「発明塾®」へようこそ!: 塾長の部屋(45)~「課題をクリエイトする」~結局は皆同じことを言う

2013年7月21日日曜日

塾長の部屋(45)~「課題をクリエイトする」~結局は皆同じことを言う

「塾長の部屋」としては久しぶりですね。今日は、金曜日の立命館大学MOT講義「先端科学技術とビジネス」および、塾生とのメールのやり取りから感じたことをまとめておきます。

・立命館大学MOT講義「先端科学技術とビジネス」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html


今回の講義では、ある電子部品メーカーの企画部門の方にお越しいただき、特に後半、


「要するに、どうやれば勝てるのか」

という Topic について、様々な角度から討議を投げかけていただきました。

その方とはかなり長いお付き合いで、発明塾での取り組みを紹介して以来、結局、新しい事業を起こす、あるいは、成果につながる技術開発テーマを企画するには、


「課題をクリエイトする」


ことが重要だよね、という話を繰り返ししています。今回の講義でも、「さらっと」出ましたが皆さん聞き逃してませんか~?

発明塾では、「次に取り組むべき課題は何か」を「考えだす」ことに、かなりの時間を割き
、また、そのための方法論を日々整備しています。


また、第4回、第6回では「累積思考量が重要」という全く同じ話が出ました。自分の頭で「日々」よく考えましょう、ということですが、特に第6回では、「少数のシンプルなルールに基づいて、徹底的に考える事が重要」と、これも発明塾でいつも繰り返していることと、全く同じお話がありました。


僕の所には、しばしば、


「TRIZのセミナーを受けたが、結局身に付かない、使えない」


という相談が寄せられます。僕自身は、ある発明の段階で使うことがありますし、発明塾でも参考図書として配布していますので、必ずしも「使えない」とは思いません(※)が、一方で「方法論として憶えなければならないことが多い」「それを補うためにツールが準備されているが、結局その使い方を憶えるのが面倒」という、悪循環に陥っている気はします。


解決策は「完全に習熟する」しかなく、「使い方を思い出すので、いっぱいいっぱい」「方法論に溺れている」ようでは、効率よく発明はできません。「思い出す」ことに、ワーキングメモリーを使ってしまうからです。


直近で、山中先生(iPS細胞で有名な)の著書を読んでコメントをくれた塾生さんがいます。コメントへの返答をモディファイしつつ、「結局は、いくつかのシンプルなルールに習熟する以外に、方法はない」ということを示し、終わりにします。


塾生さんが読んだ本は、以下2冊を含めた3冊(3冊目は割愛)だそうです。



①「大発見」の思考法
②山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた

それぞれの、勉強になった箇所を抜粋してくれています(塾では「写経」と称して、本を抜書きすることを推奨しています)。それに対するコメントが以下です。

>>>

共有ありがとう。結局、いつも僕が言っていることですね。つまり、誰が考えても同じ結論にたどり着く、ということでしょう。僕は山中先生を知らないし、話したこともないし、講演も聞いたこともないし、本も読んだこともない。年代もバックグラウンドも出身も違うので、同じ影響を受ける素地がありません。

補足しておきます。

①p.164
「VW=「Vision & Hard Work」、つまり「明確なビジョンを持ち、それに向かって一生懸命努力すること」が、研究者として成功するための条件だというのです。日本人は概して勤勉ですから、努力は得意だと思いますが、明確なビジョンをつい見失いがちです。・・・ふと気が付くと、何のためにその努力をしているのか分からなくなっている。」

これを実行するための「7つの習慣」であり、「Time Quest」。ぼくは「今日も頑張りましょう」みたいな掛け声は無意味だと思っていて、「意識せずに、常に力を出し切れる仕組み=習慣」が重要です。

7つの習慣は Vision に焦点を当てており、Time Quest は、実行の方に焦点を当てている(どちらかと言うと)。たとえば7つの習慣では「Put First Things First」と、重要事項を優先しましょうと掛け声は掛けているが、具体的方法論は示していない。

TQ では方法論に言及していて、「何のために Prioritized Task List 」が必要であるか、と書かれている。余談ですが、これは結局、チクセントミハイの「フロー」理論と同じ。

発明塾参考書は全て繋がっているので、それを意識して Mastery するといいでしょう。


②p.84
「厳しい競争分野に、ぼくらの弱小研究室が飛び込んでいっても勝算はありません。分化の逆である初期化を目指すというビジョンを立てたのは、はじめから負けることが分かっている勝負はしたくなかったからでもあります。」

これは「ランチェスター戦略」。勝負のルール、力学を理解した上で、有利に進められる戦場と戦い方を選ぶ事が重要。


②p.97
「理論的に可能なことは実現する。理論的に不可能なことなら、たしかに、いつまで経ってもできないだろう。しかし、理論的に可能なことが分かっていることならいずれできる。多くの人が「こんなん絶対無理」とおもうようなことも必ずできるようになる。ぼくは単純にそう考えています。クローン羊ドリーが誕生したということは、理論的には、どんな細胞であっても、分化する前の状態に戻せる、初期化できるということです。」

狭義では、ここが発明塾の思考法、ということになるでしょう。「理屈上出来る事かどうか」確認(論証)する事が重要である、というのが「発明塾式」仮説思考です。

また、「理屈上出来るはずのことが、やられていない、できていない」ということが、チャンスである、という考え方です。

研究であれ製品であれ事業であれ、全て同じです。



※ 
「万能なツールは存在せず、どのようなツールも、使いどころの見極めが肝心」であり、発明塾において TRIZ を活用する際も、「どの局面で使うか」常に気を付け、指示を出していますよね。
実際、問い合わせがあるたびにそのようにお話し、さらにどう使えたかという「自分の発明の実例」を、セミナーではお話することにしています。TRIZ がインパクトのある発明ツールの一つであると正しく認識し、有効に活用している塾生さんもいます。
でも、話を聞いたからといって、出来るようになるものではないとも、思います。それは、自転車の乗り方を聞いた(見た)からといって、乗れるようにならないのと同じです。
結局は「ある程度良いコーチ」について、「指導を受けながら実践する」しかないと思います。自転車に乗るぐらいであれば、「両親」で十分(失礼!)なのですが。。。