「発明塾®」へようこそ!: 10月 2020

2020年10月26日月曜日

企画の重要なステップ「ユーザーインタビュー」を正しく行う~発明塾第565回(2020年10月25日開催分)

楠浦です。

既に、完全自主開催になっておりますが、今回は、OBさんの要望で参加しました。

OBさんが、自身の発明について

「ユーザーインタビュー」(正確には、ユーザー候補)

を行われたので、その結果を振り返りながら、企画のブラッシュアップを行いました。


僕は、ユーザーインタビューを大変重要視しています。

前職で、ここを軽視して大失敗した事業企画を、

「特許情報を駆使したユーザーインタビュー」

で、立て直した経験があるからです。


その時の経験を振り返りながら、

「新規事業・新製品企画におけるユーザーインタビューの重要性」

について、お話ししていきます。


1.ペルソナで終わらず、まず「この人は絶対使ってくれそう」という人を一人、明確にする

今回の発明は、ユーザーが一般消費者、いわゆる、

「B to C」

の事業になると想定し、ヒアリングできそうなユーザーを探しました。企画書を作りましょう、というと

「ペルソナ」

を設定するところまでを行う人は多いのですが、ヒアリングを前提にして、個人属性まで落とし込めている人は、なかなかいません。

しかし、ヒアリングなしでいきなり製品リリース、があり得ないのは当然ですが、特に起業する人については、企画書作成段階で、入念にヒアリングをすることをお勧めしています。

ちなみに、

「B to B」(企業向け)

の場合、特許情報を駆使して、ヒアリングする価値のある個人を特定する、という方法はかなり上手くいくことが分かっています。もちろん、ヒアリング(ユーザーインタビュー)を受けてもらえるかどうかは、申し込む前の準備etc 次第で、疎かにすると、結局話が聞けずに終わる可能性があります。

そのあたりのお話は、以下ページ内の記事で紹介しています。

特許情報を用いた技術マーケティング(2008)の要点〜IPランドスケープへ関心のある方へ


「ユーザーインタビューをはじめよう」(ポーチガル)
この程度の本は、読んでおいて損はしないと思います。
他、デザイン思考の書籍なども、
ユーザーインタビューで非常に役立ちます。


2.顧客のペインを聞き出すために、話が聞ける相手を選ぶ

ユーザーインタビューにたどり着いたとしても、正しく話が聞けるとは限りません。関係構築が上手くいかなければ、結局、本当のところ、は聞けません。いわゆる

「顧客のペイン」

を聞き出す行為は、相手に不快な思いをさせてしまう可能性もあります。誰かに紹介いただく場合も含め、コンタクト時からユーザーインタビューは始まっている、という意識で慎重に進めましょう。

今回の場合、発明の応用用途としてヘルスケア・医療寄りの用途を想定し、ユーザーインタビューを計画しました。既にある程度、技術は固まっており、その

「用途探索」

いわゆる

「技術マーケティング」

という位置づけです。

OBさんは、新規事業の経験はありますが、ユーザーインタビューは初めて、ということでしたので、どの程度のサンプル(映像・企画書を含む)を準備して臨むのか、など、事前に、OBさんと僕で調整しながら進めました。

その甲斐があってか、知人経由で適切な方を紹介いただくことができ、また、非常に率直にお話を伺うことができました。

10月25日の発明塾では、ユーザーインタビューの結果を踏まえ、

✓ その用途で、勝てるのか
✓ その用途の最先端は、どこまで来ているのか
✓ その用途で、勝てる特許(強い特許)を出すとしたらどういうものになるか

などを、討議しました。


3.ユーザーインタビューの結果をもとに、企画を練り直す

今回は、やはりそこだったか、というズバリのお話が聞けましたが、思ったような話が聞けなかった場合

✓ 想定しているユーザーやペルソナ、あるいは、選定したユーザー候補が間違っている

✓ ヒアリング・インタビューが間違っている

の2つの可能性を念頭に置いて、ヒアリングに至るプロセスとヒアリング結果を、精査する必要があります。

今回のように良好なヒアリング結果が得られた場合も、舞い上がって、起業だ!製品開発だ!となるのではなく、そこで勝ち残れるか、再度検証する必要があります。また、ヒアリング結果にマッチする製品を開発する想定での特許も、再度考える必要があります。

現在、OBさんは既に特許取得は済ませていますが、その特許から分割出願を行い、補正できる状態にしてあります。これを活用して、ヒアリング結果までカバーできる特許を取得できないか、検討したいところです。

行けそうだ、とわかったということは、競合も参入してくる可能性が高い、と言えますので、ここからは、競合がどのような参入の仕方をしてくるか、などを想定して、企画を詰めていく必要がありますね。


楠浦 拝



=======

✔ メール講義(無料)「e発明塾通信」配信希望の方は、こちらをご覧下さい。

(楠浦からのレターが、無料で週に1‐3回届く、とお考え下さい)


✔ 入塾・見学希望の方は、こちらを御覧ください。


✔ 運営元 TechnoProducer株式会社 へのお問い合わせは、こちらへお願いいたします。

2020年10月14日水曜日

「京都大学ものつくり講義2020」ご報告 ~ 「大学院」に行くべきでしょうか?という質問が出る背景を探る

 本年も、京都大学工学部機械系にて開講中の

「ものつくり講義」

の一コマを、担当させていただきました。

ありがとうございました。

一部内容は、別途 noteでも報告させていただきます。


本ブログは、学生の塾生さんが読まれることが多いため、ここでは、講義で出たご質問・メールでいただいたご質問と、それに対するご回答・返信を紹介しておきます。

● 「大学院」(修士)に行くべきでしょうか?~そもそも、なぜそういう質問が出るか?


