「発明塾®」へようこそ!: 「挑戦」に、「敗者」は存在しない~「創造」すること、「決める」こと、そして「ブレない」こと

2017年1月1日日曜日

「挑戦」に、「敗者」は存在しない~「創造」すること、「決める」こと、そして「ブレない」こと

年末年始を含めた「節目節目」に、皆さんに改めて意識してほしいことは、常に、以下にまとめています。

「新社会人へ」贈る言葉~塾長の部屋(63)

僕も、一つ一つ時間ある限り読み返し、たまに(?)改訂したりします。

最近は、年始だからといって特別何かメッセージを記しているわけではありませんが、2014年は、以下のようなことを書いていました。

塾長の部屋(59)~「”完全なる経営”で、マズローが試みたこと」

最近は毎日ではなくなりましたが、やはり、相変わらず、かなりの頻度で開く本の一つです。


環境が大きく変わって初めての年末年始ということで、本棚の整理や、本の追加(要するに購入)を行いつつ、改めて読み直した本にもとづき、いくつかメッセージを記しておきます。

新たに参加したメンバーは、これをきっかけに、過去Blogや、楠浦が塾内で公開している「本棚」の本を読み進めてみてください。また、皆さんに問題提起している、「投資部」の進め方についても、考えてみてください。

京都大学等の講義で度々紹介している、「DeepSprings College」(今年で100周年のようです、我々も、目指したいですね)や、ビルゲイツの「”本当に大切なことに資源が割かれていない”講演」についても、この機会に、理解を深めてほしいと思っています。

また、我々は引き続き、以下のことに(会社として)注力しています。発明塾とは別の組織ですが、僕が中心になっている2つの活動を、切り離すことはできません。

①もっと「知と頭脳を武器にする」ためにはどうすればいいか。それを企業の競争力に結びつける「科学」を確立し、提供できないか。
②もっと人々をクリエイティブにし、「武器になる知」を生み出せるようにするには、どうすればいいか。
③もっと人々が学べるように出来ないか、そのための環境、方法はどうあるべきか。それを環境として提供出来ないか。
④もっと創造的(クリエイティブ)なリーダーを増やし、より良い社会を創ることは出来ないか。
塾長の部屋(47)~「仕事の哲学」 より)

①と②は、歴代の塾生さんの協力を得て、大きな成果が出ていることを確認しています。今後は、③と④が問われるでしょう。


では、行きましょう。主に、

「Authentic Leadership」(ビル・ジョージ Medtronic 元 CEO)
(生産性出版, 第一刷/2004年)

から、いくつかの「言葉」を取り上げます。


Amazon.co.jp のページへ移動します)


● 本物を目指す(Authentic)

「本物を目指せ、そして、自らに正直であれ」

というメッセージが、P16 前後に言葉を変え、記されています。

発明塾でもよく言うのですが、

「強みと弱みは、あなたの個性の、裏表に過ぎない」

のです。個性を殺さず、強みを生かし、弱みを克服するには、

「自らに正直であり、また、自らに向き合う」

しかありません。小手先のテクニックや、取って付けたような「ハウツー」では通用しません。本物を目指す、とは、そういうことだと、僕は理解しています。


● 逃げずに「挑戦」する(Challenge)

イサカは存在しない。ただ、イサカへの旅路があるのみ」(ニコス・カザンザキス

と、P38にあります。カザンザキスの代表作の一つ「キリスト最後の試み」は、「挑戦」が一つのテーマになっていると、僕は理解しています。キリスト教の歴史についてある程度知識がないと、やや読みづらいですが、前書きだけでも、読む価値はあります。冬休みにぜひ読んでほしい本の一つです。

先の「本物」も、挑戦すべきことの一つですが、本書では例えば、前書きを書いているウォーレン・ベニスの著書の内容を引用しつつ

「人間としての深い意味を試され、さらにのちの人生で成功に導いてくれた”試練”」(P38)

と記されています。また、

「本格的にテストしてくれる挑戦的な機会を避ける」(P40)
「自分の本当の姿を鏡に映してみる暇が持てない」(P41)

