さて、今回は、アイデアコンテスト締め切り直前ということで、駆け込みのアイデアに関する討議を終えた後、「発明に必要な知財戦略」について、取り上げました。
既に8月から、毎回少しづつ「古典的」な知財戦略から、より現代的な知財戦略理論まで、取り上げてきました。今回で「初級」は終わりですから、一度流れでまとめておくと良いでしょう。
今回取り上げたのは、ズバリ「IBMの知財戦略」(注1)。もちろん、全ては取り上げられないので、ある一つの観点から、「何故そういう戦略が成り立つのか/必要なのか」を、考察しました(注2)。
丸島先生は常に、
「強みを蓄積し、それを交渉力として活用し、事業を強くする」
と述べておられます。IBMの戦略は、まさにそれを「地で行く」ものです。「知財戦略の源流であり究極」と呼べるかもしれません。
IBMのケースを学べば、「相対的知財力」「ライセンス契約」「強みと弱み」「攻めと守り」など、知財戦略の基礎的な概念を、一気に学ぶことが出来ます。個人的には、IBMのケースと「クアルコム」のケースを学べば、スタートアップから大企業に至るまで、すべての企業が「より強くなる」ために必要なことは、学べると思います。
僕の知財に関する経験は、前職のベンチャー時代に遡ります。しかもそれは、割と苦い経験です。当時CTOであった僕は、技術に関する全ての責任を追っていたので、当然、「どういう知財を取得すべきか」「それをどう活用すべきか」などについても、自分なりに考える事が出来たはずです。
しかし当時は、知財戦略についてまともに学ぶこともなく、単純に、他社特許があれば避けることだけを考えていました。今から思えば、もっと知財を知り尽くしていれば、競合の技術を無力化したり、情報を入手したり、様々な打ち手があったのです。知財に関する「無知」により、大幅に研究開発、いや「経営」の選択肢を、狭めていました。
「今なら、もっと大胆な打ち手で、会社を飛躍させることが出来る」
そう思うと、非常に悔しさが残る4年間でした。
繰り返しですが、丸島先生によれば、「相対的知財力」や、知財が「排他権」であるという特徴を最大限に利用し、交渉力として知財を駆使することで、経営の自由度は格段に広がります。経営のための知財、技術開発のための知財、事業のための知財、そのためにも発明活動を積極的に行い、技術と知財を「創造」しなければ、ならなかったのです。
しかし当時は「とにかく売れる技術を、自分達で開発する」という、短絡的な目標の実現に「躍起」になっていました。
結局、「設計論」(注3)と同じなのです。
「経営意思がないと、知財は無力」
「しかし、知財のことを知らなければ、経営の自由度について気付くことすら無い」
部分は全体を支配し、全体は部分を支配する。
細部を知り尽くして、全体を指揮する。これが重要なのです。
「知財戦略を知らずして、発明は出来ない」
「発明が出来なければ、知財戦略の要諦はわからない」
今回の討議で、発明塾が「発明研究所」として、今後大きく飛躍する素地が整ったと思っています。「技術を創造し、活かす」には、「知財戦略」が必須なのです。そして「知財戦略に従って、必要な技術を創造する」ことが、「発明研究所」のミッションです。
今後、発明塾の卒業生は、積極的に以下のスキルの獲得/職務に就く、ことを求められます。それは、将来の「発明研究所」に備えるためです。来るべき日に備え、覚悟を持って、日々精進して下さい。
・ライセンス/渉外
・出願/権利化
・知財戦略の立案、それに基づく発明が出来る技術者(企業人・アカデミア問わず)
・企業家/経営者
・ファンドマネージャ/金融工学の専門家
・情報分析
※ 注1) 以下参照。
・塾長の部屋(51)~「IBMの知財戦略/戦える頭脳集団へ」
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/ibm.html
※ 注2) 正確には「契約」に関することです。もちろん「知財に関する契約」です。
※ 注3) 以下参照。
・発明塾京都第144回開催報告~再び「設計」論
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/08/144.html