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2014年4月27日日曜日

「クアルコムのケースで学ぶ知財戦略」~立命館大学MOT大学院「技術経営論」にて

4月25日に、立命館大学MOT大学院(技術経営研究科)の「技術経営論」にて、弊社のケーススタディーを用いた演習講義を行いましたので、簡単に振り返りを。

1.概要

今回の講義はBKC(びわこ草津キャンパス:滋賀県草津市)で行いましたので、大半が「いわゆる学生さん(社会人学生ではないという意味)」でした。社会人の方は、2名でしたでしょうか。

用いたケーススタディは、弊社で作成したものです。ほぼ毎月のペースで開催している、弊社と慶応義塾大学の岩本教授主催の「国際標準化と事業戦略勉強会(注)」での議論が、そのベースになっています。


勉強会では、多くの企業の知財部、企画部門等の方々にご参加いただき、現在も活発な議論を行っています。次のケースについても、準備を進めており、そのための特許情報分析なども、メンバーで行っています。


知財を駆使した事業戦略には、特許情報分析は欠かせません。次のケースでは、このあたりも取り上げる予定です。



2.当日の討議

今回のケースでは、インテル、IBM、マイクロソフト、クアルコム、ノキア、エリクソン、モトローラなどの企業が取り上げられていますが、レポートの内容と、若干の討議を踏まえて、「クアルコムの戦略」に絞り、討議を進めました。

欧米のビジネススクール同様、ケースは事前配布、分析した上で事前レポートを提出して頂き、それらを基に討議を行いました。いくつかの事前提出レポートに、

「クアルコムは、知財を交渉力に用いている」

「レイヤー間の交渉が、クアルコムの戦略のポイント」

という指摘がありましたので、とりまとめて、


「クアルコムは、知財を、レイヤー間の交渉力として活用し、高い収益を上げている」


という仮説をまず立てました。この仮説を、ケースに記載の事実や、インターネット上の情報で検証してもらう形で、その後の議論を進めました。



3時間という「限られた」時間で、「何らかの結論を出す」訓練も、兼ねています。また「事実を基に、議論を進める」訓練でもあります。



討議の結果、いくつかの公開データ(クアルコムによるものが大半)から、仮説はほぼ立証できました。また、追加の結論として、


「クアルコムは、自社の周りに”生態系”を構築し、関係者を上手く巻き込むことで技術を普及させ、市場を拡大し、同時に高い利益率を維持している」


ことも、皆さん自身で証明していただきました。


「議論を通じて、仮説を検証する」


これが、楠浦が考える「ケーススタディ式演習講義」の醍醐味です。そのまま、仕事に直結するスキルを、短い時間で養うことができ、専門知識も身につく、非常に効率の良い学習法です。



クアルコムのケースは、「技術経営の本質」です。ぜひ引き続き、各自で研究していただきたい。




出身学科のエネルギー応用工学科にも所縁が深い、
エコノメトリクスの権威で、元京大経研所長の
佐和隆光 教授の著書。
「マルチメディア関連のプロダクトイノベーションは、
2015年ごろに飽和する(P196)」
と書かれており、今読み直しても興味深い



3.質疑応答

講義後の質問で、非常に興味深い質問がありました。

「ノキアは、特に間違ったことはしていないと思うのですが、なぜ携帯端末事業から撤退することになったのでしょうか?」


非常にいい質問だと思います。その問題意識を、ぜひ忘れずに「技術経営」を学んでいただきたいと、強く思いました。


私がその場でコメントしたことを、以下に記しておきます。


「関係者の方に伺えば伺うほど、私もまったく同感です。一つ注意しなければならないのは、”失敗したら負ける”のは当たり前ですが、”成功しなければ負ける”のだということです。つまり、常に”相手”がいますので、その先の手を打つ必要がある、ということです」


多くの社会人にとっては、それこそ当たり前のことだと思いますが、学生さんには、新鮮な見方だったようです。


「守り、だけでは勝てず、常に攻める必要がある」


ということは、知財でも同様ですね。



他にも、Appleの戦略など、レポート内も含め、多数の質問がありました。すべてに回答できず申し訳ありませんでしたが、「知財もまた経営の道具に過ぎない」ことを申し添えて、講義の振り返りを終了とさせて頂きます。


