「発明塾®」へようこそ!: 7月 2015

2015年7月26日日曜日

「Negawatt(ネガワット)」の時代から~過去の蓄積を無駄にせず「エッジ特許」から始めるのが発明塾式

所定人数の応募者がありましたので、サマースクールの開催は決定しました。
ただし、京都は応募が少ないため中止。東京開催のみです。

今後の申し込みは、キャンセル待ちとなります。

現時点で、キャンセル連絡が来ていますので、キャンセル待ちは十分機能すると思います。


さて今回は、直近配信のメルマガと関連したトピックを。


自己紹介他、で何度か書いた通り、

・大学時代の専攻は「金属材料の低サイクル疲労強度」
・大学院は「エネルギー応用工学」専攻

という、大学院改組の過渡期にあたったため、いろいろ貴重な経験をさせていただいた。

学士と修士の論文タイトルは全く同じ。

「”低サイクル”疲労」
(航空機、プラント、原子力発電所など、材料の性能を最大限引き出す必要がある機器の設計や、極限状態を想定して設計される機器の設計に、必要な考え方です)

といえども、数千回から数万回程度の繰り返し荷重試験が必要なので、

「昼夜交代」

で、試験装置の前にスタンバイし、亀裂進展をレプリカ法で観察し・・・1週間ぐらいで1本の試験片をテストする、日々でした。

試験片(チタン合金)も高価だったりと、1名の学生が論文として取り上げられるデータ点数が限られていたので、僕の学士の論文は、

「過去15年ぐらいの先輩のデータに、10個ほど点を付け加え、まとめなおしただけ」

のものでした。

「材料開発が、世界中の研究者の気の遠くなるような努力の積み重ね」

であること、そして

「過去データ/論文の重要性」

を実感できたことは、現在の仕事にも大きく役立っています。

「すでに存在するデータや論文を無視して、あれこれ考えたところで、無駄が多い」

と、発明塾で度々言うのは、上記のような理由から、でもあります。

 ※ 知識コスト/情報コスト、検索の重要性については、過去にここで触れた


大学3回生ぐらいで読んでおくと、
いろいろ変わってくるのではないでしょうか。
本人にお会いしたことはありませんが、役員クラスの
OBの方に、一度ご指導いただいたことがあります。
やはり同じようなことを、おっしゃられていました。


前置きはこれぐらいにして、本題へ。

今回取り上げる「ネガワット」との出会いは、大学院時代。

「省エネ」「節電」

というと、

「我慢」「美徳」「節約」・・・

という印象が強かったのですが、

「それはビジネスで、生産活動の一つです」

と宣言したのが、

「ネガワット(Negawatt)」

という考え方です。


「これからはエネルギー問題の解決が重要」

という「課題-解決型」で生まれた大学院でしたので、およそ関係ありそうな学問は片っ端からカリキュラムに挙がっていました。

エネルギー効率に関する基礎的な理論、関連技術、安全保障、国際経済、社会工学、環境経済学、etc

こんなに無差別に勉強させてもらえるなんて、本当にいい時代だったな、と思います。


メルマガで取り上げた特許を、少し視点を変えて、ココでも取り上げます。

ENERGY SAVINGS AGGREGATION

日本語訳はイマイチですし、わざとわかりにくく訳す企業もありますので、発明を志し「創造的になりたい」大学生なら、ぜひ原文で読みましょう。

ここに挙げられている思想は、「電力削減をとりまとめて、ビジネスにする」というものです。


発明塾として典型的な今後の「個人作業」の流れは、

目についたニュース
 ⇒ 更に詳しい情報を特許で
  ⇒ 関連出願を発明者や共同出願人から探る
   ⇒ 引用被引用で、業界構造を見る
    ⇒ 技術の流れと業界構造を把握
     ⇒ エッジ特許を再選定
      ⇒ 課題(T/O)を抽出

ですね。ここまでやってくれば、僕も「気持ちよく」議論が開始できます。

「個人の時間と、集まる時間の使い分け」



「調べるか、考えるかの意思決定」

は、発明塾式の

「2大ルール」

かもしれません。

サマースクール生の皆さんは、ぜひ当日これらをマスターし、

「創造的な議論をリードできる」

人になってほしいなと、思います。


では、当日までよろしく!


2015年7月12日日曜日

「数学が苦手な高校生が、数学を好きになった理由」~発明塾の原点をたどる

僕が「発明」や「創造性」という領域に取り組むことになった直接のきっかけは、以前もどこかでお話したように、前職を退任する際の挨拶回りで、

「今度、知財の仕事をされるんですよね。だったら、昔の部下がちょうど知財と発明創出の仕事をやってまして・・・」


と、ある投資家の方に掛けていただいた「一言」でした。



紆余曲折はあるものの、経営者である以上、


「期限までに投資家に約束した結果が出なければ、責任をとって一度辞めるべき」


という、今から考えれば当たり前のことを、30そこそこで経験出来たことと、そこからの再出発のチャンスを頂いたことは、いずれも貴重な財産となりました。

現職での道のりも平坦ではなく、リーマン・ショック後に、特許調査/分析からの撤退を即断し、知財/発明教育の事業を軸に据えて再出発(※)。

「その投資家の方の一言」がなければ、現在の事業は存在しなかったでしょう。


数百の発明を、数日から数ヶ月という短期間で創出するためには、それなりの方法論が必要で、過去の知識/経験や思いつきに頼ることは出来ない。


「もっと効率よくアイデアを生み出せないのか」

アイデアを生み出す方法を開発するところから、始まりました。


大学生に発明なんかできるの?

