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2013年10月27日日曜日

塾長の部屋(54)~「大学時代にすべきこと」~立命館大学”発明講義”第5回から

立命館大学での「発明講義」(正式名称は「マーケティング・リサーチ」)も、そろそろ折り返し点になります(注1)。

今回の第5回講義では、Grワークの進め方も含め、皆さんが大学時代に身につけておくべき内容を、「おさらい」しました。


以下に一部を抜粋しておきます。


詳しくは、自分のノートを確認し、まとめ直し、理解を深めて下さい。



>>>以下、楠浦講義メモより引用


1.大学時代にやるべきこと


「大学に入って、久々に頭を使った」


というコメントが散見?されましたが、それは皆さんが、貴重な20代の時間と、学費を毎日如何に無駄にしていたか、ということです。同じ理由で、僕の授業では、講義外の課題を重視します。たかが週に1.5時間の「お話」で、何が身につくというのでしょうか?基本的に勉強は、「毎日自分でやる」ものです。


「時間外の課題が多いので減らして欲しい」という意見がありましたが、「楽がしたい」なら履修しなければよいのです。必修科目ではありませんから。僕の講義は「もっと勉強したい」という学生に対して、常に開かれたものでありたいと思っています。実際「もっと勉強したい」という学生には、毎年多数の参考図書や資料を紹介しています(注2)。


マッキンゼーの「Up or Out」(向上なき者は去れ)に合わせると、「向上心なき者は去れ」でしょうか。


幸いにも、僕の講義は毎年非常に高評価で、「来年度も継続してほしい」と理工学部から連絡が来ました。立命館大学の少なからぬ学生が、「もっと勉強したい」と思っていることは、僕にとっては希望の光です。


大学で学ぶ、専門科目などの個別の知識はもちろん重要ですが、「一生通用する学びの技法を身に付けること」こそが、大学時代にやっておくべき、最も重要なことです。大学時代に得た知識で一生食っていけるほど、世の中甘くありません。次から次へと、新しい状況を切り開き、問題か解決するための知識/スキルが必要とされます。仕事をしながら、いかにそれらの知識/スキルを身につけていくか。


皆さんが社会で活躍するためには、それが最も重要です。


そもそも「勉強したことで食っていける」=シーズ発想、「目的を達成するために、あらゆる必要な手段を身につけ、駆使する」=ニーズ発想/目的思考、です。社会で求められるのは、常に後者です。


「学んだことを使って、テストで良い点を取る」という学習に対する態度は、高校までで捨てることです。社会では、「学んだことを使ってくれ」と言われることはありません。「これをなんとかしてくれ」「この目標を3ヶ月以内に達成してくれ」と、課題/目的から始まるのです。


「目的思考」が出来なければ、皆さんを待っているのは「使い走りの仕事」です。出来る範囲の、言われたことをやる、という状況に甘んじるしかありません。


僕は皆さんに、充実した人生を送ってほしいと思っていますし、そのために、「自分で状況を切り開ける(課題を解決できる)」社会人になってほしいと思っています。僕が見る限り、在籍しているすべての学生に、それは可能です。

「目的を達成するための手段を創造し、評価し、選択する」能力を、この講義を通じて鍛えて下さい。



ちなみに「学びの技法」の次は、「一生付き合える少数の友を得ること」です。多数は不可能です。見極め、「これは」と思う友を大事にすることです。

とはいえ、大学できちんと勉強するのは
意外と難しい。山登りのように
正しい「ガイド」が必要です。

>>>引用終わり

他にも、数多くのトピックを取り上げました。事前準備した講義メモから、タイトルだけ抜粋しておきましょう。


・「読んできて」と言われてやるべきこと~「理解」とは何か

・なぜ「あいまい」な状況と感じるのか~「手段」を指示されることに慣れきっている
・なぜ人は「学べない」のか~無知を認める素直さ
・Grワークの落とし穴~集団バカを避けるために
・「決められない」人の特徴~決めないということも決断である
・まぐれ/決め打ちの無駄~何をするにも理由を持て
・組織は必ずリーダーを必要とする~「霧の中を進む勇気」を持つ

機会があれば、本Blogでも取り上げましょう。




※ 注1) 下期15回の通常講義のため。例年、前半7回を「特許情報分析」、後半7回を「発明発想法」とし、最終回は「知財戦略とイネーブラー」の講義に充てています。



※ 注2) 今回の講義で取り上げた参考図書は、以下。

・「失敗の本質」(野中)
・「学びの心理学」(秋田)
・「知識創造企業」他、野中郁次郎の著作
・「選択日記」(アイエンガー)
・「イシューからはじめよ」(安宅)
・「問題解決の全体観」(中川)>他、ロジカルシンキングに関するものは、いくつかまとめて読んでおくと良い。
・「戦争論」クラウゼビッツ
・「加速するテクノロジー」他、レイ・カーツワイルの著作>人工知能の専門家。知っての通り、彼は先日Googleに招聘されています。「知を生み出す」領域に、コンピュターがますます入り込んでいます。人間が「コンピューター以下」になる日はいつ来るのか、それを見通した本を、彼がいくつか出しています。
・「7つの習慣」(SRコビー)
・「入門ビジネスコーチング」(本間)他、コーチング理論、とくにGROW理論(以下)に関する本
http://www2.ocn.ne.jp/~honeybee/communication/coaching/CoachingGrowModel.html





2013年10月26日土曜日

発明塾京都第152回開催報告~「知財は交渉力」と思う日々

第152回も、いつも通り各自のアイデアや特許分析の結果を討議し、その後課題演習を行いました。

発明には、特殊/高価なツールは必要ない。先行技術を素早く見つけ、その技術思想を見抜く手法に、まず習熟すること。その上で、常に技術を流れで捉えること。そして、集団/個人でのアイデア出しについての「若干の」技法を、しっかり身につけることです。


経験上、さほど難しいことではありません。


一定期間の訓練で、必ず身につくものです。


変な理屈をこねずに、地道にトレーニングに励んで下さい。


丁度皆さんが、受験勉強をしていた頃を、思い出すと良いでしょう。


なぜか日本人は、大学に入ると勉強法を忘れてしまうようですが、ほとんどの高校生は、予備校などで、正しい勉強法を学んでいます(注1)。忘れないことです。


あとは、「わからないことを、わからないと認める素直さ」です。


素直さの議論は、以前やりましたので割愛します。


「分かった風」


を装っても、何も得るものはありません。わからないことを見つけ、認め、頭を下げて教えを請うことです(注2)。なぜか、わかっていない人ほどプライドが高く、わかっていないという事実を、なかなか認めたがりません(だから、色んな事が「わかっていないまま」、大きくなってしまうのでしょうが)。


多数の学生や部下を指導してきた結果、一見「天然(ちょっとズレている人)」に見える人のほとんどにおいて、「分からないことを認めるのが恥ずかしい」という点が、学び/成長を阻害していることが、わかっています。「ズレ」は、「わからないことを放置した結果」なのです。


「ひょっとして」と思う人は、早めに修正しましょう。「わからないことを放置する」ことが癖になると、「ズレ」がどんどん広がって、最終的に誰も何も教えてくれなくなります。広がったズレを自ら認めるのも、かなりの苦痛が伴うでしょうから、この悪循環は止まりません。


放置して、良いことはなさそうです。



さて今回は、直近でいくつか興味深いニュースが有りましたので、塾で取り上げきれなかった部分も含め、取り上げておきます。知財戦略/知財権が「どのように」重要になりつつあるか、ということを、これらのニュースから読み取って欲しい(注3)。



1.NTTドコモが「iPhone」を販売するかわりに提供したのは?

