今回は、少し趣を変え、Amazon CEO ジェフ・ベゾスの「手紙」を、皆さんと一緒に読みましょう。
手紙には、
「Invention Machine」
「Social Invention」
など、少なくとも発明塾生にとって、とても刺激的な言葉が並んでいます。物流と小売の世界を変革し、
「A-Zまで、すべてのものを売る」
Everything Store を目指す Amazon CEO からのメッセージ、しっかり頭に入れておきましょう。
「発明提案書」は発明の魂
僕は、
「発明提案書の”執筆”は、発明に魂を入れる作業」
だと思っています。
また、アイデアが発明に育つのも、「提案書」の中において、です。そういう意味では、
「発明提案書は、発明のゆりかご」
かもしれません。
しっかり育て、魂を入れてください。
「英語」の授業で何を教えるか
さて本題に戻ります。
僕は時々、小説や音楽、ネット記事などで見かけた「気の利いた」メッセージを、様々な視点から翻訳することがあります。
この習慣の始まりは、中学校時代に遡ります。皆さんには想像できないでしょうが、当時「FMラジオ」を、「聴きながらカセットテープに録音」して、「携帯カセットプレーヤー」で通学途中に聞く、ということが流行っていました。
「エアチェック」
などと、称していました。タイマーなんてありませんので、聴いているのに録音している、という変な話です。
聞き取った洋楽(これも死語ですね)の歌詞を、辞書を引きながら訳して・・・なんてことをやってました。そうこうするうち、近くにレンタルレコード店ができ「歌詞カード」が見れるようになりましたので、それで「自分の訳」が正しいかどうか、確認したり・・・。
「いい訳を当てる」
というのは、なかなかセンスがいる作業で、英語の勉強というよりは「日本語の勉強」になった気がします。その後、偶然か必然か、「洋楽」を題材に英語を学ぶ授業にも巡り合い、塾の英語科講師になりました。講義ではもちろん、恩師に倣って僕も「洋楽」を題材にして、教えていました。数千枚のCDを所有していた時代もあり、講義に使う曲選びが楽しかったことを今でもよく憶えています。
「唯一解の無い世界」
は数学だけではない、ということを、英語の授業を通じて伝えられたらな、と思っていました。
(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。
読み物として、純粋に面白いです。
ベゾスは、かなり
「Demanding(要求が厳しい)」
な人みたいですね。
ベゾスは、かなり
「Demanding(要求が厳しい)」
な人みたいですね。
ようやく本題へ戻る
今回は、ズバリ
「Invention(発明)」
を取り上げている、Amazon社の「Letter to Shareholders 2015」を読みます。
時間があれば全部読みたいぐらい、なかなか楽しいレターなのですが、今回は P 5 の一部、および、P 6 の一部を読みましょう。
● Invention Machine
まずタイトルが、ぶっ飛んでます。日本で「発明」という言葉を、経営者の方や大学教授の方の発言において、目に(耳に)することは、あまりありません。それどころか、
「Invention はもう古い。発明には価値はなく、これからは Innovation の時代だ」
などという発言も、5-6年ほど前、ちょうど僕が発明塾の活動について、積極的に情報発信し始めたころに、よく耳にしました。面と向かって言われることはありませんでしたが、
「発明なんて意味あるの?」
「技術の話ばっかりしていても無意味」
「発明なんて、胡散臭い」
という、無言の圧力を感じていた時期でした。
最近では、Paypal 創業者の P.ティールや、今回取り上げる Amazon の J.ベゾス など、アメリカの起業家や経営者が、盛んに、
「Invent」「Invention」
という言葉を口にするようになり、日本でも「発明」という活動、言葉の扱いが少し変わってきた気がします。
しかし、アメリカにも、発明、そして発明家が無視され続けてきた歴史があるようです。
以前、「発明とは、そもそも”預言(Propheting)”なもの」という、心強い励ましをくれた 元マイクロソフトCTO N.ミアボルドは、ある本の前書きで、
「私たちが生きているのは、発明によって創り上げられた世界なのである。ところが、これほどとてつもない影響力を持つ発明がいたる所でないがしろにされている。」
「その事実をよく表しているのは、テクノロジーに関する仕事がリサーチ&ディベロップメント(研究開発)、略して「R&D」という名でひとまとめにされていることだ。インベンション(発明)の「I」はどこへ行ってしまったのだろう。」
(いずれも「発明家たちの思考回路」より抜粋。絶版のため、関連内容は下名の記事「発明研究所のすすめ」を参照ください)
と嘆いている。
「私たちはこの問題をチャンスととらえて、理想の研究所を思い描き
始めた。」(同上)
とあり、これが後に、マイクロソフト・リサーチ内の「発明研究所」誕生につながったようです。
話題を元に戻しましょう。
さて、皆さんなら、この「手紙」にある「Invention Machine」に、どんな訳を付けますか?
さて、皆さんなら、この「手紙」にある「Invention Machine」に、どんな訳を付けますか?
関連する部分を抜粋しておきますので、以下全文を読み、下線部に対しイケてる日本語を当ててみてください。(*)
We want to be a large company that’s also an invention machine. We want to combine the extraordinary customer-serving capabilities that are enabled by size with the speed of movement, nimbleness, and risk acceptance mentality normally associated with entrepreneurial start-ups.
Can we do it? I’m optimistic. We have a good start on it, and I think our culture puts us in a position to achieve the goal. But I don’t think it’ll be easy. There are some subtle traps that even high-performing large organizations can fall into as a matter of course, and we’ll have to learn as an institution how to guard against them. One common pitfall for large organizations – one that hurts speed and inventiveness – is “one-size-fits-all” decision making.
もう一問あります。
● Social Invention
日本では、あまり聞き慣れない単語ですが、法制度や組織についての Invention を指す、というようなことが、幾つかの解説記事に書かれていました。J.ベゾスは、どうのような意味/意図で、この単語を用いているのでしょうか。
この一文、特に下線部に注目しましょう。
One thing that’s exciting about our current scale is that we can put our inventive culture to work on moving the needle on sustainability and social issues.
「Move the Needle」は、「目立った変化を起こす」という意味だそうです。
サマリー的な一文が、最後から2段落目にあります。
Renewable energy, Frustration-Free Packaging, Career Choice, Leave Share, and Ramp Back are examples of a culture that embraces invention and long-term thinking. It’s very energizing to think that our scale provides opportunities to create impact in these areas.
「invention and long-term thinking」と、「発明」と「長期的思考」が併置されていますね。
「Ramp Back」は、以下のような説明がありました。「Ramp」は、「傾斜路」「段差をつなぐもの」ですので、「徐々に職場復帰できるように」ということでしょう。
Ramp Back gives birth mothers additional control over the pace at which they return to work.
興味ある方は是非、全文を読んでみてください。
楠浦 拝
* 「大きくなっても、”次から次へと発明が溢れ出る”会社にしたいんだ」(楠浦訳例)
後段で「Speed」について言及していることから、次々と発明が世に出ていくことを、想定しているのだろうなと感じました。また、「also」という単語、および「common pitfall for large organizations ・・・」の言及から、「組織が大きくなると、発明が出なくなる」という「前提」に立ち、J.ベゾスはこの Letter を書いて?いると読み取れます。
すでに「Large Company」であることは明らかですし、この Letter の冒頭でも、「Amazon became the fastest company ever to reach $100 billion in annual sales.」と、「速く」「大きく」なったことを強調していますので、「大きくなっても・・・」としました。ただ、語順含め、もう少し検討の余地はあるかもしれません。彼は「もっと大きくしたい」と思っているでしょうから・・・。