「発明塾®」へようこそ!: 一般的に、特許情報分析は「役に立たない」とされる~だから発明塾では「特許情報」にこだわる(第332回報告)

2016年5月29日日曜日

一般的に、特許情報分析は「役に立たない」とされる~だから発明塾では「特許情報」にこだわる(第332回報告)

第332回の前に、過去のログを楠浦が改めて振り返り、一つアドバイスをしておきました。


周知の事実のはずですが、発明討議において


「過去ログ」


の分析は、


「討議自体より重要」


です。特に


「議論のスピードについていけなかった」


人は、振り返ってはじめて全貌が理解できる場合もあるでしょう。また、どんな人でも、


「見落とし、聞き落とし」


がありますから、それを拾い上げ、さらに深堀りし、新たな着想を得るために、過去ログ分析は必須です。


また、現在、楠浦は討議に参加していませんから、ログを頼りにアドバイスすることになります。

慣れれば、効率よく指導するツールになりえます。

もちろん、各自がきちんとしたログを残してくれていることが、前提になりますが。




(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。
なんにせよ、予習は重要です。
そして、「復習」により、気づくこともまた多い。


発明討議において、


「結局、初期のアイデア・情報が重要だった」

「議論が一周し、当初のコンセプトに戻ってくる」

ということがよくあります。今回も、まさにそうなっています。


楠浦は、過去ログを見てこのことに気づき、今回のアドバイスに至っています。



各自が、過去ログを振り返り気づくことがベストですが、ログさえ残っていれば、第三者の指摘により軌道修正できます。


ログの重要性、改めて肝に銘じておいてください。



ハネウェルの「UAV(ドローン)」特許に行きついていましたね。

ハネウェルも、注目すべき企業の一つですので、また取り上げましょう。
最近では、GEのOBがヘッドハントされ、社長に就任することが決まっています。



さて、本日は「特許情報を用いた技術マーケティング」の、おさらいをしておきましょう。既に e発明塾「開発テーマ企画・立案における特許情報分析の活用」として教材化されていますので、


✔ 受講が済んでいる方は「復習」、「今後のアクション」、および、アクション結果からの「フィードバック」

✔ 受講前の方は、心の準備

を兼ねて、お読みください。




「特許情報分析は役に立たない」という声が多い


先日、過去のセミナー参加者の方より近況をお伺いする機会に恵まれ、


✔ 「特許情報を用いた技術マーケティング」セミナーの内容は、非常に役立っていること

✔ 社内で取組みとして定着し、結果も出ており、次のStepへ進むタイミングであること

など、貴重な情報をいただきました。


過去にも、「非常に役立っている」というご報告をいただいた例は少なくありません。一方で、一般論として、


特許情報を有効に活用したい

しかし、なかなか上手く活用できない

というお話も、各所で伺います。理由は一つではないでしょうが、私が上記のような相談を受けた場合、必ずアドバイスすることがあります。


それは、


「特許情報から得た仮説をもとに、実際に自分で行動を起こさないと、活用できるようにはなりませんよ」


ということです。


上手く活用されている方にとっては、


「なんだ、あたりまえじゃないか」


というアドバイスでしょう。詳細は、e発明塾


開発テーマ企画・立案における特許情報分析の活用


に記載がありますので割愛いたしますが、「ナノインプリント技術の実用化」において、私は、


「特許情報を分析して、用途を見つけた」


というよりは、


「事業を成功させるために、会うべき人にきちんと会った(会えた)」


のであり、


✔ ナノインプリントの実用化開発に必要十分な 大口の研究開発投資を得る ために

✔ 投資家を説得できるレベルまで、事実を集め、事業計画を仕上げたい
✔ そのために、だれに接触し、どのような対話を行うのがよいか
✔ 特に「本気で取り組んでいる ”先駆者”との対話を通じ、他では得られない情報を得たい
✔ それには、「こちらも本気である」ことを、示せるだけのものを準備する必要がある
✔ そのためには、まず、「行かなくても手に入る情報」を入念に調べておく

のように、目標から行動へ、そして、その行動に無駄が生じないように、特許情報を最大限活用した、とお伝えするのが正しいでしょう。



実際、あるヒアリング先の方は、


「そこまで調べて来ておいでなら、のらりくらりと無駄話をしてお茶を濁し、追い返すわけにもいかないですね」


と前置きし、その後二時間以上にわたり、社内でどのような取り組みをしているか、どのような課題があるか、どのようなサンプルであれば評価したいか、どのような設備を持っているか、など、微に入り細に入り、お話し頂きました。


残念ながら、当時の技術力では、先方のご要望に、完全にお応えすることが出来ませんでしたが・・・。


また、「今は、ナノインプリントは検討していないけれど、評価装置は持っているし、おもしろいデータが取れるかもしれないから、評価だけでよければ、お手伝いしますよ」と申し出ていただいたこともありました。
 




