お楽しみに。
さて、今回の講義で年内最後になりますので、年末年始に発表できるレベルの発明を仕上げられるように、「そもそも発明とは」ということを、少し講義しました。
発明塾では、いつも教えていることですし、「発明塾講義(無料)」でも配信していることですが、改めてまとまった講義を行いましたので、板書内容を含め、ここにUPしておきます。
板書(1)左半分
Criticalな問題を解決しないと、意味はありません
板書(2)右半分
そのためにも、パレートの法則を理解しておきましょう
●発明とは「課題‐解決」である
塾ではいつも言っていることですが、「課題と解決」がセットで、発明です。
そして、「解決策の独自性」ではなく、「課題の重要性」で、発明の価値の大半は決まります。
「どうだ、この技術すごいだろ」
ではなく、
「この問題を解決できれば、どんなにすばらしいでしょう!」
というのが「発明思考」です。つまり、「課題の重要性」に、フォーカスするわけです。
そのために、以下2つのことを、理解しておく必要があります。
1)パレートの法則/べき乗則(Power Law)
イタリアの経済学者A.パレートは「イタリアの土地の80%は、20%のお金持ちによって所有されている」ことに気づきました。いわゆる「8:2」の法則です。
多くの自然現象や社会現象が、同様の法則に支配されていることが、わかっています。
発明に置き換えると、
「重要な課題にフォーカスすることで、大きな成果につながる発明を創出することが出来る」
となります。
こういうことを知らないと、「一見面白いけど、成果の出ない的外れなこと」に注力してしまうので、全学生が、学部で初歩的な経済学を学ぶのです。
2)T/O(Trade Off)
TRIZ/ARIZを発明塾で紹介しているのは、この「Trade Off」という概念について、アルトシューラーが触れているからです。
「Trade Off」とは、簡単に言うと、
「あちらを立てればこちらが立たず」
な状態のことです。例えば、
「強くすると重くなる、軽くすると弱くなるので、よい航空機用材料がなくて困るのよ・・・」
みたいな状態のことです。
これを「中間地点で解決する=折衷案を採択する」のは、「発明的」には、最悪の解決法です。
一般的な経済学のフレームワークでは、
「最適点がある」
という解決策の提示になり、まさに「中間地点」を探る理論なのですが、これは、経済学が「Static」な世界観に基づいているからです。
「技術の進歩=Dynamicな変化」
を前提にしていない、という意味です。ここに、
「理系の学生が経済学を学び、その限界を知り、それを超えるのが”技術”なのだと知る」
ことの意味があります。特に工学系の学生は、
「経済学を学ぶことで、技術を学ぶ意味を”明確に”知る」
ことが、出来ます。
世の中は「技術によって進歩する」のです。
「頭脳によって」と、言い換えることもできます。
18世紀のイギリスの経済学者 T.マルサス は「人口論」で、
「人口は幾何級数的に増大するが、食料は算術級数的にしか増大しないから、人類はいずれ極度の貧困状態に陥る」
と予想した。その後どうなっただろうか。
「イギリスも含めた、全世界の生活水準は飛躍的に向上し、かつ、人口が爆発的に増大した」
ことは、皆さん目の当たりにしている通りである。
理由は何だろうか。
一言で言い表せるような簡単なものではないが、マルサスが「少なくとも、低く見積もっていた(彼に敬意を表して!)」ものが何かと言われたら、
「技術の進歩速度」
だろう。20世紀に「緑の革命」をはじめとする技術の進歩によって、どれほどの「農業生産性」の向上があったか、興味がある人は調べてみるとよい。
「灌漑=土木技術」「肥料=石油化学」・・・「品種改良」「遺伝子組み換え」・・・
ネタには困らないだろう。
たとえば、講義で取り上げた「肥料」については、
「ハーバー・ボッシュ法」
により、メタンと空気中の窒素から、アンモニアが合成できるようになったことで、窒素肥料が安価に効率よく施肥できるようになった。
高校の化学で学んだ通りである。
何名かの学生さんが、憶えていてくれて、よかった。
ちょっと長くなりそうなので、まずは一旦この辺で切りたい。
大学生が、極めて短い講義時間(1.5時間しかない)中に、経済学、歴史、化学、を概観した上で発明に取り組めるように、かなりデフォルメして話している点も、ご容赦いただきたい。
この「お正月」に、技術系の学生さんには是非「経済学」を勉強してもらい、
「やっぱり技術を追求しよう!」
と、決意を新たにしてほしい。
このBlogが、その”ちょっとした”きっかけになれば、これほどうれしいことは無い。