これは、以前から多くのニュースが流れていましたので、ご存じの方も多いでしょう。あるいは、無線通信の業界では、よく知られたことだったのだろうと思います。

・「アップルがiPhone販売の見返りにドコモに突きつけた条件とは」

http://www.techvisor.jp/blog/archives/3541

最新の記事は、いくつかまとめて以下に引用されています(注4)


・「アップルの密約-ドコモに与えた最恵国待遇」

http://ameblo.jp/enntopia777/entry-11645970271.html

AppleはもともとPCメーカー。携帯音楽プレーヤーの延長線上で、携帯電話に参入している(注5)。では、以下の計算をしてみましょう。


「携帯電話-PC=?」


答えは無線技術である。初代 iPhone が、なぜ GSM(第2世代) だったか。なぜ Qualcomm チップではなく、Infinion チップだったか。「新しくてクールな商品を出すのがウリ」のAppleが、なぜいまさら「時代遅れ」の「第2世代」の携帯電話を?、誰もがそう思ったハズである。


このあたりも、知財面から見れば、理由が分かる。その辺の理由から察するに、Appleは現在、「知財に関しては、かなり用意周到な会社」である。


無線通信業界において、技術と知財を巡る争いは、販売権にまで飛び火している。まさに「知財は交渉力」の面目躍如だ。


元キヤノン知財部/大阪工業大学 田浪教授は、弊社主催の「知的財産セミナー」で、以下のように述べておられる。


「知財を交渉力として、優れた技術を持つ企業と、有利な立場で提携していく」


それこそが、「知財戦略」だと。



ここで思い出すべきなのは、IBM(注6)。


・「発明塾京都第150回開催報告/京都大学「ものつくりセミナ」講義報告」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/10/150.html

IBMと通産省の「コンピュータ」交渉/戦争で、最終的に飛び出したのも「電電公社(現NTT)の特許」。日本にコンピュータ産業が残ったのは、この交渉の結果。つまり、電電公社の特許のお陰。以下に取り上げる NEC(日本電気) も、いわゆる「電電ファミリー」として、日本のコンピュータ産業とともに成長した会社です。



2.NEC と Lenovo の「携帯電話端末事業」譲渡交渉

Nokiaの携帯端末事業譲渡(注7)の時もそうでしたが、少なくとも無線通信の世界では、もはや事業価値の大半は「特許」になってしまっている。技術者出身の経営者である僕としては、若干の寂しさと「否定したい気持ち」があるのは否めないが、数字や交渉の経緯が示していることなので、仕方がない。

・「パソコン世界一 中国レノボ襲う盛者必衰のジンクス」(日経新聞有料記事:注8)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1104E_R11C13A0000000/

特に基地局を含むインフラ系の特許に、興味を示していると言われている。Nokiaが端末事業を売却して、インフラ系に特化しようとしていることを合わせて考えると、興味深い。交渉力争いが、既に始まっているのであろう。


もはや、技術系企業の交渉事において、特許や知財の話は避けて通れない。将来、経営を志す理系学生は、知財を武器として駆使する方法を熟知することが、必須である。それは、経営の自由度を著しく高め、経営目標達成に向かって、柔軟に取り組めるようになることを意味する。


いや、あるいはもはや「知財を熟知」していなければ、「経営に柔軟に取り組めない」ことを、意味しているのかもしれない(注9)。少なくとも、LenovoやApple、NokiaやSamsungを相手にするなら。




※ 注1) 実際、僕が実践している勉強法、読書法、ノートの取り方は、全て「駿台予備校京都本校」で学んだ方法です。塾生に聞く範囲では、今でも全く同じことを教えているようです。本質的な方法は、時代/環境を越えて通用する、ということでしょう。


※ 注2) 社会人でも、これが出来ない人が結構多いのも事実です。セミナーでたまにこういう人に出会うのですが、学びたいのか学びたくないのか、よくわからないのでとりあえず徹底的に無視することにしています。


※ 注3) 知財(権)は、良くも悪くも「経営のツール」でしか無い。技術系企業においては、研究開発成果をマネタイズするためのツール。交渉力としてどう使うのか、技術/頭脳のエグジットとしてどう位置づけるのか、ROIを高めるためのツールとしてどう活用できるか。僕はよく、クライアントの経営者/知財部門の方々と、そのような話をします。

少し前に、元ゼロックス/現ライセンス協会の原嶋会長とお話をしたのですが、ほぼ同じことをおっしゃられていました。


※ 注4) 原記事は以下(有料)。


・「アップルの密約-ドコモに与えた最恵国待遇」

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1803K_Y3A011C1000000/?df=4


※ 注5) このへんの詳しい経緯は、また機会があれば知財面での分析を交えて、取り上げたいと思います。



※ 注6) IBMに関する過去ブログは、他に以下。


・塾長の部屋(51)~「IBMの知財戦略/戦える頭脳集団へ」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/ibm.html

・発明塾京都第148回開催報告~「事業/企業のライフサイクルに合った知財戦略」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/148.html


※ 注7) 栗原弁理士のブログによれば、10年間の特許利用料が「40%以上」を、占めています。


・「マイクロソフトはノキアを特許ごと買ったのか?」

http://www.techvisor.jp/blog/archives/3929


※ 注8) 今後、無償の様々な引用記事が出れば、それに差し替えます。



※ 注9) 実際に、携帯通信の分野を中心に、大手製造業の知財交渉担当者から相談の連絡を頂くことも多く、少なくとも知財の世界では、「事前に武器を準備していなければ、戦えない」ことを、痛感する。攻められてからアタフタしても、打てる手は限られている。むしろ、「攻められそうなところへ、どう先手を打つか」という話で来て欲しい、と思ってしまう。


これも、例えば以下、元ホンダ知財部長の久慈氏が、再三指摘している。


・世界一知財訴訟を仕掛けたホンダの元知財部長が語る「攻めのハンター型知財戦略」

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2246?page=2

一方で、「攻めに出るようになってから、警告状がピタリと来なくなった」というお話を伺うこともある。つまり、これまでグレーゾーンだったところが、「シロ」になったわけである。経営/研究開発の自由度が広がった、ということである。



2013年10月20日日曜日

発明塾京都第151回開催報告~「作り込み」と「確信犯」再び

第151回は、発明の基礎となる演習課題と、アイデアの討議を行いました。いきなり面白い視点のアイデアもあった一方で、せっかく先行技術を見つけていても、それが読みこなせていないため、先に進まない、という例もありました。

そのためにも、塾で出題している「演習課題」を、しっかりとこなし、かつ、自分の発明作業で、学んだ事を、すぐに実践することです。


「単なるお勉強屋」には、僕は興味はないので。



さて、今日は僕が「川崎重工業」のオートバイ開発部門で学んだ2つのことを、お話しましょう。皆さんが仕事を選ぶ時の、一つの規準になればと思います。それは、以下の2つの言葉で表されます。


