「発明塾®」へようこそ!: 2012

2012年12月28日金曜日

塾長の部屋(30)~2012年を振り返って

Hello guys.

 今年もいよいよ残り数日。振り返って、新たな目標を定める時期です。各自は、自分が年初に立てた発明目標と実績、そこに至るプロセスを振り返り、2013年の目標を定めて宣言してください。

 2013年とは、発明塾にとっては、その活動が4年目に入ることを意味します。未来を創造する「Futurist」集団として、ますますの飛躍が求められます。


 2012年を少し振り返りましょう。発明塾がどのようなことを目指し、どう発展してきたのか。

・「知的体育会であること」 
 これは、知識ではなくスキル(身体知)の修得を目指していることを意味しています。知識詰め込みの「お勉強」だけでは、役に立ちません。しかし、勘違いしてほしくないのだが、「憶える」ことが不要とは言ってはいない。むしろ対極で、「完璧に憶えてしまうこと」を要求しています。スキル習得とは「内面化(internalization)」(注1)なので、憶えることが前提だからです。

・「学習する組織であること」
 自ら「発明法」を生み出し、表出化/体系化し、それをさらに互いに学んでいく。実際、僕自身の発明法の講義を始めた(注2)4月以降、各自が自分なりの発明理論をまとめて、積極的に共有化してくれるようになりました。Learning Organization として、着実に進化していると思います。

・「成果を出す」
 目に見える成果を出すことで、「社会から」具体的なフィードバックを得ることができます。それが皆さんの自信につながり、さらなる向上/成果につながります。成果にこだわりましょう。今年は、殆どの学生が、何らかの形で「発明創出」をすることができました。貴重な機会を頂いた関係者の方々に、改めて感謝申し上げます。


 振り返ってみると、2012年は発明塾として様々な進歩がありました。ご協力、ご支援いただいた企業の方々には、深く感謝申し上げます。

 僕自身は、派手な宣伝活動も、大人数を集客したイベントの開催も、キャッチーなタイトルの本を出版することもなく、今後も地道に人材育成に取り組んでいきたいと思います。

 発明が、大学生でも確実に習得できるスキルであることが分かりましたし、その手法が幾つかのタイプ(頭脳の型に依存する)にわかれることもわかりました。現時点で、ほぼ完璧といえる発明教育法が、僕の手の中にあります。

 それを基にぜひ、新しい未来を創りたい。そう思っています。

 僕は僕のやるべきことをやる。

 それが、来年の抱負です。


※ 注1)「暗黙知の次元」ポランニー 参照。ポランニーは「indwelling(内在化)」とも表現している。いずれも「頭の中で繰り返し再現(reproduce)することで、その概念・知識と一体化する」というプロセスを指している。

※ 注2)講義資料が、下書きも含めてA4ノート8冊になっている。僕は甲斐塾講師時代から、手描きの講義ノートを作ってから、講義に臨むことにしています。しかし、これほどのペースで作成したことは、一生を通じて初めてです。発明塾で、如何に多くの「知」が創出されたか、ということを物語っています。


2012年12月24日月曜日

京都大学「ものつくり演習」講義レポートを読んで~在るために働く(B価値)

先日、10月に行った講義(以下参照)のレポート課題が届きました。本日、少し時間がとれたので、ゆっくりと目を通しました。

・「京都大学「ものつくり演習」講義報告


1.レポート課題
レポート課題は「世界的に早急に解決が求められている課題で、最も重要と思うもの」を挙げてもらって、機械工学がその解決にどう貢献できるか、を論述してもらう内容でした。

課題として挙がっていたのは、「エネルギー」「CO2削減」「高齢化・医療」「水・食料」などでした。エネルギー問題がやや多かったのは、3.11事故の影響かもしれませんね。あるいは、併設されている「エネルギー応用工学専攻」に興味がある学生かもしれません(僕も、この出身です@大学院)。

殆どの学生が「これまで受けた講義の中で最も面白かった」と言ってくれていました。京都大学には、かの有名な「瀧本先生」の講義もありますので、褒め過ぎのような気もしますが。


2.講義の感想
講義の感想についても、紹介しておきましょう。全体的なコメントは、

「自分で考える時間が与えられたのが良かった」
「世界で勝てる日本を作っていきたい」
「考えるに伴って、多くの知識を貪欲に自分のものにして行かなければならないと感じた」
「話が非常に巧みで、とても引きこまれた」
「もっともっと話が聞きたかった」

といったところでした。皆さん熱心でしたね。

1)発明、発想法に関して
少なからぬ学生が「人と違うことを考える、する、ことの重要性」に気づいてくれたようです。

「これまで、周りの人と同様にやっていれば大丈夫と思っていた自分には、とても衝撃的な授業でした」
「同じ事を、繰り返しうまくやることを目指してきた自分にとって、不安ではあるが受け入れざるをえない現実と感じた」
「強制的にでも、人と違う考え方をしてみようと思った」
「他人と同じ事をやったり、考えたりしても意味が無い」
「頭を使うことこそが仕事、という一貫した主張がわかり易かった」

といった正直な感想を寄せてくれました(多少モディファイしています)。



(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。

皆さんに、大学時代に取り組み始めておいていただきたいことは、
「知識の詰め込む」ことにとどまらず
「知識創造の楽しみ」を味わうことです。
僕は、大学時代、「教材作成」に明け暮れました。
とても楽しかったこと、また、いま、それが非常に役立っている
ことを、お伝えしておきます。


2)仕事やキャリア
何名かの学生さんが、僕の言葉を引用して感想を寄せてくれました。

「『仕事をするということは、みんなが思っているほどつまらないものでも、悪いものでもない』という言葉が印象的でした。自分たちは、バブルも知らず、失われた20年に育ってきた夢も希望もない世代ですが、働くということや将来を少し前向きに考えてみようと思いました」
「何となしにやるべきことがわからず、無気力にくすぶっていたが、勉強してみようという意欲が湧きました」
「自分の将来に関しても、明るい気持ちになった、モチベーションが上がった」
「これほど、自分が将来出ていく社会が楽しいものだと思えたのは、久しぶりだった」

