「発明塾®」へようこそ!: 「ギリギリの判断」を積み重ね、「合理的な意思決定」を~自身の歩幅で一歩づつ(発明塾第357回、第358回/投資部第12回)

2017年1月9日月曜日

「ギリギリの判断」を積み重ね、「合理的な意思決定」を~自身の歩幅で一歩づつ(発明塾第357回、第358回/投資部第12回)

年始第一週から、2回の討議、おつかれさまでした。

年末年始に

課題解決思考(1)

で、

「しっかり考え抜いた」

んだろうなということを、感じさせる議論がちらほらありました。

「実戦で結果を出しながら、必要な知識を身に付け、また、その知識を使いこなす”技量”を向上させていく」

のが、発明塾の

「原理原則」

です。

野中郁次郎氏は、「形式知と暗黙知」と仰っていますし、コマツ時代の上司の1人は、「知識と知恵」と仰っていましたが、同じことです。

「自ら学び、結果を出し、他者の評価を受ける」(”大谷メモ”より)*1

を原理原則に、進めて下さい。


さて、発明討議の方では、

「エッジ情報検索」

特に

「仮説検索」

の能力が問われたと思います。

結局のところ、いつも行っていることの繰り返しで、耳タコだと思いますが

「調べられなければ、いいアイデアは出ない」
(そもそも、いいアイデアかどうか判断すらできない)

ということです。

「技術の用途探索」

において、重要な問題は

「課題の存在の証明」

です。”発明方程式”を念頭に、”検索戦略”をよく考えましょう。


投資部の方では、年末年始に皆さんで討議したらしい?「今後の方針」の確認と、それに従って進めてもらう上での注意点を、幾つか話しました。

重要なことは、各自が、

「ギリギリの判断」

を積み重ね

「合理的な意思決定」



「冷徹に」

下して欲しい、ということです。ギリギリの判断を行おうとする際、自身の

「心理的バイアス」

が明らかになります。これが重要だと思っています。


「もっと大きな投資収益が得られる機会が、あるかもしれない」
(”機会損失”という言葉を、覚えておきましょう)

「損失が出たら、どうしよう」
(収益機会には、通常、同等程度の損失機会がついて回ります)
(人間は、収益より損失を大きく評価するバイアスを持っていることも、覚えておきましょう)

「みんな、自分と同じように考えているから大丈夫」
(多分それは、ベンチマークに対比での”損失”にしかつながりません)


発明において

「なぜ、今まで誰もそれに取り組んでいないのか」

を討議することをもっとも重んじていますが、投資においても、全く同じ問い、すなわち

「なぜ、まだ誰もそこに投資していないのか」

という KSQ(Key Success Question:発明塾造語/弊社登録商標) に答えを出すことが、最初の重要な関門になります。

市場平均/銀行貸出金利などの”ベンチマーク(機会コスト/資本コストなどを含む)”を上回る超過投資収益の源泉は、そこにしかないからです。
(ベンチマークで良ければ、特に議論をする必要はありません)


(クリックでHPへ)
愛読誌の一つです。
今回は、「ネジ」の話、あと、「メゾスケールの材料設計」の話が
個人的に面白かったです。
いずれも、僕の専門(機械工学/材料/ナノテクノロジー)とも
とても関係が深い分野ですし。


実は、”発明”においてもっとも重要なことは、

「”いわゆる”創造性に関わる知識やスキル」
(アイデアをたくさん思いつくとか、物事を幅広くよく知っているとか・・・)

ではなく

「意思決定能力」

だと思っています。発明塾開始当初、小塚さん(彼は、幸運にも第一期生ですから、すべての歴史を知っています)が度々

「なんでここに、楠浦さんがあれほどこだわって時間を使うのかが、不思議」

というコメントを、度々残していますが、それは、そういうことです。発明討議において、

「厳しい時間制約」

の中、確実に、”求められる”発明を生み出すため

「意思決定」

を行っているわけです。これが行えず、

「入り口でウロウロする」
(僕は、コップの縁を舐めて終わる、とか、入り口を舐めて終わり、などという表現をしますが、同じことです)

人、つまり、

「”決断しないという決断”を行っている」

人を、”ダブラー”と呼ぶのでしたね。残念ながら、発明塾で結果が出ない人の多くは、このパターンです。これも、個人差が大きな”心理的バイアス”の一つです。

「ギリギリの判断」

を積み重ね、討議を振り返り(そのための”ログ”ですよね)、上手くいった原因を探り、再現可能にし・・・という、地道な積み重ねの上に、今の発明塾の手法があります。ただしそれは、

「形式知」

部分の話です。

「暗黙知」

部分を、各自が涵養しなければ、形式知は活かせません。


取り上げた「医療廃棄物」処理関連の企業について、僕は

「数字が、ガイダンスに届かなかった理由は何なの?」

と、アタリマエのことを聞きました。もちろん、本当の理由など、分かるはずもありません。

これは、特許情報(特許公報を含む)について

「嘘ばっかり書いてあるから、読んでも仕方がない」

と言われることがあるのと、全く同じです。発明塾で、特許情報を

「参考にしながら」

発明を創出しているという話をすると、必ず上記の質問(批判?)が出ます。

似たような話は、「特許情報は1.5年前の情報ですよね」質問/批判でもあります。

僕や、発明塾生の大半は、それで発明が出せるので、いちいち真面目に答える気がしないのですが・・・気が向けば、お答えすることにしています。*2

答えの切り口は、色々あります。下記もその一つです。


重要なことは、

「入手可能な情報から、ギリギリの判断を積み重ね、合理的な意思決定をすること」

です。

「入手不可能な情報について議論する」
(手に入ればいいのにな、的な”妄想””願望”)

「入手可能な情報の一部が無意味である可能性が高いことを根拠に、すべて切り捨てる」
(典型的な、”ゼロか1か”思考)

いずれも、

「合理的な意思決定」

には、向きません。


常に

「ギリギリ」
(”限界的練習”の話をしましたよね)

まで考えることです。


何がギリギリかって?

それは、

「あなたの能力」

次第で、僕にはわかりません。確実に言えることは

「僕の歩幅と、あなたの歩幅は、異なる可能性が極めて高い」

ということです。

常に、

「自分のギリギリを試す」

ことです。そして、僕の歩幅のほうが大きかった場合、あなたはラッキーです。後々、自分の歩幅が僕の歩幅に近づいてきた時に、参考になるからです。

「自分の最大限の歩幅」

にチャレンジして下さい。しかし、

「自分の歩幅」

を見失うことがないように、歩んで下さい。


次回もよろしく。



*1 ”大谷メモ”が欲しい塾生さんは、楠浦まで。企業内発明塾の方も、ご相談ください。
*2 ちなみに、「永久に」特許情報が、発明に有効だとも思っていません。おそらく、近い将来「特許情報をもとにした発明創出」が、完全に「常識」化し使いこなされる日が来るのですが、そのときには、特許情報は「発明の道具として、機能しなくなる」ことになります。常識からは、「超過収益」は得られないからです。


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