「発明塾®」へようこそ!: 6月 2011

2011年6月30日木曜日

発明塾京都 第44回開催報告~「毎日15分」の習慣があなたを創る

@京都第44回も無事終了しました。

今回は、16:30-18:00まで、一般教養の講義「起業と事業創造」で知財に関する講義があったため。18:30開催となりました。講義に出席してくれた(&手伝ってくれた)、小塚さん、幅崎さん、杉本さん、白井さん(順不同)、ありがとうございました。講義中の質問や、質疑応答が活発だったので、知財や発明に興味をもつ学生がそれなりにいるような気がしましたが、どうなのでしょうか?(発明塾のパンフレットをもらいに来てくれた学生さんも、結構いました。)

さて、今回は3名のアイデアについて、簡単な討議を行いました。京都組は今まで全体で一つのテーマを討議する方法を長く続けてきたので、一人でじっくり考える力が弱い気がします。(2件発明を提出している人がほとんど?いない、という点もそれを裏付けている) 今後は、各自自分なりに「課題分析」なり「先行技術調査」なり「アイデアをマインドマップに整理する」なり、あるステップの作業を詰めた上で、討議に持ち込みましょう。そろそろ、そういう時期です。

あと、まだ若干頭が硬い?人がいるので、阿刀田高のあるミステリーを取り上げ、彼はどうやってそれを思いついたのか、を推測するゲームをやりました。(元ネタは、彼の著作「アイデアを捜せ」) 今回は実話なので正解がありますが、本来は正解のないゲームなので、自由に考えればいいのです。「どれぐらい自由になれるか」を試すゲームだと思えばいいです。

発明塾では「それは無理やろ」とか言う人はいません。「オモロイ」ということにしていますから。「それはさすがに無理やろ」と言わせるぐらい突拍子も無いことを考えてみましょう。

多くの大学生と話していて気づくのですが、「必ずかつ唯一の答えのある問題」に的確に答えるのが得意な人は多いようです。しかし、「答えのない問題に、できるだけ独創的な答えを持ち込む」ことが出来る人は、まだまだ少ないですね。みんな「他の人が考えそうなこと」、つまり「他の人全員の賛同が得られること」「丸をつけてもらえる答え」を考える癖が付いているのですが、発明では「他の人が、おおよそ考えつきそうにない/やりそうにもないことを考える」必要がありますから、脳の構造を完全に作り替える必要があります。

それには結局「実践」しかありません。

毎日15分、特許を分析しているという塾生さんや、毎朝30分早く起きて発明をする、という塾生さんなど様々な人がいますが、皆さんも自分なりに「常に考える」習慣を作ってください。

僕は、これまでにPCに書きためた数百のアイデア集を、毎日見ることにしています。膨らみそうなものは、どんどん追記していく。そうやって、ある程度ストーリーができたら、提案書に移行する。提案書を書きながら更に考えていく感じですね。

人間は習慣で出来ていますし、人生は時間で出来ています。つまり、時間の使い方を習慣によって管理すれば、うまくいく、ということです。

では、次回の京都組の討議を楽しみにしています。

よろしく。

2011年6月26日日曜日

発明塾東京 第48回開催報告

第48回ですか。節目と思っている50回も近づいてきましたね。

さて、今回は2名のアイデアを討議しました。

それぞれ、ステージの違うアイデアだったので、お互いに参考になったのではないかと思います。

まず、漠然としたコンセプトや、実現性が見えないアイデアの場合、思い切って上位概念化し既存のアプローチをまず整理します。使えるものは使い、発明する必要のある部分を見極めます。特許検索で母集団を作ったら、企業単位(出願人)で粗く分析するといいでしょう。企業ごとにカラーがありますので、大まかな傾向、技術のフロントラインがどの辺で、方向性がどっち向きかはわかります。それを踏まえて、自分のアイデアをどうふくらませるのか考えます。

