「イシューから始めよ」(安宅)
にある、「悩むな」という、安宅さんのメッセージです。P4-5を中心に、要約すると
「10分以上考えて進まないなら、それは悩んでいる。そのままでは、答えが出ないので、すぐに誰かに相談すべき」
「”考える”と”悩む”は違う、悩んでいることを、考えていることと勘違いしてはいけない」
「考える=答えが出る前提、悩む=答えが出ない前提」
と、書かれています。基本的に、同感です。仕事が進まない、遅い人の大半は、「悩んでしまって」います。
度々紹介済みですが、再掲しておきます
大学時代の友人などと比べて、記憶力が良くないので、
ほぼ毎日、この本を読み直しています。
記憶力の悪さで、資格試験や受験で
ずいぶん苦労しましたが、
おかげで「グダグダ言わず、要するに、
できるようになるまで、やればいい」
という割り切りが、身につきました。
「”制約”は、邪魔者ではなく、上手く利用すべきものである」
ということでしょうか。
しかし、確かにそうなんだけど、自分ではできるんだけど、塾生に明確に指示できない=明確に言語化されていない「気」がして、何年か経ちました。
僕は、殆どの部下から「週に一度」相談を受けることにしているのですが(注1)、その中にヒントがありました(注2)。彼曰く、
「ちょっとここで、迷っているんですけど・・・」
あーなるほど、と。
「悩む≒迷う」
いや、正確には、
「悩む・・・・(ちょっと進む)→迷う(また止まる)」
みたいな感じでしょうか。「途方に暮れる」わけではないけど、「なんとなく結論が出ない」、みたいな。
では、「迷ってる」ってどんな状態ですか、ってことですね。
「迷う=選択肢が不明確 and/or 判断基準が不明確」
と、因数分解(場合分け)できるようです。一つづつ、行きましょう。
●「選択肢が不明確」な場合
振り返ると、選択肢が全く思いつかない状態が、安宅さんが言う「途方に暮れる」ということでしょうか。これについては、「イシュー」に書いてあるので、乗り越えていることにします。また、後述するように、「選択肢があれば、判断基準は出せる」と思っています。
ここで考えるべきことは、
「KSQ:選択肢を明確にするために、次にどんな作業をすればよいか」
です。これに答えを出せば、進められます。では、どんな作業があり得るか。
「とにかく書き出す」「調べる」「誰かに聞きまくる」・・・
整理すると、
「(A)自分の頭の中からひねり出す」「(B)他者の頭を使う(調べる、聞く)」
ですかね。A+Bで「討議する」というのも、ありそうです。
こんな風に、「言語化」し「構造化」することで、「選択肢は明確になり」「補える」ことが、わかります。また、「比較」することで、それぞれの選択肢の本質がわかります。
「比較」からは、「判断基準」も精緻化できる、というメリットがあります。見落としていた判断基準が、選択肢の比較から出てくることが、往々にしてあります。
ある程度選択肢が出たら、判断基準を確認しに行きます。判断基準を考える中で、選択肢がさらに精緻になっていくからです。そのポイントは、
「比較」
です。
●「判断基準が不明確」な場合
そもそも論としては、「何かを決めたいのであれば、判断基準が先にあるはず」ということになりますが、実際問題として、「明確な判断基準をもって仕事に取り掛かる」人は、とても少ないようです。
「判断基準が全くない=単なるパシリ」になりますので、ここでは、普通に仕事をしている人がよく遭遇する、「判断基準が不明確」という状況から始めます。
まず
「KSQ:次にどんな作業をすれば、判断基準が明確になるか」
を考えましょう。
「過去の仕事の経験から洗い出す」「調べる」「同じような仕事をした人に聞く」「上司に聞く」
先ほどと同じように整理すると、
「(A)自分の頭の中からひねり出す」「(B)他者の頭を使う(調べる、聞く)」
別の切り方として、
「(A)過去の事例を参考にする」「(B)現在の状況に注目する」
が、出せます。
僕がよく使うのは、後者です。(A)で済むなら、ほぼ瞬時に答えが出ているはずなので、「迷う」「不明確」な点は、「過去の事例とは違う、現状の何か」なのではないか、と仮説を立てます。次の質問は、
「KSQ:過去の事例と何が違うのか」
になります。そこに注目することで、新たに注目すべき/重視すべき判断基準が、明確になります。これにより、選択肢を見直すことになります。過去の違う部分に注目して、精査することになるからです。
このように、「次のステージに、強引に進むことで」、元のステージの様々なことも、明確になっていきます。
「比較」を活用するもう一つの方法は、「選択肢同志を比べる」です。手法としては、これで「MECE」になっています。「イシュー」では、「分析とは比較」と書かれていますので、結局は安宅さんの手法、ということになります。
●まとめ
その他、割愛したこのも含め「迷わない」「即断即決し、仕事をどんどん進める」ために、僕が気を付けていることは、以下のようなことだったようです。
「選択肢は言語化する」
「選択肢を比較する」
⇒これらの作業で、正確な選択肢になる
⇒また、比較すると、判断基準も精緻化する
言語化に関して気を付けているのは、安宅さん曰く
「SV(主語述語)を明確に」
とのことですが、僕が気を付けているのは、
「SVじゃなく、SVC、SVO、SVOC、SVOOにできないのか?」
と、自問自答することです。SV=SがVする、で終わるイシューは少なく、さらに精緻化するためにも、必要な質問(KSQ)と感じています。
「一つ先のステージに強引に進めることで、元のステージが正確なものになってくる」
⇒同じところでうろうろしてはダメ
また、選択肢創造についての基本的な、「質問の順番」ですが、仕事を進めるためには、
「What、How、When、Who、Where(選択肢を作る)
→ Which(基準をつくる)
→ How Much(結論=結局どうなるのか=仕事の結果はすべて定量化する)
のように進めていきます。Whyは、安宅さんも指摘している通り、「後戻りする質問」なので、要注意です。簡単にいうと、「5W1H」を意識して使い分ける、順番を間違えない、ということになります。
紹介した通り、選択肢作りも、結局MECEのような基本的な論理的思考がベースになります。よく「逆転の発想」などと言われるような、「意外な発想」も、きちんと論理的に導き出せることが、発明塾では、度々証明されていますよね(「NotA」思考)。
選択肢にも、判断基準にもかかわる「比較」の技術は、実は発明そのもの。先行技術と比較することで、そのアイデアの本質が見える。
同様に、過去の事例/隣の選択肢と差分を取り、比較すれば、事例の本質/選択肢の本質と、評価基準も見えてくる。
結局のところ、僕が発明塾で教えていることは、「僕が設計者、発明家として仕事を”せざるを得ない(注3)”中で身に付けた、効率的で創造的な仕事のやり方」、ただそれだけのことなのかもしれないですね。
※ 注1) まぁ、今だからできること、ですね。これ以上会社が成長すると、難しくなりますね。
※ 注2) いつも思うのですが、「部下に相談を受けて初めて、自分がそれをどう乗り越えてきたか、正確に理解できる」ようです。
※ 注3) 「せざるを得ない」は、すごく重要で、だから「効率よく」やりたいと思うわけです。周りの見回しても、自分を振り返っても、それ自体が楽しくて、趣味感覚だと、「だらだらやる癖がついて」しまうようです。
ドラッカーが「”やりたいこと”を、”やるべきこと”に変えるのが、プロフェッショナルの本質」と、どこかで言っていましたが、そういう意味なんだろうなと、30ぐらいの頃から感じるようになりました。