「発明塾®」へようこそ!: 3月 2013

2013年3月28日木曜日

発明塾京都第124回開催報告

 今回は、非常にイレギュラーな形ではありますが、年度末ということもありましょうか、日頃「発明塾」の運営にご協力いただいている「協賛企業」の方々、企業のCTO、研究開発本部長、企画部門の方々等にお越しいただき、発明塾生との懇談会を行いました。

 塾生の方から自己紹介と、発明塾で学んだこと、取り組んでいること、をそれぞれ話してもらいました。普段そういう場がないので知りませんでしたが、意外と皆、しっかりしてましたね。皆さんの成長を見ることが出来て、個人的にはとても良かったです。

 塾生からは、企業の方々に「企業内の研究開発について」から「CTOってどんなことするんですか?(笑)」のような素朴な疑問まで、様々な質問をさせていただきました。長時間に渡り、全ての質問に、非常に丁寧にご回答を頂きました協賛企業の方々に、あらためて深くお礼申し上げます。

 特段、就職活動などを意識した場では無いのですが、「そんな面白い会社なんだったら、入ってみたい」と思った塾生もいたようです。大学生活(本当は高校生活)の早い時期から、企業(というか社会)で働くイメージを持って、日々の勉強に取り組むことは、私が「甲斐塾」で学んで/教えて、とても重要だと思ったことの一つです。

 今回の場が、そのきっかけになったのであれば、予期せぬことでしたが、とても喜ばしいことだと思います。

「結果を出すとは、どういうことか」
「結果を出すと、どうなるのか。どう評価されるのか、評価が変わるのか」
「結果を出し続けるには、どうすればいいのか」

自問自答し続けて欲しいと思います。ドラッカー曰く。

「成果をあげる人に共通するのは、習慣である」

僕から一言。

「成果を出せば、周囲の見る目も変わる。周りを変えるには、自分を変え、成果を出すしか無い。プレゼンもハッタリも、愚痴も、地位も学位も、そんなものは不要である。というか、そんなものは害でしか無い。必要なのは、成果であり結果であり、実績である。そして、それを継続することである」

 発明塾は、そもそも「学生の世界にとどまらず、世界を土俵に」活動したい学生、また「成果をあげる方法を身につけ」たい学生のための場です。このように、企業の第一線で活躍されている方々と、クリエイティブで前向きなやり取りができる機会を、今後も模索して行きたいと思います。

 では、今回頂いた様々なメッセージを励みに、発明活動に取り組んでください!


2013年3月23日土曜日

「TechnoProducer発明奨学生」制度の創設~基礎科学の発展と創造的リーダーの育成を目指す

 発明塾も、丸3年が過ぎようとしています。

 中には2年半程度在籍している塾生もおり、皆それなりに発明に習熟し、また実績をあげています。そこでこの度、特に優秀な塾生、発明塾への貢献が著しい(もしくは期待出来る)塾生を対象に、奨学生制度を設けることにしました。


「発明能力に秀で、リーダーシップを発揮できる」
つまり
「自ら優れた発明を創出し、また、発明を科学し、今後の発明塾生の指導、発明塾の運営に貢献する」
「発明と教育を通じて、自他の自己実現を達成、支援し、社会をより良くする」

学生を、今後も奨学生として支援していくこととします。今後のますますの活躍を期待しています。

 なお、これとは別に、毎年の実績に応じた寄付金を、京都大学理学部に今後も提供していきます。

 弊社は今後も、

「基礎科学の発展」
「創造的リーダーシップを発揮できる人材の育成(創造的リーダー)」

に、積極的に取組みます。ご理解、ご支援のほど、引き続きよろしくお願いいたします。


※ 注) "Special Fellowship for high performance inventor by TechnoProducer Corp."

2013春合宿(第二回)開催

第二回合宿を行いました(含む、京大美術部展覧会見学)。

 今回は、各自の発明の仕上げ作業と、一連の発明で得られた知見について少し整理しました。「トレードオフを意識する」という議論に戻ってきたのが、個人的には非常に興味深いです。