講義の感想に「失なわれた20年」とか(!)、メディアも煽りすぎなんじゃないの(笑)という気もしますが、働くということを前向きに考えてくれるきっかけになったなら、とてもありがたいです。ちなみに僕が就職した時も「バブル崩壊、就職氷河期」真っ只中で、研究室の先輩にも、なかなか就職が決まらない方が居られたりして、「日本沈没的」な雰囲気が漂っていました。しかし、今のところ、結果的にはそれほど暗い職業人生ではありませんでしたし、年の近い諸先輩に伺っても、おおむねそういう感想をお持ちのようです。

少なからぬ学生が、働くこと、社会に出ることについて、非常にネガティブな印象を持っていることは、ここ数年非常に気になっています。だからこそ僕は「働くことがどういうことなのか」を、真面目に語らねばならない、と思っています(注1)。

繰り返しですが、僕は各自が仕事を通じて世の中を少しづつ良くしていくことが、最も現実的で確実な「明るい未来」の作り方だと思います。一つ一つの仕事を、妥協なく、「将来の世代のため」という判断基準で行なっていくことが、我々に日々求められていることです。大金持ちになって寄付するよりも、実効性のある「革命」手法だと思います。


3.ものづくりと経営
経営、金融、知財、といったテーマを取り上げて、「技術以外に勉強しておくべきこと」について話をしました。

「ものづくりと経営、経済について深く考えるきっかけとなった」
「経営学を学んでみたいと思った」
「機械工学と経営学が、こんなに結びついているとは知らなかった」
技術にとどまらず、もっと広い視野で技術者として勉強、成長したいと思ってくれたようです。何名かは、将来経営者になりたい、起業したい、と書いてくれていました。


4.まとめ
講義で紹介した各種参考書に興味を持ってくれた学生さん、購入したという学生さんもいて、講義をしてよかったなと、思います。

「4力(注2)と設計の勉強をしていれば、技術屋として生きていけると思っていたが、それだけでは足りないと分かった」
「昨今の電機業界の状態を見て、技術の勉強だけをしていても勝てないと改めて感じた」

もっと勉強しよう、と思ってくれたなら、それで十分です。

何名かの学生さんは、発明塾に興味を持ってくれたようですし、すでに2名は参加してくれていますから、京大機械系から、何名かの「発明家」が僕に続いてくれることを、大いに期待します。発明塾に来るなら、春休み2月から来るのがベストです。

「人と違うことをする」=「人が遊んでいる間に勉強する」

ですよね。

最後に、ある学生さんのコメントを挙げておきます。

「『世界はますますIssueベースの取り組みに変化している。いつまでも機械が目的でいいのか?』という言葉が最も印象に残っている。私達が作ろうとする機械の先に、常に世界規模の困難な課題というものを見据えなければならない。優れた技術者であればあるほど、より大きな義務感、使命感を持たなければならないと改めて思うようになった。」

みなさんのレポートは、僕にとっては、最高のクリスマスプレゼントになりました。

ありがとう!

ちなみにレポートは、論理構成と独創性で評価させてもらいました。




※注1)"Maslow on management"「完全なる経営」A.マズロー を僕が度々取り上げるのも、それが理由。僕は、働くことは、自分が存在する(Being)理由を「創り出す」ことだと思っている。「XXが足りないから働く(D欲求)」のではなく「ZZとして在るために働く(B価値)」のだ、と。
 「お金を稼ぐために”だけ”、働くのではないんだよ」という、僕の講義中の言葉を挙げてくれた学生もいました。上手く伝わっていると良いのだけれど。

※注2)機械工学では「材料力学、熱力学、流体力学、機械力学(振動工学)」を4力(よんりき)と呼ぶ。機械工学の基礎。



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2012年12月22日土曜日

発明塾@京都冬季集中講義2012

Good evening.

 今日はお疲れ様でした。場所の都合で回線が良くなかったですが、逆に「やみくもに調べる」という事を離れて「戦略を立てて調べる」というところにシフトしたのが、塾生らしいです。調べる前によく考える。これは基本です。何名か、冴えた塾生がいたのが印象的でした。今後に期待します。

 さて、今回は、

①発明の全体観
②検索技術
③ブレスト技術
④進歩性を考える

をやりました。午後の一部の法律論はベテラン塾生以外は無視してもらって構いません(そういうことも先々考えねばならないんだぐらいの話です)。それよりもまず、

「全体観を押さえて(迷子にならない)」
「調べた上で(当業者の頭を作る)」
「アイデアを網羅的に出し(仲間を利用する)」
「それについて先行技術を調べ(かならずある)」
「それを超える視点を考えてくる(課題、水平、コンセプト)」

を、自分のRFI(発明テーマ)で実践し、年始に持ち込んでください。

「ここでサボったら、次にこれほどまとまった時間が取れるのは、いつであるか?」

よく考えて、忘れないうちに実践すること。

「やらないなら、そもそも習わないほうがマシ(時間が無駄)」

なので。

今年はこれで終了です。

一年間お疲れ様でした。

全員、来年の目標を宣言すること。

よろしく!

2012年12月21日金曜日

立命館大学「発明講義」第13回から~発明の価値は「課題」で決まる

年間15回の発明講義も、今回で13回目。早いものですね。次回は発明発表会ですので、年末年始にしっかりとまとめてきてください。期待しています。

さて、本日幾つかのチームが「行き詰って」いましたが、その原因は大きく分けて以下の2つ(もしくは両方共兼ね備えている)です。


①「課題が不明確」
その発明が、何の課題を解決しているかよくわからない。面白いけど使えない。

②「課題が簡単すぎる」
取り組んでいる課題が簡単すぎて、すでに様々な解決法が提案されている(場合によっては解決されている)。もしくは、実は大した問題ではない。


発明において重要な法則は、

「発明の価値は課題で決まり」「独自性は解決策で決まる」
「難しい課題を、シンプルに解決するのが発明」

ということです。課題が簡単すぎると、価値(意味)のない発明になるし、簡単な課題を複雑に解決すると、ますますわけわからなくなる。(例えば「靴の紐をロボットで自動的に結ぶ」みたいな発明)

発明に取り組む時、見直す時に、常に上記の視点を忘れないことです。

課題のことを、発明塾では「イシュー」と言ったりしますが、それは以下の本の影響です。

「イシューから始めよ」(安宅)

この本には、ズバリ「課題の選び方」が書かれています。

是非参考にしてください。

では、レポートとプレゼンを楽しみにしています!

