さて、第118回では、持ち込まれたSRと、MindMap(MM)のレビューをそれぞれ行いました。
1)SR
一番重要な点は「論理構成」。これはすでに耳タコだと思いますが、やはりここが甘い。論理構成とは、Aという文章とBという文章があるときに、それをどう繋ぐか、もしくはAに基づいてEを導出したいときに、間にどういう「因果関係」を構築するか、です。
よく、「Aで、Bで、Cで、Dで、Eなんです」(若干の興奮を交えて)という会話をする人がいますが、大抵の場合、
「君の話は、いつもよくわからないね」
と言われて沈没する(注1)。因果関係と、論証すべき命題の定義、が曖昧だからです。「Aによって、従来不可能であったEが可能になります。具体的にはAによってBが可能になり、それによりCがDという効果を持ち、その結果Eが可能となるのです」のような形にすべきです(注2)。
もう一つは「自分として新しい(主観)」から抜け出し「世の中的に新しい(客観)」に、思考と論証のパターンを変えることです。以前、駒場東邦中学・高校で「発明塾」を開催した際に、ホールいっぱいの中学生が、およそ考えつく限りの「オモロイ」アイデアを披露してくれました。
個人的にも塾生的にも、相当面白かったのですが、ひとつ重要な気付きとして「そこそこオモロイことを 言う ぐらいのことは、ちょっと優秀な中学生なら簡単」ということでした(注3)。しかし彼らは、「自分的に面白い」ことを言っているに過ぎません。そこからひとつ飛び出るには「世の中のレベル(既存技術、先行技術)」を踏まえて「発明」する必要があります。
山登りに例えると、皆さんがやりたいことは
「麓の樹海から、一歩づつ登り始めました。まだ3合目ですけど、疲れたので満足しました。達成感十分です。」
なのか、
「とりあえず車とロープウェイがあったので、それを活用して9合目まで来ました。残りの絶壁を、悪天候の中なんとかよじ登り、無事山頂に到達しました。誰も見ることのできない、素晴らしい眺めです。」
なのか、「どちらですか」ということでしょう。中学生でもそこまで出来る=大学生は何をすべきか、ということが明らかになったのが「駒場東邦事件(笑)」です。
2)MindMap(MM)の作り方
意外と、きちんと作れるようになっていない、という点と、何のためのMMか(発明のどの工程のための)はっきりせずに「なんとなく、つくっている」、という点も明らかになりました。これは、講義でレビューしましたので、委細は割愛します。上述の、因果関係(課題解決/目的効果/Why等の視点)、や、客観的視点(既存技術をどこまで踏まえているか)、とも関係しています。
再度言っておきましょう。
「若者よ、人生は時間でできている」
僕も無駄遣いしたくない、君たちもそうだと信じている。ならば、基本に忠実にしっかりと日々実践し、成果に結びつけること。わからないことは素直に仲間に教えを請い、先送りにしない。
成果によって初めて、発明法をモノにした、と「客観的に認められる」。「発想法を勉強しましたー!」それは自己満足にすぎない。自己満足で終わらせないように。
※ 注1)僕は、なんでこういう話の仕方をする人がいるのか、かつては全く理解出来ませんでしたが、発明塾できちんと指導するようになって、謎が解けました。ちなみにこれは、根本的には修正不可能で、意識的にワンクッション、作業を置く必要があります(できる人は、最初から論理構造で文章が出てくる)。理由も含め、克服法やその持ち味の生かし方を、発明塾ではきちんと指導しています。
※ 注2)正確には「そうでないと通じない人には」ということになります。しかし、企業で出世する人はこのタイプが多いので、大抵の上司には、このように報告すべきでしょう。
※ 注3)ある塾生のヒトコト(多少モディファイしてますが)なのですが、今でも忘れられません。誤解のないように言っておくと、駒場東邦の学生さんたちは、ほんとうに面白いアイデアを、次々と披露してくれました。だからこそ、彼は「こんなことで満足していてはイカンな」と思った、ということです。
・「発明塾@駒場東邦開催いたしました!」
http://edison-univ.blogspot.jp/2011/02/blog-post.html