もうひとつのアプローチの考え方としては、その技術自体を突っ込んでやるのか、その技術はいずれ完成されると考えて、その周辺(実用化されるとして必要になる物)をやるのか、という二択を考えることです。当然、どちらも考えても構いません。むしろ、その二つに分けて両方考えましょう。

実際に使うとなると、どんなことが問題になるのか。自分で作る、使うと考えて、一つ一つの動作をイメージして、課題を洗い出す(掘り起こす)ことです。それが課題の先取りです。

ある程度アイデアが具体化していれば、先行技術を探して比較することになります。そしてその本質が不可欠なものか、どんな効果があるのか(どんな課題を解決しているのか)を考えることになります。この辺はいつものパターンですね。

では、次回も宜しく。

2011年6月25日土曜日

発明塾東京初級 第6回

初級第6回も無事終了しました。

今回は、アイデアをたくさん出すために皆さんが日々やるべき「訓練」を紹介しました。知っていてもやらないと意味ないので、これから毎日、しっかり訓練してください。

昔から参加している人は何度もやっていますが、10円玉ゲームですね。10円を観察して、なんでもいいので気付いたことを5分間に50個書きだすという、ただそれだけです。

あまり注意点ばかり書いても、みんな頭でっかちになるだけなので書きたくは無いですが、復習のために多少書いておきます。

・なんども数えないで済むようにしておくこと(マス目を作っておくなど)。「数えている時間がムダ」。5分しかないのに、数えるのにどれぐらい時間を使うつもりなのでしょうか、皆さんは。
・上記に通じるが、50個=5X10のように小分けにする。5つの切り口で10個づつ出してもいいし、10の切り口で5個づつ出してもいい。問題を小分けにする、のはロジカル・シンキングの基本。

・勝手な制約条件を自分で設けない。これはダメか、とか、つまらないか、とか。何でもいいと言われれば何でもいいのです。境界条件をはっきり(この場合は、完全自由)させることで、悩む時間を減らし、アイデアを出す時間に回します。悩む時間のムダ。
・上記に通じますが、「アイデアを出す」工程と「アイデアを評価する」工程を完全に分ける。出すときはとにかく出しまくる。評価は後でよい。ちなみに今回は「何でもよい」のだから、そもそも評価は必要ない。何でも良いと言われているのに、アイデアを出しながら評価している人があまりに多い。これも「悩む時間のムダ」。

明快ですね。アイデアが出ない人は「数えるムダ」と「悩むムダ」を繰り返して、時間を消費して終了なのです。自分はどうか、再度振り返ってみてください。

今回は、各自の気付いた点をマップにカテゴライズ(切り口化)し、さらにそれを元に、切り口を増やして再度10円玉を観察していただきました。この工程が、発明そのものです。

・多くのアイデア→カテゴライズして切り口化→新たな切り口→さらなるアイデア・・・
・ある程度数がまとまったら「評価」。足りなければ、また最初から。

これを、自分でどれだけ繰り返せるか、で討議できるアイデアを持ち込めるか、が決まります。

まずは毎日、これをやってください。できるようになりたければ、繰り返しやるしか有りません。

次回は、今回後半で討議した特許分析を元に、課題を整理し、新たな課題を発掘するなりして課題設定し(前回やりましたから大丈夫ですね)、それに対する多数のアイデアをマインドマップに整理してきてください。

よろしく。

2011年6月23日木曜日

発明塾京都 第43回開催報告

第43回も無事終了しました。

今回は、事前演習課題を1時間ほど討議しました。課題をやってきてくれた1回生に発表してもらい、それをベースにさらに議論を進めました。

途中で、私の過去の発明も紹介し、そこで扱ったコンセプトをさらにブラッシュアップできないかということも、考えてみました。

今回は、実際に発明が出るシチュエーションに近かったのではないかなと思います。

・事前の予習
・全体で討議
・いくつかのコンセプトの紹介
・各自作業⇔突発的な討議 の繰り返し

出席者は、今回討議したコンセプトや要素御術を元に、新たなコンセプト、実現形態を考えてみてください。

次回は、これまでと同じ個別指導形式にします。各自アイデアや考えていることを発表してもらいます。
直前に京都大学で講義があるため(起業と事業創造16:30-18:00)、18:30開始にします。および、講義を受けたことがない人は、出席ください。

では。

2011年6月17日金曜日

発明塾@駒場東邦開催いたしました!