発明塾京都第113回開催報告

Hi.

 今回で年内は終了です。年内最終ということで、現在取り組める発明課題(RFI)について、おさらいと「どの角度から取り組むべきか」という議論をしました。

 立命館の講義でも触れたことですが(そちらで書きます)、課題のサイズ感と深さがすごく重要です。深さはある程度考えないと出てこないので、そこを先に塾で議論しておけば、あとは皆で「ブレスト」すればある程度進むのかな、と予想しています。

 課題のサイズ感的な話は、例によっての

「イシューから始めよ」(安宅)

を参考にしてください。これ、発明塾生にとってのバイブルだと思います。

明日は集中講義ですね。出席者はよろしく。

では、良い休暇を。

Have a good one!


2012年12月16日日曜日

塾長の部屋(29)~「日常を科学する」ことが発明の第一歩

今回は、発明塾に興味を持っている学生さんへのメッセージも兼ねて、発明塾で行なっている(きた)ことをまとめておきたいと思います。


①「発明」をすること
当たり前ですが、発明塾は「発明」をする場として運営されています。冒頭に書いているように、「大学の授業では物足りない」「学んだことを、実際の社会の問題解決に活かしたい」という学生さんのための場です。

ここでやっていることは、企業でやっている設計、開発、研究のプロセスそのものです。「モノを作らない」という点以外では全く違いはありません。僕自身が、設計、開発、研究、新事業開発、経営を通じて得た知識を統合して、みなさんと一緒に「発明」に取り組みます。そこに一切の妥協はありません。

これまでに塾生さんからは、「土壌汚染」「食品保存」「機械構造物の故障検知」「リサイクル問題の解決」等に関する発明が出ています。


②「科学」すること
発明塾で行なっている発明は、「科学」に基づいたものに限っています。発明といってもいろいろなものがあり、日常生活用品なども対象にしたものもありえますが、発明塾ではそれは対象にしていません。

なぜなら、発明塾が目指すのは、単なる「発明」「特許」の知識習得や実践ではなく、「社会に存在する問題を、科学すること」「問題を、科学的に解決すること」「それを通じて、創造的問題解決法を身につけること」「科学、工学の知識を深く身につけること」だからです。
大学生が大学時代にやるべきことをやる、ただそれだけです。

僕が理想としているのは、以下3冊の本を足したところにあります。

●「物理の散歩道」シリーズ(参考サイト:Wikipedia
僕はこの本(シリーズ)が大好きです。ほとんどすべて読みました。日常を物理(科学)する、という点で、この本は最もわかりやすく、何よりも楽しい本です。高校生ぐらいで読みたい本ですね。



●「ものづくり解体新書」シリーズ
日常生活で使っている製品に、どのような技術が使われているか、どうやって作られているか、そういうことを知ることが、「新たなものを作り出す」ために必要な知識になります。「なにか新しいものを作ろう」とするなら、まず既存のものがどうなっているかを「知らざるを得ません」よね。「新しい」という言葉の定義から導き出される、論理的必然です。
 


●「実際の設計」シリーズ(参考サイト:実際の設計研究会
これは、企業で設計をやる人が読むレベルの本かもしれませんが、僕は大学生こそ読んでみると良いと思います。上記2冊の本を読んだ後であれば、十分理解でき、また発明塾でそれを実践できます。




③「社会」を見ること
多くの学生さんは、僕が大学生の頃ほど、社会や企業のことを知らないように思います。もっとも、それは単に僕が恵まれていただけかも知れません。以前に書いたように、「甲斐塾」では毎日OB(社会人)が遊びに来て、そこで講師である大学生は様々なことを教えてもらっていました。

僕自身、数年上の自動車会社に務めておられた先輩に、クルマの設計、製造に関するありとあらゆる事を教えて頂き、また、そういう部品をどのような企業が作っているか、などを毎日のように教えていただくという、実に貴重な体験をさせていただきました。いろいろな企業の経営者や創業者についても、そういった先輩方に教えて頂きました。
当然僕も、社会人になってからは後輩にそういうことを教えに(?)、甲斐塾に遊びに行っていました。

例えば以下のような本を読んで、企業について学んで欲しいと思います。

日本の企業家群像」シリーズ(1-3)
日本を代表する様々な企業が、如何にして興ったかについて、非常に読みやすくまとめられています。僕は昔から「企業家」に関する本やTV番組が好きで、そうやって大学時代に知った経営者は、日本で初めて、天然ガス発電所を設立した

木川田一隆(東京電力)

を始め、出光佐三(出光興産創業者)、石橋正二郎(ブリヂストン創業者)、大原孫三郎(クラレ、中国電力創業者)、西山弥太郎(川崎製鉄創業者)、土光敏夫(東芝)などです。(敬称略)

皆さん、どれぐらい知ってますかね。



僕は「企業の使命は、社会的矛盾の解決」だと思っています。そして、企業の歴史は、社会の矛盾との戦いの歴史です。企業の歴史から、社会の課題-解決の歴史(社会の歴史そのもの)を学んで欲しいと思っています。

 
意欲的な学生の参加を、楽しみにしています。



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2012年12月13日木曜日

発明塾京都第112回開催報告

 第112回の@京都も無事終了しました。最近はコンスタントに10名程度になっていますが、お客さん化している人も居るような気がします。「来ないよりはマシ」ですが、「来ないよりはマシ」でしかありません。良くも悪くも。

 さて、今回は3件のアイデアを討議しました。また、講義として「学習プロセス」についての説明をしました。基本的に殆どの人にとって、学習は「身体性」を伴うものなので(注)、単に聞いたことをメモしても意味が無く、

・「想像する」
・「実践する」

ことが必要になります。限られた時間の中での話ですから、僕の一言一句、一挙手一投足に目を凝らし、耳を澄ませ、記憶し、それを自分の頭の中で再現(想像)し、実践してください。

 学習とは、単にそれの繰り返しにしか過ぎません。本質は常にシンプルで、あとは「やるかやらないか」だけなのです。

では、次回は本年最終回、しっかりと議論できるように準備を。

Please be prepared!

