2014年1月28日火曜日

塾長の部屋(61)~「よい報告書の条件/精読論」

少しイレギュラーですが、仕事にも関係が有ることですので、敢えて平日に。

日頃お付き合いがある皆様も同様と思いますが、そこそこの立場になると、興味があるから/情報が必要だからといって、外部のセミナーに情報収集に行くことは難しい。僕もここ数年、いわゆるセミナーに、ほとんど参加していない(注1)。

しかし、情報が入らないのは困るので、適切な人にお願いして行ってもらい、レポートという形で報告を受ける。ここ2年ほどは、このスタイルですっかり固まっている。最初は不安でしたが、結論、

「よいレポートは、おそらく自分が行っても解らなかったであろうことが、わかる」

不思議な話ですが、そう思います。現在定期的にお願いしている、ある方のレポートは、もはや「アート」とも呼べる、素晴らしいものです。

では、もう少し噛み砕いて「よいレポートの条件」とは、なにか。レベルの低い話から順に行きましょう。


1.「認知」に対して、基礎的な注意が払われている
例えば、「日時、報告者、場所」などの基礎的な情報すら無いレポートを、部下や同僚から受け取ったことが有ります。これは問題外として、少なくとも、

「事実と意見」

ぐらいは、しっかり分けて書いて欲しい。しかし、これが出来ない人も、意外と多い。結論が先とか、toDOを冒頭に書くとか、目的によって違う部分は、「目的に応じて」書いて欲しいですね。

心理学用語で「認知(的)負荷」と呼ぶようですが、「読む気がしない」「読んでもイマイチ頭に入らない」レポートは、時間泥棒呼ばわりされても、仕方ないでしょう 笑)

ちなみに、学生さんの課題レポートや、発明提案書も同じですよ!(注2)


2.目的に応じた「+α」の情報がある
これに気づいたのは、実はその方のレポートではなく、弊社の若いスタッフのレポートを読んだ時です。

「彼、いいレポート書くな」

と思い、その理由を調べるべく色々なレポートを見比べると、彼は、

「今回のセミナーで言われていたことについて、関連する資料がXXあり、そこにYY書かれていました、ご参考」

という「+α」を、絶妙な位置と配分で織り込んでいました(注3)。レポートを読んでいる人の行動の

「一歩先」

を見た「+α」の情報、これは良いレポートの条件かも知れません。つまり、

「誰が読んでどう使うのか」(レポートの目的)

これが無いレポートは、当然「読めない、使えないレポート」になります。彼は、なかなか優秀ですね。いったい、どこで身につけたのでしょうか。


「心眼」=Mind's eye とは、
よく言ったものです


他にもありますが、次の話題に行きます。では、良いレポートをどう使うか、です。

「ふーん」

だと、「書く方も読む方も」時間の無駄でしょう。僕は、ある程度自分がほしい情報なり、「少し引っかかった=!?!?」内容があるレポートは、

「ノートに貼って分析し、更に深堀りする」

ことにしています。タイトルで「精読」と言ったのは、この作業です。もともと英語を教えていた関係か、はたまた設計で鍛えられたのか、「一字一句」見直す中で見えてくるモノがあり、それが重要であることが、身に沁みています。

それが誰の文章であろうが(注4)、一字一句丁寧に見直します。

「なぜこの表現、言葉なのか」(言い換え)
「この言葉は必要なのか」(削除)
「並列関係ではなく、因果関係ではないのか(その逆も)」(関係性)

など、言葉自体の存在、代替、関係を一つ一つ確認する。僕はこれを「精読」と呼びます。文章のチェック法にも使えますが、

「書かれている内容を理解し、その意図を深いところまで確認する」

ために、欠かせない作業です。この作業で「仮説」を立てた上で、レポート作成者に質問したり、念押しのコメントを出して内容や意図を確認し、新たな情報を引き出します。

もとはと言えば、「受験英語」の勉強の過程で身につけたスキルであり、それを教えるためにさらに「体系化」したものですが、社会に出てから、むしろ大いに役に立っています(注5)。

当時の教え子は、今でも僕が「ノート」を使っていることに驚くかもしれません。ツールはともかく、「精読」から「他の人には見えない情報を取り出す」以外に、先に行く方法は無いかな、というのが僕の今の認識です。

「他の人には見えない、何か」

を掴みたい。それだけです。僕が特許情報分析を、いくつかのパターンに整理した上で「駆使」するのも、それが理由です。

皆さんも是非、「精読」を通じて「自分にしか見えない何か」を、掴んで欲しいですね(注6)。



※ 注1) もっとも、川崎重工でオートバイの設計をしていた時も、外部のセミナーには一度も参加しなかったのですが。

※ 注2) 発明塾で推奨しているトレーニング書は「論理コミュニケーション」(梅嶋 著)。中学?か高校?で実際に使っているとのことで、さすがに完成度が高い。

※ 注3) そういえば、コマツ時代の先輩も同じことをやっていて、当時真似していました。

※ 注4) 特に塾生さん/学生さんのまとめやレポートは、ほとんどをこの形で分析し、次の講義に活かしている。

※ 注5) 甲斐塾の関係者の方々と、駿台予備校の英語科講師の方々、特に表三郎先生に、今でも大変感謝しています。思い返せば、受験勉強の内容や方法論のほとんどは、今でも非常に役に立っています。

※ 注6) 塾生さんには「僕の方法を真似ても意味が無いかもしれない」こと、「自分なりの”熟達”=Masteryの手法を編み出し、繰り返し、改良すること」を、常に話していますよね。