「発明塾®」へようこそ!: 塾長の部屋(44)~「集中」の技法

2013年6月16日日曜日

塾長の部屋(44)~「集中」の技法

もっと長期的かつ哲学的なことを、色々書きたいと思っているのですが、夏休みの発明活動に支障が出ないように、やや足元のことを書いておきましょう。

塾で、「発明が出る」学生と「出ない」学生。何が違うか、なぜ「出ない」か。


一つは、

「よくわからないので、止めます」=ゼロリスク嗜好/思考

のタイプ。いやいやいや、「よくわからないから」(発明を)するのであって、結果がわかっていることを、する必要はない(再発明のムダ)。ダメならダメ、なんでダメなのか、しっかり考える必要があります。同じ過ちを、何度も繰り返すタイプ、と言えます(結局、以下につながる)。


もう一つは、「極めて効率が悪い、タイプ。これには更に二つある。

①同じ事を何度も繰り返す(作業)
②考えずに「悩んで」いる(作業以前)

どれも結局は「おなじところを何度も何度もウロウロしている」という意味では同じですが、それを「作業」のレベルと、「作業以前」で分けておきます。


①同じ作業を繰り返すムダ
たとえば、特許公報を分析的に読む際に、読むべき場所はほぼ決まっている。請求項、図面、実施例、効果、などである。これらを有機的に結びつけて思想を抽出する作業が、「権利情報を技術情報に変換する(注1)」作業である。

であれば、最初から該当する公報を、ブラウザのタブで複数表示しておき、それぞれ必要な箇所に表示を合わせて、タブで切り替えて見るべきでしょう。

都度「スクロール」して見ていては、時間がいくら有っても足らない。

「作業」をいかに効率化するか、これはなにをするにせよ、最低限必要なことである(受験勉強で、しっかり身に付けるはずですけどね:注2)。


②考えずに「悩んで」いる
詳しくは「イシュー・・」(注3)を読んでいただきたいですが、この手の人は、「その人が与えられた時間で、あきらかにその人には直接答えが出せない質問を自分で立てて、それに答えようとしている」ことになります。

前述の「イシュー・・」では、10分だか15分だか考えて、何の進展もないのであれば、それは「悩んでいる」可能性が高い、と書かれています。


解決策はいくつかありますが、

・「人に教えを請う」

が一番わかり易いでしょう。もう一つは、

・「答えの出ない問題」→「答えの出る問題」に因数分解→「結果の出る作業」に変換

です。逆に、この思考が徹底的できている人は悩まない。例えば発明作業で、

「この発明を因数分解して」

と問いかけて、進む人間(出来るとは言わない)は、

「まず機械的に言葉を抜き出す」→「妥当かどうか、意味を考えて確認」→「おかしい部分をやり直す」

と、「作業(マシーンになる部分)」と「判断(人間的な要素)」を分けている。つまり、

「漠然とした思考(答えが出ない問題)」=「作業(必ず結果が出る)」+「判断(厳密な思考=答えが出る問題)」

という回路である。

「判断しながら」「作業をする」というのは、ワーキングメモリを食いすぎるという意味でも、極めて効率が悪い。


例えば、文章が大量にうまく書ける人は、

「まず書いて(もしくはネタを集めて)から」「後で見直す(妥当性の判断)」 

など、作業と判断を分けて、確実に執筆が進むようにしている。「朝早起き(5時おきなんたら、とか色んな仕事術本が出ていますが)」とかは、おそらく一切関係ない。


「考える」から「作業」を分け、また、「できるだけ作業に変換」して、その作業を「できるだけ効率化」することを考える。

「発明が遅い」(仕事が遅い)

といつも言われる人は、身につけてください。この習慣は、一生、役立つでしょう(注4)。



※ 注1)「知的財産戦略」丸島 参照

※ 注2)実は、中学/高校レベルの数学や物理の知識も「使わずに」、発明をしようとする学生も散見される。よほど大学で「スポイル」されているのだろうなと、推測は付くのですが。僕はこの手の学生には、非常に厳しい。知っている知識をフル活用せずに、勝負に挑んで勝てるはずはない。

※ 注3)「イシューからはじめよ」安宅 参照

※ 注4)これができると、「なにが任せられて、何を自分でやらないといけないか」が明確になるので、仕事が効率的になる。部下が付くようになると、ここで差がでます。「仕事を、人(外部も含む)にうまく頼めない(=仕様書・企画書が書けない)」上司にならないように、今のうちに身に着けておきましょう。
発明提案書は企画書であるため、この能力は、発明を効率よく行う上で欠かせないと、僕は考えます。実際、これができていない人は、発明提案書が書けていません。