何名かの方には、おそらく下期の「マーケティングリサーチ」でお会いしますよね。続きは、その時に。


では。


※ 注)経営と事業のための知財戦略、という視点で議論ができる企業人の方で、参加希望者がおられましたら、弊社までご連絡ください。



2014年4月26日土曜日

発明塾京都第177回開催報告~発明に王道なし:「サイエンス」を押さえること

第177回も、無事終了しました。

京都は、昼間は暑いぐらいでしたが、夜はまだ肌寒かったですね。


さて、今回も第176回同様の3部構成で実施しました。

1)アイデアコンテストでベンチマークした特許群の、出願動向分析
今回の分析で、「この一連の出願で最も重視されている技術思想」=「この一連の出願の中心となる技術思想」を見抜くことができました。

ところで、その前振りとして「粘弾性」「濡れ性」「表面エネルギー」についておさらいをしましたが、つながりが理解できましたか?

粘弾性の式は、電気系の人にとっては基本中の基本である「LCR」回路と同じ。「高分子化学」だからといって、苦手意識を持つ必要はありません。ついでに複素関数と線形代数の復習もしたいところかな。

過去にも、発明に関連して表面エネルギーの話題は取り上げていますし、僕自身の過去の研究の一つにナノテク関連があるので、表面支配の世界ということで、何度も紹介しました。

でも、実は僕が表面エネルギーを最初に取り扱ったのは、卒論のテーマである「金属疲労におけるき裂進展挙動」です。平たく言うと破壊力学です。

ものが「破壊」するかどうか、どうやって決まると思いますか?高速道路のひび割れが、進展するかどうか、何で決まっているのでしょう?

それこそが、表面エネルギーの問題であり、破壊力学の本質です。
(興味ある人は、ぜひ調べてね)

このように、ほとんどの学問/自然現象は奥深くでつながっており、サイエンスや数式のレベルできちんと理解していれば、少ない知識で統一的に語ることができる、ということを体感してもらえたと思います。

一方で、「粘弾性の式(マックスウェルモデルにせよ、フォークトモデルにせよ)は、具体的にこういう現象を表している」というイメージ、直観に基づく理解も重要です。


再度、参考書をあげておきましょう。

・「物理数学の直観的方法」(長沼)
・「ロゲルギスト」シリーズ
・「オイラーの贈り物」(吉田)


世紀の大発見は、
結晶学に関する深い理解と
幾何学的センスの賜物。
論文は、シンプルでわかりやすく、
大発見にふさわしいものです、
理系の学生さんなら、一度は読んで欲しい

身の回りのものを、科学し、数学し、また数式を現象で直観的に理解する。自然科学を追及する頭脳を養うには、これしかありません。

サイエンスのないところに発明はない。

GWも、しっかり勉強してね。


2)知財/標準化戦略に関するケーススタディ(続)
続きの問いを、深めました。「知財が、経営におけるどのようなツールであり得るのか」を理解しておくことが、「知/頭脳を武器にする」人たちにとって、極めて重要です。

翌日の立命館大学での講義でも、同じケースを基に、活発な議論を行いました。


3)進歩性に関する演習
今回は、前回の議論を振り返りつつ、追加の問いを行いました。

「物事を多面的に/異なる立場から見る」
「常に、事実と根拠を基に議論を進める」

ことの訓練もかねて、引き続き行います。

ではでは!



2014年4月19日土曜日

発明塾京都第176回開催報告

第176回も、無事終了しました。皆さんそれぞれの新生活にも慣れ、ペースはつかめてきましたか?

さて今回も、前回に引き続き3部構成で行いました。


1)アイデアコンテストでベンチマークした特許群の、出願動向分析

2)知財/標準化戦略に関するケーススタディ(続)
3)進歩性に関する演習

基本的に知財活動は、(基盤技術→)事業→業界構造の設計→知財戦略→発明→権利化・・・ と進めていきますので、1)-3)いずれも理解していないと、研究すらままなりません。

なぜなら、研究=発明、つまり研究はこのプロセスの中間に位置するわけです。なので、前後がわかっていないと、見通し無く研究をすることになりますね。


着想も大切ですが、その後の論理的作業によって、
発明は洗練され強化される・・・
著名な小説家達も、「全く」同じことを言っています

また、進歩性について様々な観点から検討することは、「クリティカルシンキング(※)」の良い練習になります。技術と法律についてしっかり理解した上で、先行技術「文献」の記載事項に基づいて、論を進める習慣を、身につけてください。