・「作り込み」

・「確信犯」

いずれも、当時の開発部門の部長が、口癖として繰り返していた言葉で、特に後者の「確信犯」は、僕の座右の銘の一つでもあります。



1)「作り込み」

不思議と今でも、その時のことをはっきりと覚えているのですが、当時部長がこの言葉をしつこく繰り返していたのは、「ある機種」(注1)の開発についてでした。

「ネチネチと作り込んで、市場で高く評価されるものにしていくのが、カワサキ流なんですよ」


と、開発担当の係長さんに向かって、それこそ「ネチネチ」(注2)言っておられました。カワサキはオートバイメーカーとしては規模は大きくないため、開発したエンジンをどう発展させていくかということに、強いこだわりと独自の方法論を持っていたようです。


「新しい型を起こすな」


と、僕自身もかなり強く言われました。設備投資を抑えるという点が一番でしょうが、「完成度を高める」「突き詰める」という土壌も、有ったように思います。


例えば、僕が大学時代から10年以上乗っていたオートバイ「ZZ-R1100」。


・「ZZ-R1000」 http://bit.ly/1guk5Jt


このオートバイは、1990年に「世界最速(注3)」を謳い文句にしてデビューし、メーターも 320Km/m まで目盛りがあることが、当時非常に話題となりました。


しかしこのオートバイのエンジンの基本設計は、1984年のGPZ900Rに遡ります。その後、GPZ1000RX、ZX-10、と排気量変更を含め少しずつ改良を重ね、ZZ-R1100になります。当たり前なのですが、当時開発に携わった先輩方と机を並べて仕事をさせていただいたので、当時のことも色々伺うことが出来ました。


自分が乗っていたオートバイということもあり、ZZ-R1100に至るまでの歴史は、書物で分かる範囲ではすべて勉強してから入社したのですが、開発者に直接話を聞き、自分で実際に開発を担当して(注4)、「作り込み」の意味を、肌で感じることが出来ました。


非常に貴重な経験だったと、当時の先輩方/上司に、とても感謝をしています。


「作り込み」「完成度を上げた」ZZ-R1100のエンジン(型式名:ZXT10CE)は、僕にとっても思い入れのある、「究極のエンジン」です。


カワサキは、他社に比べても「作り込み」が、非常に上手いメーカーだと思います。僕が担当したW650も、当初から900cc化の計画もあり、僕もその検討を担当しています(注5)。



2)「確信犯」

新機種開発は、基本的に「不具合対策(注6)」の連続です。設計としてギリギリを攻める場合には、ある程度予測して、材質や形状の異なる部品を複数手配しておくのですが、当然「想定外」の事が起きます。

不具合対策のために、次々に行われる「開発会議」で部長が「確信犯でやってくださいよ」、と言うわけです。


☓「たぶん、これで行けるだろう」

◯「絶対、これで行けるはず」

つまりそういうことだと、僕は理解していました。「根拠と自信」が「確信」にまで高まるほど、「検証」した結果なのか、ということです。


「検証」は、「自問自答」と言い換えることも、出来る。



よく「大学時代の勉強なんか、企業では役に立たない」という人がいますが、それは「使ってないだけ」でしょう。あるいは、そこに至るまで「考えていない」だけでしょう。


実際僕が、エンジン設計を担当した当初、大学時代の教科書を開かなかった日はありません。特に材料力学や、材料そのものについて、大学時代に学んだ知識をフル活用しました。不具合対策会議に、分析結果をレポートするときにも材料に関する様々な文献、理論を踏まえる必要がありました。


「確信犯」(注7)


には、「知識」と「理論的理解」が欠かせません。


塾生さんには、ぜひ、上記のような職場でみっちりと自分を「鍛えあげて欲しい」と思いますし、それに耐えられるだけの勉強を、大学時代に積んでおいて欲しいと思います。


発明塾が、そのきっかけになれば、これ程嬉しいことはありません。




※ 注1) 「機種」とは、バイクの種類のことです。ここは記憶が曖昧なのですが、たぶんVN800(通称「バルカン800」)だったと思います。


※ 注2) 余談ですが、ひょっとしたらカワサキだけかもしれませんが、開発から上に行く人は、全員この「ネチネチ」を持っておられました。当時のその開発の部長も、その後、事業部長になられました。


※ 注3) 当時は、国内4社すべてが「世界最速」を競って、新たなオートバイを次々に開発していた時期でした。320km/hのメーターが「伊達ではなかった(実際に300km/hを超える速度が、素人でも安全かつ簡単に出せる)」こともすぐに証明され、「世界最速と言えばカワサキ」という時代が、しばらく続きました。


※ 注4) その後、ZZ-R1200になる際(前)に大幅な変更が加えられ、同じエンジンとは言い難くなりました。その際、幸運なことに、そのトランスミッションの設計を、すべて担当することが出来ました。自分が乗っているオートバイの「次の機種開発」ができる、ということで、今まで以上に力が入ったことを覚えています。


※ 注5) 当時は「900cc 化は、熱的に厳しいかな」という結論になり、実機製作せずお蔵入りでしたが、その後2011年に、ボア(ピストン径)アップをした 800cc 版が発売されています。この排気量のチョイス、当時の検討内容を思い出しても、絶妙だと思います。

当時に比べると、多少材料が良くなっているでしょうが、やはり900cc は厳しかったのでしょう。息の長い機種になってほしいですね。
ちなみに空冷のエンジンは、ありとあらゆる部品の材料が「熱的(耐熱温度/高温強度)」に厳しいので、「材料」の勉強になりました。「材料」の知識は、製造業ならどこへ行っても役に立つ知識の、一つです。

※ 注6) 誤解のないように言うと、開発中の「破損」「故障」などを、開発工程では「不具合」と呼びます。



※ 注7) 塾生の理解については、以下参照。


・塾長の部屋(38)~「毎週教会へ行く」ことの意味

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html


2013年10月14日月曜日

塾長の部屋(53)~「知的財産マネジメント研究会(Smips)」150回の繋ぐ「縁」

今回は、「縁」について。

先週土曜日10月12日、「知的財産マネジメント研究会(Smips)」第150回が行われました。

・「知的財産マネジメント研究会(Smips)」
 http://www.smips.jp/

私の知る限り、毎月開催という高頻度で、かつ、これだけの規模(毎回100名程度の参加者)で無料開催されている、「知財」「産学連携」「技術移転」等に関する勉強会は、他に無いと思います。150回に際して、改めて、総合オーガナイザーの隅蔵さん/西村さん/事務局スタッフの皆さんのご尽力と「継続」の素晴らしさを、感じました。

・「知的財産マネジメント研究会(Smips)」とは?(及び連絡先)
 http://www.smips.jp/abo.htm


さて、私がはじめてSmipsに参加したのは、第100回記念の会です。今回の150回までに、様々な出会いがありました。全て取り上げることは不可能ですが、今回は3つを取り上げさせていただき、Smips150回の記念にしたいと思います。


①「発明塾@東京」初期メンバー
「発明塾」は2010年4月に、東京で第一回を行いました。4年目の現在、東京での活動は行っておりませんが、初期メンバーとの出会いがなければ、@京都も無い。そんなことを考えながら、第150回に参加しておりました。
@東京メンバーの何名かは、その後「知財の仕事」に就いています。またどこかで接点があるのだろうな、と思って楽しみにしています。


②「知財業界の起業家」
2009年に、「知財キャリア分科会」で僕自身が知財に関わるきっかけや、当時の業務について紹介した際に、様々な方からご連絡をいただきました。その中で、同じく「起業家/経営者」の方で、今でも交流がある方がお二人。

