毎年のことですが、本講義の正式名称は「マーケティングリサーチ」です。
理工学部、情報理工学部向けのMOT入門科目の一つのため、特に
「技術のマーケティング」
をテーマに、
「発明と市場創造、市場の拡大と独占による収益向上」
の手法を学んでもらいます。
講義冒頭で、各種事例を取り挙げたように
「いいものをつくれば儲かる」
という時代は過ぎ、高収益を維持するためには
「市場をコントロールする、具体的な武器」
が必要となっています。
今回は第一回ですので、
①経済学と知財に関する基本的な考え方
②具体的な事例(クアルコム、インテル、ネスレ、キヤノン etc)
を、簡単に説明しました。
学部の早い段階で、経済学は
しっかり勉強しておいてね。
その後のすべての学問の基礎に
なりますから。
①経済学と知財に関する基本的な考え方
「知財権」を経済学的に説明する際、「裁定取引(アービトラージ)」という概念を用いることができます。
例えば古くは、皆さんが入試の時に憶えさせられた、
・東インド会社
香料をアジアからヨーロッパへ輸入し、莫大な収益を上げた
など、「地理的な障壁を利用した」取引が、ありました。
同様に、現代の「株式取引」は、
・情報の非対称性/不均一
を用いた取引で、「時間障壁(未来を知ることはできない)」を利用した取引です。
知的財産は、
「事業を許可するか、許可しないかを決める権利」
であり、金融工学で言う「オプション」にあたります。
よく「事業権である」「事業を実施する権利である」のように説明されることがありますが、「排他権」なので、事業権ではありません。
「事業をとめる権利/やめさせる権利」
というのが、正しい定義です。
ですので、知的財産権の取得は、オプション取引同様、
・「未来を買う」(可能性を買う、と言うべきでしょうか)
取引の一つです。
不確実性、金利とリスクプレミアムの話など、経済学的な視点は、今後もう少し深めたいと思います。
②具体的な事例
これも例年ですが、
・クアルコム(携帯電話)
・インテル(PC)
・キヤノン(事務機)
が、知財権がどのように利用して、市場創造や市場参入/市場拡大/独占を進めていったか、を取り上げました。
成功事例だけでは不公平ですので、今年は失敗事例も取り上げました。
詳細は、講義資料/発明塾での紹介資料に任せます。
今年は、受講人数がちょうど良いため、各自1つの発明を仕上げてもらうことにします。
皆さんが興味が持てるテーマで、特許情報分析~発明提案書まで、15回かけて作業を進めたいと思います。
現時点では、
・カメラ
・車/オートバイ業界
・ロボット
等を分析し、発明創出したいという声がありました。あまりバラバラでもしんどいと思いますので、各自の希望が出そろった段階で、
「共通の視点」
を一つ定め、討議を開始します。
ではでは、次回もよろしく!