「発明塾®」へようこそ!: 塾長の部屋(41)~「明日の産業人材を育成する」ために

2013年4月23日火曜日

塾長の部屋(41)~「明日の産業人材を育成する」ために

イレギュラーなタイミングですが、報告のために。

先日、INPIT(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)が主催する事業の一つである、専門高校・高等専門学校での知財人材育成に関する委員会に、出席して来ました。

委員会の様子(かなり活発な情報交換がなされました)は、後日公式に報告があると思いますので、ここでは、委員会で僕が発表した内容を簡単に報告しておきます。

1.概要
 何のための知財教育か。企業での知財教育の現状、日本企業にこれから求められる知財活動についての報告。

2.「何のため」の知財教育か
 既に、多くの専門高校や高等専門学校、および普通科高校においても「創造性教育」「リテラシー」としての知財教育が、なされている。また、大学においても、山口大学は今年から全学生に「知財教育」を必修化している。

 僕が紹介したのは、弊社のスローガンでも有る「ダントツの知財力と発明力」の、「知財力」の方。「ものづくり」にこだわらず「頭脳で稼ぐ国家」への変貌を、提案したつもり。技術や発明を守る、という牧歌的な「知財観」を改め、「知財戦争で勝てる人材」「事業の前に土地を買える人材」の育成に、あたらねばならない。

3.「エジソン」の強さ
 僕の「エジソン」理解は以下である。
・「単なる発明家」ではない
・「電力」とその消費先としての「電灯システム」の考案
・特許化、そして「規格化」による独占
・特許(発明)の大半は、ソケットや分電盤など、インターフェースやシステムに集中
・ビジネスを独占するために、「特許」を使い切った達人
実際、彼は人生の後半を、ほとんど訴訟に費やしている。彼の「事業にかける覚悟」、がそこに露れている。

4.学生向け知財教育
 一方で、学生にそこまで教える必要はないと思っている。
・「創造性」教育:差を認め、尊重する教育
→ 先行技術はかならずある。でも、あなた独自の点もかならずある。
・「産業/技術史」教育:発明の歴史として把握する
・論理的思考/分析能力トレーニング:立命館大学での教育内容を紹介
・企業(活動)を知る:同上
・他:早稲田大学、駒場東邦中学・高校(発明塾@駒東)での取り組みを紹介

 しかしながら、計画的に、複雑かつ「タフ」な現実に備えた「巧妙な」教育カリキュラムを設計する必要がある。教育は「工学」されるべきものである。
 数学教育になぞらえて、各段階での教育の「あるべき姿」を紹介。

・中学:よく知られた問題を、よく知られた方法で解くことを憶える。
・高校:よく知られた問題を、様々な方法、新しい方法で解く。これまでにない解き方を考える。
→ 複雑過ぎない問題(箱庭)で、創造性(物事を多面的に見る力)を「徹底的」にトレーニングする。
・大学:現実の世界を数理モデルで置き換え、解く方法を教える。
・社会人:現実の世界の問題を発掘し、これまでにない方法で解決する。

 複雑な状況下で、創造性を発揮できるようにするには、箱庭で「方法論に熟達させる」ことが必要である。これは、巧妙に設計されたシステムの中で、教える側が継続的に関わらなければ、達成できない。

5.企業で求められる知財人材
 一応の最終像として、紹介。
・「自分の強み」と「相手の弱み」を突き合わせて勝つのが「戦略」
・自分の強み=知財(排他権)と、相手の弱み=事業を、突き合わせて勝つ、という戦略的思考ができる「知財人材」の育成
・世界で勝つには、知財による「技術保護」なる「牧歌的認識」を、超越する必要がある。

6.企業における知財活動の事例
 Patent Wallの写真などを用いて、Qualcomm社の事例を手短に紹介。

7.僕の講義のルール
 これは、立命館大学での「発明講義」のルールであり、発明塾のルールでもある。
・唯一解のない問題(ヘタすると、答えがないかもしれない)
・どんどん発言する(言わなければ始まらない)
・何を言ってもOK(否定はしない)
・僕が正しいとは限らないし、僕に聞くより調べたほうが早い(唯一絶対は無い)
・どんどん調べる(その場でググる)
・随時質問OK(その場で解決し、先送りしない)

8.「明日の産業人材育成」のための知財教育
 どういう意義があるのか、まとめ。
・「創造性」を理解し、実践する
・答えは「唯一絶対」ではない
・互いの才能を「補う」
・「調べる」こと、技術の歴史、先人の知恵、企業について知る
・経営、経済活動、そして「戦略論」を理解する
・「考えること」の楽しさを知る

 いつも言っていることだけれど、「どんなことを通じてでも」「何だって」教えることができる、というのが僕の考え方。「教育のプロ」というのが何を指すのかは人それぞれでしょうが、僕なりのプロ意識で、大学生時代からの20数年間の、決して少なく無い時間を「教育事業」に費やしてきている。

知財教育を通じて、ありとあらゆることを教えよう、という僕の取り組みは、まだ始まったばかりです。

これからもよろしく。