「発明塾®」へようこそ!: 2月 2013

2013年2月28日木曜日

発明塾京都第121回開催報告

 第121回も無事終了しました。今回も、新しいテーマについての討議を行いました。土曜日に合宿を行うので、そのための予備的な議論としました。言うなれば、土曜日のための「サンプリング」的な議論、でしょうか。

 発明塾ではこの「サンプリング」という概念を、(少なくとも僕自身は)多用します。

・すべての情報に目を通すことはできない(量が多い)
・ありとあらゆるケースについて考えることはできない(数え上げ不可能)

発明とは、多くの場合上記のような「時間制約」の元での課題解決、を意味します。

「いかに効率よく、創造的になれるか」

現在の発明塾の状態です。次は、

「どこで創造的になれば、意味があるか」

を追求する段階と思っています。今回の「講義」で、少しその入口を覗いてみました。2013年度の発明塾は、次の段階へ進化します。

これからもよろしく。


P.S.
 Oくんが書いてくれてるブログが面白い。彼はとても素直な学生でしたね。

・「素直とは性格でも才能でも無い、という反論」
http://before11.hatenablog.com/entry/2013/02/02/085337


2013年2月21日木曜日

発明塾京都第120回開催報告

第120回も無事終了しました。

 今回も、前回に引き続き新しいテーマについての討議を行いました。前回から今回にかけて、ベテラン?塾生主導での運営を開始しました。ある程度発明が出来るようになった後に、さらに発明能力を高めるには、周りの人の発明の相談にのるのが一番です。


「教えることが、一番勉強になる」

シンプルには、そんな感じです。

 120回も討議を行なっていると、実に様々な技術分野の、実に様々な大きさの発明を扱うことになります(注)。自分のアイデアに関する討議だけではもったいないですね。他の人アイデアについても、その過程をまとめて、どういうふうに議論が進んだのか、発明方程式のどの部分がまだ「詰まって」いないのか、などについて、考察することで、発明プロセスについての理解が深まります。

 ポランニー「暗黙知の次元」にある、indwelling プロセスです。発明のような高度な暗黙知は、理論を踏まえた上で、しっかりと「内在化」を行う必要があります。字面の議論にならないように、常に目の前の議論(具体論)と、理論を照らしあわせ、何がどうなっているのか、振り返り、咀嚼し、自分のものにしてください。

 では、次回も宜しく。


注) おそらく、これまでに発明塾で討議した発明の数は、軽く300は超えると思います。僕自身のブレスト(社内)も含めると、僕自身は500-600程度のアイデアを検討していることになると思います。時間にすると・・・。


2013年2月18日月曜日

塾長の部屋(37)~「ひらめき力」は育つのか

2010年4月19日の日記から。珍しく?発明の話をしましょう。

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『「ひらめき力」の育て方』大嶋光昭著  

大嶋氏はパナソニックで手ぶれ補正技術を開発した方。なかなかスゴそうですが 、本自体の内容は至って平易。発明発想法を手軽に、とお考えであればサラッと読んでみてもいいでしょう。 

まず 
①知識の共有  
そして  
②3年後の世界を予測、特に課題を予測する。 
③3年後の世界をもとに、5年後を予測。連想して類推する。この辺の区切りは絶妙な気がする。彼曰く、未来の予兆は現在にあり、現在の特許などを調べると未来の兆候が読み取れるとのこと。 
④で、注目されていない課題を選ぶ。選んだ課題が大注目されていれば、他を探す。このへんも同感。注目されていないけど、重要になりそうな、という視点があればなおいい。 
⑤解決策を探す。 
⑥探した解決策が、先行技術として存在しないかどうか確認。存在したら別の解決策を探す。 
ということで、課題分析、課題予測が重要、というスタンス。 

ブレストには3種の人材が必要。 
①専門分野の新しい情報を持っている人。 
②リンク距離の長い人。 
③目利き、鑑識眼のある人。 

リンク距離とは、複数の技術分野に造詣が深い人ということ。 
それはまた、新しい視点や、突拍子も無い意見、を出せる人、とのこと 

残念ながら、大嶋氏の「大嶋塾」では、②と③は大嶋氏が一人でやっているらしい。 

なかなか難しいようだ。


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 これを読むと、当時の僕が、いかに「発明がわかっていなかったか」がわかる(笑)。多分塾生も同じ意見でしょう。同時に、先行技術(先人の知恵)を、徹底的にベンチマークし、それを超える事が重要、ということもわかる。およそ手に入る東西の「発明本」には、ほとんど目を通した。そして、それを圧倒的に超えた自信はある。