自分の発明を客観的に見る、ということにもつながりますね。



※ 注)「クリティカルシンキング」(ゼッタミスタ)参照。すでに何度も紹介済みですが、念のため。

・「思考法に関する参考図書」
・塾長の部屋(48)~「自分の信じる所を追求せよ」


2014年4月13日日曜日

発明塾京都第175回開催報告~「発明塾らしさ」は「必ず解けるという確信」らしい

第175回は、春休みのアイデアコンテスト終了後、初めての開催となりました。
すでにアイデアは提出しましたが、今後はその「振り返り」もふくめ、今後の飛躍に向けて、少し足場固めを行いたいと思います。

さて、今回は3つのトピックを取り上げました。

1)アイデアコンテストでベンチマークした特許群の、出願動向分析
2)知財/標準化戦略に関するケーススタディ(続)
3)先行技術分析の基礎(因数分解と課題解決分析)

詳細は割愛しますが、いずれも発明を進める上で、基本的なスキルですので、これを機会に

「解っている(つもり)の人は、より実践的に深堀り」
「解っていない人は、今のうちに挽回」

で行きましょう。しばらくは、皆でゆっくりと進めるつもりです。

提出した発明提案書の中で、
「割と読みやすかった」
ものは、この本の原則に忠実でした。
読んだ人も、読んでない人も、
いると思いますが・・・。

さて、余談を2つ。

4年を過ぎて、当初から在籍して活躍してくれた塾生さんが、卒業していろいろなところで活躍してくれる時期になっています。

先日、改めてお礼のメールを頂きました。

それで、当初の頃のことを、いろいろ思い出しました。

@京都は3年半ですが、毎週発明の討議を繰り返した学生さんが、社会に出ていくというのは、やはり、とても今後が楽しみで嬉しくもあり、すこし寂しくもあります。

ブレストの基礎や、マインドマップの使い方のような、今の発明塾からはちょっと想像できない「初歩的な」内容で、十分楽しかった頃のことが、とても懐かしく感じました。

一方で、そういう「楽しさ」自体を失ってはいけないな、ということも、改めて感じました。
今年は再び少し手さぐりで、「楽しさ(interesting)」を掘り起こしていきたいと、思います。


もう一つは、「発明塾」の取り組みを、他の先行技術文献と比較しての検討を、ここ1か月ぐらい行っていました。僕は気づきませんでしたが、ある元塾生さん曰く、

「絶対解けるという確信」

を持って、課題に取り組んでいるところが、発明塾のポイントの一つだそうです。その自信、どこから来るんですかね(笑


では、次回もよろしく。



2014年4月6日日曜日

発明塾京都第174回開催報告

いよいよ新年度ですね。新たな生活で、がらりと環境の変わったメンバーも、継続的に参加できるような環境を、今年は考えていきたいと思っています。

さて今回は、前半は発明提案書のブラッシュアップ討議、後半は今後の進め方と、知財戦略に関するまとめを行いました。

立命館大学MOT大学院での講義(4月25日開催予定)でも、同じ討議をしますので、先取りして一部をここに転載しておきますね。なお、受講予定者には、すでに配布済みです。インテルとクアルコムの知財戦略を分析したケーススタディーを、利用します。


「インテル経営の秘密」は
これだけではないようです。
もっとも、知財に関する話は、
こういう本には書けないのでしょうが・・・

・Q 1:知財戦略についてキーワード(※)を参照しながら、「ビジネスモデルとは、収益構造のデザインであり、それこそが経営である」という視点で論理を構成し、200-500字を目安に、まとめてください。
※参照キーワード:利益、数量、投資、差別化、仲間づくり、垂直寡占、安定成長、水平、イネーブラー、無力化、Sカーブ、巨額投資、加速/早期回収、巻き取る

・Q 2:本ケースおよびここまでの討議で、技術経営の本質は知財戦略であるとの、私の考えを伝えました。私がそう考える理由/論理を、200-500文字を目安にまとめてください。


今までも、

「単に面白いアイデア、面白い技術」

ではなく、

「普及する仕掛け、普及したときに押さえるべきポイントをあらかじめ組み込んだ発明、技術」

を討議するのが発明塾、というスタンスで進めてきましたが、今年もそれは変わりません。主力メンバーの代替わりに備えて、この方針で、さらにじっくりと討議していきたいと思います。

ではでは、今年もよろしく!