と、よく言われました。

「できます」

と自信を持って言えるのは、何故か。


「高校の数学教育が、”発明教育”と、仕掛けとして同じ」

だからです。



過去にも、数学に関する話題を幾つか取り上げているので、


「楠浦さんは数学が得意で、その手法が発明にも使えるんだな」


と思った方、答えはNoです。


「中学の数学の成績は、常に赤点ギリギリか、赤点。3年間下がりっぱなし。」


これが実態です。当然、科目として好きなはずもなく、それがまた成績が下る原因となる・・・という絵に書いたような悪循環。



最後まで残った苦手科目「歴史」も
この本で完全に解消されました。
偶然でしょうが、この本を「大学在学中に読んでおくべき」と
推奨いただいたのは、工業数学担当の教授でした。
工業数学の単位は落としましたが、元はとった気がします。


これが変わったのが、高校時代の数学。


成績は「良い」とは言えないまでも、好きな科目となり、現在でも数学書をたまに読むぐらいになっています。



では、高校の数学は、何が違うのか。何が面白いのか。


「多様な解法を探求しながら、多面的に学ぶ」

「解き方を覚えるのではなく、常に新しい解き方を考える」

そんな科目だったから、ということに尽きます。


「終わりがなくなっている」(覚えてハイ終わり、ではない)

ことの、面白さでしょうか。

もちろん、中学と高校で厳密に分けられるものでもなく、例えば中学の数学でも、「代数」に比べると「幾何」は、かなりこの要素を含んでいたと思います。



「もっと他の方法で、解けるんじゃないかな」


という問いを常に立てることを、教わったのが「高校の数学」でした。


「解けるか解けないか、ではなく、もっと良い解き方はないか、を考える」


ここに、「知財と発明」の原点があります。


高校数学で学びの基礎ができていれば、発明にも「楽しんで」取り組んでくれるはず、その予想は、ピタリとアタリました。


これって数学だけ?

たぶん、「高校のすべての科目」で、上記の要素が増すのだと僕は考えています。


例えば、英語。


「おー久しぶり、元気?」


たったこれだけの内容も、想定する状況しだいで、英語としての表現が変わります。


英語について、


「論理性と、表現の多様性」


を意識して学べるようになったのは、「駿台予備校」の講師の方々のお陰です。

特に英作文の授業では、徹底的に

「別解」


と追求するように、指導頂きました。


「1問から、どれだけ学べるか」


のほうが、


「たくさんの問題に取り組むよりも、実は効率が良い」


ということも、教えていただきました。



こういうことを、高校/予備校時代に学べたことは、今の僕の「発明・知財教育」に、非常に大きな影響を与えています。


「立命館高校」の先生方

「甲斐塾」塾長と講師の方々、および同期生も含めた生徒、教え子や後輩の皆さん
「駿台予備校京都校」の講師の方々
「発明塾」の塾生さんと、継続的に支援をいただいている企業/個人の方々

との出会いと、そこでの学びを、


「完成度の高い、発明・知財教育教材として形にしていく」


ことが、僕の当面の「発明」のテーマになりそうです。




※ どんな小さな事業でも、やはり撤退するにはそれなりの時間と労力がかかる。

   頭でわかっていても、実際やると「あぁ、だからズルズルと続けてしまうのだな」ということがわかった、貴重な体験でした。
   同時に、「辞める/止める」ことを、始める時から織り込んでおかなければいけない、ということも強く感じました。


2015年7月11日土曜日

もっと創造的な「チーム」を作るには~発明塾第304回開催報告

報告が遅れましたが、第304回の内容を振り返っておきましょう。


今回は、発明塾初期の頃から行っている、

「各自が、どういう創造能力を持つのか」

という点に関して、簡単な課題/討議を行いました。


これも、発明塾で多くの学生さんに参加してもらう中で、僕の中に新しく作られた視点のひとつです。

それぞれが異なる能力を持つ前提で、自分にあった「創造性」発揮の手法を、身につける。

これが、

「発明塾式」

です。

第2章に「創造的音楽教育」とあります。
ヤマハ音楽教室で、川上氏が目指したものが何か、
よく伝わってきます


「XXXX法」

のような、キャッチーな名前のついた発想法ではなく、そういった種々雑多な方法(失礼!)を

「自分のルーチン」

に落としこむために、日々、どのようなトレーニングを行い、誰とどういう議論をすべきか。

それこそが、発明塾で学べることです。


以前、一緒に発明活動を行っていた、NASDAQに上場した半導体ベンチャーの社長からは、

「クスウラがやってるのは、起業家/企業家教育なんだろ?」
(You mean its a entrepreneur-ship training?)

と言われたことを、いつも思い出します。


自分のアイデアを、実行可能で、ファンドから投資が得られるロジックに作りこんで、提案書として仕上げる。

これを、発明を変え、何度も行う。


彼からすれば、

「発明というよりは、企画提案のトレーニングだよな」

ということのようです。


もう一つは、その作業を複数のメンバーで行うことで、

「良い仲間」

が出来、

「良い仲間との付き合い方」

が、身につくことです。

これが、一番大きいかもしれません。

一生の財産となるでしょう。


発明法、発想法、知財戦略の考え方、特許情報分析・・・すべては、

「創造的なチームを作り上げ、世界を変える、最高の成果を出すため」

です。


発明塾では引き続き、「創造的なチームを、いかにして作るか」を、科学します。

今後も宜しく。