「発明塾®」へようこそ!: 5月 2013

2013年5月30日木曜日

発明塾京都第132回開催報告

第132回も無事終了しました。

今回、「事実か意見か」を突っ込まれたメンバーは、再度「事実は何か」(本多勝一)をよく読んでおくこと。

・事実+判断規準/理論=意見

の場合、事実であるなら「どこに示されているのか」、意見であるなら「その根拠となる事実と、そこから意見を導き出すために用いた理論」を示す必要がある。何が本当かわからないと、議論のしようがない。

全て確認していては、時間がいくらあっても足らない。

発明云々ではなく、「議論の基礎」なので、しっかり守ってください。新規メンバーが多いとはいえ、日本語会話の基礎、のような低レベルの話をする時間は、出来るだけ省きたい(古株のメンバーは、耳タコでしょうし)。


さて、今回の講義では塾生の一人が出てくれたセミナーの内容紹介と、GoogleのAPMプログラムとメリッサ・メイヤーの話をしました。

メリッサ・メイヤーのAPMプログラム,出身者との繋がりについての日本語記事


僕がメリッサ・メイヤーに注目する理由は、「Googleが、コア人材の育成プログラムを持っていた」ことと「10年間、その中心人物であった」ことにあります。

企業で人材育成を担当しておられる方なら、実感されていると思いますが、ある程度の密度のプログラムを、10年間継続するというのは、それなりにハードな作業です。おそらく彼女は、このプログラムに余程の個人的な思い入れがあったに、違いありません(APMの生みの親でもある:注)。

APMプログラムについて、卒業生が語る
http://www.youtube.com/watch?v=or_dtJmgP-0

いかにも”アメリカのスマートな若者”という感じの卒業生の姿が、とても眩しい(笑


メリッサの後を継いでAPMを運営するラコウスキー(もちろん卒業生)のコメント
http://ilab.harvard.edu/2012/11/19/conversation-brian-rakowski-google%E2%80%99s-first-associate-product-manager

「最初、”検索エンジン”の何かをやれって言われるんじゃないかと思ってたんだけど、メリッサが話し始めたのは”Email”の事だった。・・・まさかGoogleがEmailを開発してて、学校を出たての若造に担当させるなんて思いもよらなかったから、びっくりして言葉も出なかったよ。」

みたいな感じでしょうか(笑


優秀な人材を惹きつけ、育て、ネットワーク化し、会社の財産にする。抜かりなくそれを実行出来る企業であるGoogleと、その生みの親であるメリッサの今後に、引き続き注目して行きたいと思います。


※ 注) 機会があれば、「なんでAPMを始めたのか」ということを、直接インタビューしてみたい。


2013年5月26日日曜日

塾長の部屋(42)~「ものづくり」を学びたい人に

 なかなか時間が取れず、延期続きになっていましたが、久しぶりに書きたいと思います。今回のテーマは「ものづくり」です。もちろん、発明という文脈になりますが。

 今、大学でどういう「ものづくり」教育が「実際に」なされているか(シラバスに並ぶ美辞麗句ではなく)、僕自身把握しきれていませんが、仮に「ものづくり」、もしくは「発明」に興味があるのであれば、以下2つの視点で、しっかりと勉強しておくことをおすすめします。

①材料
②製造技術(生産技術)

どっちも「地味」な学問ですね。つまり、普遍的、ということになるでしょう。仮に「モノ」ベースで学ぶのであれば、以下2つの「製品」について、徹底的に勉強することをおすすめします。

A)自動車
B)携帯電話

いまさら?という気もしますね。つまり、こなれた技術なので資料がたくさんあって、勉強しやすい、ということになります(注)。実際、発明塾では、僕の開発したエンジンを京大機械系で、一度見てもらいましたし、定期的に携帯電話を分解して、技術の説明をしています。


 さて、なぜ「材料」「製造技術」なのか?

・世の中の新しい?技術は、実は全て既存の技術の組み合わせである。本当に新しいのは、材料(生化学的なものも含め)だけ。エジソンが「材料」の知識をベースに、次々と発明を生み出したのには、ちゃんとした理由があるのです(そして僕の下敷きは、今でも「周期律表」です)。

・何かを考えだした時に「それをどうやって作るか」がイメージできることは、発明のハードルを下げるために、非常に有益である。「これぐらいのものは作れるはず」という「相場観」。同時に「作ることが出来ない」という課題を持つ先行発明も多く、「課題発掘」にも役立つ。


 では、なぜ「自動車」「携帯電話」なのか?