 ブレストにどういう人材が必要か、ということは、ほぼ解明できており、発明塾ではそれを用いたチーム編成で一定の成果が出ている。同時に、肝である課題の抽出についても、非常に効果的な一定の手続きがわかっている。

 問題は、それらの手法を「塾生全員が身につけることができるのか」ということ。今年はそれに取り組むべく、進めていきます。


2013年2月14日木曜日

発明塾京都第119回開催報告


 論文組の復帰も含め、久々に賑やかな発明塾でした。春休みにしっかりと成果を出せるように。

 さて、前回の講義で「なんのためのマインドマップか」という話をしました。

 今回は、新しいテーマで「情報分析、アイデア出し(Jレベル)、切り口抽出」までを行いました。

 個人的には、各自の「思考回路」が反映された有意義な(各自の明確な貢献がある)場であったと思います。それぞれが役割と強みを正しく認識して行われるアイデア出しは、美しいサッカーの試合を見ているようで、非常に気持ちがいいです(監督として 笑)

 次回までに、各自MMに落として事前共有し、よりよい切り口を抽出しておくこと。

 次回はそこから始めます。

 集まることの意味、時間、について、しっかりと考えて。

では。


2013年2月10日日曜日

塾長の部屋(36)~計画的な能力向上の「習慣」

くどいですが、「毎週書くと決めている」ので。

さて、しかしながらの若干手抜きになりますが、僕自身が受けてきた「計画的な能力向上」のための指導法を、ご紹介しましょう。

以下は、僕がどの会社の時も、部下に送っているメール(モディファイしています)です。前提条件として、「毎月、各部下と個人面談を行なっている」ことがあります(注1)。

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 目的は、業務の管理ではなく各自の能力向上のためです。進捗管理とか締め切りとか、そんなものは各自に任せます。社会人なら、できて当たり前のことなので。

 業務に追われると、なかなか計画的に能力向上ができないのですが、中長期的には、各自の成長がなければ「どのレベルでの」成長も成果もありません。それはLose-Loseということ。つまり、Pだけではなく、PCの向上をやってくださいということです(注2)。

 準備するものは、たった2つのシート。計画にはそんなに時間をかけるものでもないし、かかるものでもない。エイヤで決めて、覚悟を決めて実行するしか無い。

 周りを見ていればわかるとおもうが、30代前半の数年が勝負。寸暇を惜しんで勉強すること。それ以外のアドバイスはない。もちろん、僕はぜひ平々凡々とやりたいです、というのなら、それは止(と)めない。

(1)「この現場で成果をあげ、今後も成果をあげ続けるために、自分に必要なスキルは何か。それをいつどのように身につけるか」シート
 今の業務/業界で、自分にすぐに/今後必要とされるスキルのリストアップと、それを、何でどういうふうに、いつ学ぶかの計画を素早く(1時間程度で)立てる。どのスキルも、3ヶ月で目標に達するようにスケジュールと項目(後述)を組むこと。ここには、現在の担当業務を中心に、それよりも広い、自社が置かれている環境に対応する際に、自分が必要と「される」スキルを書く。

 この「必要とされる」という視点が重要。「身につけたい」というような「漠然とした」概念ではない。「これは必要とされますね」という、客観的なものさしを持ち込むこと(後述の「お勉強」くん(さん)、にならないため)。

 3ヶ月以上かかるものは、3ヶ月で達成できるスキルに因数分解する。基本的に3ヶ月で「これについては現在の仕事には十分です(後述)」というところに到達し、それを繰り返す。3ヶ月有れば、集中すれば、大抵のことは身につく。逆に、これ以上かかるのであれば、全くに身につかない。そもそも方法が間違っているか、集中できていない(注3)。

(2)「各スキルを具体的に測定するベンチマーク設定と、測定」のシート
 上記スキルのうち、特に重要なものについて、目標となりうる身近な人のスキルを100%とした場合に、今自分が??%である、1か月後に??%にする、3ヶ月で超える(100%以上)、とする。そのために仕事において何をどうするか(何の仕事をどういう風にやって、そのスキルを向上させるか)というリスト、シート。
 
 ここでポイントは、具体的に測定可能となるように、ものさしを「客観的」にするために、「身近な特定の(デキる)人」を目標にすること。能力ごとに人が違っても構わない(というかそうなるはず)。人間は、具体的な比較対象が隣にないと、測定ができない。人間とは実にあてにならない「定量測定器具」である。