2014年3月30日日曜日

塾長の部屋(65)~「欠点は、やがて長所となる」

いよいよ4月から新生活、という塾生にむけて、再びいくつかのメッセージを。

まず一つ目は感謝。

発明塾の活動で、一番得るものが有った一人が、僕自身でしょう。

・多くの「意欲的」な学生が参加してくれたこと
・実際に「企業に採用される」発明を、多数創出してくれたこと
・長い学生さんでは「4年間」という長期にわたり、継続的に創造的な議論を「毎週」行えたこと
・徹底的に言語化することを通じて、自分の「発明思考回路」を明らかにできたこと
・そして、それが習得可能なスキルであるという「僕の仮説」を、実績で証明してくれたこと
(3つ上の内容ですね)

改めて、感謝の気持ちでいっぱいです。

「ありがとう!!!」


他にも、いろいろな気付きがありました。挙げるとキリがありませんが、タイトルに従って。
卒業(卒塾?にあたり、塾生さん達から「塾で学んだこと」について、メッセージを頂きました。差支えない範囲で紹介すると、

・「各自、得手不得手があり、違いがある」こと
・その違いが貴重であること
・だから、どんな意見やアイデアも、場に貢献できること
・「違わなければ意味がない」こと
・「研究開発の方向性を考える」という、貴重な機会を得たこと
・大学では決して習わない、基本的な情報検索の技術を身につけたこと

等々、これまたキリがないようです。


僕はいつも、

「各自の違いが重要」「その差分に注目せよ」

と繰り返し言っています。これは、僕の中では確信に近く、小さな違いに注目し、その本質を追及することが、大きな発明/発見につながっています。


もう一つ。

「短所を克服していく中で、本当の強みが生まれる」

たとえば「発想が乏しい」と思っている塾生さんについては、それをどう補うかについて、具体的指導を行います。長所は、もうできることなのだから、次はそれをどう「他の人のために、場で活かすか」について、これまた具体的に指導しています。

僕は、各自の短所(苦手なスキル)は、考え方によっては強みになると思っています。実際、発明の途中でつまづく塾生は必ずその時、

「長所が足を引っ張って」

います。一つ一つの発明を丁寧に討議し、発明提案書を添削する中でわかってきたことで、非常に興味深い事実です。「長所を伸ばす」だけでは、不十分なのです。少なくとも「発明」のような、高度な知的活動においては。


あと一つ。ドロップアウトする学生には、一定のパターンがあります。以前「素直さが重要」という議論を行っています。その続きともいえる、「Optimistic & Critical が重要」という議論もありました。

続ける上で重要なことは、「素直」「 Optimistic & Critical 」「意見に終わらせず、自分の態度と行動に落とし込める」ことだと、わかっています。

Critical の意味を「批判的に考えること」で終わらせている学生は、基本的に脱落しています。「意見」は言うが、「自分の態度、行動」に落とし込めないため、結果が出ないのはもちろん、自分の中で「解決できないこと」が蓄積して、自分で自分をつぶしてしまうようです。

「死に至る病とは、絶望のことである」
大胆に、かつ地道に、一つ一つ解決していくことで、
道は開けるかもしれない、
そういうものでしょう
「祈り、かつ、働け」
と言った人たちがいましたが・・・

分かりにくいので、例をあげましょう。

「消費税が8%に上がります」
⇒「もっと上げるべき」「ちょうどよい」「下げるべき」

3つのパターンがありますが、Critical に考えるとすると真ん中は有りませんので、「現状否定」となります。その先はだいたい「なぜなら?」となるわけですが、僕はこの問いは、あまり重要ではないと思ってます。

それよりも、

「で、あなたはどうするの、具体的に」

という問いに「一つ一つ答えを出していくこと」の方が、重要ではないでしょうか。「理由」は、その途中で、必要があれば出てくることでしょう。どんな思考も、各自の態度や行動の変容(もしくは維持)として、「何らかの決断」にならないと意味がない。