各自、提案書をしっかり書いてくださいね。

2013年3月16日土曜日

塾長の部屋(39)~会わない会議術「何のために会うか」

実は先週サボりました(笑)。合宿が有ったのでご容赦を。今週は、僕が会社経営上、常に意識している2つのルールの一つを紹介します。

ルール(1)「会うために会うのであって、打ち合わせるために会うのではない」

ルール(2)「社内からパワーポイント病、プレゼン病を排除し、徹底して言語化する」


今日は「ルール(1)」です。


もともとこのルール(1)のルーツは、僕が前職のベンチャーでCTO/事業責任者をしていた時に遡ります。当時何かの記事で、JR東海の松本社長(当時)が、


「IT化が進むと、ますます人は会うようになる」


と答えていたことがきっかけです。


確かインタビュアーは「これだけIT化が進み、皆が忙しくなる中で、新幹線のような長距離輸送ビジネスは将来性があるのか」みたいな質問をしていました。

彼は、ゲーリー・ベッカー(注1)の理論を引用し
「時間制約と資源制約」のうち、時間制約がますます厳しくなる、というところから

「会う、ということの貴重性、重要性が再認識され、ますます人は遠方まで出かけてでも、会うようになる

というようなことを言っていた。


彼がほんとうのところ何が言いたかったかは、今となってはわからない(記事がいつの何だったかも思い出せないので)が、僕なりの解釈を経て、今の経営方針になっている。それが、



「会うために会う」

ということである。



正直、これだけIT化が進めば、仕事上の打ち合わせから相談事、果ては「発明」のような超クリエイティブな作業まで、全く会わずに済ませることが可能である。

むしろその方が自由度が高く、早いし、効率もよい。そして、集中できる。

これは、後述の「会う」目的のちょうどウラ面である。会議は、会わない方が絶対にいい。

これが僕の確信である。


たまに弊社でも「では次のMTG(ミーティング)で」みたいな会話が出るが、僕はその手の提案を全て即座に却下し、その場で電話会議で片付けるか、別途電話会議を招集する(させる)ことにしている。


なんで次のMTG(面談)まで先送りする必要があるのか、意味がわからないからである。

MTG律速は最悪である(注2)。 

重要なのは「会う必要があるのか無いのか」である。


では「会うために会う」とはどういうことか。


例えば、最近どうしているとか、趣味がどうとか家族がどうとか、そういう話は、緊急性がないので仕事の電話会議ではなかなか話せない。だけど、組織(コミュニティ)において、この手の「四方山話」は、とても重要である。


ここで「7つの習慣」(注3)を思い出したあなたは、非常にカンがよろしい。まさに「第2の領域」の話しである。



だから僕は、

「仕事上重要なことは、会うまで待たずに、すぐメールか電話をして、電話会議を設定する」

「会うときには、できるだけくだらない話をする」

ことにしている。


普段人と毎日会っていた時には、全く気づかなかったことではありますが。

この「会う」「会わない」ということは、教育においても、非常に重要なファクターである(特に「会わない」)ことを、最近痛感するが、これはまた別の機会にしましょうか。



※ 注1) 彼の著書の中で、わかりやすい(とっつきやすい)のは以下。大学生が、「経済学」がどう日常生活で活かされるか、ということを知るのに最適。

・『ベッカー教授の経済学ではこう考える――教育・結婚から税金・通貨問題まで』(東洋経済新報社, 1998年)

※ 注2)一般の企業だと「会議室が取れないので」なんて事がよくあるが、これもよく考えたら意味不明。資源(空間資源)制約の典型。時間のほうが貴重な現代において、別の制約で縛ると、効率が下がる。最も制約が厳しいもので縛るべきである、というのは「発明理論」でも教えている通り。


※ 注3) 「7つの習慣」フランクリン・コヴィー・ジャパン 参照



2013年3月14日木曜日

発明塾京都第123回開催報告

 第123回も無事終了しました。

 今回は、各自が書き始めている「発明提案書」について、個別にレビューしながら進めました。

「事前に送付」→「楠浦コメント」→「書き直し」→「時間中に提出」→・・・

という感じで、寺子屋というか、公文式的な感じで進めました。

 発明提案書を書く、というのは、発明の中でも最も重要なプロセスの一つですが、ここは完全の個人作業なので、全体で討議していると全く進みません。基本的に「論理的思考」と一言で片付けてしまうこのプロセス(提案書づくりは論理の塊)ですが、各自なりの「論理」が出ますので、共有することはほぼ無意味です。

