「発明塾®」へようこそ!: 発明は設計/トレードオフという考え方/特許を読むとは~発明塾第439回

2018年6月29日金曜日

発明は設計/トレードオフという考え方/特許を読むとは~発明塾第439回

珍しく、発明の部だけの報告を書きます。
(いつもサボっていてごめんなさい)

今回も、20時開始でした。

いくつか大切なことを説明した気がするので、細かいことは、ログと録音に譲るとして、何を話したのか概要を書いておきます。

なお、繰り返しですが、ログと録音にもとづいて、各自振り返りメモを作りましょう。
僕も、原則として毎回作っています。

今回から非常にクリアな録音が提供されるようになりましたので、活用しましょう。
僕も先ほど、倍速ぐらいでざっと聞きました。



● 発明は「設計」だということ

僕はそう考えている、ということにすぎませんが、改めてここにも書いておきます。
過去にも、何度か書いた気がしますが・・・。

僕にとって、設計とは

「モノをつくる前」

に、

「これなら、きちんと(過不足なく)目標性能を達せられるものが造れるはず」

という図面を準備することを指します。
(機械屋ですので、図面がすべてです)


ある方が、

「実験無しの開発」

という言葉を使っておられました。そういうイメージかもしれません。

僕の中で、設計とは、厳密には開発ではありません。
開発要素があってはいけないのです。

「図面通り作って、一発で、性能が出る」

必要があるからです。全てを

「思考実験」

で済ませる必要があります。それが設計です。


それでも、例えばオートバイの設計の仕事には

「開発」

の期間が存在します。

それは

「攻めた設計をすると、予期せぬことが起きるから、それを消し込む時間」

であり

「信頼性を確認する時間」

です。繰り返しですが

「とりあえず作ってみて、何が起きるかわからないけど」

みたいな図面は書きません。それは、少なくとも僕にとって、設計ではありません。


設計者は

「すべてを見通して、完璧なものができる図面を提出する」

義務がある、と思ってます。

ただ、実際にはそれは難しいし

「完璧なものであるかどうか」

の確認には時間がかるから、開発期間があるだけ、なのです。

発明は、そこまで厳しくはありませんが、やはり、

「ある課題を解決したモノが、これで、できるはずです」

という、実施例(設計図)を含む発明提案書として、少なくとも表される必要があります。


モノが作れればそれが一番良い気もするのですが、ものごとはそう簡単ではありません。

作ったら作ったで、

「作り方」

に起因するいろいろなトラブルが出ます。それも含めて発明、という見方もできますが、皆さんに、そこまで求めるつもりはありません。

社会に出たら、どうせ

「嫌というほど」

やりますからね。


これに限らず、本屋でいくつか手に取って、読んでみてはどうですか?
設計を知らずして、発明はできない気がしています・・・。



● トレードオフという「考え方」で取り組む

トレードオフというのは、あくまでも

「考え方」

です。ここで、トレードオフは、ある特性を向上させると、別の特性が低下するという、2つの特性や課題間の関係のことを指します。

この、

「2つの」

というのがミソなのです。少なくとも僕の理解では、何かモノを作って機能させようとすれば

「数多くの、互いに関連する課題の群」

に直面します。それらの多くは、どの2つをとっても

「トレードオフの関係にある」

可能性が高いものです。そうでなければ、簡単に解決できるため、課題として認識されないからです。


しかし、人間の乏しい能力では、それらを

「同時に考慮しながら、解決していく」

ことは、不可能です。少なくとも僕には

「3つですら、容易ではない」

と感じます。

ですので、たとえば、課題が3つあり、どの2つをとってもトレードオフの関係にある場合

「まず2つを同時に解決できる解決手段のアイデアを考える」

ことから始め、そののちに、その解決手段が

「残りの1つにどのような影響を与えるか」

考えるのです。たまたま解決できていれば大ラッキー、何の影響もなければそれはラッキー、たいていは、何か悪影響があります。


実際には

「無数の、把握しきれない課題」

が、どの2つをとってもトレードオフの関係にある状態で、横たわっていると考える必要があります。ですので、どの課題にするかという議論を延々とするのではなく、

「まず解いてみて、新たな課題が頭をもたげてこないか、思考実験で観察する」

のが、最もよいと僕は考えています。新たな課題が頭をもたげてきたら

「その課題が原因で、元の課題が解決できなかったのだ」

ということが、わかります。

発明は、これの繰り返しです。


発明の前段階で、課題を整理していると、

「あんな課題もある、こんな課題もある」

となりますが、それらの多くは、実は

「まだ、把握できていない因果関係の糸で結ばれている」

はずです。その因果関係を、一つ一つ特定していくために

「まず、何か解いてみて、その影響を、思考実験で確かめる」

ことになります。


これは、設計を行い、図面を書く作業そのものです。

「こういう形にするのが、この課題を解決するには最適なんだけど、他に影響が出るかな」

ということを、線一本一本について、思考実験を繰り返し、検証しながら定めていきます。

ちなみに、ある程度の複雑さを持ったモノの場合、図面を書く作業は、設計という作業と切り離せないと僕は考えています。どういう形にするか、は大きな意味を持つからです。それは、寸法を定めて目の前で図にしない限り、普通は検証できないと思います。

「思考実験を行うためのツール」

として、

「図面」

が必須なのです。書いては消し、書いては直し、をしながら、設計案が仕上がっていきます。

発明が

「発明提案書を書く中で、創られていく」

のと、全く同じです。



● 特許を読むとは設計図を読むこと

これは僕の経験に基づくものなので、他の方がどうかわかりません。

しかし、少なくとも僕にとって、特許を読むことは、ほとんどの場合

「設計図を読む」

ことと同じです。もっと言うと、設計と同じです。


例えば、設計者は、過去の図面を参考に、新たな製品を考え、図面を書くことがしばしばあります。僕もよくやりました。

その時困るのは、その

「過去図面の作者」

が、すでにその部署におられないことです。これは、非常に良くあります。すでに会社にもおられないことも、よくあります。運よくおられたとして

「さー、どーやったかなー、確かに私の図面やけど、細かいことは忘れたわ」

ということも、よくあります(笑


何が言いたいかというと

「なんでそんな図面になっているのか、確認しようがない」

のが普通なのです。その場合

「なんで、この形状なのか」
「なんで、この寸法なのか」
「なんで、この熱処理なのか」

などを、合理的に推定するしかありません。

設計者は、これで鍛えられます。

「設計意図を見抜く」

ことが、設計者の重要な仕事になります。

「他社製品の観察」

などでも、同じことが要求されます。

「なんで、こんな部品が必要なんやろ」
「なんで、こんな形状になってるんやろ」

ということが、よくあります。


特許についても、同様に

「なんで、こんな特許が出てるんやろ」
「なんで、こんなことが書いてあるんやろ」
「こう書いてあるけど、実際、どうなんやろ」

のように理由を推定して、背後にある戦略や思想を見抜く必要があります。

モノがあっても、本当のところはわかりづらいのですが、モノはなく

「言葉」
(図面はあります)

だけから、いろいろなことを推定していくのが

「特許を読む」

という作業です。


これが面白い人は、きっと設計に向いています(笑



楠浦 拝




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