2011年6月18日に、「発明塾@駒場東邦高校」は無事開催されました。

当日は、参加した約300名の中高生が、次々と「アイデア」を発表し参加してくれました。

「アイデア」は尽きることがなく、やむを得ず途中で中断し、まとめざるを得ない状況でした。
発言できなかった中高生の皆さん、ごめんなさい。
そのアイデアを、自分なりにさらに発展させてみてください。

続きが討議したければ「発明塾」へ。

ご協力いただきました Intellectual Ventures 黒木様、駒場東邦中高の先生方、中山さん、発明塾生の皆さん、参加いただいた社会人の皆さん、どうもありがとうございました。

中高生に適切な場を与えれば、必ず世界中の課題を解決してくれると思います。

彼らと塾生のこれからの活躍が、非常に楽しみになった日でした。



● 駒東生ならびに学校関係者の方々へのメッセージ

「多くの有為な若者と知恵を絞るという貴重な時間を頂き、ありがとうございました。

生徒サイドの発言打ち切り間際は、20-30名ぐらい同時に手を上げていた気がしますので、皆いろいろ考えて、言いたいことがあっただろうと思います。

それ自体が、非常にいいことだと思います。

僕が今回伝えたかったのは、

✔ 自分で徹底的に考える

そして

✔ それを勇気を持って発言する

ことの重要性です。

おそらく、駒東生が東大・京大等に入って、塾生と接する機会もあるでしょう。
今後の活躍が大変楽しみです。

ぜひ、自分で考えて素晴らしい未来を切り拓いてください。
そして、どこかで僕や塾生を見かけたら是非、『駒場東邦で発明塾に出た者です!』と、元気よく声をかけてください。

またお会いできることを、心から楽しみにしております。」


「発明塾」塾長 楠浦 拝



以下、過去の投稿です。震災の影響で、一度延期になっています。

>>>
地震の影響で延期となった「発明塾@駒東」ですが、いよいよ今週末6月18日に開催です!


>>>
発明は、社会人や大学生だけのものではありません。

ついに、3月12日に発明塾は高校進出を果たします。

第一弾は@駒場東邦。

どんな高校生に出会えるのか、とても楽しみです。

2011年6月16日木曜日

発明塾京都 第42回開催報告

第42回も無事終了しました。

今回も、各塾生さんの発明を個別に討議しました。3時間ですので時間が限られている難しさはありますが、フィードバックは早くできるのと、興味がある人は適宜議論に割り込んでくれるので、効率よく進められる形であるとは、思います。

あと、なんとなく話が聞こえてくる、という環境は、大学の研究室みたいでいいかなと、個人的には思います。実は川崎重工の大型2輪設計部門はそういう雰囲気で、各自に個別のブースが割り当てられているのですが、仕切りが適度に低くて、他の人達がやっている作業や議論が聞こえてくるのです。つい口をだす人もいたりして、なかなか楽しい環境でした。(私が在籍していた頃の話ですが)

次回は、新しいテーマを決めてブレストをしたいと思います。テーマの希望があれば(おおまかな分野でもOK)土曜日中に教えてください。

さて、明日は@駒東ですね。

参加メンバーはよろしく。

見学希望メンバーは連絡を。



2011年6月12日日曜日

発明塾東京 第47回開催報告

第47回は、3名の塾生さんのアイデアについて討議しました。

今回の討議の内容ではないですが、今回話した点は

・分析的に、トップダウンでアイデアを出すのが得意な人
・なんだかわからないけど思いついてしまう人。その後、そのアイデアが正しい課題を対象にしているか検証していく。