・機械工学の「粋」が自動車産業であることは、議論の余地がない。機械工学科=自動車工学科、と呼んでも良いぐらいである。

・携帯電話は、エレクトロニクスの最先端。小型化、軽量化を追求し、これもまた技術の粋である。無線通信、電池、ディスプレー、UI、AR、音声工学、各種センサーなど、最先端技術がぎっしり詰まっている。


この2つの切り口から、以下2冊の参考書を挙げておきます。

「クルマはかくして作られる」シリーズ(別冊CG)
自動車☓製造技術。詳細は「参考図書(2)」を。
http://edison-univ.blogspot.jp/p/blog-page_6.html

・「これで使える機能性材料パーフェクトガイド」
材料、という観点で比較的新しいものを挙げておきます。特にこれに限らず、材料に注目した本を、いくつか手元においておくと良いでしょう。

 携帯電話についても、是非自分なりに参考図書を探してみてください。また機会があれば、古い携帯電話を分解したいと思います。


 他、技術分野という意味では「ナノテク」「バイオ」「半導体」「ICT(通信含む)」については、ひと通り勉強しておきましょう、というのは、以前からの繰り返しですので、委細は割愛。


※ 注) ちなみにこの「こなれた」教材で学ぶ、ということは非常に重要です。僕がここ数ヶ月「尋常じゃなく」時間を割いている勉強会「国際標準化と事業戦略」勉強会で、ある方のオススメで「IBMのPC事業における失敗をリバ」っているのですが、資料が結構あるので、「仮説→検証」が可能で、非常に勉強になっています。近い将来、論文とケーススタディにする予定ですので、お楽しみに。


2013年5月23日木曜日

発明塾京都第131回開催報告

第131回は、各自の発明提案書を元に、討議を進めました。

 繰り返しですが、発明法とは「先人の肩に、いかに上手く乗るか」という技術、ということができます。先行技術を正確に把握せずに、効率よくよい発明を出すことは不可能です。

 そして、先行技術の分析においては、純粋な技術内容の正確な把握と共に、「なぜこのような特許が出ているのか」「なぜこの会社が出しているのか」といった、「目的思考」の分析が重要になります。

 今回、とある塾生のアイデアの討議において、この思考法が素晴らしい威力を発揮しました。目的が分かれば、技術の流れがわかります。流れが分かれば、その先手を打つ発明を、どう出すか、具体的な材料が得られます。

 先行技術を把握し、目的思考で分析し、点を線にして、流れで位置づける。

 発明提案書とは、今後こういう技術が出てくるはず、という「ストーリー」なのです。そして、そのストーリーを創造し発掘するための、厳然たる方法論が存在します。

 他の人の議論にも、我が事のようにのめり込み、経験を積み方法論を吸収してください。他人の発明であっても、のめり込んで議論すれば、自分の発明での討議と同じぐらい、得るものがあります(注1)。

 むしろ、他人の議論を他人事として単にメモしているだけでは、何も身に付かない、というべきかもしれません(注2)。

 次回もよろしく。


※ 注1)チクセントミハイ 参照
※ 注2)「経営者になる、経営者を育てる」菅野 参照

2013年5月16日木曜日

発明塾京都第130回開催報告

第130回は、Gr討議の節目とします。次回以降、各自具体的な発明を、楠浦自身が開発した「発明塾指定フォーマット」(注1)に記入し、討議に持ち込んでください。

討議にあたっては、人数が増えているため、2Grに分けて実施します。僕ともう一名で、それぞれリードします。発明を具体的に詰める作業に入りますので、これまで以上に、緻密な思考と技術的に詳細な議論が求められることを、再度確認しておいてください。もちろん、特許的な判断においても、緻密さが求められます(特許にならない発明は、少なくとも発明塾としては、意味が無い)。

ここでギヤを切り替えられないと、、、。ワイワイやって「あー楽しかったですね」というのは中学生レベルですので(注2)。

さて、人数が増えてきたので、一旦見学や新規入塾をSTOPします。同時に、直近の入塾者は、この3ヶ月の活動状況で、その後の継続可否を決めますので、心して取り組んでください。


智弁和歌山の野球部を、甲子園の常連チームに導いたある監督は、

「部員数を制限することが、チームのレベルアップに繋がった」

と、はっきりと述べています。一人ひとりに「なぜ野球をやりたいのか」「本当にやりたいのか」と問いかけ、人選していたと、ある雑誌のインタビューで述べている。

同時に、監督自身も自らの内面を見つめるため、毎日早朝に高野山に登っていたとも言う。彼自身「なぜ」を、自分に問うていたのだと思う。


僕自身も、特にここ数ヶ月は企業内研修/指導が増えてきており、発明塾開始当初とは、かなり違ったスタンスで取り組まざるを得ない(要するに、これまで程の時間は割けない)。なので、