「Aというスキルが100%身についたかどうか」

などという確認不可能な命題ではなく(なんだ100%って、そもそも)、

「Aというスキルについて、Bさんに勝っているか負けているか」

という命題を立てて、最初から取り組むこと。


 いずれも、毎週末に見直して、翌週の仕事や学習計画をたてる上での参考にし、業務遂行自体をスキルアップに密接に結びつけ、実施していくこと。慣れれば簡単、やらないとふわふわした「お勉強」タイプや資格タイプ、あれやこれやの発散タイプとなって、100%ボツる。多くの部下、同僚で実証済み。


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まぁ正直、ここまでネタを明かさなくてもいいんじゃないかと思いながら(だって、これこそ個人にとっては「競争力の源泉」ですよね)、いつもメールを送っている。僕自身も、半分は当時の上司に教えてもらったことなので。

というか、そもそも「これぐらいやってるよね」というコトでもある。もちろん「俺はそんな面倒なことしなくても、なんでもすぐ身についちゃうし、そもそもそういうのに困ったこと無いんだよねー」という人も、世の中には結構おられるので、そういう方には非常に「ウザい」話だとは思いますが。


※ 注1)正確には、行なっていない時期もありましたが、それは、メンバーと会社の発展段階的に不要、と思ったからです。

※ 注2)「7つの習慣」参照

※ 注3)「BCG流 経営者の育て方」参照。また、以前の上司が全く同じ事を言っている(「3ヶ月あれば、仕事で周りに一目置かれるぐらいのスキルは、なんであっても身につく」と)。

2013年2月7日木曜日

発明塾京都第118回開催報告

今週の京都は寒かった(寒い)ですね。

さて、第118回では、持ち込まれたSRと、MindMap(MM)のレビューをそれぞれ行いました。

1)SR
 一番重要な点は「論理構成」。これはすでに耳タコだと思いますが、やはりここが甘い。論理構成とは、Aという文章とBという文章があるときに、それをどう繋ぐか、もしくはAに基づいてEを導出したいときに、間にどういう「因果関係」を構築するか、です。

 よく、「Aで、Bで、Cで、Dで、Eなんです」(若干の興奮を交えて)という会話をする人がいますが、大抵の場合、


「君の話は、いつもよくわからないね」

と言われて沈没する(注1)。因果関係と、論証すべき命題の定義、が曖昧だからです。「Aによって、従来不可能であったEが可能になります。具体的にはAによってBが可能になり、それによりCがDという効果を持ち、その結果Eが可能となるのです」のような形にすべきです(注2)。

 もう一つは「自分として新しい(主観)」から抜け出し「世の中的に新しい(客観)」に、思考と論証のパターンを変えることです。以前、駒場東邦中学・高校で「発明塾」を開催した際に、ホールいっぱいの中学生が、およそ考えつく限りの「オモロイ」アイデアを披露してくれました。

 個人的にも塾生的にも、相当面白かったのですが、ひとつ重要な気付きとして「そこそこオモロイことを 言う ぐらいのことは、ちょっと優秀な中学生なら簡単」ということでした(注3)。しかし彼らは、「自分的に面白い」ことを言っているに過ぎません。そこからひとつ飛び出るには「世の中のレベル(既存技術、先行技術)」を踏まえて「発明」する必要があります。

 山登りに例えると、皆さんがやりたいことは

「麓の樹海から、一歩づつ登り始めました。まだ3合目ですけど、疲れたので満足しました。達成感十分です。」

なのか、

「とりあえず車とロープウェイがあったので、それを活用して9合目まで来ました。残りの絶壁を、悪天候の中なんとかよじ登り、無事山頂に到達しました。誰も見ることのできない、素晴らしい眺めです。」

なのか、「どちらですか」ということでしょう。中学生でもそこまで出来る=大学生は何をすべきか、ということが明らかになったのが「駒場東邦事件(笑)」です。


2)MindMap(MM)の作り方
 意外と、きちんと作れるようになっていない、という点と、何のためのMMか(発明のどの工程のための)はっきりせずに「なんとなく、つくっている」、という点も明らかになりました。これは、講義でレビューしましたので、委細は割愛します。上述の、因果関係(課題解決/目的効果/Why等の視点)、や、客観的視点(既存技術をどこまで踏まえているか)、とも関係しています。

