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2012年9月21日金曜日

発明塾京都第101回&合宿開催報告

 今週は、第101回と合宿を行いました。いずれも「発明提案書を仕上げる」ことに集中してもらいました。結果、初めて提案書を書き上げた人、文系学生でいい発明が出た人、など発明塾としても良い成果がありました。
 もちろん、各自それぞれの成果があったものと思います。書き上げた人はお疲れさんでした。まだ途中の人は、あと一息、がんばりましょう。終わった人は手伝ってあげてください。

 さて、今回は夏休みということで、8月から9月にかけて「発明創出」のプロセスを一通り行いました。小さな発明であったとしても、完成させることでそれぞれ得るものがあったようです。

・「楽しくなってきた」
・「先行技術調査ができるようになった」
・「自分の癖(欠点?)がわかった」

 繰り返しですが「具体的な成果を出そうとして初めて、得られるもの」が、実にたくさんあります。今後も、いわゆる「お勉強」(字面を追う、話を聞く)ではなく、結果を出すことを通じて、学んで欲しいと思います。

 次回は「落穂ひろい」として、

・「先行技術調査」力
・「ポンチ絵」力

を取り上げて、講義と演習を行う予定です。良いポンチ絵は、発想を広げます。先行技術を見つけると、思考が省略できます。この二つが、発想法の肝です。

お楽しみに!


2012年9月18日火曜日

京都大学での講義予定(10月10日)@工学部物理工学系

本年も、機械工学系(最近は物理工学系というそうですが)で講義を行いますので、興味ある人はぜひ参加してください。

・日時:10月10日(水) 16:30-18:00
・場所:京都大学工学部物理系校舎 313号室(変更の可能性あり)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_y.htm
(57番が物理系校舎)
・タイトル:「未来のエジソンへ~すばらしいアイデアと技術で世界を救え!」
・内容:
 エジソンは、世界で初めて「発明」を職業とした技術者であり、アイデアが産業資本となることを実証した。本講義では、まず、川崎重工業での大型オートバイ開発、小松製作所での風力発電関連新規事業開発、ナノテクベンチャー設立の経験とその経緯、を通じて「技術者のキャリア」について考えて頂く。また、現在の知的財産に関わる仕事内容を通じて、現代において、世界レベルの諸問題を解決するために再び「エジソン」が渇望されている現状も紹介する。

時間の都合で、どこまでできるかわかりませんが、

・10円玉ゲームをやる
・知財に関するビデオを見る

予定です。今までは、自己紹介の時間が長かったですが、今年は皆さんにいろいろ考えてもらったり、発言してもらったり、できるだけ「参加」してもらえるように考えています。

では!




2012年9月16日日曜日

塾長の部屋(11)~「人生」について考える

これまでの文脈からいろいろ書くべきことが有る中ですが、今日はここ最近のトピックから。

 偶然ですが、最近「仕事とはなんぞや」ということを、話す機会が度々ありました。僕の経験上、仕事について考えることは、人生について考えることそのものです。どこかで書いたかもしれませんが、僕の仕事に関する基本的な考え方の一つは、以下です。


「20才(ぐらい)~60才の平日の9時から17時という、まさに人生の黄金期の一番いい時間を”ぶち抜き”で使って仕事をする以上、そこでどれだけ意味(意義)のある仕事が出来るかは、そのまま人生のクオリティーに直結する」


そして、ここからは僕の経営哲学ですが、以下のように考えています。


「人生の黄金期を使ってもらう以上、能力が高まることで、個々人が充実した人生を送れるようになるという意味で、各自の能力を最大限開発し、大きな成果を出してもらうことは、本人と、それを取り巻く社会に対する、経営者の責務である


 基本的に僕は、充実した職業生活が、充実した人生につながると考えています。そして経営者は、そこに責任を持つ人でもある。経営者自身の人生は「会社がどれだけ社会に貢献できたか」で測られる。他の人の幸福そのものが、自らの幸福でなければならない。収益は、その指標の一つであるが、同時に、活動を継続するための手段に過ぎない。


 僕が最終的にこの結論に到達(確信)したのは、前者の方は27-8才ぐらいの時で、後者の方は32才ぐらいですので、いずれもちょうど「転職」した時期に重なります。転職のタイミングで人生について考えたのか、人生について考えたから転職したのか、今となっては定かではありませんが。