「消費税が上がる」
⇒「下げるべきだと思うが、すぐに下げるための活動をしたとして、成果は出ないから当面買い控える/駆け込みで買う」

「消費税が上がる」
⇒「下げるべきだと思うが、実際には自分にとっては大した差ではないので、気にせず今まで通り生活をする」

などのように、具体的な「決断」に落とし込める人は、その場で「課題意識」を解決できるので、次に進める。これができない人は、関西弁でいうと「文句言い(もんくいい)」で、終わる。肥大した課題意識に押しつぶされる、というところでしょうか。人によっては「酒飲んで、愚痴言って終わらせる」ことに、なるのでしょう。

伝わったかどうか、あまり自信はありませんが、継続している塾生とドロップアウトした塾生の観察結果から、わかったことです。技術に関心があるかどうか、などは、少なくとも僕の観察の範囲では、関係ありませんでした。


細かいことは別にして、僕の結論としては「このように、わからないなりに言語化して、オープンに議論できる貴重な場」が、発明塾なんだろうな、ということです。


在塾生の皆さん、4月以降もよろしく!

卒塾生の皆さん、活躍を期待していますよ!
Farewell.



2014年3月29日土曜日

発明塾京都第173回開催報告~「教え合い」ではなく「学び合い」

いよいよ卒業ということで、参加最終回の塾生さんも交え、173回を行いました。

今回も、各自の発明提案書を基に討議を行い、合わせて「知的財産戦略」に関するケーススタディを行いました。

このケーススタディは、立命館大学MOT大学院の講義でも、取り扱っているものです。今年は、4月25日の立命館大学MOT大学院での講義(石田教授担当)で、大学院生の皆さんと討議する予定です。

せっかくですから、問いの一部を、転記しておきましょうか。

「ビジネスモデルとは、収益構造のデザインであるという視点から、”知財戦略とは何か”ズバリ答えよ。以下のキーワードを適宜用いることを薦める(利益、投資、垂直、無力化、安定、成長、加速、Sカーブ、早期回収、数量、寡占、水平、巻き取る、差別化、巨額、仲間づくり、イネーブラー)」

これまでの発明塾討議の、総決算的な内容です。皆さん、きちんと答えられましたか?

繰り返しですが、唯一の正しい答えがあるわけではありませんので、今回の討議/他メンバーの回答案を踏まえ、自分なりにまとめておくことが、とても重要です。


昔からの癖もあって、僕はたびたび、このような「答えのない自作の設問」を、塾で討議してもらうことにしています。会社のメンバーは知っていると思いますが、このような「問い」を作り、それに対して様々な観点から回答を考え、蓄積していくことが重要です。

「自分で問いを作る」

のがベスト、という点は「KSQ」の議論でやりましたね。


僕が、せっかく塾生が集まる時間に「答えのない問い」を議論するのは、理由があります。

「会った時/集まったときに、本を読めばわかるようなことを話す」ことは、時間の無駄だ、というのが僕の基本的な考え方です。

これは、前職の時に「自分の開発した技術についてヒアリングに行く際に、相手の出願特許を隅々まで調べ、提案書を作って持っていく」という、独自の手法を編み出した時からの、考え方です。

僕は、この手法も含めた一連のノウハウを「特許情報を用いた技術マーケティング」として、講演/指導する機会を、たまに頂きます(注)。似たようなセミナーや論文は多いのですが、「皆さんホントにそれで実際やってみたの?」「うまくいくの?」というぐらい浅い内容で、少しがっかりします。

脱線しました。

「会わないと出来ないこと、をする」

これが、発明塾で集まるときの、基本的なスタンスです。多くの塾生同士で

「XXについてわからない」⇒「君の場合は、この本がいいよ」

みたいなやり取りが、行われているようです。その上で、「まだ本にも書いていないような、独自かつ最新の考え方や仮説」について、集まって討議してもらっています。

ある塾生さんの推奨本。
過去に一度、「スケッチ」の指導/講義をしたのですが、
その時の「モヤモヤ」を、持ち続けてくれていたようです。
ある種の絵を描く能力は、発明では極めて重要です。

僕は、起こすべきは「学び合い」だと思っています。「本読めばわかるようなこと」は、互いにさっさと本で済ませて、その上で「そこでしか起きないような、もっと突っ込んだ議論」を仕掛けていく。そんなやり取りです。

そうすれば「ここでしか得られないものに溢れた」場を、継続することができます。

発明塾は、これからもそのような場であり続けます。


※ 注) 絶大な効果がある手法なのですが、あまり大々的に広めるべきではないような、そんな気がしています。というか、そもそも、そこまで調べられる人も、あまりいないようです。