というような状態に陥らないように、とも書かれています。僕はよく、「Detail」にこだわりなさい、と言いますが、本書では、若手くしてリーダーたらんと意気込む人に潜む

「自らの手を汚さない」(P41)

ようなメンタリティーが、どのような災いをもたらすかについて、言及しています。


● 「価値観」を明確にし、行動で示す(Integrity)

「あなたの情熱に火をつける目的を発見したら、次にあなたの価値観を人生で経験する試練の中でしっかりとテストすることが求められる」(P54)

とあります。「挑戦」することによってのみ、得られるものがある、と僕がよく言うのは、そういうことです。人生の様々な試練の中で「試す」ことによってしか、明らかにならないものが、いくつかあります。「価値観」も、その一つでしょう。

「あなたの価値観を曲げるように求めるプレッシャーにいかに対応し・・・間に生じる潜在的な対立にどのように対応すべきかを学ぶことができる」(P54)

僕が、「挑戦」によって、より「豊かに」なると感じているものに、「人との縁」があります。本書にも似たようなことが書かれていますが、「共通の試練をくぐった仲間」にとどまらず、

「似たような試練を経験した人との出会い」

と、その際の「共感」が、様々な「縁」につながると感じます。似たような試練を乗り越えた人は、似たような価値観を持っているのでしょうか。何が先で何が後か、わかりませんが、よい「縁」は、「試練」「挑戦」と裏表である気がしています。そういう意味で、

「挑戦に、敗者は存在しない」(*)

と、僕は感じています。挑戦した分だけ、後の人生において必要なものが、必ず得られます。

* これは、ヘミングウェイの言葉をもじったものです。興味ある人は、原典を探してみてください。


● 「規律」(Descipline)、仲間、そして「語る」こと(Story)

これについては、「7つの習慣」について語る機会に、ゆずるべきかもしれません。行動を

「一貫性と自己規律に貫かれた」(P60)

ものにするために、

「つねに自らをピークに置く」(P60)
「つねに頭脳をシャープに保ち、身体をトップシェイプに保つ方法を実践する」(P60)

ことが求められます。僕が、(原則として、皆様にご迷惑がかからない範囲で)平日は飲酒せず、また、毎日なにがしかの筋トレを欠かさないことは、すでに述べた通りです。

「自分に自己規律をもたらす、一貫した習慣」(P61)

を持ってください。これも「挑戦」の一つです。

また、上で述べた、「挑戦」の一つの果実である

「何らか本当に重要で、意味を伴うものを作り出す人たちのグループ」(P63)

について、発明塾では度々、「良い仲間と良い議論」というフレーズで、確認しています。この点について、少し脱線して、別の本に頼りましょう。大先輩でもある西堀栄三郎氏の「創造力」(講談社,第一刷/1990)には、「これからの組織運営」(1990年から見て、になります)について

「”自分からやっている”という自由主義の下に、”みんなで寄って共同の目的を果たそう”」
(P172/「四章 どうしたら人は活かせるか」)

というチームワークの概念で捉えることになる、と記されています。発明塾では、個人の目的と組織の目的を、「一列に並べる」(同一にする、ではない)という意味で、「惑星直列」という言葉を、良く用いていますね。

最後に、これも僕が重視する「ストーリー(語ること)」について、述べておきましょう。ビル・ジョージは、株式市場からの重圧という、「価値観を曲げることを求めるプレッシャー」に対して

「あなたの企業について、あなた側の物語りを語ることが大切なのだ」(P221)
「あなたのメッセージを伝え続けることが重要なのだ」(P221)

と述べています。僕も経験がありますが、企業として追求すべきことについて、利害関係者(ステークスホルダー)、特に、株主/投資家と合意できる範囲は、多くの場合、短期的には極めて限定的になります。しかし、ここで「試練を通じて価値観を明らかにする」ことが、あなたの人生、および、あなたのチームがより発展するために、重要であると憶えておきましょう。

たまに、「起業しました」と報告を頂く、過去の講義受講生の方などの話を聞くと、「ほんとにそんなことやりたかったの?」という感想を抱くことがあります。「自分を見失わず」、また、