過去も、類似の質問はありましたが、今回のご質問には、複数の論点が含まれていたので、取りあげます。

① 「院卒(修士)」の学歴が無いと採用してもらえないのではないか?あるいは、採用してもらえない会社が多いのではないか?

② 早く社会に出て、ビジネスに触れたい

③ 大学院で学ぶことは、社会に出て、特に、企業に入って役に立つのか?

他にも、いろいろな疑問が入り混じったご質問であったように思いましたが、重要な3つは上記であったかと感じました。

一つづつ行きましょう。

勉強するのは「バカ」になるためなんですよね、実は、、、。
これ別途、note で取りあげますー!

① 「院卒(修士)」の学歴が無いと採用してもらえないのではないか?あるいは、採用してもらえない会社が多いのではないか?


講義中は、

「今、そういうこと言う会社は無いと思います、というか、そういうこと言ってる会社は時代遅れだと思います(キッパリ)」

「それよりも、何ができるか、何を身につけているか、がすべてだと思います」

と答えておきました。昔は、採用は

「社内教育」

が前提でしたが、今は、多くの企業は、

「即戦力」

前提です。新卒でも、同じです。

補足として

「大学院で学ぶことを、今、しっかり身につけておけばいいんですよ」

とお答えしました。これ、イマイチ伝わってなかったみたいで

「大学院で学んだ専門知識は、企業に入って役に立ちますか?」・・・③

というご質問になっておりました。

専門知識の中には、役に立つものも、立たないものもあると思います。

僕でいうと、金属材料や破壊力学(僕の専門分野)の知識は、大活躍しました。

また、エネルギー工学や、大学院で学んだ政治学・経済学・哲学なども、かなり役立ちました。
(エネルギー問題の解決に取り組む大学院だったので、エネルギー問題を論じられるだけの政治・経済・哲学の素養が必要だということで、大学院のカリキュラムにこういうモノが入ってました)

発明に取り組むようになって、大学~大学院で学んだ、すべての学問知識は総動員されました。

しかし、こういう例は珍しいかもしれませんし、これを語ると、授業が後3時間延長(笑)されてしまうこともあり、切り口を変えて、以下のように答えました。

「大学院では、”まだ誰も取り組んでいない問題”を見つけて、取り組むことになるので、その方法を学びますね」

実は本来、大学時代(学士)でも、卒業論文はそうありたいところですが、実際には、勉強不足の学生が、7月から12月までの半年間、突貫工事で研究室に既にあるテーマの一部を手伝う、という感じになりがちです。

そもそも、

「”まだ誰も取り組んでいない問題”の見つけ方」

など、大学の講義や演習で教えている例は、稀だと思います。
(僕は、立命館大学で3回生に教えていましたが、、、)

発明塾に来ていた学生が最初まごまごするのも、まさにこの

「まだ誰も取り組んでいない問題(課題)の見つけ方なんて、習ってないし考えたこともない」

「与えられた問題を解くことしか、やったことがないし教わってない」

からでした。

もちろん、発明塾で3か月も過ごせば、おおよそやり方は理解できるようになり、おぼつかない部分もありながらも、取り組めるようになりますので

「教えれば(教われば)、誰でもできる」

ことだということは、10年かけて確認できています。

ということで、僕の結論は、

「発明塾なり、なんなりで、自力で取り組んで身につければよいのでは?」

ということでした。弊社では、eラーニング教材も提供していますし、いつでもどこでも、なんでも学べる時代です。身につけられるかどうかは、本人の意欲次第で、大学・大学院に行くか行かないかは、全く関係ありません。

長くなりそうですね、、、

② 早く社会に出て、ビジネスに触れたい


これは、とても大切なことだと思いますし、気持ちはわかりますが、

「触れる」

だけなら、休学してインターンをするなり、いろんな選択肢があります。

「活躍」

したいなら、ある程度の準備は必要かもしれません。

ただ、人によっては、

「社会に出て、結果を出しながら手法を身につける」

のが得意、という方もおられます。

これ、実は僕です。

学ぶ前にやってしまって、結果出しながら身につけていく。

これが僕の学び方です。

ナノテクなんて、本すら出ておらず、専門家も不在。研究しながら学ぶしかなく、何だったら、僕が作った解説記事が、ある企業で教科書として配られていた(実話)ということがあるぐらいです(笑

また、発明の手法なんて、実際に役立つレベルの完成度の高い方法は、誰も、どこでも、教えてませんでしたから、仕方ないですけど、、、

③ 大学院で学ぶことは、社会に出て、特に、企業に入って役に立つのか?


これ、①で答えちゃいましたね。


ということで、本日はこれまで。


しばらくお休みしていた、発明塾(OBOG)討議ですが、間もなく再開される予定です。

楽しみです。

OBOGに交じって、学生さんも学んでいく形式で、継続していきますので、よろしくお願い致します。


楠浦 拝



=======

✔ メール講義(無料)「e発明塾通信」配信希望の方は、こちらをご覧下さい。

(楠浦からのレターが、無料で週に1‐3回届く、とお考え下さい)


✔ 入塾・見学希望の方は、こちらを御覧ください。

✔ 運営元 TechnoProducer株式会社 へのお問い合わせは、こちらへお願いいたします。