 したがって、各自が練り上げた論理を「客観的に(楠浦が)チェックする」ことで、穴を埋め、発明を詰めていく、ということになります。

 僕は常に「発明提案書を書く作業こそが発明」と言っています。そして、

「発明提案書は企画書」
「発明提案書は研究計画書」

だと考えています。

 一連の作業で、実感してもらえたらと思います。

 ではでは、次回もよろしく。


2013年3月11日月曜日

月例ブレストと特別講義~ビジネスを起点に考える/アイデアの詰め方

 本日は、朝から夕方まで月例の社内ブレストを開催し、その後塾生との発明討議/特別講義をお行いました(Web会議にて)。


 月例のブレストでは、とある技術について

「今後この技術が普及した場合に、どのようなビジネス生態系が生まれるか」
「そこにおいて、どのような権利が必要となるか」

ということを議論しました。権利が「ビジネスを保護する」ためのものである以上、「どういうビジネスが生まれてくるのか(特にお金の流れ)」を予測し、そこに必要な権利を想定して手を打っていくことが、非常に重要である。結果的に、いくつか有効なアイデアが創出されました。


 また、夜は塾生とWeb会議にて、

「アイデアの詰め方」

について討議し、特別講義を行いました。「詰める」というのは、僕の頭のなかでは「概念のレイヤーを下げる」ことです。いかに強制的に概念のレイヤーを下げていくか、ここが発明のスピードを決めます。

 検索可能な概念に落としこみ、特許分析を行い、いくつか有望な先行技術を特定し、それらをベースに「それらの技術思想を、新しい技術で乗り越える」(注)発明を行います。先行技術が想定していなかった技術進化、システムの最適化、それを見出すことが発明の第一歩です。

 講義では、具体的な手順を指示し、今後の作業を続けてもらうこととしました。次回の発明塾がとても楽しみです。

 では。


※ 注) 「知的財産戦略」丸島 P43 参照

2013年3月7日木曜日

発明塾京都第122回開催報告

 第122回も無事終了しました。

 今回は、合宿で出たアイデアの「詰め」を行いました。「どう詰めるのか」という、ある種発明の「肝」の部分について、定式化を試みました。まだ完璧とはいえない気がしますが、当面、今あるアイデアを詰めるのには有効な手法だと思いますので、しっかり活用してください。

 これまで皆さんにとって大きな壁であった、「発明を詰める」「発明提案書を書く(先行技術を踏まえた、進歩性と実現可能性の証明)」という作業が、今回の定式化で、「ある程度」壁でなくなったはずです。

 ここで必要なのは、
・当事者の目
・審査官の目
を「切り替え」て往復(正確には逆算)し、落としこんでいくことです。いつも言う「客観性」です。

 締め切りまで時間がありませんので(発明には必ず締め切りがある、これが普通)、それまでに仕上がるように、「時間管理」をよろしく。


2013年3月3日日曜日

塾長の部屋(38)~「毎週教会へ行く」ことの意味

 今週は土曜日が「合宿」だったので、日曜日も仕事をする(注)ことになりましたが、僕は基本的に、土曜日は仕事をして、日曜日は仕事以外のことをする時間にしています。

 仕事以外のこと、で一番重要なことは「自分にとっての教会へ行く」ことと、そこで「自作の聖書を読む」ことです。クリスチャンに怒られそうな比喩ですが、精神的に隔絶された場所で、原理原則を確認する作業は、毎週程度の頻度で行うことが必要だと、今更ながら感じます。

 たまたまですが、僕の「聖書」にも「旧約」と「新約」があり、この2冊を必ず通しで読む(新約→旧約と)ことが、日曜日の日課です。ちなみに「新約」は、たまに平日にも読みますが、旧約は日曜にしか読みません。

 喩え話なので、意味不明だと思いますが(卒業生には、OB会で説明します)、その「聖書(どちらかと言うと旧約)」の内容の一部を、塾生がまとめてくれていますので、公開することにします。彼は大学2回生なのですが、ここ最近、成長が著しいメンバーの一人です。将来が非常に楽しみです。


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「成長の方法」

1.リバる(形式知化できていない能力(知)・方法を抽出すること)(暗黙知→形式知の方法論)
キーワード:「確信」

(1)人(自分、他人)をリバる
・すごい奴をターゲットにする(客観的結果により評価)
・総合能力を因数分解する。各能力をラベリングして実体としてとらえることがカギ。
・因数分解の後はいつもの引き算。目的に応じた競合を設定し、差異を求めることで、本質が分かる。
・自分が形式知化できていない能力まで、仮説的に定義することがポイント。
・自分がすでに形式知化できている能力を再び学ぶ必要はなく、学ぶべきだが分からないものを仮説的に定義している。
・自分がまだ形式知化できていない能力についての参考文献(ググってもOK)を見つける。これまでに構築されてきた理論をまず学ぶ。
・自分の経験だけをもとに知(能力)に気づく行為は、すでに体系化されている知ならそれは再発明しているだけでコストの無駄であるから、推奨されない。
・ラベリングできた時点で、その能力がどこかに形式知として存在しているという仮定を前提としている。
・経験値に比例して知をだんだん正確に定義できるようになるので、理論と実践の両方から攻め、常に能力をラベリングし直し(仮説を立て直し)、それに基づいた実践(検証・証明)を行うべきである。最初に、暗黙知を形式知としてとらえるには最低限の経験が必要である。
・全てのことにおいて、(情報の整理、)仮説、検証・証明を繰り返しながら確信をもって意思決定していくことは基本。

