「発明塾®」へようこそ!: 発明塾@京都 第9回開催報告

2010年10月14日木曜日

発明塾@京都 第9回開催報告

第9回は、7名の参加者により開催されました。

今回はすこし初心を思い出す(私が、ということかもしれませんが)ために、たまたま最近見たTEDのビデオで、プレハブとか食品包装に関係ありそうなビデオ(これは、たまたま最近同じものを見た学生さんもいたので)を一つ、ついでに先日のテレビ東京「WBS」でも取り上げられた、「蚊を打ち落とすレーザー」のビデオを見ました。

・Are mushrooms the new plastic ? by Eben Byer
めちゃくちゃ面白いです。ローテク発明が世界を変える、の典型的な事例。

Could this laser zap malaria? by Nathan Myhrvold
Intellectual Ventures CEO ネイサン・ミアボルドが、「マラリア対策の蚊撃退レーザー」を紹介。

テレビ東京で放映されたのはこちら。ラボの紹介もあり、もっと詳しい。

実はいずれも(失礼ながら)、技術的には大した発明ではありません。マッシュルームなんてどこにでも手に入るし、蚊を落とすレーザーも、部品はすべて家電製品(DVDレコーダー、レーザープリンタ、デジカメ等)です。

では、なぜ彼らがこのような素晴らしい発明を考え出すことが出来、私?には出来なかったのか。(あるいは皆さんには出来なかったのか?)

これを、ぜひ常に考えて欲しいと思います。発明塾京都ではいくつかの意見が出ました。

・そんなふうに使えるとは(マッシュルームやDVDレコーダー)知らなかった。
・そもそもDVDレコーダーにそのような技術があると知らなかった。
・マッシュルームにそんな性質があるとは知らなかった。
・そんなこと言ったらバカにされる。
・そういう問題を意識したことがなかった。
・コストに見合うと思えなかった。
等々。

そうかもしれません。

一つだけ私も全く同感な回答がありました。

それは「そういう問題を意識したことがなかった」です。(実は「そんなこと言ったらバカにされる」も同感です。その体験談も、@京都でしましたね。新しいことをするときは、必ず馬鹿にされますから、今度から馬鹿にされたら「ほめられてるんだ」ぐらいに思っておきましょう。)

皆さんは、マラリアについてどれぐらい知っていますか?大気汚染は?水質汚濁は?ゴミの減容化について、どれぐらいの時間考えてみたことがありますか?

ビル・ゲイツが以下のビデオで言っています。
「ほんとに重要なことに、優秀な頭脳が使われていない」

記事は以下参照。


逆に言うと、きちんと問題を知らしめて、それについて皆が時間を割いて考えれば、さほど複雑な技術を使わずとも、大きな(世界規模の)問題も解決できる可能性が多いにある、ということだと思います。

すくなくとも、マッシュルームと蚊撃退レーザーが、その可能性を示唆しています。なんども言いますが、「たいした」技術は使っていません。ナノテクも宇宙技術も遺伝子組換えも使っていません。

ネイサン・ミアボルドが、Intellectual Venturesで取り組んでいることはまさにそういうことであり、またビル・ゲイツが支援しているのもそういう理由でしょう。

また、昨日話したように「問題に着目し、解決するための新しいコンセプトを考え、それを実現できる技術を探す」というアプローチは、大学生にこそ向いています。世の中にどういう技術があるか、ということをあらかじめ知っておく必要はありませんし、すべてをあらかじめ知っておくことは不可能です。それは、Googleや特許データベースを調べれば分かることです。(知っている方が早いかもしれませんが、逆に、知っていると偏るかもしれません。自分の得意分野に解決法を探しに行く、という形で。)

それよりも、問題を「分析的」に考え、理論を用いてモデル化し、新しいコンセプトを出す、このが重要です。昨日話した「触覚グローブ」(守秘義務の関係でここにはこれ以上書けませんが)が、いい例です。これに限らず、ほとんどの「筋の良い発明」は、課題の着眼、絞り込み、モデル化、ここにポイントがあります。

今後も、様々な発明を行い、あるいは他の人の発明に学びながら、「いかにして世界を変えるアイデアを出すのか」について学び、実践していきましょう。発明塾に終わり(卒業)がないのはこれが理由です。世界中の課題が解決されたら、終りにします。

この話の続きは、京都大学VBL主催で来月行われるIVの講演(11月25日予定)と、12月8日に私が物理工学科の授業「モノづくり演習」で行う講義でしましょう。参加希望される方は連絡下さい&今後のツイッター情報に注意してください。

では。