何のために「特許情報分析」を行うのか


特許情報を用いた技術マーケティング」を、一字一句注意深く読んでいただくと、特許情報を利用したことで生じた事業開発上の転機は、大きくは


✔ 自己都合による「認知バイアス」を排除

「自社の人間も含めた世間」が言う、用途についての「セグメント」が、致命的に間違っていたことに気づいたこと。つまり、「血気盛んな人間が数名集まれば」、ついつい自分が正しいと思い込んでしまいがちであり、かつ、だれも正してくれないものであり、その結果必ず生じる「自分たちの認知バイアス」に気づくための客観的なデータとして、特許情報が大いに役立った

✔ 「身の程」をわきまえた上での優先順位設定

自分たちが、何の実績もない、いわば口先だけの「駆け出しのベンチャー」であり、「丸腰で大手企業の方にコンタクトしても、全く相手にされない」「技術・人材に乏しいだけでなく、資金、つまり、事業化までに許される時間が限られている」という「ポジション」を考慮した場合、「今/まず、誰に会うべきなのか」という事業開発上の「必然性」と「優先順位」を考える材料を得たこと。
ついでに言えば、「ポジション」がわかっていれば「会うべき人に会うために何をすべきか」は、すぐに明確になり、そこでも特許情報は欠かせなかった

✔ 身勝手な論理から生じる「致命的なミス」を排除

ナノインプリント以外の技術でも実現出来ることを「ナノインプリント事業」で追求することは事業開発において、致命的なミス」になる。したがって、「消去法」で、「他の技術でも出来そうなこと」を徹底的に排除することを厳守し、特許情報を活用/ヒアリングでも、この点に特に注意したこと。
何十億も資金を投じた挙句に、「競合技術に勝てませんでした」は許されない。「本当に勝てるのか」を検証するために、特許情報を活用し、他技術を試みている「先駆者」にも、積極的に助言を求め、「本気の対話」を繰り返した。
ついつい「市場を大きく見せたがる」のが、事業開発担当者のマインドセットであることは、すでに痛いほど理解していたので、「本当に勝てる市場に絞り込む」「勝てると確信が得られ、一定の合理的な証明/投資家への説明ができるまで、ロジックを練り上げる」ために、特許情報を活用した

✔ 「
ラストワンピース/L.O.P」を見出す「本質的な議論」のために「会う時間を有効に」

一方で、実用化されていないデバイスには、何か「課題」が残っており、それが「最後のピース(ラストワンピース/L.O.P)」であり、自分たちに解決できるのではないか、という視点でヒアリングを行う。そのためには、「本質に絞り」対話を行う必要があり、「前置き」のような話はできるだけ省略できるような面談提案を行ったこと

の4点にあることが、お分かりいただけるでしょう。


開発テーマ企画・立案における特許情報分析の活用


では、「売れるか、勝てるか、儲かるか」のように表現していますが、発明塾で特に重視しているのは、


「絶対勝てる場所を、まず見つける」


ことです。一つ見つかれば、他を見つけるヒントが得られます。実際、ナノインプリント技術の実用化開発でも、


「なぜ、LEDの高輝度化が有望か」


を考え抜いた結果、今後大きく発展し、かつ、ナノインプリントを必要とする可能性が高い用途の仮説を、他にもいくつか導き出すことが出来ました。



その他、当時の話の一部は、こちらにも記載。




「情報」の価値は、そのあとの「意思決定」の価値で決まる


これまた当たり前すぎて怒られてしまうでしょうが、


「情報分析や情報収集は、単なるコスト」


です。


情報の価値は、その情報に基づいて下される意思決定の価値によって決まる、と私は考えています(情報分析の結果も、
情報です)。


「重大な意思決定のために、情報分析を行う」

情報分析の結果にもとづいて、自ら意思決定を下し、行動し、そこからフィードバックを得て、情報分析手法を見直していく

ことが、


「特許情報分析」


の精度を向上させ、その価値を最大化するために、必要なことです。


もちろん、


「大して役に立ちそうにない」


と思われている状態で、


「だれか他の人が、重要な意思決定に使ってくれる」


ことは、まずありえませんから、


「自身で情報分析を行い、重要な意思決定を行い、行動に移し、自分で結果を確かめ、分析の精度を向上させてから、他の人に ”使ってもらえないか、お願いする”」


しか、ないでしょう。



また、いつもの「逆張り」の精神で


「活用できている人が少ない、ということは・・・」


で、手法を磨きぬいていきましょう。


「皆がやっている」


ことを、そのままやっても、勝てませんからね。


続きはまた、お会いした際、ぜひお話ししましょう。




楠浦 拝





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