2012年12月11日火曜日

塾長の部屋(28)~「スキル」を身につける唯一の方法

Hi guys.

 発明塾を含め、僕の仕事の時間の半分は、いわゆる「教育」に費やされている(残りは発明)ので、「どうすれば何かを学ぶことが出来るか」という問いは、非常に重要である。もちろん、僕自身も常に向上したいと思っていることも、ある。

 もうすでに繰り返し世間で言われていることではあるが、学ぶ、ということに関して(も)短絡的な手法は存在しない。僕が今までに読んだ本の中で、一番まとまった「学び」に関する本は、これも度々紹介している(注)、

・「BCG流 経営者はこう育てる」菅野

である。本日はこの本から「スキル習得法」について、抜粋して説明したい。

「漫然と自分が心地よい自然体でがんばっているだけでは、スキル習得はままならず、スキル習得の訓練法を編み出し、実行し、習慣化することが必要」

 自然体では身につかない。意図的な訓練(自然体ではないということは、苦行= hard work にせよ、ということです)が必要である。それを習慣に(つまり継続)する必要がある。

 毎回出席「すら」できない塾生は、さぞ耳が痛いことでしょう。いつも言っているが「習慣」が全てである。習慣がなければ、何も始まらない。

以下に、本書にある7つの(!)ポイントを抜書きする。


① 特定のスキルを習得したいという強い意志を持ち、目標を定める。

② 集中する。一時期に一つのスキル習得に専念する。手を抜かない。

③ スキル習得の訓練法を編み出す。その訓練法は、以下の要件を満たしていなければならない。
・ 具体的で、身体でアクション可能な訓練法であること。
・ 自分自身が「なぜこれをやればスキルが身につくのか」について納得し、自分で組み立てた訓練法であること。


④ スキル習得の訓練を、愚直に何回もしつこく繰り返し実行し、身体で覚える。

⑤ 習得状況を書き留めてモニターする。
・ 本当に身についてきているのか。
・ 習得予定と乖離があるか。あるとすれば、なぜか。
・ 乖離を埋めるためにどんな手を打てばいいのか。
・ 特に、「書き留める」ことはきわめて重要である。


⑥ 繰り返しの実行の結果として、そのスキルを「習慣化」させる。
・ 最低限でも意志の力で習慣化できるレベルまで持っていく。
・ 究極的には、無意識でも自然体で習慣化できているようにする。


⑦ 習慣化が完成したら、次に習得すべきスキルに移ってステップ①から繰り返す。


 僕は簡単に「集中する」「繰り返す」「書き留める」と覚えている。そもそも、この原則が憶えられなければ、何も習得できないから、こういう重要なことは書き留めて、かつ憶えてしまう必要がある。僕は「記憶」は創造性の重要なファクターだと思っている。憶えてすらいないものは、実行できないし、考え続けることもできない(これも以前述べた)。

 発明のような、高度なスキルが組み合わさった「総合芸術」的な能力こそ、上記のような「地道」な作業で修得する以外に無い。そして、発明能力を身につけることが出来る「学習習慣」、を身につければ、おそらく身につかないものは無い。

 僕が一番重視する能力は、実はこの「学習能力」である。僕が知る限り、一度高度なスキルを身につけた経験のある人は、次々と同列のスキルを身につけていく。彼らに共通しているのは「時間をかけている」ということである。

 1万時間の法則。

 理屈がわかっていれば、あとは「その時間をどう確保するか」だけの問題であって、そこに「習慣」と「記憶」が顔を出す。


※注)例えば以下。

・塾長の部屋(1)~決断力を鍛える

http://edison-univ.blogspot.jp/2012/08/blog-post_18.html


2012年12月8日土曜日

塾長の部屋(27)~岡倉天心に学ぶ

Hi. 

 本日の、京都大学工学部機械系主催の「OBと学生の交流会」に参加した塾生は、お疲れ様でした。久しぶりの塾生、卒業生と少なからず話ができたので、非常に有意義な場でした。その場で話した「なぜクアルコムはシャープに出資するのか」「インテルはどうするのか」ということについては、ぜひ各自で考えてみてください。普段発明塾で教えている、小川先生の理論、丸島先生の教えを踏まえれば、各自なりの答えは出ると思います。

 このように「なぜそうなっているのか」「この場合自分ならどうするのか」ということを、常に考えることが重要です。仮説が出たら、ぜひ検証してみましょう。

 さて、今回は2007年2月の日記から抜粋とします。今後もたまには、時事ネタではない、普遍的なテーマを取り上げるようにします。

「現在の地位を日本にもたらした原動力は、外国の方法を自分のものにする能力にあるだけでなく、外国の文明や教えを同化させる日本の内的な再生産能力にあるという点だ。民族にしても、個人にしても、外からの知識の蓄積ではなく、内にある自己の実現があって初めて真の進歩があるのである。」 
-岡倉天心「日本の目覚め」より


「日本の目覚め」と「東洋の理想」

 僕はここで岡倉天心が「内的な再生産能力」と呼んでいるものについて、2007年以来ずっと考えてきました(注)。結局、経営をするにせよ教育をするにせよ、誰かに何かを「教え」なきゃいけないわけですが、どういう条件において、何が可能なのか、ということが知りたかったわけです。

 結論から言うと、発明塾での取り組みを通じて、大体わかりました。経験上「相手の質問の仕方から、回答が理解できるかどうかが判る」ことは分かっていたのですが、その裏付けが、この岡倉天心の本と、注)に挙げた本で取れました。