お一人は、発明塾/立命館大学にもお越しいただいている、アスタミューゼ株式会社の永井さん。彼も起業して10年とのこと。年齢はひとまわり違うはずですが、不思議と話が合う方です。現時点では、会社規模が全く違いますので、経営者としては、僕のほうが追いかける側になっています。

・「Astamuse」
 http://astamuse.com/

「人類の知を、もっと活用できるプラットフォームを作ろう」という彼のビジョンについて、立命館大学MOTの講義でも、度々紹介いただいております。


もう一人の方は、僕と同じ年代、同じような経歴の方です。まさに今、新しいシーズで勝負をかけておられるので、氏名や取組み内容は伏せさせていただきますが、僕が今最も注目している方です。


③「クアルコム」の知財戦略
実は私が、「クアルコム」の知財戦略について知ったのは、記憶に間違いがなければ、2009年の9月に開催された、Smips恒例の「ワークショップ」です。ここで、ある企業の方が、知財戦略/ライセンスの威力について、非常にわかりやすい「ケーススタディ」を紹介しておられました。当時、知財が何たるかイマイチ理解出来ていなかった僕が、その威力を知ることになったのは、Smipsだったわけです。

他にも多数の方との、ご縁がありました。例えば、東京工科大学の尾崎教授。Smipsでお話を伺ったことがきっかけで、日本知財学会の第8回年次学術研究発表会(2010年)にて、企画セッション「グローバルな『知』を巡る攻防~投資とその利回り」(注1)を、企画運営させていただきました。

挙げるとキリがありませんね。


もちろん、総合オーガナイザーのお二人、事務局のスタッフの方々、「知財キャリア分科会」共同オーガナイザーの上條さんを始めとした、各分科会のオーガナイザーの皆さんとの出会いの重要性は、言うまでもないことです。改めて感謝の意を表させていただきます。

これまで「知財キャリア分科会」にて話題提供いただきました、多数の知財関係者/起業家の方々にも、改めて深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

また今回、大学の後輩かつ、「甲斐塾」の後輩にも、出会うことが出来ました。最近、後輩や同期が、「知財」の仕事に就いたと連絡があるケースが、とても増えています。時代でしょうか。


次回151回では、久々に私が関わっている「研究」の成果について、話題提供させていただきます。新たな出会いに、期待しております。詳しくは以下、「告知」ページにて。

・「告知」
 http://edison-univ.blogspot.jp/p/blog-page_5012.html

皆さま、お気軽に参加下さい(参加無料、入退出自由のアットホームな勉強会です)。



※ 注1) 詳細は、以下参照。
・「日本知財学会 第8回年次学術研究発表会」HP
 http://www.ipaj.org/workshop/archive/workshop_2010.html


※ 注2) 縁といえば、「知財の利回り」(岸宣仁 著)を読んだり、当時のテレビ東京WBSの映像を見て、知財業界に興味を持った、という世代が、(弊社に限らず)知財業界の第一線で活躍する時代になっており、一緒に仕事をしています。

これもまた、素晴らしい縁だな、と思います。


2013年10月11日金曜日

発明塾京都第150回開催報告/京都大学「ものつくりセミナ」講義報告

若干手抜きで、今週の報告を。

1)京都大学工学部機械系「ものつくりセミナ」講義
川崎重工時代(注1)から、なんだかんだで15年ほど、毎年何らかの形で行っているわけですが、今年は「知財」を中心に、話題提供してきました。

この15年で、「エンジン設計」⇒「歯車設計」⇒「ナノテク/バイオ」⇒「知財/発明」と、めまぐるしくトピックが変わっていますが、伝えることは、いつも同じです。

・昨年の講義内容はこちら↓
「京都大学「ものつくり演習」講義報告」
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html
「京都大学「ものつくり演習」講義レポートを読んで~在るために働く(B価値)」
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/12/b.html

失敗を恐れず、成長できる環境を求めて、常に挑戦して欲しいですね。今年のレポートが楽しみです。

さて、今年は「知財」ネタを増やしました。一つは、IBM/NTTの特許交渉。もう一つは、IBM/富士通のコンピュータ戦争。

・「iPhoneとドコモと特許戦争」 週アスPlus 2013年09月09日
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/167/167921/

以下に、関連箇所を引用しておきます。
「日本最初のコンピューターが動いた1956年には、米国はもちろん、欧州の西側諸国を中心に、イスラエル、チェコスロバキア、オーストリア、ソ連でもコンピューターが完成していた。ところが、このコンピューター産業、1980年頃までに、米国以外では日本だけが生き残ることになる。その理由のひとつが、通産省によるIBMとの特許交渉(日本企業に利用を認めさせる)だとされる。 私は、担当者の平松守彦さんにインタビューしたことがあるのだが、1960年の交渉では外資法が日本側のカードだったが、1970年の交渉では、旧電電公社の特許による技術が交換条件となった。」

日本のコンピュータ産業が、かろうじて生き残れたのは、旧電電公社の特許のおかげ、ということでしょうか。IBMの攻撃をかわした、というその特許(群?)、どんな特許だったのでしょうね。

IBM/富士通については、既に紹介済みですので割愛します(注2)。


2)今週の発明塾
さて今回は、発明討議の後、原点に立ち返り「ドリル」的な問題を出しました。呆れるほど簡単な問題ですが、基本を疎かにしては、良い発明は出せませんので、日々トレーニングに励んで下さい。僕の指示する訓練を続ければ、必ず良い発明が出せるようになります。僕自身と、皆さんの先輩の出した実績が、その証明です。

では、次回も宜しく。



※ 注1)川崎重工時代は、僕自身が企画して、半年の「設計製図演習」を行っていました。以前もどこかに書きましたが、オートバイ/ジェットスキー(川崎重工の商標です)/バギーなど、ひと通りの部署から人を出してもらって、講義と設計/製図を行ってもらうという、贅沢な授業でした。僕自身は、オートバイのエンジンの部分を担当し、例によって「教科書づくり」をやりました。大学時代からやり続けているので、様々な分野の教科書づくりは、僕の「ライフワーク」の一つかもしれませんね。


※ 注2) 以下(特に注2)参照。

・塾長の部屋(51)~「IBMの知財戦略/戦える頭脳集団へ」
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/ibm.html




2013年10月6日日曜日

発明塾京都第149回開催報告~「読書法/読書論」

今回は、新しい発明テーマに取り組むための、準備の討議となりました。これから12月まで、このテーマで「業界のキャスティングボードを握る」ような発明を、「ポートフォリオとして創出する」ことを目指します(注1)。

「頭脳を武器にし、知を武器にする」


ことを、これからも実践し、皆さんの能力を「実績で証明」していきましょう(注2)。



さて、今週取り上げたいのは「読書法」です。最近、社内の勉強会も含め、読書法について触れる機会が複数ありました。何度も言うのも面倒ですし、本にも書いてあることですから、立命館大学生の参考のためにも、まとめておきます。


ちなみに、僕は読んでいませんが、以下の本に、僕が実践しているのと「ほぼ」同じ読書法が、解説されているようです(注3)。


・「読書の技法-誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門」佐藤 優






僕の読書法は、時代の変遷を経て、以下のようになっています。


①さらっと読む本は、一気に読む/まとめて読む。1冊/30分程度で、関連書籍を複数、一気に読む(3冊が目安)。

②重要な本(古典など)は、繰り返し読む。また、意図的にゆっくり読む。できれば、「暗記」する。
③メモを残す。
④本は買う。


それぞれ、詳細に解説していきましょう。まず①ですが、これまでも、「ある分野について勉強するときは、まず3冊読む」などのお話はしてきましたので、それ以上でもそれ以下でもありません。


