今回は、各自のSR(発明提案書)について、議論しました。
・進歩性
・実現可能性
・先行特許のクリアランス(非侵害)
・知財戦略
など、いくつかの視点で自分の発明を見直す作業も兼ねています。
「単なる思いつきを脱する」
ために、「厳密に言葉で表現する」事が欠かせません。書けないということは、分かっていないのです。自分でも分かっていない発明が、いい発明になるはずがありません。
さて、今回は弊社のメンバーも討議に参加してもらいましたので、改めて「発明塾式」の「学びの技法」について、おさらいしておきましょう。
例えば今回、発明討議に「比表面積」という言葉が出てきました。意味がわからなかった人は、すぐにググったと思いますが、
「比表面積=単位体積あたりの表面積」
で終わらせてはいけない。「学び」を「わからない言葉を、わかる言葉で置き換える、説明する」ことだと思っている人も、いるかもしれない。そうなると、上記の式を「念仏のように」繰り返し、暗記して終わりになる。受験勉強を「無駄の極み」のように言う人の大半は、このタイプの勉強を積み重ねてきたのだと思う。それは、たしかに無駄でしょう。
「日常を科学する」ことの楽しさ、
発明塾と、僕の原点です
発明塾的、いや楠浦的には、
「学び=知識の体系を構築する作業」
である。この体系構築の方法には、コツが有る。「比表面積」を例に、続けよう。
1)「深堀り/垂直」タイプ
同じ例で行くと、
「比表面積」
⇒「単位体積あたりの表面積か」
⇒「それってどうやって測るんやろ?今回は、微細な多孔質って言ってるんやけど、
表面積なんか物理的に測れないでしょ?」
⇒「吸着つかうんか!頭いいな!」
⇒「でも、それって精度どうなん?」
⇒「てか、比表面積自体が、測定法で定義されるんか・・・」
⇒「測れないものは存在しない、てことか」
⇒「でも、それって精度どうなん?」
⇒「てか、比表面積自体が、測定法で定義されるんか・・・」
⇒「測れないものは存在しない、てことか」
みたいなタイプ。
これが「深堀(垂直)」タイプの体系構築の典型例。「比表面積=単位体積あたりの表面積」で終わらせず、「実際どうなん?」と、実施/具体化を想定して疑問を創出し、解決していく中で、知識を得る。「思考実験」タイプと言える。発明活動の本質をなす部分でもあり、極めて重要な「学び」の技法である。
整理すると、
「ある概念を、思考実験を通じて具現化しようとする中で、疑問や課題を発見し、それを解決することで、知識を得ていく」
ことが、「深堀り/垂直」タイプの学びである。つまり、実践に向けて深まる方向に、「知を発掘し、地図を埋めていく」活動である。世間的に「問題解決型学習」などと称されているものも、この辺りをイメージしているのかもしれない。
2)「網羅/水平」タイプ
同じ例で。
「比表面積」
⇒「単位体積あたりの表面積か」
⇒「ナノテクの講義であった、スケール則か」
⇒「吸着とか、濡れ性とか、表面エネルギーとか、そういう関係やな」
⇒「体積ゼロで表面積無限大っていう図形有ったよね(メンガースポンジ)」
⇒「フラクタルやな」
⇒「複雑系とか非線形現象とか、そういうのと関係あるんかな」
⇒「もっかい調べて、ちょっと考えてみよっかな」
みたいな感じ。
これが「網羅/水平」タイプの体系構築。既に学んでいる、ある程度の大きさの概念との結びつきの中で、「なんとなく」も含め理解していく。決して「置き換え」「言い換え」ではなく、既存の知識体系に「埋め込んでいく」ことで、概念間のつながりが、より滑らかになり、空白がなくなっていく。また、これまで繋がっていなかった概念同志を、積極的につなげていく。
「新たに獲得した知識を、既存の知識体系に”積極的に埋め込んでいく”ことで、全体としての理解を強化し、空白を無くし、場合によっては新たな関係性を見出す(=発明/発見)」
タイプの学びである。
と定義されることがあるが、「学びのタイプ」と見比べると興味深い。僕自身は、こいうことをしつこくやりましょうと、さんざん指導を受けたので、
「勉強といえば、水平垂直に知を体系化し、空白を埋め、新たな関係を見出し”ニンマリする!”ことだ」
という「思い込み」がある。「新たな関係」を自分なりに見出した時の「感動」が忘れられないので、ついつい勉強してしまう、という感じであった。というか、いまでもそうである。
皆さんはどうですか?
いずれにせよ、塾生さんが「発明をすることで、科学の本質に近づいていく」のは、上記のようなことなんだろうなと、理解している。
発明塾生は、これからも「実践的学習者」として、学び続けます!
※ 注) あわせて、普段の生活を「科学」することが、とても重要だと思っていて、参考図書として「ロゲルギスト」シリーズを推奨している。