「内的な再生産能力」そして「内にある自己の実現」

 この一言の意味がわかるのに、5年の歳月を費やしたわけですが、意味がわかった嬉しさと同時に同時に、「記憶しておく」もしくは「記録しておく」ことの重要性を痛感しました。

 詳しくは、塾でやりましょう。


※ 注)その延長線上の本として「 『経験知』を伝える技術 ディープスマートの本質 」がある。


2012年12月6日木曜日

発明塾京都第111回開催報告

111回は、積もっているアイデアの整理をしました。

「優先順位」付け、まぁ要するに、どれから手を付けるべきか、ってことですね。

各企業では、「発明をどう評価するか」について、算定式的なものが決まっています。

 各社各様ですが、たとえば「経済的価値」「権利の強さ、広さ(他者排除性、などと呼ぶ)」などが指標に挙げられています。

 特許権は排他権ですから、その強さはひとつの指標のはずですね。特許的には、その発明に用いられている技術が、高度(もしくは複雑)かどうかは問われません。ここが研究と違うところかも知れません。

知財が何のためか、ということを理解していれば、間違えることはないと思います。

自分の発明の「価値」を評価する際の、基準の一つにしてください。

See you!


2012年12月2日日曜日

塾長の部屋(26)~そうだ「XX」に行こう!

別に書かなきゃいけないわけではないのですが、忘れないうちに。

 先日、十数年振りに会った友人との会話。彼には2歳だか3歳だかぐらいのお子さんがいるとのことで、教育や政治の話なんかが中心でした。紅葉シーズンでごった返す京都駅、穴場的なレストランで3時間ぐらい話してました。

 彼は大学時代にチャーチルの伝記(注)を読んだらしく、そこでチャーチルは「民主主義は、票さえ取れればなんでも許される」と、皮肉(だと思う)を言っているらしい。たとえば、地元の有権者の「就職斡旋」をする国会議員がいる(よく聞く)。

 善意かもしれないし、票集めかもしれない。でも、いずれにしても「国会」議員の時間の使い方としては、決定的に間違っている。気持ちは(頼む方も応える方も)わかるけれど。

 結局は、そういう一つ一つのことをきちんとしていくしか、この国が進歩する方法はないと僕は思っている。そこから逃げて、制度をいじったところで、混迷は深まるばかりである(現に深まっている)。ビル・ゲイツが言うように「必要なことに、必要な資源が十分に割かれ」てはいない。

 もっとも「ローマ帝国衰亡史」ファンの僕としては、国家衰亡の避けられない一形態である、という認識も捨てがたい(つまり諦め)。


 さて、ドラッカー曰く、イエズス会の牧師は「期待する結果を予め書き留めておく」ことになっていたらしい。塾生と卒業生には、

「その一票に何を期待するのか」

を、日記に書き留めた上で、選挙に行く事を期待する。

そうだ選挙に行こう。

See you!


※ 注) チャーチルの伝記はとんでもなく分厚い。そこからだけでも、彼の人生の紆余曲折ぶりが伺える。


2012年11月29日木曜日

発明塾京都第110回開催報告

Wow. 110回ですか。継続は力なり。

今回は、前回に引き続き、塾生さんの「発明講義」でした。

 僕が最近不思議に思うことは、
「僕がこんなにひねくれて?いるのに、塾生はなぜこんなに素直なのか」
ということです。継続して出ている塾生は、皆一様に、非常に素直で良い学生ばかりです。ちょっと僕には理解できないですね(笑)。

 あと一つ。相手のレベルが上がると、教えるレベルも上がるのですが、
「さらに高度なことを求められているようで、楽しい」
と言ってくれていること。

 これは「ラーニング・オーガニゼーション」特有の現象だと思います。「成長が最大のドライバーになって、ますます成長する」という好循環に入っています。

 結局のところ、僕が「塾」として始めた理由は、ひとりひとりの思考のタイプとレベルに応じて、敢えて最終目的地を教えることなく、山登りを楽しんでもらうためなのです。知らないうちにエベレスト、みたいな。

だって、最初から「エベレストですから」と言っても、誰も来ないでしょ(笑)。

 難しいのは今後。「発明塾ではエベレストに登る」とバレてしまっているので、みんなビビって来ないんじゃないかな、ということです。好奇心旺盛で、勇気ある学生の参加を、期待しています。

「みんなで登れば怖くない」

てか、僕は一人で登ったんですけど!(笑) 今は塾生がいますから、ちょっと楽ですね(笑)

See you!

2012年11月25日日曜日

塾長の部屋(25)~僕の「読書論」

Hi guys.

 本日は予定を変更して、今後多くなりそうな気がする質問について、予め先手を打っておきたいと思います。それが「読書」に関することです。

 実は僕は「最近、ほとんど新しい(いろいろな意味がありますが)本を読まない」ことにしています。意外に思った人もいるかも知れません。御存知の通り、弊社のメルマガで毎回紹介している本は、すべて僕の読書ノートからの紹介なので、「じゃあ、あれは何なの?」ということになりますが・・・。

 答えは簡単で「昔読んだ本」です。中学~昨年までに読んだ本を、必要に応じて紹介しており、直近の本は殆どありません(たまに、良い新刊本があれば取り上げていますが)。40になって「ここから5年はアウトプットの時期」と決めているので、不用意に情報入手に時間を割かないようにしています。もちろん、30代に結構な量の本を読んだから、ということもありますが。

「情報断食」

僕が定期的に行う、整理法の一つです。

 それを踏まえて、塾生向けに、幾つか質問があった点をまとめておきます。いつもどおり、あくまで大学生、もしくは発明塾卒業生向け、という点はご理解を。

①読書論的なもの
②いつも読んでいる雑誌等

===
①読書論的なもの
 実は僕は、読書のハウツーについて、特に意識したことがない。子供の頃から本を読むのは大好きだったし、特にああしなきゃこうしなきゃ、的なものはない。これで終わってしまいそうなので、塾生に送ったメールをベースに、読書について少しメモを残しておく。