仕事(職)とは何か、何のために働くのか
資本主義とキリスト教、
いろいろ考えさせられる本ですよね

 高校生に「ああおもろかったと言える人生を送れ」「背負うべき業は何か」(注1)などと、よくわからないことを言う人との出会い。その時はピンとこなかったのですが、多分、上のようなことだったのだろうなと、勝手に理解しています。


さて。


転職せずとも、仕事と人生について考えるきっかけとして、読んで欲しい本が以下。


①「完全なる経営」A.マズロー

②「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」M.ウェーバー
③「人生の短さについて」セネカ

 ①は、経営者を志す人には必ず読んで欲しい本であり、②はいずれの人にも読んで欲しい本です。仕事とは何か。それはそのまま、人生を考えることです。③は、人生そのものの過ごし方についてダイレクトに問う本です。


 「何がやりたいか」ではなく「自分は何をすべきか(そして「なぜ」すべきなのか)」と考える。これはドラッカーが言った「やりたいことをやるべきことに」変える、ということの一つの意味です。自分(欲望)中心ではなく、世界(ニーズ・課題)を中心に置いて考えるということです。


「人生は短い、しかし、一つ何事かを成すには、充分である」(セネカ)


 何か一つぐらい、やってみたいと思いませんか。たぶん、一つしかできないので、それを何にするか、よく考える必要がありますが。。。


「少しぐらい面白いからといって次々と手を付けていては、何も出来ないうちに、あっという間に人生が終わってしまう」利根川進(ノーベル医学賞)



注1)「甲斐塾」 京都市伏見区に在る学習塾。楠浦は高校時代に在籍、大学時代は受験生に英語を教えていた。



2012年9月13日木曜日

発明塾京都第100回開催報告~「成果は習慣」

記念すべき(!)第100回は、3連続ブレストという怒涛の一週間に、見事に埋もれてしまいました。今、そうであったことに気づきました。。。

さて、15日に行ったクアルコムセミナーの帰りに塾生2名と話した内容を共有します。それは、

「成果を出すということは、習慣である」

ということです。そして、

「客観的な成果を出さない活動は、自己満足にすぎない」

ということです。目に見える成果を出す、ということを習慣にしてください。来週は、普通の発明塾と合宿の両方があります。ここで、作成中の発明提案書を仕上げ、まず成果を出しましょう。

では。



2012年9月12日水曜日

塾長の部屋(10)~毎月行う「社内ブレスト」でわかったこと

本日は、毎月行なっている弊社内の「ブレスト」の日でしたので、その様子を簡単に紹介します。

・事前資料を作成し、目を通しておく。
・都内の某所に集合。
・たいてい9:30~15:00です(昼食を30分ほど挟む)。
・最初に、発明テーマ(RFI:Request for invention)をおさらい。必要に応じて、RFIを企画された担当の方に、直接お話しを伺い、背景などを聞く。
・事前に調べた特許情報(等)を基に、軽くアイデア出しを開始。これは!という必然性のある切り口が出るまで、繰り返す。
・ある程度数が出揃ったところで、先行技術調査を実施。先行技術との対比で、発明を捉え直し、さらに調べることもある。

 最近はメンバーがこなれてきたので、ルールに縛られること無く自由に議論しています。これぐらい創造的な議論が淀みなくできると、仕事もなかなか楽しいものになります。

 もちろん、当初は方法論も暗中模索で、僕一人がやり方を「なんとなく」わかっていて、それをほかの人間ができるようになるまで、繰り返し繰り返し「やってみせる」「説明する」ことで疲れ果てていました。

 初期の頃の「ブレスト」の様子は、「知財の利回り」に詳しく書かれていますので、興味在る方は読んでいただくとよいでしょう。現在とは、かなり異なる雰囲気です。

 良いブレストに必要な要素は多数ありますが、一番重要なのは「レベルが同じで、個性の違うメンバーが集まること」だと思います。レベルが違うと、相当ストレスが貯まります(苦笑)。個性が同じだと、すぐに行き詰まります。

 創造的な議論にうってつけの、良いメンバーに恵まれたことに、最近は特に感謝しています。仕事が面白くなるもならないも、メンバー次第、というところでしょうか。


ご案内~「第2回イノベーション創出セミナーのお知らせ」

第1回では、国領先生のファシリテーションで私も参加させて頂きましたが、第2回は顔ぶれも変わって、荒井寿光 元特許庁長官の講演に始まり、日本知財界の重鎮の方々の討議になっています。興味在る方はぜひ。