「本来の自分や、自分が正しいと信じることに反することをしない」
(P174「ハーバードからの贈り物」デイジー・ウェルドマン, ランダムハウス講談社, 第一刷/2004年)

ことを、心掛けてください。もちろん、多くの塾生さんはまだ、「自らを創り上げていく途中」にあることも意識しておく必要があります。あまり「狭く」考えすぎないようにするために、「適切な」経験を豊富に積んだ「よき相談相手」に相談することも、大切でしょう。塾に僕がいる理由、そして、OBOGを交えた議論を始めた理由の一つです。「共通言語」と「良い議論」ですね。


● 「音楽」から学んだこと~僕の「固有性」

最後の最後に、発明塾の原点を、いくつか確認しておきましょう。京都市伏見区にあった、少し不思議な塾で学んだことが、その一つであることは既に度々取り上げています。また、川崎重工での「設計者」としての経験も、その一つです。

別に川崎重工を「推す」わけではありませんが、Kawasakiでもう一つ得たものの一つに、「音楽」を通じた様々な気づきがあります。もともと、上記「塾」で、英語の授業の一部に「音楽」があったこと、自らが教える際も、積極的に取り入れていたことからはじまっていますが、Kawasakiでは、Jazzを通じて

「良き仲間」

に数多く巡り会い、また、皆様の前で(奉仕活動の一環として)演奏する立場に立たせていただき、貴重な気づきを数多く得ました。

「その場、そのパートにおいて、自分がリーダーである」

ことも、その一つです。発明塾の討議における「確信犯」とも、つながりがあります。「今、この部分は、自分が引っ張らなければならないのでは」と感じた時、すでにあなたはリーダーなのです。

「個性を生かす」

という、ありふれた言葉も、それを実践し、駆使する必要に駆られたからこそ、身に染みつきました。「同じ音」ではない何か(*)、あるいは、「補完する音」を追求しなければならないからです。しかも「即興」で。この、

「即興(Improvisation)的、かつ、補完(Complement)的な、リーダーシップ」

を学ぶことは、特にある種の音楽において、重要な気がしています。音楽教育の、1つの目標になりえるでしょう。もちろん、当面、発明塾で「音楽」を教えるつもりはありません。

現在は、楽器も持たず、趣味としては完全に中断していますが、いつか「教育」という視点で取り組みたい分野の一つが、音楽です。「完全習得学習」など、本質的なことをクリヤしないと取り組めない分野だからです。

* ここには、スティングがよく言う「静寂」も含まれます。「弾かない」ことが、「音楽を豊かにする」ことを学んだことは、現在の発明塾の運営に、とても役立っています。「議論のための議論」を僕が嫌うのは、「音楽は、静寂で成り立っている」という、実体験にもとづく気付きによるところが大きいと思っています。結果を出すために、何をすべきか、ということです。「音を出せばよい」だけではないのです。「沈黙が議論を豊かにする」ことがあると、僕は確信しています。


● 終わりに

2016年に本格稼働した「投資部」。ここで学んでほしいことの一つは、おそらく「決めること」「ブレないこと」「間違っていると気づいたら、すぐに修正すること(決めること)」だと思います。リーダーシップとは、そういうことではないでしょうか。間違いを恐れずに必要なリスクを取り、必要な時に素早く決め、エゴを捨てて結果を受け入れ、必要な修正を素早く行う、これの繰り返しです。

失敗を恐れる人に、僕が言えることが、少なくとも2つあります。1つは、川崎重工で一生を終えようと思っていた僕が、期せずしていくつかの仕事を経験することになって気づいた、

「ゼロからやり直すことの、意外な楽しさ」

そして2つめは、Me and Bobby McGee にある

「Freedom is just another word for nothing left to loose」
(自由とは、失うものが何もないってこと)

です。僕はこのフレーズを、

「失うものが何もなくなったってことは、自由を得たってことなんだよ」

と、ある回の塾(京都市伏見の学習塾の方です)での授業で、訳しました。

今でも、僕は、そう訳すと思います。


楠浦 拝



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