の二つの発明(家)タイプがあること、です。

どちらから始まるか、だけなので大差はないのですが、自分がどちらが得意なのか知っておくと、きっかけをつかみやすいと思います。

後はやはり「アイデアは、とにかくたくさん出す」ことですかね。たくさん出してから、評価・検証する。これに尽きますね。

そのためのツールとして「マインドマップ」があるわけです。

2011年6月11日土曜日

発明塾東京初級 第5回

本日は、大幅時間オーバー(ごめんね!)しましたが、無事終了しました。

各自のアイデアを元に議論をしながら、
・検索の仕方
・何が特許になる発明の条件なのか
・特許制度
について、取り上げました。

IPCに代表される記号を活用することで、先行技術も探せますし、母集団の分析もできます。
あるキーワードが、どういう技術分野とつながっているのか、それがわかれば、どの分野に自分の考えていることに近い技術があるか、わかります。それは、発明のヒントや、解決策の探索にも使えます(異分野融合)

「かんたん特許検索」のIPCランキング機能を、有効活用してください。読まずに特許を知る方法です。

現在出ているアイデアは、引き続き各自に詰めてもらうとして、全体としては、次回はまた新しいテーマで討議を行います。現在のアイデアについての討議は、個別討議で行いますので、各自進めながら相談してください。

では。

2011年6月9日木曜日

発明塾京都 第41回開催報告

@京都も41回ですか。一周年に近づいてきましたね。

6月頃に京大理学部自主ゼミサークルS2Sのメンバーに話をしたのが、@京都のきっかけですから、そういう意味では、一周年かな。

早いものです。
>今年も「起業と事業創造」で講義を行いますので、よろしく。

さて、昨日も個別指導方式で開催しました。6名の塾生さんからそれぞれのアイデアの発表?があり、それを討議しました。やはりこのほうが、効率はよさそうですね。

あとは、この一週間にTwitterで話題になった技術や知財に関することを、おさらいしました。期せずして、知的財産権(特許、意匠、商標、著作権等)や、不正競争防止法の話も出ました。

僕自身は、特許にする(なる)かどうかを別にして、アイデアを出すことは大切なことだと思うのですが、「何が新しいのか」ということと、「それを守ることができるのか」といういことを考えた場合に、「特許になるのかどうか」という視点を入れることは非常に重要です。

いいアイデアも、守れなければ真似されて終わり。これは私自身も数多く体験してきました。

また「独りよがりの新しさ」も、無意味です。先行技術との対比により、「世の中的に何が新しいのか」を考える事が重要です。それが「社会の進歩」を生み出すのですから。

ということで、今後も宜しく。


2011年6月4日土曜日

発明塾東 京初級 第4回

初級の第4回は、個別指導方式で各自のアイデアを取り上げながら討議しました。

いつもながら、いいアイデアが出たので書けないのですが・・・この方式の方が上手く進むことがわかりました。一人である程度調べたり考えたりしてくる+対話にてそれを引き出しつつ、異分野や過去の発明の要素を取り入れていく。そんな感じで進めました。

今日の2名は、次回までにこのアイデアを詰めてくる、SRを書き始めることにします。

次回もこの方法で進めますので、各自、自分なりにアイデアについて調べるなり、ここが面白そうということを見つけてくること。これ以上一人では考えられない、というところまで考えてくることですね。


ファミリー特許(海外特許)検索はこれで。

ファミリー特許がダイレクトに検索できます。

http://jp-ip.com/

2011年6月2日木曜日

発明塾京都 第40回開催報告

@京都の第40回も無事終了しました。
新しい方法にして2回目です。個人的には、フィードバックを早く返せるので、各自の発明が進むのと、各自のレベルに応じた討議ができるのでいいかなと思っていますが、気付いた点があれば、皆さんから「課題」を挙げてもらえればと思います。(解決策ではなく:笑)