1冊/30分は無理でしょ、と思われる方も多いと思います。ポイントは2つ。


・慣れ

・時間を決める(価値を推定する)

で、いずれも訓練です。



次に②ですが、例えば発明塾では「丸島本と小川本は100回読め」、と紹介しています。もう一つのコツは、「意図的にゆっくり読む」ことです。例えば僕の場合、いくつかの本は、数年かけて読んでいるものもありますし、毎日読んでいるものもあります。あえて「英語版(というかオリジナル)」で読んでいるものもありますし、さらに、英語オーディオブックにしているものもあります。


細切れに読むことで、前の内容を思い出す必要があり、場合によっては読み返すことで、自然と理解が深まり、かつ、読み返すのが面倒なので、憶えてしまうようになります。


また、読み慣れた本は、日本語で読むと読み飛ばしてしまうので、「英語」で読むことで、スピードを遅くします。更に英語オーディオブックにすると、繰り返し聞かないと、「聞き取れ」すらしないので、その効果は高まります(憶えないと解釈出来ない)。



③については、①/②いずれの本でもやるのですが、方法が違います。①の本については、「他にない重要な内容(差分かつ本質)」を、5つ程抜き出して、箇条書きにします(注4)。


②の本については、専用のノー
(注5)を準備し、重要なところを書き写し、自分なりの解釈を入れたり、他の本の内容と結びつけたりします。


④は、ゆっくり読むために、意図的に下線を引いたりするので、買わざるを得ません。また「綺麗に読もう」とか思うと、それが気になって頭に入らないものです。

僕もかつて、図書館で本を大量に借りて読んでいましたが、後で買い直してコメントし直して・・・と二度手間なので、結局止めました。20代なら良いかもしれませんが、それ以上になると、時間制約が極端に大きくなりますから(でも、誰にとっても1時間は1時間なんですけどね)。


僕自身が、完全に独学で創り出した方法(注6)なので、これが皆さんにとって良い方法かどうかは不明ですが、いずれにせよ「自分なりの必勝法」としての読書法を、ぜひ大学時代に掴んで欲しいと思います。


それは、一生の財産になると思います。




※ 注1) 夏休みに、その下準備と簡単な演習が、出来たと思います。


※ 注2) Not 口先、Not プレゼン、という意味です。


※ 注3) 塾生/社員複数の証言。繰り返しですが、僕は読んでいませんので、内容に責任は持てません。


※ 注4) これが、TechnoProducer株式会社のメルマガにある、「本紹介」のネタになっています。


※ 注5) ノートの取り方については、別途「駿台式勉強法」と合わせて、取り上げたいと思います。


※ 注6) 他、細かいノウハウは、紹介するとキリがありませんので、又の機会に是非。



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2013年9月28日土曜日

塾長の部屋(52)~今年も立命館大学「発明講義」始まりました!

今日(注1)は、昨日開始した「立命館大学発明講義第一回(注2)」を振り返っておきましょう。

本題に入る前に、過去(2012年)のログを振り返ってみましょう(注3)。


・塾長の部屋(15)~衝撃(?)の立命館大学「発明講義」第一回
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/09/blog-post_28.html

今年はもう少しソフトに、かつ「発明」や「知財」について学ぶことの重要性/意義/楽しさ?にフォーカスして、行いました。映像資料などは、同じものを用いています。NHKの影響でしょうか、今年は「TED」を普段から見ている、という学生さんが多かったですね。念のため字幕付きで流しましたが、字幕は不要だったかも。

昨年は第一回に取り上げた講義のルール(注4)、今年は次回、詳しく取り上げる予定です。今年重視するのは、

・「より能動的な学習」にすること
・「ノートをまとめることで、理解を深める時間を作りながら」進めること

ことです。いわゆる「詰め込み」「プレゼン」講義の排除ですが、「僕がその現場にいないと、決して教えられないこと」に絞って、じっくりと「議論」を積み重ね、その結果を「まとめて」もらうことで、「血肉」にして欲しいと思います。

ちなみに、多くの内容は、皆さんが就職するであろう殆どの企業において、「企業(教育)でも教わらないこと」なので、「一生の宝」に成るはずです。


なので、いつも通り、

・「調べれば分かること」
・「何かの本に書いてあること」

は、一切取り上げません。何よりも、皆さんの時間が勿体無い。集合学習において、調べれば分かることを説明することは、少なくとも二つの意味で「とんでもない無駄(と言うか損失)」です。僕は「犯罪行為」とさえ、思っています。

・「出席者全員の時間を無駄にするので、たとえその説明が1分で済むものであったとしても、実は30分40分の無駄になっている」

・「暇な時に調べれば済むのであれば、コストはかなり低い。しかし、講義時間は”学費”コストが掛かっている」

調べても絶対に出てこないような情報、僕自身のスキル/ノウハウ、勉強法そのものなどを、学んで欲しい。


今回の講義では、昨年以上に、

・「Intel は何故、ウルトラブックの宣伝をするのか」
・「エジソンが発明した白熱電球、最も収益を大きくするために、関連する特許を、どのように使えばいいのか」

といった、本質的な質問を通じて、「技術を売る」とはどういうことか、について考えてもらいました。Google や Apple の戦略に興味を持った人もいましたね(注5)。Qualcomm に関する質問で、「ARM」に関することを答えてくれた人がいました。

よく勉強してますねー。

いいことです。


授業は、「皆さんのもの」です。

「僕から何を引き出すか。」

それは、皆さん次第です。

「楠浦さんが持っているもの/楠浦さんしか持っていないものを、限られた時間内で、最大限引き出してやろう」

それが、本講義に臨む学生さんの、正しい考え方です。

See you next!



※ 注1) 先ほどまで、久々に Marshall Phelps の講演ビデオを見ていました。IBMの知財戦略に関する理解が深まったので、改めて見直すと、いくつかの部分について、気付きがありました。

・Keynote Speech by Marshall Phelps | October 21, 2011
http://opencanada.org/features/keynote-speech-by-marshall-phelps/


※ 注2) 正確には「マーケティング・リサーチ」です。理工系の学生が「自らの技術を普及させる」という観点で、発明・情報分析・知財と標準化を取り上げています。


※ 注3) 他の過去ログは以下。

・第3回講義
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/10/blog-post_13.html

・第9回講義
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/11/blog-post_24.html

・第13回講義
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/12/blog-post_21.html

・最終回
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/01/blog-post_11.html

・最終回を終えて(感想)
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/01/blog-post_19.html

こうしてみると、昨年最後に話したことの一部が、今年の冒頭の講義になっています。


※ 注4) 発明塾と共通ですが、ルールは以下。

<講義のルール> 
①紙は配らない
②先生(せんせい)ではなく「楠浦(くすうら)さん」 
③Grワークがあるので、欠席は厳禁 

今年は、去年以上に資料を配らないことにしました。理由は「ノートを取ることが重要だから」です。それはそのまま、個々人の財産になります。 ②は当たり前なので、③ですが、これも当たり前ですね。周りに迷惑を掛けてはいけません。次に、ポリシー的な部分です。 

