京都は毎年、1月後半から2月中旬までが最も雪が積もる時期で、卒論/修論提出の日はいつも雪だった、という記憶があります。
さて、今回もアイデア討議の後、簡単な講義を行いました。内容は、
①技術経営における「知財」の位置づけ
②産業構造と知財
の二つです。本日の立命館大学での講義用に準備したTopicなのですが、せっかくなので・・・ということで、塾でも取り上げました。
①は、日本ライセンス協会の会長を務めておられる、原嶋先生のお話の「ある種の」受け売りです。XEROXで研究企画をしておられたとのことで、私が常に言っている「I(発明)&P(特許)&R(研究)&D(開発」論に近いことを、その時代から実行しておられた、偉大な先人です。
以前一度、直接お話を伺う機会に恵まれ、非常に丁寧にご指導頂きました。原嶋先生曰く、
「企業経営の立場から、技術の成果を活用する手段の一つが知財(もう一つはもちろん、”事業”)」
とのこと(注1)。論旨明快で、その一言を肴に、一時間以上議論させていただきました。
②は、小川先生の理論を「発明塾的」に解釈したものです。小川先生は、各所で「結合公差」という言葉を使っておられます。この概念が「知財がますます重要になる」ことを示す、重要な鍵です。
「結合公差が縮小するような技術体系」
であれば、いわゆる職人的「技術/ノウハウ」が重要となり、積み重ねや努力が競争力に結びつきますが、
「結合公差が拡大するような変化」
が生じると、そこに現れるのは「技術」ではなく「技術思想」であり、「特許」の出番となります。MOTでこれを教えないのは「かなり」問題であると、この一年ほどで確信したため、来年度の立命館大学での講義では、上記の概念を基に「技術と経営と知財」を整理しなおして教えたい、と思っています。
脱線しました。
僕は「発明」は「技術思想」である、という丸島先生の著書の言葉を見てまず、「なるほどそういうことか」と思いました。そして、小川先生の「結合公差」論を聞いて、上記の認識に至りました。その背景には、僕は「エンジン」や「ギヤボックス」という、極めて摺り合わせ度の高い「技術」を開発していた、という事があります。
日本の技術が高い競争力を持っていた
「古き良き時代」の技術書達
(僕の宝物の一つです)
そういう意味では、「発明塾」で教えている様々な理論は、先人の蓄積を僕の経験を通して「解釈」し直して出来たもの、と言えるでしょう。全ては「先人の蓄積」の上にあるのです。しかし、「自分の知」にしていくこと/それをさらに未来へ「贈る」ことを、忘れてはいけません(注2)。
ぜひ塾生のみんなも、「受け売り/切り貼り」に終わらず、「自分の発明活動を通じて理解を深め、新たな”知”に達する/創造する」という、「知識創造」を行って欲しい。
※ 注1) 私の理解です。
※ 注2) 「先物市場から未来を読む」(注3)の著者であり、金融先物取引市場の父「レオ・メラメド」(シカゴ・マーカンタイル取引所 元理事)が、同じことを言っています。単に誰かの言っていることを、受け売りで流すのではなく、そこに「自分の知」を付け加えて未来に渡せ、と。全く同感です。
※ 注3) 「知財と金融は、これからの技術者の二大必須リテラシー」ですから、ぜひ読んでみてください。