★「第2回イノベーション創出セミナー」~日本再生のための知財戦略


・日 時 : 9月18日(火)18:00~20:30(予定)
・場 所 : 慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール
・詳細は以下
http://platform.sfc.keio.ac.jp/event/2012/0829_155.html



※参考 「第1回イノベーション創出セミナー」

http://platform.sfc.keio.ac.jp/event/2012/0620_153.html


2012年9月9日日曜日

「世界最強の企業クアルコム」についての特別講義

「クアルコム」の事例は、今年の立命館大学MOTの前期講義で3時間みっちり取り上げたのですが、その補足講義を、9月15日に立命館大学BKCでやります。前期講義では映像資料を流す時間がなかったので、今回は映像資料を見ながら、じっくりとその秘密に迫りたいと思います。昨年同様、一般の社会人の方(や塾生)も、参加可能です。

詳しくは以下。


・9月15日 MOT有志セミナー

http://kokucheese.com/event/index/46539/

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MOT学生有志セミナー 
「20世紀最も成功したベンチャー企業クアルコムのビジネスモデル」 
~いかにして携帯通信チップの市場を制したか~  

※クアルコム 
アメリカ発のベンチャーで、2012年現在世界最大のファブレス半導体企業。 
CDMA携帯電話用チップで、ほぼ独占に近いマーケットシェアを保持する。 
http://www.qualcomm.co.jp/ 


技術開発から、特許を用いた知的財産戦略を基に、クアルコムがどのようなビジネスモデルで成功したか、というお話です。今なお、他を寄せ付けない圧倒的強さの秘密に迫る、貴重な機会です。 


【講義形式】 
NHKの番組を見ながらの解説講義。質疑応答も適宜行います。知財等の話が多くなりますが、知識がなくても理解できるように解説頂きます。

【講義詳細】 
1999年4月25日に、NHKスペシャル「世紀を越えて」で放送された「特許で世界を制覇せよ」をもとに解説。 

※「世紀を越えて」 番組放送記録 
http://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_99_series.html 


※番組内容 
21世紀の初頭に世界で約10億の人々が使用するといわれる携帯電話。その巨大市場を握るため、アメリカ、ヨーロッパ、日本が 激しい技術開発競争を繰り広げている。特許を武器に21世紀の携帯電話の主導権を握ろうとする ベンチャー企業の戦略を追い、特許の持つ強大なパワーに迫る。 


※ 以下に関連内容あり。
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/07/mot.html
http://edison-univ.blogspot.jp/p/blog-page_8324.html
http://www.techno-producer.com/docs/hatsumeikenkyujyo.pdf


塾長の部屋(9)~偶然と必然と「縁」

昨日の京大フェスでお会いした方々、お疲れ様でした。

 昨日話したことは、発明の話ではなく「縁」についてでした。なぜなら、僕が今発明をしているのは、間違い無く「縁」のおかげなので。発明をやってみませんか、とお声かけいただくことがなければ、発明塾がスタートすることも、なかったでしょう。縁というのは不思議なものです。

 基本的に、複雑系の進化は「偶然と必然」(注)によって成り立っていると、考えられます。発明の創出過程がまさにそうであることも、発明塾生の解析により、わかりました。

「偶然から、いかに必然を引き出すか」これが、イノベーションの本質だと思います。

さて、タイムリーに、僕の尊敬する起業家のマイルストーンに関して、ニュースが出ていました。

・「アスタミューゼ株式会社第三者割当増資実施のお知らせ
http://www.astamuse.co.jp/company/press/120903.html

 代表の永井さんには、今年の立命館大学の講義にも、お越しいただきました。今後のますますの活躍を、祈っております。

 彼はかなり忙しい人なので、年に数回会えるかどうかですし、普段はメールすらやり取りしませんが、今年は講義を御願いすることが出来、その後近況を交換することができました。「仕事」というのは、非常に面白い、「縁」のツールだと思います。

