さて、以前もこのブログで書きましたが、
「成績評価は、少なくとも今の大学生の”学び”にとって、阻害要因にしかなっていない」
というのが僕の認識です。
「いい成績が取れるかどうか」
に集中するのではなく、
「身につけたいと思っていたことが、本当に身についたかどうか」
を、
「自分の基準で」
判断して宣言し、授業を終えるべきだと僕は考えています。彼らが「身についた」というのであれば、僕の責任は果たされたことになりますし、「身についていない」と感じているのであれば、もっと工夫が必要、ということになるでしょう。
ですので、僕は必ず講義の最後に
「そもそも皆さんは、目的としていたことが身についたのでしょうか?」
と、自らを振り返ってもらう時間を、設けることにしています。
では、今回の受講生の「振り返り」を、少し見てみましょう。
★Q1)「今回の講義で、上手く出来たこと、上手く出来なかったことは何ですか?」
これに対して、
・上手く出来たこと
「とにかくアイデアが多数出せたこと」
「レポートとしてアウトプットを出せた」
「Grをまとめることができた」
「よい先行技術/特許を探し出せた」
「創造的な議論の仕方を実践できた」
・上手く出来なかったこと
「行き当たりばったりになった」
「時間がかかった」
「Grを上手くまとめられなかった」
「主観が入ってしまった」
「ロジックが詰め切れなかった」
「悩んだ時間が多かった」
のようなコメントが寄せられました。僕の講義では、常に「Grとしてのアウトプットを追求するように」指示を出していますので、Grワークに関する課題に言及していた学生さんが多かったですね。
★Q2)「今回の講義で学んだこと、これから学びたいことは何ですか?」
これに対して、
・学んだこと
「チームワークの大切さ」
「発想法」
「ロジックの重要性」
「マニュアルを見ることではなく、作ることが重要、ということ」
「質問に対する、正しい返答の仕方」
「特許情報検索の重要性」
・これから学びたいこと
「MBA」
「リサーチ力」
「個人の力の引き出し方」
「リーダーシップ」
「他人のアイデアを昇華させる方法」
「考えた靴を、実際に売ってみたい」
のようなコメントが寄せられました。MBAやMOTに興味をもった人がいたことから、「MOT入門科目」としての一定の役割は果たせたのかな、と感じました。
素晴らしいチームが、素晴らしい作品を生み出し、
世の中を動かす。
「自分も、良いチームを作りたい」と思ってくれたなら
僕の講義は大成功です。後は彼らに任せましょう。
これも繰り返しなのですが、「マーケティング・リサーチ」の講義だから、技術のマーケティングについて教えればそれで良いのだ、とは、少なくとも僕は考えていません。その過程で必要になる、
・論理的思考能力
・情報検索
・組織運営能力(リーダーシップやフォロワーシップなど)
・創造的な議論の手法
・発想法
など、全てのことを「講義/演習に巧妙に織り込んで」教える必要があります。でなければ、誰かが教壇に立つ意味は無いでしょう。本を読ませ(もしくはeラーニング受講)、自学自習させればよいのです。
Grワークも、学生だけで出来る部分もあるでしょう。
教壇に立つ人間が果たす役割とは、「学生の学びを設計する」ことだと、僕は思っています。機械を設計するのと同様に、いや、それ以上に面白い仕事です。
前期の大学院講義「先端科学技術とビジネス」を受けた人は、「楠浦さんの講義なのに、楠浦さんが一コマも担当しないってどういうこと?」と思ったかもしれません(正確には、イントロの第一コマだけ担当しました)。しかも僕は非常勤です。にも関わらず、講義の講師は全て(僕が趣旨を説明し、お呼びした)ゲストが担当する。普通はありえないでしょう。これを許可いただいた立命館大学大学院関係者の懐の深さに、とても感謝しています。ですが、受講した人には全員
「僕が設計した講義は、”やはり”ちゃんと僕の講義になっていた」
ことを、感じてもらえたと思います。もはや、
「前で、力いっぱい面白いことを言えば、それでよいのだ」
という、前近代的な「漫談講義」の時代は、もう終わりです。来年度はさらに先へ、行きたいと思います。今年受けた学生が「来年受ければよかった」と思うような、講義になります。
もちろん、来年もう一度受けても構いません。念の為、シラバス(仮)を以下に掲載しておきます。
よろしく!
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「マーケティング・リサーチ入門」(理工学部/情報理工学部3回生対象:後期開講科目)
1.授業の概要と方法
本講義では、MOT入門科目としての位置づけから、日本企業が技術力を生かせない/収益に結び付けられないという「課題」に着目し、「技術を創造し、普及させるために必要な考え方、発想法」について、講義と演習を行う。講義/演習内容は、楠浦が主催する「発明塾」が、4年間掛けて開発してきた手法の一部である。
・「発明塾」HP http://edison-univ.blogspot.jp/
全ての技術系学生、MOTやMBAを目指す学生に受講して欲しい。
例えば大学生にもわかりやすく、同じ課題意識を取り扱った書籍として「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか」(妹尾)がある。ここでは、「単に良い技術」「単に良い製品」「単に良い発明」では意味がなく、「知財マネジメント」が重要であると、アップルやインテル、グーグルなどの事例を交えた解説がある。もちろん、類似の指摘は、多くの識者によってなされている。
一方で、「普及する仕組みを折り込んだ」製品/技術の開発を如何にするべきか、という具体論はほとんど示されていない。本講義では、
・発想法
・知財マネジメント
・特許情報分析
・(国際)標準化と事業戦略
などの観点を、実際に皆さんに発明を生み出してもらいながら、身につけていただく。また、特許情報は「ビッグデータ」の一つとして「研究動向分析、企業動向分析、投資分析」に、すでに活用されている。そこで必要な「データマイニング」の基本的考え方(例えば共起分析)も、本講義で取り上げる。データ分析に興味がある人の参加も、大歓迎である。
2.受講生の到達目標
本講義を通じて、以下の知識/スキルを身に付けることを目標とする。
・発想法の基礎
・特許検索
・特許情報分析
・知財マネジメントと標準化戦略の理解
・Grワークの進め方
なお、本講義は基本的にGrワークで進める。
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