2014年3月21日金曜日

発明塾京都第172回開催報告~「知識を体系で捉え、空白を埋める」発明塾の「学びの技法」

そろそろ新生活に向けて、引っ越しやらなんやらで、皆さん忙しくなってきましたね。
今回は、各自のSR(発明提案書)について、議論しました。

・進歩性

・実現可能性
・先行特許のクリアランス(非侵害)
・知財戦略

など、いくつかの視点で自分の発明を見直す作業も兼ねています。



「単なる思いつきを脱する」

ために、「厳密に言葉で表現する」事が欠かせません。書けないということは、分かっていないのです。自分でも分かっていない発明が、いい発明になるはずがありません。


さて、今回は弊社のメンバーも討議に参加してもらいましたので、改めて「発明塾式」の「学びの技法」について、おさらいしておきましょう。

例えば今回、発明討議に「比表面積」という言葉が出てきました。意味がわからなかった人は、すぐにググったと思いますが、

「比表面積=単位体積あたりの表面積」

で終わらせてはいけない。「学び」を「わからない言葉を、わかる言葉で置き換える、説明する」ことだと思っている人も、いるかもしれない。そうなると、上記の式を「念仏のように」繰り返し、暗記して終わりになる。受験勉強を「無駄の極み」のように言う人の大半は、このタイプの勉強を積み重ねてきたのだと思う。それは、たしかに無駄でしょう。

「日常を科学する」ことの楽しさ、
発明塾と、僕の原点です

発明塾的、いや楠浦的には、

「学び=知識の体系を構築する作業」

である。この体系構築の方法には、コツが有る。「比表面積」を例に、続けよう。


1)「深堀り/垂直」タイプ
同じ例で行くと、

「比表面積」
⇒「単位体積あたりの表面積か」 
 ⇒「それってどうやって測るんやろ?今回は、微細な多孔質って言ってるんやけど、
   表面積なんか物理的に測れないでしょ?」
  ⇒「吸着つかうんか!頭いいな!」
   ⇒「でも、それって精度どうなん?」
    ⇒「てか、比表面積自体が、測定法で定義されるんか・・・」
     ⇒「測れないものは存在しない、てことか」

みたいなタイプ。

これが「深堀(垂直)」タイプの体系構築の典型例。「比表面積=単位体積あたりの表面積」で終わらせず、「実際どうなん?」と、実施/具体化を想定して疑問を創出し、解決していく中で、知識を得る。「思考実験」タイプと言える。発明活動の本質をなす部分でもあり、極めて重要な「学び」の技法である。

整理すると、

「ある概念を、思考実験を通じて具現化しようとする中で、疑問や課題を発見し、それを解決することで、知識を得ていく」

ことが、「深堀り/垂直」タイプの学びである。つまり、実践に向けて深まる方向に、「知を発掘し、地図を埋めていく」活動である。世間的に「問題解決型学習」などと称されているものも、この辺りをイメージしているのかもしれない。


2)「網羅/水平」タイプ
同じ例で。

「比表面積」
⇒「単位体積あたりの表面積か」
 ⇒「ナノテクの講義であった、スケール則か」
  ⇒「吸着とか、濡れ性とか、表面エネルギーとか、そういう関係やな」
⇒「体積ゼロで表面積無限大っていう図形有ったよね(メンガースポンジ)」
 ⇒「フラクタルやな」
  ⇒「複雑系とか非線形現象とか、そういうのと関係あるんかな」
   ⇒「もっかい調べて、ちょっと考えてみよっかな」

みたいな感じ。

これが「網羅/水平」タイプの体系構築。既に学んでいる、ある程度の大きさの概念との結びつきの中で、「なんとなく」も含め理解していく。決して「置き換え」「言い換え」ではなく、既存の知識体系に「埋め込んでいく」ことで、概念間のつながりが、より滑らかになり、空白がなくなっていく。また、これまで繋がっていなかった概念同志を、積極的につなげていく。

「新たに獲得した知識を、既存の知識体系に”積極的に埋め込んでいく”ことで、全体としての理解を強化し、空白を無くし、場合によっては新たな関係性を見出す(=発明/発見)」

タイプの学びである。

「発明とは、複数の物事の間にある、新たな関係性を見出すこと」

と定義されることがあるが、「学びのタイプ」と見比べると興味深い。僕自身は、こいうことをしつこくやりましょうと、さんざん指導を受けたので、


「勉強といえば、水平垂直に知を体系化し、空白を埋め、新たな関係を見出し”ニンマリする!”ことだ」


という「思い込み」がある。「新たな関係」を自分なりに見出した時の「感動」が忘れられないので、ついつい勉強してしまう、という感じであった。というか、いまでもそうである。


皆さんはどうですか?