 読書については、How to より What が重要だと思う。なので例えば、

立花隆「ぼくはこんな本を読んできた」

を始めとして、「XXX50冊」みたいな、名作本リスト、名作本のダイジェストみたいなのを大量に持っている。

 How To については、僕は読んでいないけれど、佐藤優(元外交官)氏が、最近、結構いい本を出しているらしい。書評を読む限り、僕がやっている事と、ほぼ同じ事を言っている(もっとすごいことになっているようですが)。

 個人的には、本の読み方は「飛ばし読みするか、じっくり読むか」の2択しか無いと思う。その選別が重要。じっくり読むなら憶えるのが一番(写経も含め)。憶えたら読む必要がなくなるから、それについて考えることが、場所と時間を選ばなくなる。ちょっとした時間に考えられるから、思考量が飛躍的に増える。結局、どんだけ本を読んでも、それについて考えなきゃ意味が無い。百科事典的知識は、ネットで足りる。

 飛ばし読みするなら、目次で我慢するか、フォトリーディングになる。

 僕的には、読書に特別なハウツーはいらない、というのがハウツーかもしれない。いい本は覚えてしまうのが一番で、ちょっと気になる本は、さらっと読む程度で我慢するしか無い。


②いつも読んでいる雑誌等
 現在、定期購読している雑誌は学会誌(化学系、材料系を数誌)を除くと2つしか無い。その内の一冊は「日経トップリーダー」で、中小企業の経営者がよく読む雑誌(らしい)。たまに取引先の社長が出てたりするので、パラっと読んでいる。

 定期購読まで行かないが、比較的読むのは「クーリエ・ジャポン」「Wired」。

 30代前半までに遡ると、いろんな雑誌を読んでいた。

・「ハーバード・ビジネス・レビュー」
・「ビジネスウィーク」
・「ネイチャー」
・「TopPoint」 http://www.toppoint.jp/ 

等。

 個人的には、ハーバード・ビジネス・レビューは、30前後の人が読むのに適していると思う。それ以上になると、「一旦」もっと現場の泥臭いことに興味が移るはず。ビジネスウィークは、今なら読む必要はないかも(ネットで情報は手に入る)。ネイチャー、サイエンスも30前後までにしっかり読んでおくと、最先端の科学技術を広く見れるようになる。サイエンスの無いところに進歩はないので、ここは押さえておきたい。

 最後の「TopPoint」は、本を紹介する雑誌。経営者としての責務も含めて忙しくなり、物理的に本が読めなくなってきた30代前半~半ばに、活用した雑誌。すごくいい雑誌です。かなりオススメです。

 他、参考としていろんなサイトやメルマガを登録しているのですが、Googleカレンダーに「いつ読むのか」を登録して、時間を決めて見ている。この辺も、社会人的には常識ですが、学生さんには参考になるはず。

 ここでも重要なのは、サンプリングだと思う。結局、発明と同じじゃん、と思ったS君は正解。

 See you!


2012年11月24日土曜日

立命館大学「発明講義」第9回から~何のための発明教育か

「塾長の部屋」(24)
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/11/blog-post_17.html

が効いたのか、遅刻者がグッと減ったのと、寝る人がいなくなりました(笑

「みんな、やればできるやん」

後半も頑張りましょう!

 さて、今回の講義では「新しい靴」(例年通り)を考えるための、ちょっとした演習を行いました。前回同様、「他人との差分をクリエイティブに止揚する」ことを実践してもらうためです。僕の体験を少し話しましょう。

 大半の方が御存知の通り、僕自身はかなり「横柄かつ、わがまま」な人間です(笑。論理的思考にもそれなりに自信があるため、自分の意見を通そうと思えば、まず通せます(笑。で、かつての僕は、

「A or B. Which is better?」

というスキームで動いていました。「横柄とわがまま」は、いまも変わらないかも知れませんが、僕のなかでは、発明を始めてから、ある変化が起こっています。

「A or B. Are there any other options?」

まずここから始まります。後は、発明塾で教えているとおりです。Why思考を通じて再びHowへ。サンプリングから論理へ。ボルツマン的熱死ではなく、マクスウェルの悪魔の導入。一旦、ポテンシャルを上げる(できればそのまま維持して答えまで行く)。

結果的に、これまでに考えつかなかった解に、たどり着けるようになりました。

もう一つ効果があります。

「自分と違うタイプと話すほうが、意味があることを実感できたこと」

自分と考え方の違う人間こそ、「解」への力を与えてくれるのです。これに気づいてから、僕のメンバーへの接し方は、明らかに変わったと思います。

「発明を学ぶことは、リーダーシップのあり方を変える」

現時点での、僕の気付きです。これを、残り数回の講義で伝えられるか。立命館大学から課せられた?(いや、特に指示はされていませんが)、僕の「課題」です。

仕事は自分で作るものです。

「自ら目的を設定し、それを達成する。」

これも、学んでほしいことです。与えられた環境の中で、適切な目標を設定し、ベストを尽くす。社会人としての、第一歩です。僕は、

「大学教育の第一の目的は、善き市民を育てることである」

と思っています。良きサラリーマンを育てることでも、研究者を育てることでもありません。義務と権利、自ら目標を設定する、最善を尽くす、社会と共同体に貢献する。そういうことを、この講義で教えられたらな、と思っています。

そして、自らの人生は、自らの力で切り拓く。リーダーシップの第一歩だと思います(注)。

See you!



