今日は珍しく、先日講師として参加した「企業分析セミナー」について、そのエッセンスをお話しましょう。テキストは、いつもどおり発明塾では回覧します。あと、合宿の時に景品(笑)にします(注1)。
特許情報分析は、統計データから始まります。しかし、そこで終わったらただの「数字あそび」「お絵かき」に過ぎません。そこからどれだけ「意味」を引き出せるか。分析者のスキルが問われるのはそこです。
細かいテクニックはさておき、僕が注意しているのは以下です。
①どれだけ気付きを得るか=仮説を引き出す
②そのための切り口を多数持っておく=発明と同じ
③気付きとは「違い」。違いの切り口は「2者」「過去未来」「標準や平均との比較」。
④「違い」の気付き=「何かヘン」を検証するために、効率良く「読む」。そのための整理法(パターン)が肝(注2)。
といったところです。セミナーでは、実例(僕が事業判断に使った事例も交え)で、上記を次々と説明していきます。
ところで、特許情報による企業分析の目的には、大きく2つの観点があります。
・経営的視点
・現場の視点
経営的視点とは、簡単に言うと以下です。
「戦略とは、何をやって何をやらないか」であって「経営戦略とは、資源配分(どこに配分してどこに配分しないか)」です。つまり「他社がやっていることは止めて(省略して、も含む)、やっていないことを考えだして、やる」ことです。競合と同じ資源配分で勝てるのは圧倒的強者だけですので、弱者の場合には、資源配分を傾斜する必要があります。その傾斜を決めるには「他社の配分」を知る必要があります。
現場レベルでは、以下の様なことになります。
「R&D担当者には、給与の5-10倍の経費がかかっている(設備投資、生産部門の経費など)」。より効率良く資源を回す(投下資本利益率)ために、他社がやっていることではなく、それ以外(それ以上、も含む)のアイデアを出させて、実行させる必要がある。
知財部門がやる情報分析の仕事は、経営資源の有効利用という観点から、やるべきものだと思っています。つまり「知的生産性の向上」「知識資本生産性」「知識資本利益率向上」のための情報分析です。発明者の時間は(上記の計算の通り)貴重な資源。他社がやっているようなことを考えさせるのは資金の無駄遣いで、他社がやっていないことについて考えさせる必要がある、だから情報分析が重要なのです。
知財の仕事とは、個人が持つ「知」を、会社が所有する「財」に変換する仕事。知識資本主義において、最もキーになる部門です。設備や土地、単純労働力は競争力(資源、資本)にならない時代。頭脳は使えば使うほど価値が向上し、償却もなく、同時利用も可能という、人類が手に入れた最高の資本だと思っています。その「利回り」を向上させるために、(日本の)各企業はどれだけのことが出来ているのでしょうか。まだまだ、余地があると思います。
※ 注1) これも甲斐塾流。甲斐塾では、数学や歴史、古典などに関する面白い冊子を作っては、イベントの景品としてのみ配布していた。これが欲しくて頑張って勉強?した塾生がどれだけ多かったか。
※ 注2) 「BCG流 経営者はこう育てる」菅野寛 にも同じことが書いてあります。やはり、突き詰めると何でも同じなんですね。イドは地中深くで、必ずつながっているのです。イドを掘りましょう、イドを。
・参考図書(3) http://edison-univ.blogspot.jp/p/blog-page_30.html