「発明塾®」へようこそ!: 【発明塾】エジソンに学ぶ 発明と特許(008)~遺伝子編集技術CRISPR

【発明塾】エジソンに学ぶ 発明と特許(008)~遺伝子編集技術CRISPR

今回が、最終回になります。


前回に引き続き、

「遺伝子」

関連技術の研究者を取り上げます。


取り上げるのは、遺伝子編集技術 CRISPR-Cas9 の発明者とされる

です。


まず、

CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)

の紹介を、簡単に。



CRISPR-Cas9

CRISPR-Cas9
は、「遺伝子を自由に編集できる画期的な技術」であり「iPS並みの新技術」とする声があります。

以下の記事が、わかりやすいと思います。

【図解:3分で解説】クリスパー・キャスナインとは|遺伝子改変、ゲノム編集技術
(「STEM教育×脳科学×AI」から未来を考えるブログ より)

誤解を恐れず、専門知識のない方が直観的に理解できるように言うと

「(狙った場所について)自在に切り貼りして、遺伝子を編集できる」

技術です。


特許を読んでみたい、という方のために、フェン・チャン による初期の出願を、以下に取りあげます。
既に権利化されており、CRISPR-Cas9 についての基本特許の1つと思われます。

(登録特許:GooglePatentへ移動します)


米国特許庁のサイトで関連出願と出願/権利化の経緯を確認すると、仮出願をベースに、多くの分割出願を行い、巧妙に権利化を進めていることがわかります。


創薬応用にとどまらず、「難病の治療」や「食糧増産を目的とした動物の遺伝子編集」についても研究が進められており、「世界を変える」技術になるかもしれません。


(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。

「研究者を志す」と仰る方に、いつも
お勧めしている本です。



● 「フェン・チャン」の考え方 ~ インタビューから

フェン・チャン(Feng Zhang)にインタビューする機会に恵まれた塾生さんが、その結果を共有してくれています。

以下に引用します。

研究・発明・知財、いずれの点からも、非常に興味深いインタビューです。



===
以下、インタビュー結果のほぼ原文を抜粋引用(太字の一部、青網掛けは楠浦)
Qは塾生さん(or その場にいた別の学生さん)、AnsFeng


<どうやれば、そんなに画期的なテーマを、次々見つけられるのか>
Q :「ChR, TALEN, CRISPR.どうやったら,そんな鉱脈を発見できるの?」
AnsPubmedで.
(※医学生物系が一番使ってる,学部生でも知ってるサーチエンジンです)


Q
:「そんなの、みんな使ってるんですけど・・・」
Ans:一番大切なのはQuestionなんだ.
みんなに言っておきたいけど,Questionが一番大事
(#ここでQuestion連呼)

適切なQuestionを設定できれば,Pubmedは良い検索エンジンだから
"誰もそんなもの読んでない"という文献まですぐたどり着ける

その文献をCRITICALに読むんだ."CRITICAL"読まなきゃいけない
(#ここでCRTICAL連呼)

CRITICALに文献が読めればChRCRISPR「ローリスク」の研究テーマだってわかるよ.
みんな「ハイリスク」っていうけど.
リターンが大きいかは実験してみるまで分からない,生物だから.
CRITICALにさえ読めれば,リスクは見積もれる.

というか,適切なQuestionさえ設定したら,Pubmed検索すれば答えがほとんど出てる


Q
"Answer is in question"ですね.
AnsExactly.


<研究者に向いた人材>
Q :研究系の発明に向いている人材ってどんな人材だと思う?
Ans:#英語のまま書きます.
現段階でのFeng氏による
「結果を残せるgood students and post Docsの特徴」

Open Minded, Optimistic, but VERY CRITICAL when they see data.
Good at BREAKDOWN big problem into pieces of solvable problems.
If there are some steps in a technology for example, he/she is VERY CAREFUL and
does not stop thinking about which step causes the problem.
(大文字は,彼が強調してたこと)

Open Minded IT系のカルチャー.MITの奴は大概そう.
Optimistic only ; 米国にめちゃいるらしい.大したこと言うけど,結果に近づけないらしい.
Critical only ; レアキャラ.
危ないプロジェクトに手を出さないから,そもそもFeng Labのような小さなラボには少ない.

Critical を身につけるには,Criticalにデータを見るトレーニングを積まないといけない.
課題にfocusした実験をどれだけやって,どれだけCriticalな人と一緒に解釈したかが重要

MITとかHarvardの学生はめちゃめちゃ頭が良い.でもそれでは足りない.
(#"Very smart"を連呼してた.)

賢い人たちはしばしば,散漫.注力するべき課題をしぼれない.
僕らのラボは小さいから,課題を選んでフォーカスしないと結果はでない
フォーカスして努力できるかは分かれ目.

実験に対する文化・哲学を作るべき

Optimisticに実行するのが大切だけど,
Positive dataとかNegative dataという言葉で議論すると,研究が前進しない.
そういう文化を作らないようにする.

"Conclusive"かどうか.が重要.

一見ポジティブに見えるけど,
何も結論できない研究計画を立てつづけると,実は進んでない.
Conclusionが無いのに勝手に結論して先に進めてしまうのも,かなり危険.

===引用終了




このインタビュー、共有してもらった当時、私が個人的に注目したのは以下で、改めて読み直しても、変わっていませんでした。

①「Critical を身につけるには,Criticalにデータを見るトレーニングを積まないといけない.課題にfocusした実験をどれだけやって,どれだけCriticalな人と一緒に解釈したかが重要.」
Open-Minded Critical な奴はレア(と言っていたらしい)
Conclusive


①は、Critical は意外と暗黙知の部分があるのと、形式知の部分も「忍耐強く」トレーニングする必要があるので、余程タフなマインドを持っているか、良いコーチにつかないと身につかない、と感じます。私は、大学時代、および社会人初期に設計の仕事を通じ、その機会に恵まれました

②について、挙げられている2つは相反する資質だと、多くの塾生を見て、感じます。

③は、「イシューから始めよ」(安宅)で書かれていることとでもあります。
どんな結果が出ても「進む」実験を計画しなければならない。
それ以外は「Fishing Expedition」(くたびれ儲け的)な実験であり、考え直す必要があるとされています。



● 最後に

エジソンについての調べ物は、今後もライフワーク的に取り組んでいく予定です。
発明塾の塾生さんそれぞれが関心がある分野は様々ですし、研究者の道を進む人、設計者を目指す人、外資系コンサルティング企業へ入る人、起業する人など、進路も様々です。


全員に共通しているのは

「もっと、創造的になる方法」

に興味があり、それを

「科学したい」

と思っていることではないかと、僕は考えています。


また、ここまで紹介した内容、および、特に今回紹介した

「フェン・チャンのインタビュー」

の内容がご自身の考えと似ている、あるいは、そんなこと考えたことなかったので衝撃を受けた、もっと深堀してみたい/そういう考え方を身につけたい、そんな方は発明塾に向いているかもしれません。


そういう学生さんが居られましたら、ぜひ、発明塾見学希望の連絡を下さいませ。


では、またお会いしましょう。



楠浦 拝




P.S.

誰もそんなもの読んでない」という、「イケてる」文献/情報に素早くたどり着くための考え方を、以下講座で解説しています。

(無料)7日間メール講座【115分の”発明塾”】「新しいコトを興す」ための情報探索術
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