※ 注)そういう意味で僕は、特に東京の学生や社会人に多い「勉強会」「交流会」「ネットワーキング」中毒的な傾向が、あまり好きになれません。関西人のヒガミ、かもしれませんが「人脈があればなんとかなる」「他人と繋がっていればなんとかなる」という、依存的な空気を感じてしまうからです。
「天は、自ら助くるものを助く」スマイルズ
「集合知は、相互依存的な状態では、上手く働かない」(ある集合知の専門家の方の言葉)



2012年11月22日木曜日

発明塾京都第109回開催報告

怒涛の一週間が終わりました。

 今回は、塾生さんの発明理論解説を中心に行いました。僕がいつも言うことですが、発明法は、塾生の数だけ有って良いと思っています。必ずしも人と同じ方法で、高みに達することができるとは限りません。むしろ各自の「道」を追求する必要があるとすら、思っています。(といっても大きく数パターンであることがわかっています)

 そういう意味で、各自で発明法をまとめてくれるのは、非常に良いことだと思います。彼ら自身のため、という意味において。そして僕自身も、これまで通り、各自のタイプに合わせた発明指導を、地道に続けていきます。

 さて、彼らは自分でまとめた方法で、実際に発明を行なってくれました。曰く、一瞬でいい発明が出たようです。それ以外にも、いろいろな気付きがあったことを報告してくれました。僕自身の気付きと対応したものでしたので、正しい学びが発明塾で行われていることが確認できました。

 同じタイプの後輩を指導してくれたり、互いに討議の相手になって発明を進めてくれたりと、「発明」を通じた学びが広がっていることは、非常に嬉しい。僕が理想としている学習環境が、生み出されています。まさに、これこそが僕の「発明」です。

 次回は、講義の後半です。楽しみですね。


2012年11月17日土曜日

塾長の部屋(24)~「差分を止揚する」クリエイティブな議論の作法

다녀왔습니다.

 僕の仕事(Star-Inventor-MTG)の関係で、今週の発明塾はお休みでしたが、金曜日の立命館大学の講義は、通常通り開催しましたので、まずはその報告から。


 前半の課題(技術マーケティング)を終えて、若干人数も少なくなっていますが、後半の講義(発明)を始めました。僕は、大学生には2つの権利があると思っています。彼らはその権利を、お金を払って購入しているのです。


①まじめに講義を受ける権利

②講義を受けない権利(来ない権利、遅刻する権利、早退する権利、寝る権利)

どちらをどう行使してもらっても構わないのですが、一般的な法治国家の原則である「他者の権利を制限しない範囲で各自が権利を追求できる」という原則は、大学でも同じです。つまり、


・寝ても構わないし、遅刻しても構わないが、勉強したい人の権利行使は「絶対に」妨げない


ことを徹底してもらっています。ですので僕は、遅れてきた学生に、挨拶程度はしますが、再度説明することはしないし、寝ている学生を起こしてGrワークに参加させることもしない。真面目に受けている学生の権利を「著しく制限する」からです。


 昔、京都大学では豊田先生という有名な法学の教授がおられました。彼の初回の講義はいつも満席。理由は「単位はあげますから、授業には来ないでください、皆帰れー!」という、たった一言を聞くためです(注)。彼は、本当に勉強したい学生だけを残して、淡々と講義をしたそうです。


 すべての講義がそうである理由はないですが、僕は上記のスタイルを貫いています。もちろん、面白い講義をする努力もしていますが(それは受けてもらえれば分かる)。理由は一つ。


「市民として社会で生きていくにおいて一番重要である、義務と権利、の概念についてよく理解して欲しいから」


自由とは「積極的」なものであり
それには義務が伴う

 僕は、かつて高校生に英語を教えていましたが、英語を学ぶことがすべての学生にとって意味があるとは思っていませんでした。ですので僕は「英語を通じて、哲学、経済、環境、国際政治について学び、あるいは生きる意味について考えてもらう」ことを、僕自身の英語教育の目的としていました。教材には古今東西の名文、最新の記事、音楽などを用いて、独自のテキストを全て自分で作っていました。もちろん定期的に行うテストも、全て自分で作成していました。教育の基本は教材であり、それを正しいの哲学の基に作成することが、教育の一番重要なポイントだと、今でも思っています。


 その考えは、いまの弊社の発明教育、知財教育にも受け継がれています。


 脱線失礼。


 だから、僕はこの「発明講義」で、知財や発明について「だけ」教えるつもりはありません。何を教える場合にも、ほかのあらゆることを教えることができるし、そうすべきである。これが僕の教育哲学です。


 理由は「教養教育の目的は、視野を広げることだから」です。僕の講義は、どの専門にも属さない、教養的科目だと思っています。実際、理工系、文系、大学院生、あらゆる人が受講できるように、科目設定されています。


 なので、僕はこの講義のルールを通じて「ロック、ルソー、ホッブス」などがその著作で述べている法哲学や、法の精神について学んでもらいたいと思っている。また講義の中で、経営、経済、語学、論理的な文章の書き方、をはじめとした様々なことを教えたいと思っているし、実際教えている。例えば今回の講義では、


「クリエイティブな議論において一番重要なのは、自分と違う意見や物の見方に出会った時、『間違っている』として排除するために論理的思考を使う(差分を探して批判する)のではなく、『自分の思考を補完するために』論理的思考を使う(差分を取り込み、止揚する)ことである」

ということを教えた。これは、特に海外の人たちと、協力してなにか創造的な作業をする時に、極めて重要になってくる。よく、論理的思考を「揚げ足取り」「批判」のために駆使して、相手との議論に勝つことを良しとする人がいるが、僕にはそれは生産的なことには思えない。相手との差を「どう使うか」、それが「創造性」であり「生産的な思考法」だと思う。ディベートの技術というのは、自分の思考を検証するために使うものであり、他者を攻撃するために使うものではない。

「カナヅチを持つと、なんでもクギに見えてくる」

論理的思考能力を持つと、他人のアラを探したくなる。でも、よく言われるように、

「二人がいつも同じ意見であれば、どちらかは不要」

なのです。僕は「見方の違い」を糧にする事が出来る人材が、これからの世界を「より良く」してくれると信じている。

 最後に、今回の講義に関する学生さんのアンケートの一部を共有しておきましょう。今回の講義では、例の10円玉ゲームと浮世絵ゲームをやりました。

「自分とは違う視点を、周りの人が持っていることに驚いた。視野が広がった。」
「物事をありのままに見るということの重要性が分かった。」
「自分が、とても偏った物の見方をしていることがわかった。」
「無心になって発想すると、意外と色々思いつくことができた。」


※注) ちなみに僕は、その初回にすら出ていない(笑 が、もちろん単位は持っている(笑。



2012年11月11日日曜日

塾長の部屋(23)~会社とは何か、仕事とは何か

Good morning guys.