・暗黙知…広くは単に形式知化(マニュアル化)されていない知。狭くは自分の中で形式知化されていない知。たまに、自分の中で形式知化されていないのに既に身体知となっているものがあり、これも暗黙知と呼ぶ。
・成長過程は「暗黙知→形式知→身体知」のイメージ。
・ひとつの能力をある程度得るためにかけられる期間の目安は3か月。何か学ぶときに読んだ方がいい参考文献の目安は3冊。

(2)過程・アウトプット(成功、失敗両方ありえる)をリバる
ターゲットを因数分解し、目的に応じた適切な他のものと差異をとる。成功/失敗との因果関係を明らかにする(検証/証明)。あらかじめ仮説を立てている(成功の状態を定義している)ことが前提。つまり、(情報の整理、)仮説、検証・証明のいつもの流れ。
・成功の因果関係は、成功する(確率の高い)選択肢として、方法論に加えておく。
・失敗の因果関係については、「ベカラズ集」に記録して、二度と同じ失敗を繰り返さないようにする。成功より失敗の方がむしろ重要。


2.習慣化(意識的に繰り返すことで無意識的な習慣にする)(形式知→身体知の方法論)
 キーワード:「徹底」

・意識しないと行えないことは、余裕がなくなり意識できなくなると行えなくなる。余裕がない勝負所で行えるようにするために、徹底して普段から意識的に繰りかえし、無意識でも行えるようにする必要がある。この必要性はスポーツをしているとよく分かる。
・また、習慣には良いものだけでなく悪いものもある。悪い習慣は意識的にしないようにし、徹底的に排除することが必要。

3.他
・目的があってこその成長なので、まずは目的を明確にすることが重要。
・成長もあくまで目的を達成するための手段。


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 僕の口癖である「確信(犯)」と「徹底」が入っているのが、ご愛嬌でしょうか(笑。

 結局のところ「形式知は、本という形で安く流通しているから、根本的な価値にならない。暗黙知の取得技術こそが、価値である」という理解が、塾生には有るようです。(取得「技術」がポイント)

 この背景には、「暗黙知の次元」(ポランニー)、「知識創造企業」(野中)、「学習する組織」(センゲ)、「フロー体験」(ミハイ)、「経営者を育てる」(菅野)、「ディープスマート」(誰だっけ?)、「完全なる経営」(マズロー)、「7つの習慣」(コビー)、あたりの理解があります(順不同)。

 これも、今後塾生がまとめてくれるようなので、非常に楽しみです。発明塾で日々やっているように、各大学でも、これらの本をテキストにした、「イノベーションリーダーシップ」の講義と演習をやると、とても実践的だと思います。


 「徹底的に読み、憶え、理解し、確信を持って実行する」


「リヒター指揮」版をよく聴きます


 そのためには、「教会」へ行く必要があるようです。ちなみに偶然ですが、私の「教会」では、常にバッハがオルガンを弾いています。


※ 注) クリステンセンは、彼のブログの中で「重要な原則は100%守るべきであって、例外は設けてはいけない(きりがないから)」と、この手の言い訳を厳しく戒めている。


2013年3月2日土曜日

2013春合宿(第一回)開催

 本日は、春休みということで合宿を行いました。今回の合宿は、弊社TechnoProducer内で通常やっているような、長時間のブレスト(講義なし)でした。

 9:00-17:00の間、集中力を維持し続けるには、日頃の訓練と、ちょっとしたコツ(ファシリテーターの力量も含む)が求められます。終わったら、さすがに「ぐったり」でしたね。

 重要なのはここからで、出てきたアイデアを「詰める」作業が待っています。証明作業であり、また、新たな課題を乗り越えるための発想が求められる段階でもあります。

 今日の昼休みの会話で「メディアラボ(MIT)でも、ここまでシステマチックにアイデアを生み出してはいないんじゃないの」という意見がありましたが、「メディアラボを超える成果」を出すべく、引き続き発明に打ち込みましょう。

では!