あるから、後でまた考えられる→先送り→同じ事ぐるぐる考えているだけ・・・結果出ない→いい仕事が来ない→暇人」

みたいなサイクルです。


合宿は、エネルギー切れ(僕の)で、6時間で終了となりました。アイデア、整理しといてね!

ではでは!



※ 注1)これホント助かります。ログなしの議論は、ありえない。3.5時間・・・そんな長時間の議論の内容、僕は覚えられない。その程度の「アホ」です。

※ 注2)だいたい終わります。僕は、そこまで「アホ」ではありません。時間は見切れています。


発明塾京都第192回開催報告~「リアルと遠隔~時間だけが解決できること」

第192回は、いつもは遠隔参加の塾生さんが、直接参加してくれるという素晴らしいプレゼント付きで始まりました。

お盆の帰省のついでに、ちゃんと発明塾に来てくれるなんて、うれしいじゃないですか。


さて、夏休みのアイデアコンテスト向け討議を、引き続き行いました。前回までに出たアイデアを、一度言語化してみましょう、ということにしました。



弊社の知財教育で教えている内容とまったく同じで、


「構成要件、課題‐解決」


で整理し、


「その本質は何か」


を、問い続けます。ココがものすごく重要です(注1)。


「何事も、時間をかけて徹底的に」
全てのことは、結局これに尽きる気がします。
「中途半端は、いけません」
幸之助先生も、おっしゃっていました。


発明塾は通常、3.5時間行います。弊社内のブレストは、通常5時間(+昼休み1時間)です。僕の過去の職場で、3.5時間の企画会議を毎週やっている組織は、有りませんでした。

結局、発明塾からいいアイデアが出るのは、

「時間かけているだけでは?」

という気がします。もちろん、塾生さんは「もっと効率よく」と、勉強し、手法も工夫し、方法論もマニュアル化し・・・と、いろいろな努力をしてくれています。

その上で、

「結局、時間が必要」

な気がします。

発明塾が、ITツールを駆使して「リアルと遠隔」、「リアルタイムと掲示板」など、様々な形態で議論を行える環境にあることは、この点で大いにプラスに働いていますし、今後も、もっと良いツールを探索していきたいな、と思います。

みんな、いいツール(注2)あったら教えてね。

ではでは!



※ 注1)「ブレークスルー思考」(日々野)を、利用しています。塾生の必須図書の一つです。


※ 注2)LINEがよい、という意見をもらいました!試します!



2014年8月2日土曜日

発明塾京都第191回開催報告~「創造的になるために、やはり言葉は欠かせない」

今回は、過去2回分の討議から、

・アイデア
・観点
・競合

を抜き出し、討議を深めました。一度具体化して、各自のアイデアを固定化しておくことも重要だと考えた僕の判断で、アイデアを絞り込んでの討議にしました。


しかし、これまでの経験で皆わかっているように、この段階のアイデアが生き残ることは、ほとんどありません。僕も濱口さんと同様に、

「早い段階からアイデア=仮説をもって、それを検証する過程で、情報を集め、仮説を惜しげもなく突き崩し、昇華させ、”預言的(注1)”なものにしていく」

ことにしています。これは「イシュー」(安宅)にも、「1 week hypothesis」として、書かれています。


勝負はここから、ということで。試験終了後、第一回合宿を行いますので、よろしく!

次回に向けた作業として、「発明提案書(Solution Report:略してSR)」(注3)書いてきてね、としています。


古典を紐解くのは、「教養のため」ではなく
「時間の重みに耐えて残された、言葉」を知るため。
考えるために不可欠な道具、それが言葉。
良い道具を、常に追求したい。
そう思うと、つい「古い本」に手が伸びる。


いつも繰り返していることですが、「言語化」「具体化」が極めて重要です。

「まだまとまっていないから、書けません」

と言う人がいますが、

「書かないから、まとまらない」

のが、実態でしょう。

因果関係の認識を逆にしてみると、アクションにつながります。


創造的であるためには、常に「具体的」でなければならない。

創造、という行為自体がそもそも「不可能と思える、漠然としたものに、形を与える(embody)」ことです。

言葉を選び、自分の頭の中にある漠然としたものに「形」を与え、具現化していく作業こそ、創造であり、発明なのです。


では、次回もよろしく!



※ 注1) Propheting Invention という、マイクロソフト 元CTO ネイサン・ミアボルド(注2) との発明議論で出た言葉を、僕なりに和訳したもの。


※ 注2) 彼のぶっ飛び具合は、以下のような評判からも、よくわかる。会ってみて、その通りの人であった。「5つの学位を持つ天才」 から抜粋。

「ネイサン・ミアボルドが認めるように、マイクロソフトは歴史的にほかの会社の技術をまねすることはあっても、開発したことはなかった。それに不満なネイサン・ミアボルドは1990年代に入ってマイクロソフトに研究所を作るために奔走する。
・・・カーネギー・メロン大学からリック・ラシッドを引き抜き、その下にダン・リンを付け、トランザクション処理分野でジム・グレイを獲得、グラフィックス分野でジム・カジヤ、ジム・ブリン、アンドリュー・グラスナー、アルビー・レイ・スミスなどを獲得した。 
マイクロソフトの研究所の重点研究項目は、音声認識、自然言語処理、人工知能、プログラミング言語とツールなどである。このような高尚な分野を標的に選んだのでは、はっきりいって成果を上げるのは難しいだろう。山が高すぎるのだ」


※ 注3) 発明提案書は、”発明”提案書ではなく、発明”提案書”なのです。だから、Solution でなくてはならない。発明報告書、みたいなSRは「発明塾」には不要なので、注意してね。