④世の中の大半の問題は、唯一解のない問題であるということを理解する 
⑤どんどん発言する 
⑥何を言ってもOK 
⑦他人の「意見」は否定しない 
⑧どんどん調べる(ググる) 
⑨随時質問OK

 ④も当たり前ですよね。高校までの勉強は基礎修練のための「箱庭」だっただけで、大学以降はそれを実際の問題に応用するフェーズ。大学と高校の違いは、システムのヌルさ(日本のみ)を除くと、ここにあります。
 ⑤⑥⑦はセットですね。唯一解が無いわけなので、どんどん考えて発言すればいい。別に調べてもいいし、一時話題になった「XX知恵袋」を使っても構わない(⑧)。あとで調べよう、と思って調べた試しがない人が大半でしょう。その場で調べるべきです。それでもわからなければ、どんどん質問(⑨)すればいいわけです。 
どんなに調べても、他の人に聞いても判らないこと、それこそが、頭をつかうべきこと(発明の対象)なのです。 社会人としては、さして特別なルールではありませんが、大学の講義としては少し「変わって」いるかも知れません。


※ 注5) 大変盛り上がる面白いトピックなのですが、関連書籍が多数ありますので、本講義で触れることは、断念します。



2013年9月27日金曜日

発明塾京都第148回開催報告~「事業/企業のライフサイクルに合った知財戦略」

今週の京都は寒かったですね。新学期も始まります、皆さん、体調を崩さないように。

さて、今回は、アイデアコンテスト締め切り直前ということで、駆け込みのアイデアに関する討議を終えた後、「発明に必要な知財戦略」について、取り上げました。


既に8月から、毎回少しづつ「古典的」な知財戦略から、より現代的な知財戦略理論まで、取り上げてきました。今回で「初級」は終わりですから、一度流れでまとめておくと良いでしょう。



今回取り上げたのは、ズバリ「IBMの知財戦略」(注1)。もちろん、全ては取り上げられないので、ある一つの観点から、「何故そういう戦略が成り立つのか/必要なのか」を、考察しました(注2)。


丸島先生は常に、


「強みを蓄積し、それを交渉力として活用し、事業を強くする」


と述べておられます。IBMの戦略は、まさにそれを「地で行く」ものです。「知財戦略の源流であり究極」と呼べるかもしれません。



IBMのケースを学べば、「相対的知財力」「ライセンス契約」「強みと弱み」「攻めと守り」など、知財戦略の基礎的な概念を、一気に学ぶことが出来ます。個人的には、IBMのケースと「クアルコム」のケースを学べば、スタートアップから大企業に至るまで、すべての企業が「より強くなる」ために必要なことは、学べると思います。


僕の知財に関する経験は、前職のベンチャー時代に遡ります。しかもそれは、割と苦い経験です。当時CTOであった僕は、技術に関する全ての責任を追っていたので、当然、「どういう知財を取得すべきか」「それをどう活用すべきか」などについても、自分なりに考える事が出来たはずです。


しかし当時は、知財戦略についてまともに学ぶこともなく、単純に、他社特許があれば避けることだけを考えていました。今から思えば、もっと知財を知り尽くしていれば、競合の技術を無力化したり、情報を入手したり、様々な打ち手があったのです。知財に関する「無知」により、大幅に研究開発、いや「経営」の選択肢を、狭めていました。


「今なら、もっと大胆な打ち手で、会社を飛躍させることが出来る」

そう思うと、非常に悔しさが残る4年間でした。


繰り返しですが、丸島先生によれば、「相対的知財力」や、知財が「排他権」であるという特徴を最大限に利用し、交渉力として知財を駆使することで、経営の自由度は格段に広がります。経営のための知財、技術開発のための知財、事業のための知財、そのためにも発明活動を積極的に行い、技術と知財を「創造」しなければ、ならなかったのです。


しかし当時は「とにかく売れる技術を、自分達で開発する」という、短絡的な目標の実現に「躍起」になっていました。


結局、「設計論」(注3)と同じなのです。

「経営意思がないと、知財は無力」
「しかし、知財のことを知らなければ、経営の自由度について気付くことすら無い」

部分は全体を支配し、全体は部分を支配する。


細部を知り尽くして、全体を指揮する。これが重要なのです。


「知財戦略を知らずして、発明は出来ない」
「発明が出来なければ、知財戦略の要諦はわからない」


今回の討議で、発明塾が「発明研究所」として、今後大きく飛躍する素地が整ったと思っています。「技術を創造し、活かす」には、「知財戦略」が必須なのです。そして「知財戦略に従って、必要な技術を創造する」ことが、「発明研究所」のミッションです。



今後、発明塾の卒業生は、積極的に以下のスキルの獲得/職務に就く、ことを求められます。それは、将来の「発明研究所」に備えるためです。来るべき日に備え、覚悟を持って、日々精進して下さい。


・ライセンス/渉外

・出願/権利化
・知財戦略の立案、それに基づく発明が出来る技術者(企業人・アカデミア問わず)
・企業家/経営者
・ファンドマネージャ/金融工学の専門家
・情報分析



※ 注1) 以下参照。


・塾長の部屋(51)~「IBMの知財戦略/戦える頭脳集団へ」
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/ibm.html


※ 注2) 正確には「契約」に関することです。もちろん「知財に関する契約」です。



※ 注3) 以下参照。

発明塾京都第144回開催報告~再び「設計」論
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/08/144.html



2013年9月25日水曜日

「戦える頭脳集団へ/IBMの知財戦略」~塾長の部屋(51)

昨日、定例の社内の勉強会を行いました(注1)。弊社では、外部の識者を招くことも含め、よく勉強会やブレストを行います。

昨日も、AM2時間半と昼食を合わせて、計4時間の討議を行いました。



今回の勉強会のテーマは、僕個人的には「IBMの知財戦略の尻尾をつかむ」ことでした。活発な議論を通じて、所期の目的は、ほぼ達成されたと思います。


IBMは、メインフレーム⇒PC⇒クラウド/サービス、と「時代の変遷」に耐えながら、その知財戦略/知財マネジメントの手法を進化させてきました。おそらく、米国のIT系企業や、一部の欧州/日系企業も、IBMとの交渉(注2)/IBM人材の受け入れ(注3)を通じて、その手法を吸収し、実践していると思われます。


紙幅の関連で詳細は割愛しますが、IBMの知財マネジメントの特徴は、その独自のライセンス手法にあると言えます(注4)。



ある関係者曰く「IBMの知財マネジメントは刀狩り」とのことで、強者が確実にさらに強くなるために、考えぬかれた手法だと、感じます。IBMは、かつて独禁法関連で苦しめられたこともあり、巧妙に「独禁法違反」を回避した戦略にも、なっています(注5)。



そのIBMから多くを学んだ2社

IBMの知財戦略と、「国際標準化と事業戦略」で有名な 小川 先生(注6)の、「知財マネジメントの公理」(注7)を組み合わせると、中国/韓国を始めとしたキャッチアップの戦略が、いずれ「強者がますます強者になる」IBM式戦略に移り変わってくることが、透けて見えます。



さらに「深読み」して、フェルプスがIBM/マイクロソフトで実践したような、「強者が強者になるための知財マネジメント」のために、中国/韓国が「国家知財ファンド」を創設し、権利活用を行ってくるとするならば・・・。


日本の「国家知財ファンド」(注8)の知財マネジメントも、根本的に変わってくるのではないでしょうか?


