「発明塾®」へようこそ!: 京都大学「ものつくり演習」講義レポートを読んで~在るために働く(B価値)

2012年12月24日月曜日

京都大学「ものつくり演習」講義レポートを読んで~在るために働く(B価値)

先日、10月に行った講義(以下参照)のレポート課題が届きました。本日、少し時間がとれたので、ゆっくりと目を通しました。

・「京都大学「ものつくり演習」講義報告


1.レポート課題
レポート課題は「世界的に早急に解決が求められている課題で、最も重要と思うもの」を挙げてもらって、機械工学がその解決にどう貢献できるか、を論述してもらう内容でした。

課題として挙がっていたのは、「エネルギー」「CO2削減」「高齢化・医療」「水・食料」などでした。エネルギー問題がやや多かったのは、3.11事故の影響かもしれませんね。あるいは、併設されている「エネルギー応用工学専攻」に興味がある学生かもしれません(僕も、この出身です@大学院)。

殆どの学生が「これまで受けた講義の中で最も面白かった」と言ってくれていました。京都大学には、かの有名な「瀧本先生」の講義もありますので、褒め過ぎのような気もしますが。


2.講義の感想
講義の感想についても、紹介しておきましょう。全体的なコメントは、

「自分で考える時間が与えられたのが良かった」
「世界で勝てる日本を作っていきたい」
「考えるに伴って、多くの知識を貪欲に自分のものにして行かなければならないと感じた」
「話が非常に巧みで、とても引きこまれた」
「もっともっと話が聞きたかった」

といったところでした。皆さん熱心でしたね。

1)発明、発想法に関して
少なからぬ学生が「人と違うことを考える、する、ことの重要性」に気づいてくれたようです。

「これまで、周りの人と同様にやっていれば大丈夫と思っていた自分には、とても衝撃的な授業でした」
「同じ事を、繰り返しうまくやることを目指してきた自分にとって、不安ではあるが受け入れざるをえない現実と感じた」
「強制的にでも、人と違う考え方をしてみようと思った」
「他人と同じ事をやったり、考えたりしても意味が無い」
「頭を使うことこそが仕事、という一貫した主張がわかり易かった」

といった正直な感想を寄せてくれました(多少モディファイしています)。



(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。

皆さんに、大学時代に取り組み始めておいていただきたいことは、
「知識の詰め込む」ことにとどまらず
「知識創造の楽しみ」を味わうことです。
僕は、大学時代、「教材作成」に明け暮れました。
とても楽しかったこと、また、いま、それが非常に役立っている
ことを、お伝えしておきます。


2)仕事やキャリア
何名かの学生さんが、僕の言葉を引用して感想を寄せてくれました。

「『仕事をするということは、みんなが思っているほどつまらないものでも、悪いものでもない』という言葉が印象的でした。自分たちは、バブルも知らず、失われた20年に育ってきた夢も希望もない世代ですが、働くということや将来を少し前向きに考えてみようと思いました」
「何となしにやるべきことがわからず、無気力にくすぶっていたが、勉強してみようという意欲が湧きました」
「自分の将来に関しても、明るい気持ちになった、モチベーションが上がった」
「これほど、自分が将来出ていく社会が楽しいものだと思えたのは、久しぶりだった」

講義の感想に「失なわれた20年」とか(!)、メディアも煽りすぎなんじゃないの(笑)という気もしますが、働くということを前向きに考えてくれるきっかけになったなら、とてもありがたいです。ちなみに僕が就職した時も「バブル崩壊、就職氷河期」真っ只中で、研究室の先輩にも、なかなか就職が決まらない方が居られたりして、「日本沈没的」な雰囲気が漂っていました。しかし、今のところ、結果的にはそれほど暗い職業人生ではありませんでしたし、年の近い諸先輩に伺っても、おおむねそういう感想をお持ちのようです。

少なからぬ学生が、働くこと、社会に出ることについて、非常にネガティブな印象を持っていることは、ここ数年非常に気になっています。だからこそ僕は「働くことがどういうことなのか」を、真面目に語らねばならない、と思っています(注1)。

繰り返しですが、僕は各自が仕事を通じて世の中を少しづつ良くしていくことが、最も現実的で確実な「明るい未来」の作り方だと思います。一つ一つの仕事を、妥協なく、「将来の世代のため」という判断基準で行なっていくことが、我々に日々求められていることです。大金持ちになって寄付するよりも、実効性のある「革命」手法だと思います。


3.ものづくりと経営
経営、金融、知財、といったテーマを取り上げて、「技術以外に勉強しておくべきこと」について話をしました。

「ものづくりと経営、経済について深く考えるきっかけとなった」
「経営学を学んでみたいと思った」
「機械工学と経営学が、こんなに結びついているとは知らなかった」
技術にとどまらず、もっと広い視野で技術者として勉強、成長したいと思ってくれたようです。何名かは、将来経営者になりたい、起業したい、と書いてくれていました。


4.まとめ
講義で紹介した各種参考書に興味を持ってくれた学生さん、購入したという学生さんもいて、講義をしてよかったなと、思います。

「4力(注2)と設計の勉強をしていれば、技術屋として生きていけると思っていたが、それだけでは足りないと分かった」
「昨今の電機業界の状態を見て、技術の勉強だけをしていても勝てないと改めて感じた」

もっと勉強しよう、と思ってくれたなら、それで十分です。

何名かの学生さんは、発明塾に興味を持ってくれたようですし、すでに2名は参加してくれていますから、京大機械系から、何名かの「発明家」が僕に続いてくれることを、大いに期待します。発明塾に来るなら、春休み2月から来るのがベストです。

「人と違うことをする」=「人が遊んでいる間に勉強する」

ですよね。

最後に、ある学生さんのコメントを挙げておきます。

「『世界はますますIssueベースの取り組みに変化している。いつまでも機械が目的でいいのか?』という言葉が最も印象に残っている。私達が作ろうとする機械の先に、常に世界規模の困難な課題というものを見据えなければならない。優れた技術者であればあるほど、より大きな義務感、使命感を持たなければならないと改めて思うようになった。」

みなさんのレポートは、僕にとっては、最高のクリスマスプレゼントになりました。

ありがとう!

ちなみにレポートは、論理構成と独創性で評価させてもらいました。




※注1)"Maslow on management"「完全なる経営」A.マズロー を僕が度々取り上げるのも、それが理由。僕は、働くことは、自分が存在する(Being)理由を「創り出す」ことだと思っている。「XXが足りないから働く(D欲求)」のではなく「ZZとして在るために働く(B価値)」のだ、と。
 「お金を稼ぐために”だけ”、働くのではないんだよ」という、僕の講義中の言葉を挙げてくれた学生もいました。上手く伝わっていると良いのだけれど。

※注2)機械工学では「材料力学、熱力学、流体力学、機械力学(振動工学)」を4力(よんりき)と呼ぶ。機械工学の基礎。



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