「なぜ教えるのか」

ということを、これまで以上に重く、常に自分に問いかけている。教わりたいという人が増えるのは、有難いことではあるが、真面目に取り組んでもらえないのであれば、相互に自己満足であり、相互に人生の浪費に過ぎない。

そしてマズロー同様(注3)、本当の意味で身に付けることが出来ない学生、情熱を燃やせない学生には、むしろ他のことに取り組んでもらったほうがよい、という僕の信念に変わりはない。


今日は、知財業界で同じ世代で頑張っている「サムライ」と話しつつ、そのようなことを考えていました。サムライの話は、またの機会に。



※ 注1)発明提案書のフォーマットというのは非常に重要で、それ自身が「思考のガイド」になるように設計しなければならない。決して「読み手の都合」で作ってはいけない。

※ 注2)駒場東邦中学・高校での「発明塾」 参照

※ 注3)「完全なる経営」A.H.マズロー 参照

2013年5月9日木曜日

発明塾京都第129回開催報告

第129回も、3Grに分かれての議論としました。それぞれのGrで、先行技術の分析、更に先を行く発明の創出に取り組みました。

また、最後1時間で、過去の発明について、進歩性を討議し、更に進んだ発明にするための討議を行いました。


たまにセミナーで、「発明者が進歩性を意識すると、発明が出なくなる」とか、「先行技術を読むことで変に影響されてしまい、いい発明が出なくなる」といわれることがあります。

おそらく「中途半端に」進歩性について考えると、「どれもこれも、特許になりそうにない」と思ってしまうことは間違いないでしょう。


しかし普通、「この発明は特許にならない」と、一度言われれば、

「それは、なぜなのか」
「どういう発明が特許として認められるのか」
「一見、だれでも思いつきそうな競合企業の発明が、特許になって(かつ事業の障害になって)いるのはなぜなのか」

という疑問が、次々に湧いてくるはずです。それを一つ一つ明らかにしていくことで、「競争力のある発明・特許」を生み出す技術を、身につけることができるのです。

発明の肝は「先行技術調査」と「進歩性の理解」です。これに尽きます。

しっかり習得してください。


では、次回も宜しく。


2013年5月5日日曜日

立命館大学・大学院での講義について(2013年度)

今年度も、予定を記しておきます。

①6-7月「先端科学技術とビジネス」@大学院MOT研究科
②下期「マーケティング・リサーチ演習」@理工学部


①「先端科学技術とビジネス」
 本講義は、企業の事業戦略に関するケーススタディです。3時間の講義を計8回実施し、7社の企業の、CEO、マーケティング、新規事業開発、技術移転、投資などを担当しておられるバリバリの現役の方々から、各企業の新規事業、新技術開発などについて、最新の情報と課題を話して頂きます。

・2012年度の開催報告
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/07/mot.html

 受講生は、自分がその方々の会社で働くつもりで、課題に対して具体的な解決策を、時間内および事後のレポートで提案してもらいます。

 3時間の真剣勝負です。昨年も言いましたが「経営者の視点(なら、これからどうするんだ)」に応える力を身につけてもらうことを目的にしています。単なる思いつき、評論家的な批評、感想はNGです(注)。「ならどうするんだ」に答えるのが経営です。経営者の視点を持つ、ことを意識してもらいます。企業では評論家は必要とされません。会議で、感想も求められません。


②「マーケティング・リサーチ演習」
 例年通り「発想法講義と演習」を開催します。固有技術を製品につなげるための情報分析法と、発想法を身につけてもらいます。

・2012年度の開催報告
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/01/blog-post_11.html

 例年より、少し「構造化」された講義にする予定です。従って、欠席厳禁、少人数チームの、本来の発明塾的なアプローチを使います。結果的にそのほうが「意欲ある学生にとっては、より意味がある」講義ができるからです。


※)注 誤解のないように言っておくと、「単なる思いつき」?や「批判」の重要性は否定しません。「そこで終わらない」ことを、僕の講義では目指しますよ、ということです。「面白い事を考えましょう」とか「批判的に考えましょう」とか「まずはビジネスプランを書きましょう」という講義や演習は、既に他所で数多く提供されています。その続き、その先、それに飽き足りない人に向けたもの、と思ってもらえればOKです。
具体的な答えを出せるかどうか、その力をつけて欲しいのです。