さて、今日は少し発明から離れて、僕の過去の講演やキャリアから「やはり、後に残る形で伝えておかないといけないんだな」と感じたことを。

僕の経歴は、すでに皆さんご存知の通り、新卒で入った川崎重工から、縁があって29歳の時に小松製作所へ移り、2004年にナノテクベンチャーの設立、現在に至ります。

人によっては「よく仕事を変わっていますが、何か理由があるのか」と聞かれることもありますが、特にこれといった(一貫した)理由はない、というのが正直なところです。数年に渡り粘り強くお誘いいただいたケースもありますし、偶然もあります。自分の意志で転職活動をしたことがない、という共通項はあるかも知れません。

キャリアだけを見て、よく「転職相談」的なことを受けることがありますが、上記のような理由で、僕がアドバイスできることはほとんどありません。当時、転職市場も今ほど整備されておらず、環境も違いますしね。

しかし、せっかく聞きに来てくれるので、なにかアドバイスできることがないかと思い、僕が話すことは大体以下の様なことです。これは、2008年(だったと思う)から毎年「ものづくり講義」(京都大学機械系)で話している内容でもあり、2009年にSmipsの「知財キャリア分科会」で話した内容でもあります。

結論から言うと、

・仕事とは、自分の能力を社会的価値に変換する活動である。その対価として、報酬が得られる。
・会社とは、個々人の能力を社会的価値に変換するための仕組みである。それを発展的に維持するためには、収益が必要である。

ということになります。

僕がこのことを明確に意識したのは、2000年前後だと思います(当時28才ぐらいでしょうか)。バイクが好きでオートバイ設計をやっていたわけですが、一通りのことができるようになると、もう少し大きな視点から世の中を見れるようになった、という典型的な例でしょう。

その後、2003年にある経営者と出会ったことが、僕が「本気で」経営者を目指すきっかけになります。

この一連の流れの中で、僕が出会った本を挙げておきます。

①「社会起業家-よい社会を作る人たち」町田洋次
②「人生の短さについて」セネカ
③「ムハマド・ユヌス自伝」

すでに紹介済みの①、②はもういいでしょうか。①と②は、僕が「退職する」人や「退職するとき」に、お世話になった方々によく渡す本です。読みかけの本を渡したりするので、僕の手元の本は常に新しいという、副次的効果があります。

③はあまり紹介しないのですが、これを読んで「政治ではなく、経済が世の中を動かす」ということについて、明確なイメージを持つことができました。ちょうど2004年ごろに読んだこともあり、現在の僕の経営哲学に、非常に大きな影響を及ぼしています。

 ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞を受賞しているので、今では皆さん、名前ぐらいはご存じでしょうが、当時僕の周りでは、彼の活動に注目する人はいませんでしたし、書評等でも全く話題に登っていなかった記憶があります。時代の流れの速さを感じます。

講義では、ユヌス氏の取り組み以外に、ドミニ氏のSRI投資を紹介しています。これも有名ですよね。

・エイミー ドミニ
http://www.nikkei.co.jp/hensei/ngmf2004/r_domini.html 

こういった「社会的責任」を、ビジネスを通じて追求しようという流れは、日本でも2000年ぐらいから話題になり始めたと記憶しています。

もう一つ僕が注目していたのは「成功して寄付する」というロールモデルの今後。2006年に、バフェット氏はゲイツ財団に財産の半分を寄付すると公表するなど、動きがあるなと思っていました。ちなみに、バフェットが公表した寄付金額は、ちょっとした国の予算に相当するものでした。興味がある人は調べてみてください(講義では解説済み)。

ユヌス氏の話に戻せば、「単純な援助はどこまで有効なの?」というQに戻ります。当時の僕の答えは以下の2つです。

①支援の中で、もっとも効果が高いのは「教育」。でも時間がかかる。
②テクノロジーへの投資を通じて、世の中を加速度的に良くすることは出来ないか。

はい。②は僕が前の会社で追求していたことであり、①が現在の会社で追求していることです。ゲイツ氏は現在、様々なテクノロジーに積極的に投資をしていますが、同じようなことを考えているのかも知れません。

教育、という意味で僕がひとつの理想と考えているのは、これも紹介済みですが、

・Deep Springs College
http://www.deepsprings.edu/home 
http://www.unipro-note.net/archives/50139010.html (日本語の解説記事)

です。僕もちょうど下段のクーリエ・ジャポンを読んで知りました。それから6年、発明塾もだんだんと形になりつつあります。教育は時間が掛かりますし、新規事業?は、タイミングも含め、やはり時間がかかります。先を見て布石を打つ、そんな経営者の仕事の醍醐味は、5年、10年やってきたことが、大きな「社会的価値」を生む瞬間に立ち会えることだと思っています。

経営なんて地味でつらい仕事はやめておけ、経営者志望の学生に、僕が必ず言うことです。でも、その苦労が周りの人の幸せに繋がること、その事自体を自らの喜びに出来る人は、ぜひ経営者になっていただきたい。

マズローも、そう言っています(僕の解釈です)。


2012年11月8日木曜日

発明塾京都第108回開催報告

晚上好!

第108回も、非常に良いアイデアの討議が出来ました。

最近持ち込まれるアイデアの特徴は
・元のスジが良い
・後何を詰めればよいかが明確
というところでしょうか。

今回も、持ち込まれて15分ほどでサクッと詰まりました。ラストワンピースだと、非常に楽ができます。始めた頃、僕が1人で盛り上げていたのとは、エライ違いです(笑

ちゃんと身につくんですね、発明法って。

後半は講義時間にしました。発明塾で教えていることは、実際には新規事業開発論に近いと思います。僕自身は「発明とはビジネスモデル付きのアイデア」と言っていますので、そうならざるを得ません。

どうやれば勝てるのか。そのためにどういうアイデアが必要か。

それを考えるのが、発明塾です。

「ちょっと面白いこと言う」ぐらいのことは、中学生にも出来ますからね(塾生談)。

では、次週はお休み(発明休暇)ですので、その間しっかり詰めておいてください。