例えば、ライセンス先は「国内ベンチャー」「国内中小企業」ではなく、「新興国企業(大手含む)」になるでしょう。契約も、ライセンス収入「だけ」を目当てにするのではなく、かなり巧妙にする必要があります。ポートフォリオの組み方も、非常に重要です。


企業から「買い取った」知財を、国がどこまで「国策として」「交渉力として」積極活用できるか、非常に興味深いケースです。


「勝つための打ち手」は、国内外の識者(注9)の活動により、ほぼ明らかにされています。「アジアの成功を取り込む」(注10)ためにも、「戦える頭脳集団」(IBM式)への変化が、求められていると思います。



「発明塾」もTechnoProducer株式会社も、「頭脳で戦える」人材の育成を目指し、設立した組織です。今後も我々は、様々な機会を通じて「勝てる戦略」「戦える組織」の科学を追求し、その実施/実現を推進します。




※ 注1) 弊社では、定期的に「知財」「発明」「教育」等、弊社の事業分野に関して、社内のみの勉強会とブレストを行っています。月1程度でしょうか。それ以外にも、クライアントや外部の識者を交えた勉強会も、各方面で開催しています。例えば、以下参照。


・「塾長の部屋(14)~社内の勉強会から」

http://edison-univ.blogspot.jp/2012/09/blog-post_25.html

・「塾長の部屋(42)~「ものづくり」を学びたい人に」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/05/blog-post_26.html

・「月例ブレスト~「国際標準化と事業戦略」を発明に応用する」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/04/blog-post.html


※ 注2) 例えば以下参照。


・「雲の果てに―秘録 富士通・IBM訴訟」伊集院 丈 著

・「雲を掴め―富士通・IBM秘密交渉」伊集院 丈 著


※ 注3) 例えば、「マイクロソフトを変革した知財戦略」の著者 Marshall Phelps は、元IBMの特許部門責任者である。その経緯は、例えば以下に詳しい。


・「マイクロソフトの知財戦略」

http://commutative.world.coocan.jp/blog2/2010/09/post-800.html

彼が「どう」マイクロソフトを改革したのか、関連範囲を引用しておく。


「マーシャル・フェルプスの託された主要なミッションは、独占の権化のようなマイクロソフトを、オープン・イノベーションのトラックに乗せることである。そのためには、逆説のようであるが、保有特許件数を増やさなくてはならない。」

「フェルプスがIBMで手がけたライセンス収入を作り出すスキームは、利潤の枯渇に苦しむIBMにとって死活問題」
「増大してきた特許ポートフォリオを背景に、マーシャル・フェルプスが進めたことは、クロスライセンスであった。知的財産を使ってコラボレーションを生み出すということの典型的な施策」
「特許訴訟という意味では、マイクロソフトは、いわゆるディープ・ポケットであって、攻められっぱなしであった。反訴しようにも、使える特許をあまり保有していなかった。そこで、特許ポートフォリオを充実させて、その抑止力で訴訟を減らし、クロスライセンスを増やしていくというのが明確な方針」

そしてこのライセンス戦略の成功により、ますます「先鋭的な発明」を権利化し活用するという、好循環を生み出し、「交渉力」を確実なものにしている。


他、彼自身の講演も参照。
http://opencanada.org/features/keynote-speech-by-marshall-phelps/ 


※ 注4) 詳細は、2013年6月27日(木)開催の、以下講演内容を参照。

 「進化する米国知財ビジネスの実態 ~パテント・アグリゲータ - その実態と日本の対応~」
 講 師 : ヘンリー 幸田(Henry Kouda)氏 米国弁護士 
 主催者 : 知的財産研究所

※ 注5) クアルコムも同様である。


※ 注6) 「国際標準化と事業戦略」小川 著



※ 注7) 以下講演の配布資料参照。


・「イノベーションと標準・知財戦略 ~2020年への再生シナリオ、製造業復活のために~」

http://enterprisezine.jp/article/detail/4352

以下に、関連部分を抜粋転記します。


★「知財マネジメントの公理」

1)フロントランナー型
・公理1:その知財に価値があり、これを回避・迂回する知財が存在しない時その企業は競争優位を獲得できる。
・公理2:市場と企業の境界を事業領域として定め、その製品のコア領域でクロスライセンスを排除できて、コア以外の領域で他者の知財を回避、迂回できるなら、その企業は競争優位を獲得できる。
・公理3:その知財が自社のコア領域と市場の境界を介して市場に影響力を持たせることが出来れば、その企業はさらに強力な競争優位を築くことができる。

2)キャッチアップ型

・公理1:その製品が国際標準化されていて、知財ライセンスを受けられそしてその企業のトータルビジネスコストが先行する競合企業よりもはるかに低いのならその企業はグローバル市場で競争優位を獲得することができる。
・公理2:例え最先端技術を持たなくても、先行する企業にとって必須となる知財を、トータルなビジネス構造の中でわずか一つでも持ち、そしてその企業のトータルビジネスコストが先行する競合企業よりはるかに低いのなら、その企業は競争優位を獲得することができる。
・公理3:トータルビジネスコストがもたらす利益によって、その商品を進化させる技術開発に成功し、これをフロントランナー型の公理で守れば、キャッチアップ型だった企業がグルーバル市場のリーダーとなる。


※ 注8) 例えば「産業革新機構」や関連ファンド


※ 注9) 小川 先生、丸島 先生、ヘンリー幸田 先生、等


※ 注10) 以下、小川 先生の講演資料を参照

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kyousouryoku/dai3/siryou3.pdf


2013年9月22日日曜日

発明塾京都第147回開催報告~「常に100%を目指せ」

今回も、各自のアイデアを討議しました。夏休み課題の締め切りが近づいていますので、いわゆる「詰め」の段階の討議を、数多く行いました。

僕は「発明は詰め将棋と同じ」だと思っています。先行技術を起点にして、どこまで「深堀り」できるかが、ポイントです。


繰り返しですが、初期の「自分の着想(アイデア)」にこだわる人がいますが、全くオススメできません。常にアイデアを、先行技術をベースに見直し、飛躍させる事が重要です。飛躍の手法は、塾で日々教えているわけですから、「自分が何が出来て、何ができていないのか」しっかり確認し、弱点を克服することです(注1)


また、僕の定義では「発明提案書には、技術内容だけでなく、ビジネスモデルと、それを担保する知財戦略を記入する」ことになっていますので、その点も忘れずに。


「ちょっとオモロイこと言うぐらいのことは、中学生でもできる」(注2)


という、Sくんの名言を忘れずに(中学生の皆さん、失礼)。



今回講義で話したのは、「常に100%を目指す」ということです。一言で言うと「Mastery(熟達)」ということです。


世の中には、


「60点主義」「8割主義」


を説く人も多く(注3)、勘違いしている学生も多いので、敢えてこれを口癖にするようにしています。



僕の考えでは、試験で100点以外は、0点と同じです。何らか不完全な点があるからです。僕の仕事であった「設計」で言うと、一箇所でもミスがあれば「作り直し」になるからです。


「1箇所ぐらい寸法が間違っていてもいい」


とは、残念ながらなりません。設計には「完璧」が求められます。川崎重工の社内規格で、一番大きな図面寸法は、縦はA0サイズ、幅無限の「A0L(エーゼロエル)」です。エンジンの部品では、クランクケース、シリンダーヘッドなどが、この図面規格に相当する部品です。運が良ければ、幅は、数メートルに及びます。