 結局僕が言いたいのは、そういうことです。具体的な活動を通じてこそ、良い縁ができる。名刺交換では、縁は出来ない。

 僕のポリシーである「ビジネスこそが、世界を変える」というのも、同じ文脈から出たものです。

※注)「偶然と必然」J.モノー



2012年9月6日木曜日

発明塾京都第99回開催報告~「提案書を書く」

第99回も無事終了しました。次回は100回ですか。10進法においては、ひとつのマイルストーンではあります。

さて今回は、前回に引き続き「書く」という作業を中心に、各自作業と討議を行いました。討議(講義?)トピックだけ挙げておくと、

①先行技術調査におけるKWをどう決めるのか
②先行技術と競合技術の違い
③発明を定義して、書く、ということ
④発明の発展段階と、ブレストの科学

この辺でした。①は、進歩性の審査基準から自ずと導き出されます。進歩性が理解できていない人は、参考資料の佐田先生論文を再度読んで、進歩性の審査基準を頭に叩きこんでおくこと。

 進歩性を理解せずに、発明を詰めることは不可能です。皮膚感覚に落ちるまで、繰り返しトレーニングすることです。僕自身は、進歩性に関する調査を(弊社で仕事として受託して)大量に行なった結果、勝手に身につきました。頭脳に回路を作る作業なので、「進歩性の判断を繰り返しやる」以外に、身に付ける方法はありません。頭脳筋トレです。
 
脱線。

 ②は「新し」くて「勝てる」ものを考えるのが発明。新しさは、先行技術調査で決まり、勝てるかどうかは、競合技術調査で決まる。ただそれだけです。

 ③、実はこれが一番やっかいで、自分の発明が定義できないと調べられない。しかし、調べて比較対象が出来ないと、厳密に定義できない。どこまで何を定義すればよいか、は、実は①で答えが出ています。いつもどおり、僕のすべての話は(予め計画してあるので)つながっているのです。

 ④は、発明塾随一の理論家である Prof. Ozuka の解説によるものです。彼のお陰で、この2年で、発明理論を追求し尽くせた気がします。(Special Thanks to Prof. Ozuka !!!)

さて。

書く、ということについて以下2点注意点を。

・勉強したことを手当たり次第に書かない。発明とは「数学の証明問題」と同じ。必要最小限の材料(公理)で、できるだけシンプルに証明するのが、美しい回答。これは、甲斐塾の美学。発明塾の美学にします。

・書き足し、書き足し、を繰り返さない。下書き、清書、と進め、論理を洗練させる。これも数学の答案と同じ。答案を書き足すアホはいない。証明は、間違えたら消して書きなおす。書き足しがいけない理由は、部分観で付け足しを繰り返す結果、

「同じ事(や似たようなこと)を何度も何度も、くどくど書いてあって」「全体として論理が破綻した」

文章が出来上がるから。美しくないプログラムと同じです。

他、基礎的な論理構成能力や日本語力については、指定の参考書籍でトレーニングを。



2012年9月2日日曜日

塾長の部屋(8)~「スモール・イズ・ビューティフル」

さて。

 流れからすると、今日は(7)で述べた「発明塾で何を目指すか」を書く日なのですが、例によって間に挟まった塾生へのメールから、一冊の本を紹介します。


「スモール・イズ・ビューティフル」E.F.シュマッハー


です。


 この本は、僕が大学院でエネルギー応用工学専攻(現在の「エネルギー科学研究科エネルギー変換科学専攻」に相当)に入って、色々考える中で出会った本です。



技術と人間について掘り下げるには
経済学が役に立つ

 僕は元々は機械工学科に在籍し、金属材料(チタン合金等)の疲労破壊現象の解明、いわゆる「破壊力学」を専門にしていました(大学院でも研究内容は同じ)。たまたま、その研究室が学科再編の流れで、新しくできた「エネルギー応用工学専攻」に所属することとなり(というか、教授がその発起人の一人)、エネルギー問題を扱うという「課題オリエンテッド」な学科で学ぶこととなりました。


 実はこの一連の流れの中で、実に様々な事を体験しました。一つは「やはり人は変化を嫌う」ということです。「エネルギー応用工学なんて意味不明な学科出身となると、就職に不利」と、同じ研究室の何名かは、機械系に「戻る」ために研究室を離れました。離れないまでも、何名かは「迷惑だよね」と言っていました。