 
 再度言っておきましょう。


 「若者よ、人生は時間でできている」

 僕も無駄遣いしたくない、君たちもそうだと信じている。ならば、基本に忠実にしっかりと日々実践し、成果に結びつけること。わからないことは素直に仲間に教えを請い、先送りにしない。

 成果によって初めて、発明法をモノにした、と「客観的に認められる」。「発想法を勉強しましたー!」それは自己満足にすぎない。自己満足で終わらせないように。



※ 注1)僕は、なんでこういう話の仕方をする人がいるのか、かつては全く理解出来ませんでしたが、発明塾できちんと指導するようになって、謎が解けました。ちなみにこれは、根本的には修正不可能で、意識的にワンクッション、作業を置く必要があります(できる人は、最初から論理構造で文章が出てくる)。理由も含め、克服法やその持ち味の生かし方を、発明塾ではきちんと指導しています。

※ 注2)正確には「そうでないと通じない人には」ということになります。しかし、企業で出世する人はこのタイプが多いので、大抵の上司には、このように報告すべきでしょう。

※ 注3)ある塾生のヒトコト(多少モディファイしてますが)なのですが、今でも忘れられません。誤解のないように言っておくと、駒場東邦の学生さんたちは、ほんとうに面白いアイデアを、次々と披露してくれました。だからこそ、彼は「こんなことで満足していてはイカンな」と思った、ということです。

・「発明塾@駒場東邦開催いたしました!」
 http://edison-univ.blogspot.jp/2011/02/blog-post.html




2013年2月2日土曜日

塾長の部屋(35)~本棚(2006年の日記から)

 某所に記録してある日記から。2006年ですから、前職で丁度、特許情報を活用したマーケティング手法を開発(試行錯誤)していた頃です。当時の日記には、当時の同僚からもコメントが来ており、本棚共有の面白さと難しさを、感じました。

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 「このくにの行方」という、何年か前に出た、筑紫哲也と各界の著名人の対論集を読みました。とくに目新しいことは(特に今となっては)語られてはいないのですが、ソニーの出井(前)社長のコメントに、「こういう人結構いるんだな」ということを見つけてしまいました。 

 コメントをそのまま引用すると 
「本などをまとめて買っておいて、考え事をするときに本棚を見ていると、自分がこれからやりたいこと、興味があってわからないことが書いた本が本棚にあったときの幸せ感、、、、(以下略)」 
とありました。 

 私も本を読むのは好きなほうで、かつ、いくら好きでもそんなには読めないだろうというぐらいの本に埋もれているのですが、意外と本棚を見るのが楽しくて、そのときに気になる本を本棚のあっちへやったりこっちへやったり、古いのを捨てたりして整理するのに結構時間を使っています。 

 背表紙を見ていると、中身をいろいろ思い出して、それらがつながって新しいアイデアが思いつく、なんてこともよくあるのですが(おかげで古い本が捨てられないのですが。。。)出井氏も、そうやって過ごしているのでしょうか。 

 ちなみにいま一番目立つところにある本は「完全なる経営」(A.H.マズロー)で、この本の背表紙を見るたびに、「ひとはどのようにすれば、 『よく生き』 られるのか」ということを考えさせられます。


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 昔から、本棚を活用していたみたいですね、僕は。今は大半の本は電子化しましたが、そのお陰で、より思考の的が絞られ、深まっている気がします。「整理」がどういう効果をもたらすか、という良い例だと思います。

 しかし、マズローの本は当時から僕の本棚の最前線を、ずっと占めているわけですね。

 出井さんの本棚も、見てみたいですね。


2013年2月1日金曜日

発明塾京都第117回開催報告

 第117回も無事終了しました。今回は、1つのトピックに3時間を掛けて、じっくり議論しました。重要なのは「この路線で行くとこれがベスト」というアイデアを、最後まで詰めてしまうことです。

 それがいかに、非現実的で、突拍子もないものに思われたとしても。そして、個人的に興味が持てない発明であったとしても。

 自分が興味が持てないからといって「発明を止め」てはいけません。それは、自分の興味、という、「最もあてにならない軸」で、発明を「評価」していることになります。

 論理的に詰めきってしまってから、客観的に発明を評価する。

それに尽きます。

 次回から、春休み期間という学生も多いでしょう。時間がある間に、しっかりと集中して取り組んでおきましょう。これまでの経験では、だいたい皆、卒業間近になってはじめて、発明塾で教わっていたことがいかに重要か気づいて、頑張り始めることになります。

でもそれでは、手遅れです。

 ご利用は、計画的に。言われなくてもわかっていることが、言われてもできないのが人間。