いずれにせよ、塾生さんが「発明をすることで、科学の本質に近づいていく」のは、上記のようなことなんだろうなと、理解している。


発明塾生は、これからも「実践的学習者」として、学び続けます!


※ 注) あわせて、普段の生活を「科学」することが、とても重要だと思っていて、参考図書として「ロゲルギスト」シリーズを推奨している。



2014年3月16日日曜日

塾長の部屋(64)~「京都大学”火炎瓶”工学科」の先輩から得たもの

今週は、本来土曜日にやるべきことを、日曜日にやることになっています。聖書とバッハを聴きながら、ブログと業務の整理・・・。バランス悪いですね(笑

さて、昨日お会いした方々への御礼もかねて、報告と補足を。


・京都大学若手会 イベント@京都大学東京オフィス 

 「若手のときに身につけたいこと」 グーグル元副会長 村上氏 講演会

もはや若手とは呼べませんので、”邪魔にならない程度に”しようと心に誓って、講演会に参加しました。村上氏については、京大OBということもあり、その動向や発言についていろいろ事前に話は聞いておりましたので、「実際どんな人なのかな?」という「本人確認」的な感じでした。時代的に、学生運動に明け暮れた、というところでしょうか。そういう方が、Googleという、ある種「革命集団」的な企業におられた、ということがまた興味深かったですね。


氏の代表的な著作に、「村上式シンプル仕事術」があります。興味ある方は、読まれてはどうでしょうか。


ライフネット生命の出口社長や、リベラルアーツ教育で著名な麻生川先生と同様、「リベラルアーツ」「経済学を学べ」「英語」「歴史」「とにかく本で学べ」など、よく考えれば当たり前ということを、ご経験談とユーモアを交え、若い方が興味を持ち、また疑問を解消できるように話されていました。


講演終了後、Grディスカッションが有り、参加者の一人から「転職(転社)」について問題提起?がありました。その場で答えたことを、かいつまんで備忘録代わりに書いておきます。

・村上氏の言う通り、「各自が、”次の自分”のために実績を上げ、仕事をする」のが会社(健全な利己主義の総和)
・本人は「ツキ」とおっしゃっていたが、相当突き詰めて仕事をする中で、次のステップ/選択肢が見えてきたのではないか(突き抜けた人は、次へ行ける)
・今回は”若手”向けということで話はなかったが、「自分が場所を求めて」転職をする、というフェーズから「周りのために場を作る/人を呼んでくる」というフェーズになる気がする(より「当事者」へ)

だいたい、こんなことを話した気がします。弊社の若いメンバーもそうですが、誰しも30ぐらいでキャリアに悩む、という「パターン」的なものがありますので、そこにハマった方は参考にしていただければ。


さて、塾生さん向けに、おさらいと補足をしておきます。



<経済学>

村上氏は「マンキュー」「ハイエク」を勧めておられました。楠浦的に付け足すなら、ハイエクと対比して「フランク・ナイト」(とケインズ)を読んでみては、と思います。

・「ケインズとハイエク」(間宮 著)

・「フランク・ナイト 社会哲学を語る: 講義録 知性と民主的行動」

また、最新の教科書はわかりませんが、僕の世代的に読みやすかった教科書として「スティグリッツ経済学(入門、マクロ、ミクロ)」を挙げておきます。高校生でもわかるように、という視点で書かれています。


理論を学ぶと同時に


・「初めてでも読み解ける!「経済指標」の見方&読み方決定版」


みたいな本を片手に、毎週月曜日の日経に掲載されている「マクロ経済指標」を読んでみると、実体経済と理論のつながりを、実感できると思います。何事も「理論と実践」、これも当たり前か。



「私たちは本当に自由なのか」
そんなこと言われても困りますよね、
でも、我々はそういう答えのない問いを
常に胸に抱きつつ、目の前のことに
日々答えを出していくという、矛盾を抱えた存在


