今回も、各自のアイデアを討議しました。これまた繰り返しなのですが、発明において、最も重要なことの一つは「自分のアイデアに、こだわらない」ことだと思います。
パッと思いついたことに、いつまでもこだわって、こねくり回す人がいます。殆どの場合、そのアイデアもモノにならないし、発明法も身に付かない。残念ですね。
僕は、「発明は詰将棋だ」と思っています。
与えられた状況(初期の着想)から、「最終目的(詰め)」に向かって、論を進めていくわけです。
だから、スタート地点のアイデアは、極論すると誰のどんなアイデアでも良いわけです。既存の先行技術でも、全然構わない。はっきり言って、2-3時間のブレストで出る程度のアイデアは、調べれば近い先行技術が出てきますから、後生大事にしても仕方がない(注1)。
重要なのは、「それを起点に、どこまで練るか、詰めるか」なのです。
もう一度言います。
「重要なのは、”どこから” ではなく、”どこまで”」
そのために、一連の「発明塾式」の発明プロセスを組んでいるわけなので、基礎を疎かにせず、また「今やっていることは、何のためなのか」「次どうするのか」常に考え、進めるようにして下さい。
僕が大学生と社会人の最も大きな違いと考えるのは、この「目的意識と具体的目標」です。大学生の大半は、「目的・目標を定めず」「スタート地点付近の、”ちょっと面白い”?ことにこだわって」勉強し、4年間(もしくはそれ以上)を過ごしますが、社会人ではありえないことです。
実際の所、「目標はなんでも良いから、とにかく立てることが重要だ」と、僕は考えます。スタート地点で、無駄に、そして興味本位でウロウロしないためです。
例えば、僕の知人で「30歳までに一軒家を建てる(ぐらいのお金をためる)」という目標設定をしていた人が、いました。彼はその具体的な目標に向かって、友達付き合いなどをコントロールし、見事にその目標を達成していました。
彼にとっては、仕事も、そのための一手段だったのではないかと、思います。一軒家が立てられるお金(具体的目標)が貯まるように(目的)、働こう(手段)、と。
目標は、なんでも良いと思います。
「違うな」と思ったら、変えればいいので(注2)。
・XX装置を開発したい
・一軒家を建てたい
・資格を取りたい
・ 係長になりたい
測定可能なものであれば、何だって良い。
「正しい目標」「達成可能な目標」を立てようとか、評価基準を入れると、殆どの人が「目標すら立てられなく」なってしまう。極論すると、「正しい」とか「達成可能」は結果論なので、
「とにかく目標を決めて進める」(主観)
「定期的に見直す」(客観)
と、ネガポジの制約条件を分けることです。一般的に、大学生はこれが極端に不得手です。以前取り上げた「設計論」にある「フィードバックプロセス」(注3)が、できないのです。「主観と客観の切り替え」が甘い、もしくは「客観が無い」のが、主な理由だと思いますが。
「とにかく山に登ることが重要」で
「違うと思えば降りればいい」
のです。登らないとわからないこと、がありますから。
最後に、前回(注4)の続きの情報を、塾生さんが共有してくれましたので、卒業生にも共有しておきます。
・「零戦 その誕生と栄光の記録」堀越 二郎 著
からの「写経」です。
「人間は負けるべく宿命づけられている。
だが、負ける瞬間までは、
勝負を投げずに戦うべきだ」
ヘミングウェイ
設計において、要求仕様は「ネガポジ」両方ありますが、それらを「パズル」のように組み合わせて一つの「モノ」に仕上げていく、そんな仕事が、設計です。
はっきり言って、めちゃくちゃ面白い仕事です。
※ 注1) 僕は、ブレストが面倒なときは、先行技術調査で代替します。そういう意味でも、発明には「検索」「分析」能力が重要、だと思っています。「自分の頭」に頼っていては、限界がありますから。まぁ、調べればいい発明が出る、というほど甘い世界でもありませんが・・・(必要十分条件の話)。
※ 注2) そのためにも、常に目標・目的を意識し、それを見なおす時間を取ることが重要です。詳しくは「7つの習慣」で。
※ 注3) 「設計」に関する記載は以下。
・発明塾京都第144回開催報告~再び「設計」論
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/08/144.html
・塾長の部屋(40)~「設計」と「発明」が持つ「アート的」面白さ
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/04/blog-post_7.html
※ 注4) http://edison-univ.blogspot.jp/2013/08/144.html 参照