2012年10月23日火曜日

塾長の部屋(19)~機械工学の未来と知財

Good evening everyone.

 僕が立命館中学で英語を習った 角(すみ) 先生は、挨拶はいつも英語という先生でした。発音に厳しい先生で、中1の半年は、「a、e、u(実際には発音記号)・・・」とひたすら発音の練習であったことを、今でもはっきりと思い出します。これからは、挨拶は英語にしましょう。


 今日は、10月10日に行った、京都大学工学部機械系の「ものつくり演習」講義の補足とします。


・「ものつくり演習」2012報告

http://edison-univ.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html

 そこで僕がどんな話をしたかというと・・・・


「機械系の就職先=家電、自動車という時代は終わった」


という話です。京都大学工学部機械系は、毎年自動車関係に数十人、大手家電に数十人が就職するような学科です。「自動車か電機メーカーに行けばとりあえず安心」という雰囲気の学科、ということです。


 家電の現状については、昨今の報道でわざわざ僕が説明する必要はなくなっているので、自動車産業が今後どういうポジションに置かれる可能性があるか、を話しました。


・参考資料「自動車の電子化のその先に何が見えるか-電子化が加速するグローバル経営環境のパラダイムシフト」小川紘一(その1,その2)

https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/10191/1/kouen26_594.pdf
https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/10192/1/kouen26_599.pdf

 この「ものつくり演習」では、社会人2年目(川崎重工時代)から10年以上にわたり、毎年講義/講演をしているのですが、この話をしたのは今回が初めてです。理由は、昨年12月に遡ります。昨年12月に、たまたま設計に関する産学交流の討論会に呼んで頂きました。そこで「モジュラー設計」に関する話題が提供されたため、それに関連した話として「国際標準化と事業戦略」(小川)で挙げられている事例を紹介しました。

 その上で、機械工学のひとつの用途であり、多くの卒業生が活躍している(はず)である家電(や携帯電話)がなぜ世界で競争力を失ったのかを踏まえ、機械工学科としても、新しい技術の研究や教育だけではなく、知財マネジメント・知財戦略(注1)についても教育したり、研究したりする必要があるのではないか、という問題提起をしました。

 とたんに会は騒然(注2)とし、「携帯電話と自動車は違う」という意見から、大手自動車メーカーの要職にある方の「電気自動車は普及しないから大丈夫」という問題発言?まで、さまざまな反応がありました。


 僕の感想は「ああ、みんな勉強してないんだな」という、たったそれだけのことです。


 せめて後輩である機械工学科の学生には、きちんと勉強してほしい、世の中で何が起こりつつあるか、事実をその目で確かめるだけの「眼力」を持ってほしい、そう思ったので、今年からこの話題を取り上げることにしました。


 そもそも僕が「エネルギー応用工学専攻」に進んで感じたことも、「もう機械工学の時代じゃないな」ということでした。以前は「クルマ」作ってればよかったわけですが、「そのエネルギーどうするの?」「その廃棄物どうするの」そういう問いに答えないといけなくなった。だけど機械工学は、もはやその問いに答えられなくなっていたわけです。


 実はその紛糾した会に、現在テルモが販売している「磁気浮上型人工心臓」を開発した、流体力学の権威である赤松(あかまつ)名誉教授が来られていました。当時、自動車関係の数値流体力学をやっていれば十分食えた中で、海のものとも山のものともつかない「人工心臓」に取り組んでおられた。

 当時はその凄さはわからなかったのですが、企業で新製品、新規事業開発を担当し、そして自分でベンチャーを経営し、氏が何を考えていたのか、おぼろげながらわかってきたところだったので、急いで名刺交換し、色々とお話を伺いました。

 機械系の学生に言いたい。


「機械工学は、人類の明るい未来に、どう貢献するのか。そこで君は、どう貢献したいのか。」


その答えを出すために皆さんは勉強し、それを実現するために、就職するのです。それが伝わったなら、往復6時間掛けて横浜から話に行った甲斐が、あったと思います。



※ 注1)「製品アーキテクチャがモジュラー化すると、技術よりも知財のほうが重要性が増す」と小川先生は指摘されている。そういう意味では、機械工学のような、もともと「低価格大量生産」「モジュラー化」を推し進める学問においては、どうあっても知財のことは教えないといけないのでは?という気がします。


※ 注2)実際、かなりの激論が戦わされましたので、これで出入り禁止になるかと思いましたが、今年も非常勤で講演して欲しいという話が来ました。その辺は懐が深い(のか、単にルーズなのか・・・)大学です。


※ 注)なお、小川氏の論文を読むにあたり、チャンドラー、ラングロワの主張を理解しておく必要がある。例えば、以下参照。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ir/college/bulletin/vol18-1/17-3Hashimoto.pdf
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=16153