特に、クランクケースやシリンダーヘッドは、エンジンの重要な部品を中に収める「要(かなめ)」の部品であり、その図面内だけでなく、関連する数十の部品の図面と照らしあわせて、ときに数百に及ぶ寸法をはじめとした、ありとあらゆる記載内容を、一言一句、何度も何度も、根気よくチェックすることを、設計者は常に迫られます。もちろん、設計の過程でも、繰り返しチェックしているのですが、やはり、出す図面が全てなので、この「出図チェック」に、膨大な時間を割きます。


1枚の図面をチェックし続けて、それで一日が終わってしまうことも度々ですし、途中で止めるとわけわからなくなるので、終わるまで帰れない、ということになります。途中で電話で呼び出されたりすると、腹が立ちます(注4)。



設計者がこれだけチェックしたものを、上司が同じようにチェックすることは、不可能です。つまり、「担当者のチェックが全て」なのです。上司は「大丈夫なんやろな」と聞くだけです。担当者は「大丈夫です」というしかありません。もちろん、証拠は示すのですが(委細割愛)。


なにか起これば、担当者が走り回って全て火消し、再手配、改修などを行います。その経験が、「出図チェック」を、ますます完璧なものにします。


運良く(悪く?)入社2年目で、新機種エンジン開発の「実質上の総まとめ」を担当することになった当初、自分の図面で手一杯な上に、部下?(年齢的には全員年上で、キャリアも上の方ばかりです)の図面もチェックしていた頃の毎日は、本当に忘れられません。「毎日、確実に成長」していた、貴重な日々でした。


実は僕も「そのままでは絶対に使えない」=「作り直しを余儀なくされる」図面ミスを、1度だけやった事があります。そのこともまた、忘れられません。開発中の部品ということもあり、最終的には、自力で全て手直しして、開発を継続できました。設計者には、溶接や機械加工などの実技も不可欠になります。自分のミスは、自分でリカバーせざるをえないことも、度々だからです(注5)。



僕が、就職にあたり全ての教え子にいうことは、ただ一つ。


「完璧が要求される、厳しい仕事に就け」


テキトーで済まされるヌルい仕事で、変な癖がつくと、それこそ「使えない奴」になってしまう。



100点をとる能力は、それを追求し続けないと身に付かない。100点のレベルは、世の中の進歩で毎年向上するわけだから、「現状維持」的な発想では、結局後退してしまう。


仕事柄、多くの人を見るわけですが「完成度が上がらない」タイプの人は、仕事を任せる方も(気分的に)キビしいが、受ける方もキビしいだろう。だけど「仕事」なので、やってもらわないと困る。完成度が低いものを「出来ました」と出されても困る。だれかが、後始末しないといけない。自分で仕事が完結出来ないと、「プロ」とは呼べないし、厳しい言い方をすると、それは「仕事」ではない。


僕が川崎重工で、オートバイの設計を通じて学んだことは、そういうことです。「たった」一つの図面寸法の間違いが、その後のすべての人の仕事を台無しにする。そういう環境での経験があったからこそ、今の僕があると思います。


例えば Completed Staff Work(注6) という言葉がある。Wikipediaによれば、米軍の言葉らしい。仕事というのは、こういうものである、と僕は思っている。



若いうちに、どれだけ「Mastery」の方法論を持てるか。


それに尽きます。




※ 注1) これは重要なポイントなので、「塾長の部屋」で、後日取り上げます。



※ 注2) 以下参照。


・「発明塾京都第130回開催報告」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/05/130.html


※ 注3) 個人的には、佐藤優氏の読書論に関する本を読めば、一蹴できる主張だと思います。



※ 注4) そのため、僕が入社した時には「Max2」という制度があり、午前2時間、午後2時間「会議も電話も無し」という時間が、設けられていた。正しいと思う。



※ 注5) 僕はこの点恵まれていて、かつて「試作工場」のベテランの職人に、「お前が上手すぎると仕事がやりにくいから、もっと手を抜け」と、皮肉な褒め言葉を貰いました。



※ 注6) 以下参照。また、少し長いですが、必要部分を引用しておきます。


・「ある言葉」 http://manamix.exblog.jp/5809042


以下引用。

---------------
Completed Staff Workとは、スタッフによって行われる「問題のスタディ」であり、また、「解決策の提示」です。この場合上長の責任で行われる決定が、即、完全なアクションとなることが要求されます。一般に、問題が困難であればあるほど断片的にあるいは不完全な形で上長に提示する傾向があるために「完全なアクション」という言葉が強調される必要があります。

細部のスタディをするのはスタッフとしての義務です。いかに問題がわかりにくくても、スタッフは結論に至る過程の細かい問題の解決を上長に依存すべきではありません。その問題に関して結論を導き出すまでのすべての障害は、スタッフ自身によってとりのぞかれなければなりません。 


経験の浅いスタッフにしばしば見られることですが、何をすべきかを上長にたずねたい衝動は、問題が難しいときほど頻繁に起こるものです。何をすべきかを上長に尋ねることはいとも簡単なので、上長が答えることも非常に簡単のように見えます。しかし、その衝動に抵抗しなければなりません。その衝動に負けるのは、スタッフが自分の仕事をよく知らないからです。


上長が何をすべきかをアドバイスすることがスタッフの仕事なのであって、スタッフがすべきことを上長にたずねることが仕事ではないのです。上長は解答を必要としているのであって、決して質問を欲しているのではありません。スタッフの仕事とは、一つの結論、それもあらゆる角度から熟慮されたものの中から最良のものを引き出すまで、スタディし、チェックし、スタディし直し、チェックし直すことなのです。上長は、単に是非を決するだけでよいはずです。


 冗長な説明文やメモで上長を煩わしてはいけません。上長に対してメモを書くことはCompleted Staff Workではありません。しかし上長が第三者宛に送付できるようなメモを書くことはCompleted Staff Workといえるでしょう。上長が、単に署名するだけでスタッフの見解を自己の見解と出来るように、スタッフの見解は完成された姿で上長に提出されるべきなのです。


多くの場合Completed Staff Workは上長の署名のために用意された一様の文章に帰着します。適正な結論に達していれば、上長は直ちにそれを認めるでしょうし、もし彼がコメントか説明を望むときは、その旨を要求するでしょう。 


Completed Staff Workという考え方は、スタッフにとってより多くの仕事をもたらすかもしれませんが、上長にとってはより多くの自由が与えられます。これこそ、本来のあるべき姿なのです。さらにこの考え方はふたつの利点をもたらします。


1、上長は生煮えの計画や、大量のメモや、結論に達していない口頭での報告にわずらわされなくてすみます。
2、本当に役立つアイデアを持っているスタッフは、自分が活躍する場をますますみつけられるようになります。 

あなた自身が、Completed Staff Workを完了したかどうかのチェック方法は次の通りです。


1、もしあなたが上長だとしたら、あなたが準備した書類に喜んで署名しますか。また、あなたの「プロフェッショナル」としての名誉にかけて、それが正しいということを保障できますか。
2、万一答が否定的であれば、その仕事を撤回してもう一度やり直すべきです。 なぜなら、その仕事はまだ「Completed Staff Work」ではないのですから。