あくまで課題分析、課題発掘、課題創造で。

さて、昨日は時間を取って「知財戦略とはなんなのか」という話をしました。ちょうど午前に、ある企業さんで全くおなじ話をしたので、その時の資料を配りました。(その会社では、まさにこの考え方を実行したいそうです)

しかも、僕が話すのは「弱者の知財戦略」です。戦略論を考えるときは、必ず強者の戦略なのか、弱者の戦略なのかを明らかにする必要があります。ランチェスターによれば、強者と弱者で取るべき戦略が全く異なるからです。詳しくは以下。

・ランチェスター戦略
ランチェスターの理論そのもの: http://www2k.biglobe.ne.jp/~yano/LAN.html
ビジネス応用: http://www.sengoku.biz/lan.htm

で、個人、起業もしくは新規事業であれば、基本的に弱者戦略になりますから、「本当に新しいことを実行する」人が身につけるべき戦略は「弱者の戦略」になります。

実は、アカデミアは基本的に「個人」なので、なにをするにも取るべき戦略は「弱者の戦略」になります。知財においても同じです。自分の知をどう「財産」にし、「価値化(現金化と言ってもいい)」していくか、というのが、アカデミアの知財戦略になります。完全に個人事業主です。この点は、ほとんどのアカデミア志願者は理解していないので、強調しておきます。大学が何とかしてくれる、みたいな事は起こりません。放置すれば「パクられて」終わるだけです。成果は論文で発表するわけなので、公知技術になりますから、誰でも使えます。

知識社会において、個人が自分の知をどう活用し生き残るか、それを教えるのも発明塾の仕事の一つだと思っています。

また、MOTやMBAで学ぶ戦略論のほとんどが「強者の戦略」なので、注意しておいてください。(強者の論理、と言ってもいいかも知れません。この辺は、本多勝一の「殺される側の論理」などを読むといいでしょう。立場が変われば、論理も変わるわけです。)

ここには内容は書ききれませんが、僕が「知財戦略セミナー」で話している内容の分かりやすい部分(難しい理屈ではなく、実例)を抜粋して、その場で話しました。今後メルマガでも解説をしていこうと思っていますので、メルマガ配信されてない人は申し込んでおいてください。

@a_dat さんとのTwitterでのやり取りで取り上げましたが、ある発言や理論が、どういう立場(の人)からのものなのか、を理解しておくことは非常に重要です。つまり「暗黙の前提条件」を明らかにしておく、ということです。これは発明でも同じという話はしましたね。

勝ち続けている人が勝つための方法なのか、全く無名の人間が突如TOPに出るための方法なのか。前職のベンチャーでは、僕自身もこの辺が消化しきれていなくて、初期的には失敗しました。大手企業出身の起業家は、この辺が落とし穴なのかも知れませんね。

ではでは、次回もきちんと準備して、討議に望んでください。有意義な討議ができることを、期待しています。

2011年6月1日水曜日

「前提を疑え」

ここ数回の塾生さんの発想パターンを見ていると、別に誰もそんな制約条件を課していないのに、暗黙の制約条件に縛られ、その中に答えがないと苦しんでいる例があります。

ブレークスルーのコツは「前提を疑う」ということ。正確には「自分が暗黙のうちに設定している制約条件が何かをあぶり出し、それを否定する」ことです。

✔ 自分の思考の前提になっているものは何か。
✔ そして、その前提を取っ払い、別のところに新たな箱(制約条件)を作れないか。

のように考えるのが発明です。

「そんな事考えていいの?」と、一瞬ためらうぐらいのことを考えましょう。
考えてはいけないことなど、世の中には(ほとんど)ありません。

また、行き詰まるときは、だいたい制約条件が間違っています
適切な制約条件の設定とは、単に「上位概念化」や「枠を広げる」とかいうレベルのことではなくて、これまで暗黙のうちに設定していた前提と、全く違うところに箱を作ることを指します。