 僕はというと、上記のような様々な意見に「そうですね」と表面的には賛同しながら、持ち前の好奇心と「なんとかなるんじゃないの、ちゃんと力つけてれば。結局最後は実力でしょ」という楽観主義で、研究室にそのまま残って「エネルギー応用工学」を学びながら、「金属材料に関する破壊力学」の研究を続けることにしました。ちなみに当時の僕の研究テーマは「多結晶金属材料の疲労強度に及ぼす、微細組織の影響」とかなんとかで、卒論も修論も全く同じ題名という、のんびりしたものでした。


 なんせ、一本の試験片を昼夜繰り返し引っ張り、数万回の疲労寿命までの合間合間に、疲労亀裂の進展をレプリカ法で観察測定するという超アナログな研究。年に10本か20本の試験片をテストできればいい方でした。忙しい時は、疲労試験を行なっている間に、スパコンでシミュレーションを回し、研究室と実験室を昼夜行ったり来たりという感じでした。暇な時は、試験中は試験機が暴走しないように見ているだけなので、語学の勉強をしていました。


 脱線。


 新しい大学院の科目はどれも面白く、科学哲学や国際経済・安全保障論などを、必死で勉強したことを覚えています。その中で出会った本の一つが「スモール・イズ・ビューティフル」です。


 詳しくは読んでいただきたいですが、エネルギー問題に関する一つの考え方が示されており、この本を「建設的かつ批判的」に読みながら、自分なりの「エネルギー論」「科学技術論」を構築していった思い出があります。僕が手元に持っている本は、どうやら大学時代に読んだその物ではなく、恐らく、川崎重工から小松製作所に転職(29才の時ですね)して、再びエネルギー問題に取り組む事になり、手にした本のようですが、その本で数少ない下線が引いてある部分を以下に引用します。


「それは、一つの問題を別の平面に移して解決をはかろうとし、実際にははるかに大きな問題を抱え込むことを意味する」P26


「今進んでいる破局への道を脱出するのが最も重要な仕事だということである」P27


「では、その仕事は誰がやるのだろうか。<中略>われわれ一人ひとりである。未来を語ることに意味があるのは、現在の行動に結びつく時だけである」P27


「楽しみながら働くことができるようにすることである」P28

(以上、ページ数は、講談社学術文庫 第25刷 による)

 当時の京大生(90年代ですが、年に何度か「バリケードストライキ」が行われるような大学でした)には、まだ幾分左翼的な、世の中を斜に見た姿勢があったように思いますが、そんなことをしていても、何も変化しないと悟った時期でした。同時にそれは、一人ひとりを強くするという意味で、教育や経営に改めて興味を持ち始めた頃でもありました。


 当時は、ガルブレイズ、スノー、ポパー、D.ベルやL.サローなど、経済史や科学哲学を中心に幅広い本を読み、自分なりに「これから、世の中を良くするために何をすべきなのか」を毎日のように考えていました。すでに紹介済みの「甲斐塾」の同僚とも、毎日討議していた事を覚えています。今からすれば、非常に稚拙な議論であったことは間違い無いですが、しっかり勉強した上で、答えのない問題に対して自分の頭で結論を出そうという姿勢は、この時代に身についたように思います。


 僕は元々、勝ち負けを競うような世界に全く興味が無いので、「誰かが認めてくれる正しい答え」というよりは「自分なりに納得がいくまで考えた結果の答え」を追求する癖があります。いいのか悪いのかわかりません。自分の人生なので、それが他人から見ておかしなものであったとしても、自分で納得の行く答えが出したい、ただそれだけのような気がします。


 その後の経緯は、僕の経歴の通りですが、高校・大学時代の過ごし方が非常に重要であるという、自分なりの経験が、いまの「発明塾」につながっています。


一生読める本に出会う。そんなことも、大学時代の楽しみにして欲しいと思います。

さて、塾生と卒業生に贈りたい。

「未来を語ることに意味があるのは、現在の行動に結びつく時だけである」


 決して、現実の傍観者になってはいけない。愚痴を言って酒を飲んで、それで済ませてはいけない。実は僕はあまり酒を飲まない(のは皆知っていると思います)のですが、別に酒が嫌いなわけではなく、世の中の大半のことは、下手すると「酒飲んで愚痴を言う」で済ませてしまえるので、セーブしているわけです。

大いに未来を語り、それを現在の行動に結びつけて欲しい。未来は現在の結果だから。

ただそれだけです。