<本を読む、目次を読む>

村上氏は、たとえば「D.カーネーギーの本の目次を、毎日読む」というような「サマリー(at a glance)」&「毎日(schedule)」という方法論を実践しておられたようです(注)。
受験勉強の一環で「トイレ」「階段」に、古文の助詞活用表などを貼った方。学習を作業にする手法としては正解でしょう。何か身につけたいことを、作業レベルに落とし込んで繰り返すというのは、古典的な手法ながら、大学に入るとたいていの人は忘れてしまいます。


<会計的な知識>

村上氏は触れておられませんでしたが、個人的には「世の中の仕組みを知るには”経済学”」「会社の仕組みを知るには”会計的な知識”」が、それぞれ必要では、と思います。

会計的な知識も、業種や目的で変わりますが、例えば

・製造業的な視点なら「粗利を2倍にする価格決定論」(西田)
・サービス業/マーケティング的な視点では「勝利の方程式」(勝間)
が、それぞれ使い勝手が良い。財務諸表が読めれば、(自分の)会社の状態もわかりますし、数字が見えれば上司や経営者の「嘘」も見抜けますし、株式投資などにも役立つでしょうから、仕事でも個人生活でも使える知識です。


という感じでしょうか。資料は回覧しますし、次回塾で印象は伝えたいと思います。


ではでは!




※注) 氏は「毎朝」と言っておられます。楠浦的には「毎晩」にしています。短期的に覚えておくには朝がよいでしょうし、中長期的に覚えておくには夜がよいと言われます。



発明塾京都第171回開催報告

3月も半ばというのに、寒い日でした。終了後も、色々議論したようですが、結果はどうだったのでしょうか。

さて、今回の議論を振り返っておきましょう。


今回行ったことは、


①すでに出ているコンセプトを、各自で「技術思想」として、提案書に落としこむ

②「技術思想」として、「課題-解決-効果」を整理することで、さらなる飛躍を狙う
(いわゆる「制約思考」との活用)

でした。



①は、合宿でやってきて欲しかったんだけど・・・まぁ、今後の皆さんの課題ですね。



「楠浦さんは、次になんというのか(KSQ)」


を、徹底するしかないですね。一人で発明するには、「複数の”相反する”視点を使い分ける」必要があり、それは「複数の人間を、頭に住まわせる」ことです。


②は、いつもやっていることで、「技術思想」として発明の本質を「課題-解決-効果」の流れで捉え、厳密に文章化し、それをたたき台に更に議論をすることで、「より深い本質」に至りました。



結局は、「アタリマエのことを」「繰り返し」「できるまでやる」という、誰でも判ることをやるだけなのですが・・・、その議論を「迷いなく」主導するには、それなりの経験と、科学的考察/理論に基づいた方法論が必要なのかもしれません。


では、次回までに仕上げてきてね。



「V7」神戸製鋼ラグビー部を率いた平尾氏
彼が言うこともまた、アタリマエのことばかり


今回は、塾生へのメールも公開しておきます。卒業生や、弊社メンバーにも、参考になるでしょうから。

>>以下、メール文面

171回でしたね。

つまり、3.5x171回の議論を、積み重ねてきたわけです。

600時間です。

合宿や、準備時間、個別討議もしっかりやった人は、1000時間は超えているでしょう。確かに、これぐらいやれば、やらなかった人と、差はついていると思います。

が、実感としてどうか、各自の判断に委ねます。


さて、次回SRを討議できるように、各自必ず、SRに落としこんで持参して下さい。無理矢理にでも書こうとしないと、細部は詰まりませんし、何が分かっていないのかすら、わかりません。今回、話したとおりです。

「発明」という仮説を元に、一歩無理やり進めることで、「何が足りないのか」「何をより深く考える必要があるのか」見えてきます。慣れれば、仮説時点でシミュレーションできますが、慣れてない人は、「シミュレーションだと思って」書き始めることです。

1回で仕上げようとしないことです。繰り返し、行戻りを覚悟しておくことです。

ダ・ビンチですら、未完の作品を多数残しています。名画の多くは、たびたび書きなおされています。そういうマスターピースと、その歴史を知ることは、皆さんが「仕事」をする上で、参考になるはずです。

では、次回も宜しく。

>>終わり


目線を常に高く持ち、「よい仕事」「よい作品」を作り出すための方法論を、大学時代に身につけて欲しい。

それが僕の願いです。