たとえば、僕が2004年以降に取り組む羽目になった「ナノインプリント技術の実用化開発」では、これでもかというぐらいに、次々と難問が発生しました。
そして、それらは「一見、常識はずれ」の手法で解決できました。

「一見」が重要で、「常識が、間違っている」「常識が、偏っている」ことを、いかに早く見出すか、が重要なポイントであることを、この時の数年で学びました。


◆ 「半導体製造に使うなら精密な装置が必要」と言われ装置開発をしていたが、用途は「半導体」ではなかった。

◆ 「金型は、電子ビーム描画で作らなければならない。凄く時間がかかるので、4インチで数千万から億単位になる」と言われていた。「ホンマかいな」ということで、独自に調べまくった結果、高速の電子ビーム描画装置なるものが、ある業種の方々の工場にこっそり存在し、4インチ100万円程度で製造できることがわかった。

◆ 「金型とウエハーが剛体接触だから、面の厳密な平面度と、大きさ合わせが重要(委細は割愛)」と言われていたが、「だったら」と弾性体接触にしたら、あっさり解決した。

◆ 「金型表面がナノ構造であるため、型の耐久性が問題になる」と言われ、「ナノ金属の疲労強度」の研究にまで手を染めた。めどが立たず苦しんでいたある日、ふと我に返り「金属をやめてしまえば?」「型として樹脂レプリカを使えば?」と思い立ち、試したところ、あっさり成功した。樹脂レプリカだと耐久性が問題と言われたが、それは全く問題にならなかった。正確に言うと、表面だけ金属にすれば解決した。熱せられた樹脂には疲労という概念がなく(多分、動的に回復する)、硬さというのは表面だけで決まるということがわかった。「耐久性とはなんぞや」という問いが足りていなかった。

◆ 「金型のナノレベルの穴の中に入った樹脂の汚れは取れない」「燃やす(半導体プロセスでアッシングという)しか無い」と言われていたが、犠牲膜を作り、「洗うときに金型表面を溶かす」という手法で解決できた。溶かした表面は、また「膜」を作れば再生するため、半永久的に使える可能性を見出した。まさに一石二鳥だった。

◆ ナノレベルの構造物は、一つ一つ測るのが大変(例えば「AFM」を想定して下さい)で、その高速化(「高速スキャン」と呼ばれた)が課題と言われていたが、構造物を一つづつ計測せずに形状を「推定」する手法が存在し、解決できた。



「精神と物質」(利根川)
利根川先生は、常識はずれの実験道具を考案し、
未来の常識を創り出した。
常識外れの道具を使わないといけなくなった場合、
新しい領域に踏み込んでいる可能性が高い、
とおっしゃられていますが、その通りだと感じます。


「前提を見直し」「正しい問いを立て」「調べまくる」という、ごく当たり前のことができないから、なかなか良いアイデアは出ないわけです。

行き詰まったら、「自分がなににハマっているのか」と問いかけてみると良いでしょう。



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   (楠浦からのレターが、無料で週に1‐3回届く、とお考え下さい)
✔ 運営元 TechnoProducer株式会社 へのお問い合わせは、こちらへお願いいたします。


超交流会@京大 5/28 「イノベーションの作法」 by 濱口秀司さん


塾生さんが、まとめてくれました。

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超交流会@京大 5/28 で「イノベーションの作法」の講演をされた濱口秀司さんの技法が、下記のサイトにも紹介されております。復習にもなりますし、講演では(時間不足で?)触れられなかったこともチラホラあります。

見つけたので共有します。とりいそぎ。

structured chaos (英語)

交流会当日のtogether
http://togetter.com/li/141714


濱口さんが、その思考法の一部を明かした記事
http://enterprisezine.jp/article/corner/231